16 / 201
本編・取り違えと運命の人
015 リカルドの誕生祝い ①
しおりを挟む
リカルドがやってきて一か月半ほど経った。
今日は休日で、お昼から町でデートすることになっているんだけど、朝食後、お互いそのままテーブルでのんびりと過ごしている。どちらともなく、なにをするでもなく、ただなんとなく一緒に。それが思いのほか、自然なんだよね。結婚するまで、私は一人でいる時間がないとだめな人間だと思ってたけど、リカルドは一緒にいて、全然苦じゃない。
元気で明るくて子供みたいに表情豊か。それは確かにそうなんだけど、それだけだったら、こんなに居心地よくないんじゃないかな。最初の印象よりもリカルドはいろんな面を持ってる気がしてる。
そこまで考えて、はたと気づいた。
リカルドは会話上手でさりげなくいろいろ訊ねてくるし、意外と察しもいいから、魔法球を使わなくても私のことを既にある程度知っている。
でも、私は口下手でなにから訊ねていいかよくわからないし、今まで彼氏がいたこともないから察しも悪くて、リカルドのことをあまり知らない。
というか、元気とか明るいとかよく笑うとか、浮かぶのは印象ばかりで、情報として知ってることって、実はあんまりない?
そこで、訊ねてみることにした。
「ねえ」
「ん、なに?」
「リカルドの誕生日って、いつ?」
「ええと」
リカルドが告げた日を聞いて、私は思わず立ち上がってどなってしまった。
「ば、ばか!」
だって、その日から、もう、一か月近くも経ってたから。
「ええと、ごめん。そんなに怒ると思ってなくて……」
私の反応にリカルドは困った顔をしてる。
「うう、どなってごめんなさい……。私がもっと早く訊ねればよかった……」
「ええと、その日も、ごはんすごくおいしかったし、その、気持ちよかったし、俺、大満足だったから、それで充分だったんだ」
それを聞いて、思わず涙がこぼれてしまった。
「ジュ、ジュリエッタ! ご、ごめん!! ほんと、俺が悪かったから、泣かないで!!」
あわてて席を立ったリカルドが、あやすように私を抱きしめる。
「ばかぁ……ばか、ばか、ちゃんとお祝いしたかったのに……!」
「うん、ごめん。俺が悪かった。ほんと、反省してる!」
「リ、リカルド……ごめんー!!」
あまりに悔しくて、情けなくて、リカルドに強く抱きつく。
考えたらわかるじゃない。リカルドなら、誕生日なんて、訊ねられるまで言う訳ないって。人のためになにかするばっかりで、なにかしてもらうなんて考えない人だから。
どうして今まで訊ねようとしなかったんだろう。確かに今まで彼氏がいたことはなかったし、イベントごとにも興味がないとはいえ、大切な伴侶なのに。自分にひどくむかついた。やだ、もう、なんでこんなひどいことしちゃったんだろう。しかも、そんな私を、リカルドはあたりまえのように許してくれたばかりでなく、自分が悪かったとまで言って……。リカルドが優しければ優しいほど、自分の思いやりのなさがつらくなった。
「今日!」
リカルドの顔を見上げ、叫ぶように宣言する。
「きょ、今日?」
「お祝いするから! 一か月遅れた分、盛大に!!」
きっと、私は今、涙と鼻水でひどい顔してる。けど、そんなことはどうでもいい。痛恨の失敗したけど、そのままにするなんて、絶対に絶対に嫌だ!
「そ、そんな、無理しなくていいよ。ほんと、ジュリエッタと毎日過ごせることだけで、俺、充分満足してるし……」
リカルドがそんな風に言うのが、なんだか無性に許せなくて、思わず叫んでしまう。
「私には、リカルドの誕生日をお祝いする権利がある! それを奪わないでよ!!」
もうなにを言ってるんだか、自分でもよくわからない。ひどい目に合わせておいて、更に責めてるし、私。でも、このままお祝いしなかったら、絶対、私はこれからずっと後悔すると思った。
リカルドは苦笑しながら、私の涙を指でぬぐう。
「ええと、俺、ジュリエッタに気をつかわせたくなくて誕生日言わなかったんだけど、かえってひどいことしたんだね。ごめん。その、今日、お祝いしてくれる?」
「……うん!!」
私のために祝われることを決めてくれた、リカルドの優しさが、とても沁みた。
今日は休日で、お昼から町でデートすることになっているんだけど、朝食後、お互いそのままテーブルでのんびりと過ごしている。どちらともなく、なにをするでもなく、ただなんとなく一緒に。それが思いのほか、自然なんだよね。結婚するまで、私は一人でいる時間がないとだめな人間だと思ってたけど、リカルドは一緒にいて、全然苦じゃない。
元気で明るくて子供みたいに表情豊か。それは確かにそうなんだけど、それだけだったら、こんなに居心地よくないんじゃないかな。最初の印象よりもリカルドはいろんな面を持ってる気がしてる。
そこまで考えて、はたと気づいた。
リカルドは会話上手でさりげなくいろいろ訊ねてくるし、意外と察しもいいから、魔法球を使わなくても私のことを既にある程度知っている。
でも、私は口下手でなにから訊ねていいかよくわからないし、今まで彼氏がいたこともないから察しも悪くて、リカルドのことをあまり知らない。
というか、元気とか明るいとかよく笑うとか、浮かぶのは印象ばかりで、情報として知ってることって、実はあんまりない?
そこで、訊ねてみることにした。
「ねえ」
「ん、なに?」
「リカルドの誕生日って、いつ?」
「ええと」
リカルドが告げた日を聞いて、私は思わず立ち上がってどなってしまった。
「ば、ばか!」
だって、その日から、もう、一か月近くも経ってたから。
「ええと、ごめん。そんなに怒ると思ってなくて……」
私の反応にリカルドは困った顔をしてる。
「うう、どなってごめんなさい……。私がもっと早く訊ねればよかった……」
「ええと、その日も、ごはんすごくおいしかったし、その、気持ちよかったし、俺、大満足だったから、それで充分だったんだ」
それを聞いて、思わず涙がこぼれてしまった。
「ジュ、ジュリエッタ! ご、ごめん!! ほんと、俺が悪かったから、泣かないで!!」
あわてて席を立ったリカルドが、あやすように私を抱きしめる。
「ばかぁ……ばか、ばか、ちゃんとお祝いしたかったのに……!」
「うん、ごめん。俺が悪かった。ほんと、反省してる!」
「リ、リカルド……ごめんー!!」
あまりに悔しくて、情けなくて、リカルドに強く抱きつく。
考えたらわかるじゃない。リカルドなら、誕生日なんて、訊ねられるまで言う訳ないって。人のためになにかするばっかりで、なにかしてもらうなんて考えない人だから。
どうして今まで訊ねようとしなかったんだろう。確かに今まで彼氏がいたことはなかったし、イベントごとにも興味がないとはいえ、大切な伴侶なのに。自分にひどくむかついた。やだ、もう、なんでこんなひどいことしちゃったんだろう。しかも、そんな私を、リカルドはあたりまえのように許してくれたばかりでなく、自分が悪かったとまで言って……。リカルドが優しければ優しいほど、自分の思いやりのなさがつらくなった。
「今日!」
リカルドの顔を見上げ、叫ぶように宣言する。
「きょ、今日?」
「お祝いするから! 一か月遅れた分、盛大に!!」
きっと、私は今、涙と鼻水でひどい顔してる。けど、そんなことはどうでもいい。痛恨の失敗したけど、そのままにするなんて、絶対に絶対に嫌だ!
「そ、そんな、無理しなくていいよ。ほんと、ジュリエッタと毎日過ごせることだけで、俺、充分満足してるし……」
リカルドがそんな風に言うのが、なんだか無性に許せなくて、思わず叫んでしまう。
「私には、リカルドの誕生日をお祝いする権利がある! それを奪わないでよ!!」
もうなにを言ってるんだか、自分でもよくわからない。ひどい目に合わせておいて、更に責めてるし、私。でも、このままお祝いしなかったら、絶対、私はこれからずっと後悔すると思った。
リカルドは苦笑しながら、私の涙を指でぬぐう。
「ええと、俺、ジュリエッタに気をつかわせたくなくて誕生日言わなかったんだけど、かえってひどいことしたんだね。ごめん。その、今日、お祝いしてくれる?」
「……うん!!」
私のために祝われることを決めてくれた、リカルドの優しさが、とても沁みた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる