【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

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本編・取り違えと運命の人

025 騎士の意匠屋さん ②

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 十種ほど作り終えたので、リカルドに見てもらうことにした。

「リカルドの意見をなるべく取り入れてみたつもりだけど、どう?」

 服を見た瞬間、リカルドは瞳を輝かせた。

「うわあ、可愛い! これ、全部すごくいいよ、ジュリエッタ!!」
「それはよかったけど」
「俺の意見を元に作ってくれたのも、すごく嬉しい!」

 ここまで喜んでもらえると思わなかった。

「こちらこそありがとう。明日納品してくるね」
「きっと売れるよ!」

 リカルドの笑顔を見てると、なんだかほんとにうまくいきそうな気持ちになるのが不思議。



 数日後、私は気合いを入れて夕飯を作っていた。

「ただいま、ジュリエッタ! わ、いいにおい! 今日もしかして、ローストビーフ?」

 リカルドが帰宅するなり、嬉しそうに訊ねてきた。

「うん。今日、ローストビーフ」
「やったあ! 俺、ローストビーフ大好き!」
「だから作ったの」
「え?」
「お礼」
「お礼?」
「こないだ納品した服、これまでの最速で完売したの」

 まさかこんなにうまくいくと思ってなかった。リカルドの意見を取り入れた服は、お店に出したその日に三割が売れ、残りも一週間経たないうちに売り切れたんだそう。しかも、女子が自分で選ぶパターンだけでなく、リカルドが言っていたように男性がプレゼントに買っていったパターンも数件あったとのこと。

「同じ服の色違いも作って、大至急、いつもの倍、納品してほしいんだって。こんな依頼されたの初めて」
「へええ! よかったねえ!」
「あと、彼氏から服をプレゼントされた女の子から、オーダーしたいって話も来てるの」
「ジュリエッタの作る服、縫製綺麗だもんねえ」
「リカルドのデザインのおかげだよ」
「デザイン? そんなすごいことしてないよ、俺。ちょこっと自分の好みを伝えただけで」

 リカルドがびっくりしたように言う。

「ううん。リカルドにしてみたら、ちょっとしたことだったのかもしれないけど、私、すごく助けられたの。一人で考えてても、絶対思いつかなかった。あれ、リカルドのデザインだよ」
「えええ!」
「だから、とりあえず、お礼のローストビーフです」
「いろいろ嬉しい!」

 あんまりにもリカルドがにっこにこしているので、私もつられて笑みがもれた。このおひさまみたいな笑顔があれば、なんでも願いが叶っちゃいそうだし、なんでもできそうな気になっちゃうのが不思議。

 それから、私は商品の裏に付けるタグに、リカルドの頭文字のRを追加するようになった。騎士に護られてる証みたいな感覚で。
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