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本編・取り違えと運命の人
050 お誕生日おめでとう ⑥
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「あ! もう行かないと! ごめん、待たせて!」
腕時計を見たリカルドがそう言うので、家を出ることにする。
「なるほど、馬車待たせてたのね」
「うん。せっかくのお祝いだから」
待たせて申し訳ないと御者に謝り、馬車に乗り込む。私が腰かけるとリカルドも隣の席に座り、馬車が走り出すなりそっと手を握ってきた。
「俺、そのワンピース、すごく好き」
「そう?」
「うん。ジュリエッタらしくて似合ってる」
「ありがとう。リカルドがくれた首飾りにも合ってるでしょ」
「うん。この首飾り、お店のショウウィンドウに飾ってあったのを見た時、絶対ジュリエッタに似合う! と思って、即行で取り置いてもらったんだ」
「そうだったんだ」
「いろんな服と合わせてくれて、すごく嬉しい」
「うん。かなり合わせやすいし、デザインが洗練されてるからどんな服も三割増し立派に見えて、これ、すごく便利。とっても気に入ってるの。友達からの評判もいいんだよ」
「よかった」
リカルドの笑顔がますます温かくなる。
ほんとに大事なのは、首飾りを持ってることじゃなくって、選んでくれたリカルドがそばにいるってことなんだなと実感して、そっと手を握り返す。なんだか気持ちがあふれてしまって、それからお店に着くまで二人とも無言だった。幸せな静寂。ふれている手の温かさがとても心地よかった。
「……ここ?」
「うん、ここ」
連れてこられたのは、女性なら誰しも憧れる、町で一、二を争う名店だった。予約二、三か月待ちとか、あたりまえのお店。
「予約、大変じゃなかった?」
「職場の先輩に伝手があったから、なんとかなった」
リカルドはこともなげに言うけど、そうとう苦労したはず。
「ありがとう。すごく嬉しい……」
「今日はおいしいもの、いっぱい食べよう!」
リカルドにうながされて、さっそくお店に足を踏み入れる。リカルドが予約していた旨を告げると、個室に通された。
「こういうお店、入るの初めてだから、すごく緊張する」
「大丈夫! 個室だから多少失敗しても問題ない!」
「え、それで個室?」
「それだけじゃないけど。とりあえず、むしろ俺がマナーには自信ないし」
リカルドはまた自分のせいにした。ほんとは、男の人とお付き合いした経験がない私を気づかってのことだと思う。リカルドはなにか配慮してくれた時、毎回自分のためって体にするんだよね。他の男の人とお付き合いしたことはないけど、ここまで気を配ってくれる人は、たぶんそんなにいないだろうと思う。
腕時計を見たリカルドがそう言うので、家を出ることにする。
「なるほど、馬車待たせてたのね」
「うん。せっかくのお祝いだから」
待たせて申し訳ないと御者に謝り、馬車に乗り込む。私が腰かけるとリカルドも隣の席に座り、馬車が走り出すなりそっと手を握ってきた。
「俺、そのワンピース、すごく好き」
「そう?」
「うん。ジュリエッタらしくて似合ってる」
「ありがとう。リカルドがくれた首飾りにも合ってるでしょ」
「うん。この首飾り、お店のショウウィンドウに飾ってあったのを見た時、絶対ジュリエッタに似合う! と思って、即行で取り置いてもらったんだ」
「そうだったんだ」
「いろんな服と合わせてくれて、すごく嬉しい」
「うん。かなり合わせやすいし、デザインが洗練されてるからどんな服も三割増し立派に見えて、これ、すごく便利。とっても気に入ってるの。友達からの評判もいいんだよ」
「よかった」
リカルドの笑顔がますます温かくなる。
ほんとに大事なのは、首飾りを持ってることじゃなくって、選んでくれたリカルドがそばにいるってことなんだなと実感して、そっと手を握り返す。なんだか気持ちがあふれてしまって、それからお店に着くまで二人とも無言だった。幸せな静寂。ふれている手の温かさがとても心地よかった。
「……ここ?」
「うん、ここ」
連れてこられたのは、女性なら誰しも憧れる、町で一、二を争う名店だった。予約二、三か月待ちとか、あたりまえのお店。
「予約、大変じゃなかった?」
「職場の先輩に伝手があったから、なんとかなった」
リカルドはこともなげに言うけど、そうとう苦労したはず。
「ありがとう。すごく嬉しい……」
「今日はおいしいもの、いっぱい食べよう!」
リカルドにうながされて、さっそくお店に足を踏み入れる。リカルドが予約していた旨を告げると、個室に通された。
「こういうお店、入るの初めてだから、すごく緊張する」
「大丈夫! 個室だから多少失敗しても問題ない!」
「え、それで個室?」
「それだけじゃないけど。とりあえず、むしろ俺がマナーには自信ないし」
リカルドはまた自分のせいにした。ほんとは、男の人とお付き合いした経験がない私を気づかってのことだと思う。リカルドはなにか配慮してくれた時、毎回自分のためって体にするんだよね。他の男の人とお付き合いしたことはないけど、ここまで気を配ってくれる人は、たぶんそんなにいないだろうと思う。
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