【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

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本編・取り違えと運命の人

047 お誕生日おめでとう ③

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「じゃあ、私もそろそろ始めようかしら」

 掃除と洗濯を終えたので、本職の作業に取り掛かることにする。
 今依頼されている服は二着。今日できる限り進めてしまえば、週末こころおきなく楽しめるからがんばろう。

 リカルドと暮らし始めてから、休日のデートを励みに、平日だけ働く形に切り替えた。それまでは、平日も休日もいっしょくたで、昼近くから夜までみたいに、もっとのんびり進めてたんだけど。働くのを平日のみにしたら、効率化や時間短縮を考えて技術を高めざるを得なくなって、労働時間が短くなったにもかかわらず、かえって評判がよくなって、収入も増えた。

「これも、リカルドのおかげ、なのかな?」

 リカルドが来てくれてから、毎日楽しいし、仕事も充実してる。リカルド、今日のためにいろいろお祝い考えてくれてるみたいだけど、ほんとは既に毎日いろいろもらっているんだよね。ありがたいな。

 一着目ができあがったところでお昼を取り、二着目の仮縫いが終わったところで休憩を取ることにした。集中したからか、思ったより進んだ。ごほうびにおやつだおやつだ。
 お茶を淹れ、お茶うけを見ていたら、ふと、リカルドの誕生祝いのことが思い出された。

 誕生日を当日にちゃんとお祝いできなかったという痛恨のエラー。
 それ以来、リカルドの喜怒哀楽を、よく観察するようになった。
 基本的に笑顔だし、なにをしても喜んでくれる人だけど、私がちょっとおしゃれしてるとすごく嬉しいみたいで二割増でにっこにこになるし、ちょっと凹んでいる時は笑い声がなんとなく小さくなって言葉も少なくなる。そんな違いがわかるようになってきた。

 肉体労働者だし、食いしん坊だから、食べ物で喜ばせようとすることが自然と増えた。完全に餌付け。町で買い物してても、これリカルド好きそうだなとか、こないだ喜んでたやつだとか、そういう見方をするようになった。気に入ってるお菓子を買いだめておいて、ちょっと元気がなく見える日は夕食後に出してあげたり、翌日のごはんを少し豪華にしてあげたり。それくらいしかできないけど、たったそれだけでもリカルドは立ち直ってくれて、またあのおひさまみたいな笑顔に戻るんだ。それを見てると、私もすごく元気づけられるし、幸せな気持ちになる。

 私にとってリカルドは、本当にかけがえのない人なんだな。初めて会った時、ちょっと引いちゃったのが嘘みたいに、今では大切に思ってる。他の人じゃきっと、ここまで幸せを感じていないと思うし、来てくれたのがリカルドでほんとによかったなあ。
 リカルドのことを考えているうちに、いつのまにか笑顔になっている自分に気づく。リカルドと結婚してから、笑顔が激増したって、友達にも言われた。なんか勝手に笑っちゃうんだよね。表情があんまりないってよく言われてた私が、えらい進歩だ。
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