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後日譚・取り違えたその後の二人
128 ぶらり二人旅 ⑤ (出発進行!・その3)
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リカルドは私がごはんを食べ終わる頃を見計らうかのように戻ってきた。
「さすが、わかってる」
「そりゃ、夫婦ですから。約束通り洗っとくから、準備しといで」
「ありがとう!」
お礼もそこそこに自室に戻ると、まずは着替え。リカルドのスーツと合うように誂えたので、胸元が少し広く開いた色っぽいデザインで、なんだか照れてしまう。ちょっとしっかりお化粧しないと、服に負ける。けど、そんなお化粧を普段は全然しないから、なかなかうまくできない。
「これは、もっと普段から女子力あげておくべきってことよね……」
がんばっていつもより目力強めの美人風に仕上げ、ほっと一息ついたところで、ドアをノックする音がした。
コンコンコン!
小気味よい音。
なんだかリカルドが初めて来てくれた日みたい、と懐かしく思う。
「はーい。ごめん、おまたせしました!」
「準備でき」
ドアを開けると、台詞の途中で、リカルドが黙り込んでしまった。
「えーっと、リカルドがスーツだから、ちょっとドレスアップしてみた、んだけど……」
リカルドが固まってしまった。おーい、と声をかけ、揺さぶってみるけど、反応がない。そんなに受け入れがたいのだろうか、この服とメイク。
「わかった。気に入らないみたいだから、普段のよそ行きに着替えるね」
リカルドのスーツに合わせてちょっと大人っぽい色気を目指してみたけど、普段の反応から鑑みるに、清楚系が好きっぽいもんなあ。私のイメージともかけ離れてるし、別の服にしよう。そう思って部屋の中に戻ろうとしたのに
「? なあに……?」
いつのまにかリカルドが私の肩をつかんでいて、戻れない。
「着替えられないんだけど……」
「いい」
「……ん?」
「ものすごく、いい。から、着替えないで、お願い」
「い、いいの?」
予想外の台詞にびっくりする。
「……ジュリエッタ、とっても色っぽくて、ものすごく興奮した」
あ、そういえば、感情がたかぶると黙っちゃう人だった、リカルドは。
「リカルドにスーツを着てもらうから、ちょっと大人の雰囲気にしようと思って。友達にも相談して二人が並んだ時に合う色とデザインにしてみたの」
紳士物は課題で縫ったくらいだったので、コスプレイヤーの神、キアラに教えを乞うたのだけど、ものすごく参考になった。どこを強調すれば大人の色気が際立つかなんて、色気のいの字もない人間には想像もつかない世界だった。
友達同士だから会う時は純粋に遊びたくて、なんとなく仕事の話は避けてきてたけど、いろいろ聞いてみるの、やっぱり参考になっていいなと思った。代わりに綺麗で効率的な縫製を教えたらものすごく喜ばれたので、お互いによかったみたいだし。
「うん……すごく、すごくいい」
リカルドがまだぼーっとしているので、切り出す。
「そろそろ行きましょうか。列車乗り遅れちゃう」
「あ、うん……」
靴を履き、玄関から出ると、はっと気づいたようにリカルドが手を差し出す。
「なあに?」
「こういう時、エスコートするのが、紳士の役目だよね?」
「……そうね」
「お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
あまりに私達らしくなくて、お互い顔見合わせて、思わず吹き出してしまった。そして、エスコートの手は一瞬で恋人つなぎに変わった。やっぱりそちらの方が、私達らしいので。
「さすが、わかってる」
「そりゃ、夫婦ですから。約束通り洗っとくから、準備しといで」
「ありがとう!」
お礼もそこそこに自室に戻ると、まずは着替え。リカルドのスーツと合うように誂えたので、胸元が少し広く開いた色っぽいデザインで、なんだか照れてしまう。ちょっとしっかりお化粧しないと、服に負ける。けど、そんなお化粧を普段は全然しないから、なかなかうまくできない。
「これは、もっと普段から女子力あげておくべきってことよね……」
がんばっていつもより目力強めの美人風に仕上げ、ほっと一息ついたところで、ドアをノックする音がした。
コンコンコン!
小気味よい音。
なんだかリカルドが初めて来てくれた日みたい、と懐かしく思う。
「はーい。ごめん、おまたせしました!」
「準備でき」
ドアを開けると、台詞の途中で、リカルドが黙り込んでしまった。
「えーっと、リカルドがスーツだから、ちょっとドレスアップしてみた、んだけど……」
リカルドが固まってしまった。おーい、と声をかけ、揺さぶってみるけど、反応がない。そんなに受け入れがたいのだろうか、この服とメイク。
「わかった。気に入らないみたいだから、普段のよそ行きに着替えるね」
リカルドのスーツに合わせてちょっと大人っぽい色気を目指してみたけど、普段の反応から鑑みるに、清楚系が好きっぽいもんなあ。私のイメージともかけ離れてるし、別の服にしよう。そう思って部屋の中に戻ろうとしたのに
「? なあに……?」
いつのまにかリカルドが私の肩をつかんでいて、戻れない。
「着替えられないんだけど……」
「いい」
「……ん?」
「ものすごく、いい。から、着替えないで、お願い」
「い、いいの?」
予想外の台詞にびっくりする。
「……ジュリエッタ、とっても色っぽくて、ものすごく興奮した」
あ、そういえば、感情がたかぶると黙っちゃう人だった、リカルドは。
「リカルドにスーツを着てもらうから、ちょっと大人の雰囲気にしようと思って。友達にも相談して二人が並んだ時に合う色とデザインにしてみたの」
紳士物は課題で縫ったくらいだったので、コスプレイヤーの神、キアラに教えを乞うたのだけど、ものすごく参考になった。どこを強調すれば大人の色気が際立つかなんて、色気のいの字もない人間には想像もつかない世界だった。
友達同士だから会う時は純粋に遊びたくて、なんとなく仕事の話は避けてきてたけど、いろいろ聞いてみるの、やっぱり参考になっていいなと思った。代わりに綺麗で効率的な縫製を教えたらものすごく喜ばれたので、お互いによかったみたいだし。
「うん……すごく、すごくいい」
リカルドがまだぼーっとしているので、切り出す。
「そろそろ行きましょうか。列車乗り遅れちゃう」
「あ、うん……」
靴を履き、玄関から出ると、はっと気づいたようにリカルドが手を差し出す。
「なあに?」
「こういう時、エスコートするのが、紳士の役目だよね?」
「……そうね」
「お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
あまりに私達らしくなくて、お互い顔見合わせて、思わず吹き出してしまった。そして、エスコートの手は一瞬で恋人つなぎに変わった。やっぱりそちらの方が、私達らしいので。
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