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後日譚・取り違えたその後の二人
105 にくいあんちくしょう ⑤
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「「いただきます」」
ジュリエッタは食事がただの栄養補給じゃなくて楽しいものだと認識しはじめてるっぽい。ゆっくり噛みながら味わってるし、少し笑顔が浮かんでる。おいしいという感覚をつかみはじめたらしいお嬢様に、もっと美味いものを食べさせたくなってしまった。
ああ、食事の時にまずそうな顔してるのがつらいって、そういうことなのか。唐突に悟る。美味いものを食べさせてやりたいのに、そうしてあげられない。これは大事な相手なら結構つらいかも。
割と家庭的な女子と付き合った時、作ってくれた飯をそこそこ美味いと思いながら食ってたのに、別れ話になった時に『自分の作った食事をまずそうに食べられるのはすごく悲しい』と言われて、意味がわからなかったのだ。美味いと思ってるよ? と言っても全然伝わらなくて。まあ、基本的にそういう女子からは、なぜか好かれないから、そんなやりとりもその時だけだったけど。概ね振られるパターンは『そんなまずそうな顔されるとこっちもまずく感じる』で、表情は変えらんねえしなあと思っただけだったし。
「味って、いろんな種類があるのね。今食べてるのは、なんだか素敵な夢みたいな味」
感心したようにジュリエッタが言う。
食後のデザートにジェラートを出したので、あながち間違いじゃない。
「もっともっといろんな味があるから、作ってやるよ。肉類は、買ってくるか外で食べてもらうしかねーけど」
「まだ、いろいろあるの?」
世界が広がる嬉しさからか、お嬢様、顔を輝かせておられる。次に外出する時は、料理本買おう、そう決意した。
「ここの隣、俺の部屋にしていいか?」
客室らしき寝室の向かいの部屋を指し、ジュリエッタに訊ねる。
「いいわよ、別に」
「助かる。水場近いから仕事しやすい」
「仕事?」
「俺、薬師なんだよ。今日この地区のギルドに登録して、作った薬持ってったら買ってもらえるようにした。依頼に合わせて作るほど稼げねーけど、家事全般やること考えたら時間的にこっちだろ」
「家事全般やるって……」
ジュリエッタは目をぱちくりさせた。なにをそんなに驚くんだ。
「お前、家事できねーだろ。だったら、できる俺がやればいい。お前だってほんとは部屋綺麗な方がいいだろ? できないだけで」
「できなくて悪かったわね」
「俺も綺麗な方がいいし、できるからやる。そんだけだ」
俺用にもらった部屋はほとんど物が置かれていなかったので、片づけは一瞬で終了した。時間がもったいないので、それ以外にもう一部屋片づけて今日のノルマは終了し、台所の整備と夕飯の準備をした。明日はカーテンの洗濯もしよう。整備されてないから荒れ放題だけど、きちんと整えたら、部屋数あるし、庭も立派な草木が植えられてるし、結構住みやすいんじゃないか、この家。好きにできると思うとちょっとわくわくする。
ジュリエッタは食事がただの栄養補給じゃなくて楽しいものだと認識しはじめてるっぽい。ゆっくり噛みながら味わってるし、少し笑顔が浮かんでる。おいしいという感覚をつかみはじめたらしいお嬢様に、もっと美味いものを食べさせたくなってしまった。
ああ、食事の時にまずそうな顔してるのがつらいって、そういうことなのか。唐突に悟る。美味いものを食べさせてやりたいのに、そうしてあげられない。これは大事な相手なら結構つらいかも。
割と家庭的な女子と付き合った時、作ってくれた飯をそこそこ美味いと思いながら食ってたのに、別れ話になった時に『自分の作った食事をまずそうに食べられるのはすごく悲しい』と言われて、意味がわからなかったのだ。美味いと思ってるよ? と言っても全然伝わらなくて。まあ、基本的にそういう女子からは、なぜか好かれないから、そんなやりとりもその時だけだったけど。概ね振られるパターンは『そんなまずそうな顔されるとこっちもまずく感じる』で、表情は変えらんねえしなあと思っただけだったし。
「味って、いろんな種類があるのね。今食べてるのは、なんだか素敵な夢みたいな味」
感心したようにジュリエッタが言う。
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「まだ、いろいろあるの?」
世界が広がる嬉しさからか、お嬢様、顔を輝かせておられる。次に外出する時は、料理本買おう、そう決意した。
「ここの隣、俺の部屋にしていいか?」
客室らしき寝室の向かいの部屋を指し、ジュリエッタに訊ねる。
「いいわよ、別に」
「助かる。水場近いから仕事しやすい」
「仕事?」
「俺、薬師なんだよ。今日この地区のギルドに登録して、作った薬持ってったら買ってもらえるようにした。依頼に合わせて作るほど稼げねーけど、家事全般やること考えたら時間的にこっちだろ」
「家事全般やるって……」
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俺用にもらった部屋はほとんど物が置かれていなかったので、片づけは一瞬で終了した。時間がもったいないので、それ以外にもう一部屋片づけて今日のノルマは終了し、台所の整備と夕飯の準備をした。明日はカーテンの洗濯もしよう。整備されてないから荒れ放題だけど、きちんと整えたら、部屋数あるし、庭も立派な草木が植えられてるし、結構住みやすいんじゃないか、この家。好きにできると思うとちょっとわくわくする。
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