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本編・取り違えと運命の人
046 お誕生日おめでとう ②
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翌朝、おいしそうな匂いで目が覚めた。時計を見ると、普段だったらもうとっくに起きてる時間だ。あ……れ? なんで目覚まし鳴らなかったんだろ……?
少し朝に弱いので状況が把握できず、ぼんやり疑問符を飛ばしていると、リカルドが寝室に戻ってきた。
「あ、おはよう! ジュリエッタ!」
「おはよう、リカルド」
私がそう返すと、リカルドはそっと私を抱き、くちづける。
「お誕生日おめでとう」
「……ありがとう」
こんな風に祝われて迎えた誕生日の朝は初めてで、なんだか照れる。
「ゆっくり眠らせてあげようと思ったんだけど、目が覚めたなら、一緒にごはん食べる?」
「え? ごはんできてるの?」
「うん。作った」
「え!」
料理はずっと私が担当してたから、びっくりした。おいしそうな匂い、それか。
「意外そうな顔」
「リカルド、料理できたんだ」
「そりゃ。何年か一人暮らしだったし、そもそも母ちゃんが亡くなってから、俺が家事担当してたしね」
「知らなかった」
「俺、ジュリエッタの料理が大好きだから、作ってもらうべく、隠してたフシがある」
「知能犯だ!」
「でしょー? 俺には目的のためなら手段を選ばない一面もあるのです」
リカルドがなんだか訳わかんないことを言い出すので、思わず笑ってしまう。
他の家事は協力的なのに、料理に手を出そうとしないのは、できないからだとばっかり思ってた。私が作るのがあたりまえだと思っていたし、それ以外のことをいろいろ気づかってくれるから、作ろうとしなかった理由を聞いても、なんだか微笑ましく、むしろ嬉しく感じてしまう。これは明らかに欲目だ。
「おいしーい……!」
「よかった! ひさしぶりに作ったから、うまくできるかちょっとどきどきしてた」
リカルドの作ってくれた朝食は、意外、と言っては失礼だけど、すごくおいしかった。
「私に料理を作らせるべくこの才能を隠していたのに、ついに明かしたのは、なぜ?」
「その、いつもジュリエッタにごはん作ってもらってるの、すごく嬉しいから、お返しに、と思って」
「才能がバレることで、これから家事分担に料理が入っちゃうかもしれないのに?」
「ええと。別に分担が嫌な訳じゃなくて、わざと料理しないことにちょっと罪悪感もあったし。でも、一番はやっぱり、今日はジュリエッタの日だから、俺にできることを全力で執り行い喜ばせようという欲望に端を発しているな」
欲望って。思わずふきだしてしまう。
「ごめん、リカルド。ちょっと意地悪い言い方した。とりあえず料理はこれまで通り私が担当するよ。私が病気になった時とか、リカルドのごはんどうしようって思ってたから、これだけ料理できるなら大丈夫って安心した」
「よかった! 俺の輝かしい食生活が今後も約束された!」
おおげさなリカルドに笑ってしまう。料理できるのに隠してたこととか、家事の分担とか、ほんとはどうでもいいんだ。私の方が時間の余裕あるし。自分の料理がすごく喜ばれてるのが感じられて、いっぱい作ってあげたくなるし、もっともっとおいしいものを食べさせてあげたいなって思う。リカルドとは、義務がどうこうとかじゃなく、どうしたら相手がもっと喜ぶかをお互いに考え合う関係が築けていて、なんだかとても嬉しい。
「じゃあ、行ってきます! 仕事終わったらソッコーで帰るから、家で待っててね」
「家? 町でごはんなら、現地集合でいいんじゃないの?」
「ええと、ちょっといいお店予約したから、着替えたいんだ」
「ふうん? じゃあ、私も少しおめかしした方がいいかしら?」
「そうしてくれると、俺が嬉しいから、ぜひ!」
「わかった。じゃあ、行ってらっしゃい!」
「あ、ちょっと待って」
「え?」
「これ」
リカルドは折りたたんだ紙を差し出してきた。
「なあに、これ?」
「ええと、午前中は忙しいと思うから、お昼かおやつ休憩の時にでも見て」
「??? わ、わかった」
「じゃ、行ってきます!」
リカルドが跳ねるように職場に向かう。あまりにも楽しそうで、今日は一体誰の誕生日なんだか、と思いながらくすくす笑ってしまう。
少し朝に弱いので状況が把握できず、ぼんやり疑問符を飛ばしていると、リカルドが寝室に戻ってきた。
「あ、おはよう! ジュリエッタ!」
「おはよう、リカルド」
私がそう返すと、リカルドはそっと私を抱き、くちづける。
「お誕生日おめでとう」
「……ありがとう」
こんな風に祝われて迎えた誕生日の朝は初めてで、なんだか照れる。
「ゆっくり眠らせてあげようと思ったんだけど、目が覚めたなら、一緒にごはん食べる?」
「え? ごはんできてるの?」
「うん。作った」
「え!」
料理はずっと私が担当してたから、びっくりした。おいしそうな匂い、それか。
「意外そうな顔」
「リカルド、料理できたんだ」
「そりゃ。何年か一人暮らしだったし、そもそも母ちゃんが亡くなってから、俺が家事担当してたしね」
「知らなかった」
「俺、ジュリエッタの料理が大好きだから、作ってもらうべく、隠してたフシがある」
「知能犯だ!」
「でしょー? 俺には目的のためなら手段を選ばない一面もあるのです」
リカルドがなんだか訳わかんないことを言い出すので、思わず笑ってしまう。
他の家事は協力的なのに、料理に手を出そうとしないのは、できないからだとばっかり思ってた。私が作るのがあたりまえだと思っていたし、それ以外のことをいろいろ気づかってくれるから、作ろうとしなかった理由を聞いても、なんだか微笑ましく、むしろ嬉しく感じてしまう。これは明らかに欲目だ。
「おいしーい……!」
「よかった! ひさしぶりに作ったから、うまくできるかちょっとどきどきしてた」
リカルドの作ってくれた朝食は、意外、と言っては失礼だけど、すごくおいしかった。
「私に料理を作らせるべくこの才能を隠していたのに、ついに明かしたのは、なぜ?」
「その、いつもジュリエッタにごはん作ってもらってるの、すごく嬉しいから、お返しに、と思って」
「才能がバレることで、これから家事分担に料理が入っちゃうかもしれないのに?」
「ええと。別に分担が嫌な訳じゃなくて、わざと料理しないことにちょっと罪悪感もあったし。でも、一番はやっぱり、今日はジュリエッタの日だから、俺にできることを全力で執り行い喜ばせようという欲望に端を発しているな」
欲望って。思わずふきだしてしまう。
「ごめん、リカルド。ちょっと意地悪い言い方した。とりあえず料理はこれまで通り私が担当するよ。私が病気になった時とか、リカルドのごはんどうしようって思ってたから、これだけ料理できるなら大丈夫って安心した」
「よかった! 俺の輝かしい食生活が今後も約束された!」
おおげさなリカルドに笑ってしまう。料理できるのに隠してたこととか、家事の分担とか、ほんとはどうでもいいんだ。私の方が時間の余裕あるし。自分の料理がすごく喜ばれてるのが感じられて、いっぱい作ってあげたくなるし、もっともっとおいしいものを食べさせてあげたいなって思う。リカルドとは、義務がどうこうとかじゃなく、どうしたら相手がもっと喜ぶかをお互いに考え合う関係が築けていて、なんだかとても嬉しい。
「じゃあ、行ってきます! 仕事終わったらソッコーで帰るから、家で待っててね」
「家? 町でごはんなら、現地集合でいいんじゃないの?」
「ええと、ちょっといいお店予約したから、着替えたいんだ」
「ふうん? じゃあ、私も少しおめかしした方がいいかしら?」
「そうしてくれると、俺が嬉しいから、ぜひ!」
「わかった。じゃあ、行ってらっしゃい!」
「あ、ちょっと待って」
「え?」
「これ」
リカルドは折りたたんだ紙を差し出してきた。
「なあに、これ?」
「ええと、午前中は忙しいと思うから、お昼かおやつ休憩の時にでも見て」
「??? わ、わかった」
「じゃ、行ってきます!」
リカルドが跳ねるように職場に向かう。あまりにも楽しそうで、今日は一体誰の誕生日なんだか、と思いながらくすくす笑ってしまう。
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