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後日譚・取り違えたその後の二人
120 恋の往復切符 ②
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「あのバカ。いいって言うのに」
開口一番、バカはないだろう。
「誰からの手紙?」
「リカルドよ。旅行の邪魔をしたのが申し訳ないから、旅費と宿泊費出したいって」
「リカルドなら言いそうだな」
ジュリエッタから手紙を受け取り、目を通す。
神殿の町で一番の宿に友達が勤めているから、都合のいい日程を連絡してくれれば、旅券と宿の手配をします、とのこと。
「なるほど……。いいじゃん。世話になろーぜ」
「え?」
「リカルドの性格なら、これ、払わないと気がすまないだろ? せっかくの厚意だし、受け取ろうぜ」
「別にリカルドのせいじゃないのに……」
ジュリエッタは腑に落ちない表情を浮かべている。
「神殿の町に行く前に、リカルド達の町まで旅行しねえ? あそこ、地鶏とか地酒とか美味いもんいっぱいあるぞ。楽しそうだし、気になるなら直接会って礼言えばいい」
「……ん。二人とも会いたいし、行こっか」
「よし決まり。じゃ、リカルドには俺が返事書いとくから」
「わかった。よろしく」
「ジュリエッタさん! ルーカさん! おひさしぶり!」
列車が駅に着くと、リカルドとジュリエッタさんが駅まで迎えに来てくれていた。
「ひさしぶり。リカルド、気にしないでいいっていうのに、もう」
「おいおい、礼になってないだろ。ありがとな、リカルド。来月楽しんでくる」
「ぜひ楽しんできて! で、今から、俺はルーカさんといろいろ話があるんで……」
「ジュリエッタさんは私と一緒に来てください!」
「え? なに?」
予想外の別行動にジュリエッタが目を白黒させて、大変面白かった。
ジュリエッタさんにジュリエッタを任せている間、俺はリカルドにオススメのカフェやレストランや町の観光名所をひととおり案内してもらっていた。予定よりもちょっと早く完了したので、カフェで時間をつぶすことにする。
「今日案内した時のルーカさんのチェックポイント、簡潔で感心した。逆にすごく勉強になりました。ありがとうございます」
むしろ、リカルドの案内が細やかで感心したんだが。たぶん、俺を振った女子が求めてたサービスはこれだったんだろう。
俺が押さえるのは面倒なので二点だけ。トイレと気軽に入れるカフェの場所だ。生理現象はどうしようもないし、俺と付き合う女子は疲れたらがぜん不機嫌になるタイプばかりだったから、休めるところを知っておかないとどうにもならなかったのだ。
「ルーカさん、女性の扱い慣れてますよね」
「えー? 俺、『思ってたのと違う』みたいに、振られてばっかりだったぜー」
「でも、彼女、途切れなかったでしょう?」
「まあ……。それなりに」
「演出上手だし、ジュリエッタさん、二人っきりになったら、すごく喜んでくれると思うけどなあ」
「だといいけど。あいつ、素直じゃないからなあ」
「俺も見習って、ジュリエッタ喜ばせなきゃ」
「ジュリエッタさん、充分喜んでると思うぜー。リカルド、表現が直球で裏がないから、すげー安心感あるし」
「そうだと、いいんですけど!」
俺の言葉にリカルドはにこにこ笑う。
マジで、俺を振った女子が求めてたサービスは、これだったんだと思う。一点の曇りもない笑顔に、細やかな気配り。しかも、俺は男だから、リカルドに下心なんか一つもなくて、120%本心だ。愛する女に対してだけじゃなく、万人にこのペースなんて、俺だったらオーバーワークで失踪するわ。
万人には無理だが、せめて、ジュリエッタに対してだけでも、リカルドの気配りを見習おうと反省する。
「あー、そろそろジュリエッタ迎えに行くか。しかし、どっちもジュリエッタだから、名前だけだと訳わかんないな。ジュリエッタ飽和状態」
リカルドがくすくす笑いながら立ち上がる。
「確かに。キャラは全然違うし、お互い自分のジュリエッタしかだめなのにね。じゃあ、そろそろ行きましょう!」
俺達はカフェを出て、互いのジュリエッタの元へと向かうことにした。
開口一番、バカはないだろう。
「誰からの手紙?」
「リカルドよ。旅行の邪魔をしたのが申し訳ないから、旅費と宿泊費出したいって」
「リカルドなら言いそうだな」
ジュリエッタから手紙を受け取り、目を通す。
神殿の町で一番の宿に友達が勤めているから、都合のいい日程を連絡してくれれば、旅券と宿の手配をします、とのこと。
「なるほど……。いいじゃん。世話になろーぜ」
「え?」
「リカルドの性格なら、これ、払わないと気がすまないだろ? せっかくの厚意だし、受け取ろうぜ」
「別にリカルドのせいじゃないのに……」
ジュリエッタは腑に落ちない表情を浮かべている。
「神殿の町に行く前に、リカルド達の町まで旅行しねえ? あそこ、地鶏とか地酒とか美味いもんいっぱいあるぞ。楽しそうだし、気になるなら直接会って礼言えばいい」
「……ん。二人とも会いたいし、行こっか」
「よし決まり。じゃ、リカルドには俺が返事書いとくから」
「わかった。よろしく」
「ジュリエッタさん! ルーカさん! おひさしぶり!」
列車が駅に着くと、リカルドとジュリエッタさんが駅まで迎えに来てくれていた。
「ひさしぶり。リカルド、気にしないでいいっていうのに、もう」
「おいおい、礼になってないだろ。ありがとな、リカルド。来月楽しんでくる」
「ぜひ楽しんできて! で、今から、俺はルーカさんといろいろ話があるんで……」
「ジュリエッタさんは私と一緒に来てください!」
「え? なに?」
予想外の別行動にジュリエッタが目を白黒させて、大変面白かった。
ジュリエッタさんにジュリエッタを任せている間、俺はリカルドにオススメのカフェやレストランや町の観光名所をひととおり案内してもらっていた。予定よりもちょっと早く完了したので、カフェで時間をつぶすことにする。
「今日案内した時のルーカさんのチェックポイント、簡潔で感心した。逆にすごく勉強になりました。ありがとうございます」
むしろ、リカルドの案内が細やかで感心したんだが。たぶん、俺を振った女子が求めてたサービスはこれだったんだろう。
俺が押さえるのは面倒なので二点だけ。トイレと気軽に入れるカフェの場所だ。生理現象はどうしようもないし、俺と付き合う女子は疲れたらがぜん不機嫌になるタイプばかりだったから、休めるところを知っておかないとどうにもならなかったのだ。
「ルーカさん、女性の扱い慣れてますよね」
「えー? 俺、『思ってたのと違う』みたいに、振られてばっかりだったぜー」
「でも、彼女、途切れなかったでしょう?」
「まあ……。それなりに」
「演出上手だし、ジュリエッタさん、二人っきりになったら、すごく喜んでくれると思うけどなあ」
「だといいけど。あいつ、素直じゃないからなあ」
「俺も見習って、ジュリエッタ喜ばせなきゃ」
「ジュリエッタさん、充分喜んでると思うぜー。リカルド、表現が直球で裏がないから、すげー安心感あるし」
「そうだと、いいんですけど!」
俺の言葉にリカルドはにこにこ笑う。
マジで、俺を振った女子が求めてたサービスは、これだったんだと思う。一点の曇りもない笑顔に、細やかな気配り。しかも、俺は男だから、リカルドに下心なんか一つもなくて、120%本心だ。愛する女に対してだけじゃなく、万人にこのペースなんて、俺だったらオーバーワークで失踪するわ。
万人には無理だが、せめて、ジュリエッタに対してだけでも、リカルドの気配りを見習おうと反省する。
「あー、そろそろジュリエッタ迎えに行くか。しかし、どっちもジュリエッタだから、名前だけだと訳わかんないな。ジュリエッタ飽和状態」
リカルドがくすくす笑いながら立ち上がる。
「確かに。キャラは全然違うし、お互い自分のジュリエッタしかだめなのにね。じゃあ、そろそろ行きましょう!」
俺達はカフェを出て、互いのジュリエッタの元へと向かうことにした。
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