【R18】取り違えと運命の人

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本編・取り違えと運命の人

084 約束

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「ジュリエッタ」

 ごはんを食べ終わると、リカルドが私に声をかけてきた。いつもよりも改まった表情に少しどきっとする。

「なあに?」
「これを」

 古い小さな箱を差し出されたので受け取る。

「開けていい?」
「もちろん。ジュリエッタのものだから」
「私の?」

 開けてみると、大粒の宝石が填められた銀細工の古風な指輪が入っていた。

「綺麗……」
「俺の家に代々伝えられてるんだ」
「そんな大事なもの……」
「だから、ジュリエッタに渡すんだよ」

 リカルドは私の左手を取り、指輪をゆっくり薬指に差し込んだ。

「あ! ぴったりだ! すごい! 調整いらないね!」
「ほんと、ぴったり」

 まるであつらえたみたい。左手を目の前にあげて、思わずまじまじと見入っていると、そのままリカルドにゆっくりと抱きしめられた。

「これね、一年一緒に過ごして大丈夫なら渡すようにって、言い伝えられているんだって」
「? どうして一年後なのかしら?」
「わからないけど、だめな相手なら一年持たないと、ご先祖様は考えたのかな?」
「なんだか、試験に合格した気分……?」
「でも俺、父ちゃんの気持ちの方が、わかる」
「お父様?」
「父ちゃん、母ちゃんにこれ渡す時『俺は会ったその日に渡したかったんだからな!』って言ったんだって。それでも、ご先祖様の言い伝えだから、律儀にしきたりを守ったんだ」
「お父様、可愛い」

 って失礼かな? でも微笑ましい気持ちになる。

「俺もおんなじ気持ちになったけど、父ちゃんがご先祖様を尊重したように、一年間、渡すの我慢してた」
「我慢って! 大げさ……」
「だって、俺、ジュリエッタに一目で夢中になっちゃったから。君に、すぐにでもあげたかったんだ」

 抱きしめる腕に力がこもる。

「でも、俺には、一年後が正しかったみたい」

 リカルドの声が少しかすれる。

「もう少しで、君を失う愚かな選択をするところだった。指輪が試してたのは、きっと、俺の方だったんだと思う」

 リカルドの、私を抱く腕が、震えてる。初めての夜みたいに。

「リカルド」

 たまらなくなって、声をかける。

「なに?」
「違うよ。私も、リカルドといたいって、自分で言えばよかったんだし。今日一日、いろいろあったけど、二人で未来をつないだんじゃない」
「……うん」
「だから、私、この指輪に約束する。リカルドとずっと一緒に楽しく暮らすって」
「……うん。俺もこの指輪に、ジュリエッタと一緒に楽しく幸せに暮らすことと、一生大切にすることを、約束する」

 そうして、私達は誓いのくちづけをそっと交わした。決して破られることのない約束。
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