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本編・取り違えと運命の人
038 夏の嵐 ⑦
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「そんな具合で親父が戻ってきて、いい機会だから俺は独り立ちすることになった訳だ」
「やめてよ、私の町は」
「別に、お前が住んでるから、ここにした訳じゃない。こいつの故郷なんだ、この町」
「え?」
ずっと黙っていた店員さんが、口を開いた。
「……この方が、妹さんなの?」
「そう。ジュリエッタ」
「……初めまして、ギネヴラと申します」
「はじめまして。フラヴィオの妹のジュリエッタです」
おとなしいのか、ギネヴラさんはそのまま黙っている。
「その、兄と一緒にお店を?」
「……はい、パタンナーと縫製を担当しております」
「ギネヴラ? ジュリエッタに言わなきゃなんないのは、そういうことじゃないよねえ?」
フラヴィオがニヤニヤしながらギネヴラさんを見る。
「……その……フラヴィオの…………妻、です」
「え、えええええー?!」
あまりにも予想外で、思わず叫んでしまった。
「うるさいな。店の中だっつうの」
「だ、だって、今までと、全然タイプ違うし!!」
「やっぱり、そうなんですか?」
「その……私が知ってる限りではみんな、背が低めのロングヘアで巨乳の女子力高い派手目な美人」
ちらりとフラヴィオを見ると、ケッとでも言わんばかりの表情。
「もう飽きたんだよ、そういうの」
「あの、後悔してません? フラヴィオにあなたはもったいない!」
そっけない服装だから気づかなかったけど、化粧っ気ないのに目鼻立ち整ってるし、性格もたぶんまとも。フラヴィオ、チャラチャラしてるけど、仕事には厳しいから、技術もかなり持ってるんだろう。
「そ、そんなことは」
「俺もそう思うけど、搦め手で逃げられないようにした」
「なにやったか知らないけど、最低」
「そんなこと言ってくれるなよ。お前、もうすぐ叔母さんになるんだから」
「え……」
「秋には……生まれる予定です」
え、えええええーーーーーーーーーーー!!!!!!!
「おめでたいねえ!」
「なんか、全然処理しきれない。父さんは悪くなくて、母さんと復縁してて、あのフラヴィオが結婚、お相手は綺麗だけど今までと全然タイプ違うし、おまけに子供まで……」
「全部、よかったねえ!」
「よかった、のかな……?」
「よかったよ! いいことしかない!」
これまでとは打って変わって、なんの憂いもないおひさまみたいなにっこにこの笑顔をリカルドは浮かべる。
「とりあえず、ギネヴラさんが産休の間、私が縫製とたまに店番担当することになった」
「忙しくなるね!」
「まあ、気心は知れてるから、なんとかなるとは思うけど、この怒濤の勢い、なんだか嵐が過ぎ去った後みたい」
「なるほど! 台風一過だ!」
リカルドは納得した様子だけど、全く意味がわからない。
「台風、一過?」
「台風が過ぎ去った後って、綺麗に晴れ渡るじゃない。それまでの悪天候なんかまるでなかったみたいに。そんな感じで、ジュリエッタの家族もいろいろあったみたいだけど、またなかよくなってよかったよね!」
「いや、今までも別に仲が悪かった訳では……。でも、『雨降って地固まる』って感じではある」
「あと、タイフウイッカって、小さい頃『台風おとうさんおかあさんこども』のことだと勘違いしてなかった?」
「してた」
「でしょー? やっぱこれ、みんな通る道なんだね! そんなこともついでに思い出して、ちょっとほのぼのした気持ちになった」
「だ、ダジャレ?」
あまりにもくだらなくて、思わず二人で笑った。
「やめてよ、私の町は」
「別に、お前が住んでるから、ここにした訳じゃない。こいつの故郷なんだ、この町」
「え?」
ずっと黙っていた店員さんが、口を開いた。
「……この方が、妹さんなの?」
「そう。ジュリエッタ」
「……初めまして、ギネヴラと申します」
「はじめまして。フラヴィオの妹のジュリエッタです」
おとなしいのか、ギネヴラさんはそのまま黙っている。
「その、兄と一緒にお店を?」
「……はい、パタンナーと縫製を担当しております」
「ギネヴラ? ジュリエッタに言わなきゃなんないのは、そういうことじゃないよねえ?」
フラヴィオがニヤニヤしながらギネヴラさんを見る。
「……その……フラヴィオの…………妻、です」
「え、えええええー?!」
あまりにも予想外で、思わず叫んでしまった。
「うるさいな。店の中だっつうの」
「だ、だって、今までと、全然タイプ違うし!!」
「やっぱり、そうなんですか?」
「その……私が知ってる限りではみんな、背が低めのロングヘアで巨乳の女子力高い派手目な美人」
ちらりとフラヴィオを見ると、ケッとでも言わんばかりの表情。
「もう飽きたんだよ、そういうの」
「あの、後悔してません? フラヴィオにあなたはもったいない!」
そっけない服装だから気づかなかったけど、化粧っ気ないのに目鼻立ち整ってるし、性格もたぶんまとも。フラヴィオ、チャラチャラしてるけど、仕事には厳しいから、技術もかなり持ってるんだろう。
「そ、そんなことは」
「俺もそう思うけど、搦め手で逃げられないようにした」
「なにやったか知らないけど、最低」
「そんなこと言ってくれるなよ。お前、もうすぐ叔母さんになるんだから」
「え……」
「秋には……生まれる予定です」
え、えええええーーーーーーーーーーー!!!!!!!
「おめでたいねえ!」
「なんか、全然処理しきれない。父さんは悪くなくて、母さんと復縁してて、あのフラヴィオが結婚、お相手は綺麗だけど今までと全然タイプ違うし、おまけに子供まで……」
「全部、よかったねえ!」
「よかった、のかな……?」
「よかったよ! いいことしかない!」
これまでとは打って変わって、なんの憂いもないおひさまみたいなにっこにこの笑顔をリカルドは浮かべる。
「とりあえず、ギネヴラさんが産休の間、私が縫製とたまに店番担当することになった」
「忙しくなるね!」
「まあ、気心は知れてるから、なんとかなるとは思うけど、この怒濤の勢い、なんだか嵐が過ぎ去った後みたい」
「なるほど! 台風一過だ!」
リカルドは納得した様子だけど、全く意味がわからない。
「台風、一過?」
「台風が過ぎ去った後って、綺麗に晴れ渡るじゃない。それまでの悪天候なんかまるでなかったみたいに。そんな感じで、ジュリエッタの家族もいろいろあったみたいだけど、またなかよくなってよかったよね!」
「いや、今までも別に仲が悪かった訳では……。でも、『雨降って地固まる』って感じではある」
「あと、タイフウイッカって、小さい頃『台風おとうさんおかあさんこども』のことだと勘違いしてなかった?」
「してた」
「でしょー? やっぱこれ、みんな通る道なんだね! そんなこともついでに思い出して、ちょっとほのぼのした気持ちになった」
「だ、ダジャレ?」
あまりにもくだらなくて、思わず二人で笑った。
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