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本編・取り違えと運命の人
080 ごはんがおいしくない ②
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気になってルーカさんを見てみると、食事にほとんど手をつけていない。
どうしよう、ほんとに味つけ失敗してるのかもしれない。
「あの……お口に、合いませんか?」
「そんなことは」
「でも」
「あ……すみません。俺、ベジタリアンなんです……」
思ってもみない返事がきた。
「こちらこそ、ごめんなさい! 気がつかなくって」
あわてて肉類が入っていないものをルーカさんの前に並べる。でも、リカルドが肉好きだから今日のメニューも肉系がやっぱり多くて、それだけだと品数が少ない。台所で生野菜を洗って切り、ドレッシング数種も追加で持ってくる。
「あまりバリエーションがなくて申し訳ないです。他に食べられないものはありますか?」
「いえ、肉類以外なら。こちらこそ、申し訳なかったです」
おいしいって言葉と笑顔は、魔法だったんだな。
ルーカさんは、艶のある焦げ茶色の髪で、すらりとした長身の、甘い雰囲気と大人っぽさを併せ持った、申し分のない美形だ。こんな人が相手だったらいいなあと思っていた理想にむしろ近い。
ただ、悪い人じゃなさそうなんだけど、喜怒哀楽がよくわかんない。
一緒に食べるごはんがおいしくない。これ、結構つらいかもしれない。
不意に、切ない声で私の名をささやきながら愛撫するリカルドの姿が、脳裏をかすめた。
これからルーカさんと暮らすんだったら、そういうことも当然する、はずなんだけど……。想像もつかなくて、ただただ寒気がした。
ふれられたくない。これは、ルーカさんが嫌いとかじゃなくて、リカルド以外の男の人全てにだ。
ルーカさんを見ると、いつのまにか食事を終えていて、動きが止まっていた。
「……食後の、お茶とお菓子、持ってきますね」
なんだかいたたまれない気持ちになって、お茶を口実に、私は席を立った。
どうしよう、ほんとに味つけ失敗してるのかもしれない。
「あの……お口に、合いませんか?」
「そんなことは」
「でも」
「あ……すみません。俺、ベジタリアンなんです……」
思ってもみない返事がきた。
「こちらこそ、ごめんなさい! 気がつかなくって」
あわてて肉類が入っていないものをルーカさんの前に並べる。でも、リカルドが肉好きだから今日のメニューも肉系がやっぱり多くて、それだけだと品数が少ない。台所で生野菜を洗って切り、ドレッシング数種も追加で持ってくる。
「あまりバリエーションがなくて申し訳ないです。他に食べられないものはありますか?」
「いえ、肉類以外なら。こちらこそ、申し訳なかったです」
おいしいって言葉と笑顔は、魔法だったんだな。
ルーカさんは、艶のある焦げ茶色の髪で、すらりとした長身の、甘い雰囲気と大人っぽさを併せ持った、申し分のない美形だ。こんな人が相手だったらいいなあと思っていた理想にむしろ近い。
ただ、悪い人じゃなさそうなんだけど、喜怒哀楽がよくわかんない。
一緒に食べるごはんがおいしくない。これ、結構つらいかもしれない。
不意に、切ない声で私の名をささやきながら愛撫するリカルドの姿が、脳裏をかすめた。
これからルーカさんと暮らすんだったら、そういうことも当然する、はずなんだけど……。想像もつかなくて、ただただ寒気がした。
ふれられたくない。これは、ルーカさんが嫌いとかじゃなくて、リカルド以外の男の人全てにだ。
ルーカさんを見ると、いつのまにか食事を終えていて、動きが止まっていた。
「……食後の、お茶とお菓子、持ってきますね」
なんだかいたたまれない気持ちになって、お茶を口実に、私は席を立った。
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