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本編・取り違えと運命の人
088 本当の運命の人 ②
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翌朝、私達はみんなで朝食をとり、出発することにした。
「では、行きましょうか」
「いざとなったら、私が実力行使するから」
「そ、それは、やめてください! 人死にが出ます!」
ジュリエッタさんは強大な魔力持ちだから、リカルドが怯えるのも、一応おかしくはないはずなんだけど。なにかそれ以上の恐怖が感じられる。
なんでも、私とルーカさんがごはん食べたり食後のコーヒー飲んだり無言の行に勤しんでいた頃、リカルドはジュリエッタさんに好きな女ならなぜ諦めるんだ! と叱咤激励されていたそう。
それくらいでこの反応って、どんな叱咤激励だったんだろう。疑問は尽きない。
四人で向かった先は、もちろん、神託を下した神殿。
「誤った組み合わせを、正式に認めてほしい、と」
「そうです」
きっぱりとリカルドが言うと、ルーカさんが続ける。
「神殿側からすれば誤っているとはいえ、この組み合わせで婚姻届は出されていますし、一緒の暮らしも軌道に乗っていますし、全員がこの組み合わせを望んでいますし、離婚する意味がないですよね」
「そう言われましても、正しい組み合わせではないのですから……」
「そもそも、違う人間の魔法球に入れ替わったのに、なんの反発もないっていうのが、おかしいではありませんか」
さえぎるように、ジュリエッタさんが呪術師らしい意見を述べる。
「…………私では判断いたしかねますので、しばらくお待ちください」
係の人はとぼとぼと奥に引っ込んだ。なんか、蛇ににらまれた蛙みたいな悲哀を感じたのは、気のせいかしら。
明らかにものすごく位の高い神官様、来たー!
奥の部屋に通され、しばらく待たされた後、対応してくれた係の人とは全然違うお召し物の方がおいでになりました。生地を見ただけで、最高級ってわかるヤツ。つい、今日の目的を忘れた視点で見てしまうけど、職業病だから許してほしい。
「みなさまは、神託の組み合わせではない、現在の組み合わせがよい、ということで、訴えに来られたのですね」
「ええ。このままでは、神託に背いていることになりますから。神殿を裏切るようで罪悪感がありますし、神託の信憑性も低くなってしまって、お互いよくないかと」
ルーカさんが交渉する。
「なるほど。そちらの呪術師の女性が、魔法球についての疑問を?」
「はい。本来の所有者ではないはずなのに、なぜ、反発がなかったのか、大変おかしいと思いました。しかも、今、入れ替えようとすると、むしろ反発するのです」
魔法球はそれぞれ、取り違えた後の所有者を本物だと受け入れている。ここに私達は一縷の望みをかけることにしたのだ。
「では、行きましょうか」
「いざとなったら、私が実力行使するから」
「そ、それは、やめてください! 人死にが出ます!」
ジュリエッタさんは強大な魔力持ちだから、リカルドが怯えるのも、一応おかしくはないはずなんだけど。なにかそれ以上の恐怖が感じられる。
なんでも、私とルーカさんがごはん食べたり食後のコーヒー飲んだり無言の行に勤しんでいた頃、リカルドはジュリエッタさんに好きな女ならなぜ諦めるんだ! と叱咤激励されていたそう。
それくらいでこの反応って、どんな叱咤激励だったんだろう。疑問は尽きない。
四人で向かった先は、もちろん、神託を下した神殿。
「誤った組み合わせを、正式に認めてほしい、と」
「そうです」
きっぱりとリカルドが言うと、ルーカさんが続ける。
「神殿側からすれば誤っているとはいえ、この組み合わせで婚姻届は出されていますし、一緒の暮らしも軌道に乗っていますし、全員がこの組み合わせを望んでいますし、離婚する意味がないですよね」
「そう言われましても、正しい組み合わせではないのですから……」
「そもそも、違う人間の魔法球に入れ替わったのに、なんの反発もないっていうのが、おかしいではありませんか」
さえぎるように、ジュリエッタさんが呪術師らしい意見を述べる。
「…………私では判断いたしかねますので、しばらくお待ちください」
係の人はとぼとぼと奥に引っ込んだ。なんか、蛇ににらまれた蛙みたいな悲哀を感じたのは、気のせいかしら。
明らかにものすごく位の高い神官様、来たー!
奥の部屋に通され、しばらく待たされた後、対応してくれた係の人とは全然違うお召し物の方がおいでになりました。生地を見ただけで、最高級ってわかるヤツ。つい、今日の目的を忘れた視点で見てしまうけど、職業病だから許してほしい。
「みなさまは、神託の組み合わせではない、現在の組み合わせがよい、ということで、訴えに来られたのですね」
「ええ。このままでは、神託に背いていることになりますから。神殿を裏切るようで罪悪感がありますし、神託の信憑性も低くなってしまって、お互いよくないかと」
ルーカさんが交渉する。
「なるほど。そちらの呪術師の女性が、魔法球についての疑問を?」
「はい。本来の所有者ではないはずなのに、なぜ、反発がなかったのか、大変おかしいと思いました。しかも、今、入れ替えようとすると、むしろ反発するのです」
魔法球はそれぞれ、取り違えた後の所有者を本物だと受け入れている。ここに私達は一縷の望みをかけることにしたのだ。
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