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第25話 第三十八回リバラルティア最優秀テイマー決定戦 三回戦
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「カイル選手。そろそろ三回戦が開始されますので、移動をお願いします」
控室に戻って二回戦の突破を喜び合っていると、一分も経たないうちに運営委員が呼びに来た。
「えっ、もうですか?」
「はい。二回戦第二試合が一瞬で終わってしまったので」
「……そうですか、分かりました」
俺達は言われた通り、部屋を出て選手用の通路に向かう。
その道中、頭上で飛んでいるフィルが口を開いた。
『どうやらかなりの強敵のようだな。気を抜くなよ』
確かに……。この早さからすると、試合が始まって数十秒で決着が付いたってことだもんな。
それも二回戦を勝ち上がってきている相手に対して。
『もちろんです! 今日の試合はこれで最後ですし、私達も全力でいきましょう!』
『そうだな。幸いなことに、これまで我らはほとんど力を出さずに済んだ。次は出し惜しみすることなく、全ての力を出して臨むとしよう』
『ああ! 頑張ろう!』
今日はまだ、切り札である炎を一度も吐いてないんだ。
多少相手が強くても何とかなるはず!
「これより第一グループの三回戦を行いますっ! 先に登場するのは本大会の注目株、初出場でありながら見事ここまで勝ち上がってきた――カイル・ルースター選手っ!」
「これで今日は最後の試合だ! みんな、行くよ!」
『おう!』
『はい!』
『ああ』
通路を抜け、舞台に上がった瞬間、観客席中から歓声が立ち上った。
「カイルー! みんなーっ! 頑張ってーっ!」
「ここが正念場だ! 気合い入れろーっ!」
「絶対に負けんなーっ!」
右からカイルの両親、左からボンズの声援が届く。
「お兄さーん、頑張ってねーっ! ほら、みんなも!」
「「「「が、頑張れー」」」」
それに加えて聞こえたのは、先ほど戦った美少女とロリコンどもの声。
あの女の子も応援してくれているのか。
ロリコンどもは別として、みんなの期待を背負ってるんだ。絶対に勝たないとな。
「みんな……。うん、ありがとう!」
カイルはその場をグルグル回りながら、声援に対して両手を振った。
「対しますのは、王国の平和を守る麗しき騎士っ! リバラルティア警護団所属――ティア・タトニス選手っ!」
「あの人は!」
『あ、あの時の!』
反対側の通路から現れたのは、銀色の鎧に身を包んだ金髪の美女。
その足元には尻尾が二本生えていたり、隻眼だったり、目が六つあったりと、それぞれ特徴の異なる猫の姿がある。
この人、前に俺が森で火事を起こした時に助けてくれた人だ!
「おや、君は前にどこかで」
「はい! 森で助けて頂いた者です」
「森――ああ、思い出したぞっ! ゴブリンキングを駆除してくれた少年だな! こんなところで再会するとは奇遇だな」
『お久しぶりですー。あなたも出場していたのですねー』
『あん時のちっこいドラゴンか。しばらくだな』
『お変わりないようで何よりです』
『ええ、そちらこそ!』
『お知り合いですか?』
『ああ、こいつはな――』
『う、うん、知り合いだよ、エリノア! 前にお世話になったんだ!』
失礼だとは分かりつつも、隻眼の猫の話を遮らせてもらった。
あの時のドジはエリノアとフィルには知られたくない……。
特にフィルに知られたら、どれだけバカにされるか分かったものじゃないからな……。
『しかし、リバラルティア警護団のテイマーと従魔が出場してくるとはな』
『んー? まあ、色々あるんですよー』
『そうか。大方の見当は付くが、まあいい。アイズ、こっちへ来い』
俺は言われた通り、フィルの元に駆け寄った。
『さて、どいつを狙う?』
『あ、そのことすっかり忘れてた! えーっと、あの尻尾が二本生えている猫、あいつは水の魔法を使うんだ。俺の炎が通用しないと思うから、まずはその猫から削りたい』
『うむ、承知した』
『分かりました!』
「それでは少年、お互い正々堂々と戦おう!」
「はい!」
「両者共、気合い十分の様子! 第一グループを勝ち抜けるのは、果たしてどちらなのでしょうかっ! それでは、第一グループ三回戦っ! 開始っ!」
よし、行くぞ!
俺は一目散に駆け出し、二本の尻尾が生えている猫に迫った。
その勢いのまま、腕を大きく横に払う。
が、後ろに飛び退かれてしまい、鉤爪は虚しく空を切った。
ただそれは想定内。俺は単なる陽動だ!
直後、俺は横に飛び退き、エリノアとフィルの魔法が直撃するのを待つ。
しかし、それから数秒が経っても、氷柱と風の刃が飛んでくることはなかった。
どうしたのかと二匹のほうに目をやると、フィルは隻眼の猫、エリノアは目が六つある猫とそれぞれ応戦している。
くっ! 俺と入れ替わるように、向こうも飛び出してきていたのか。
『余所見していていいんですかー』
のんびりとした声にハッとなって振り返ると、猫の左手が目の前に伸びてきていた。
『――ぐぅっ!』
額の部分に強い衝撃を感じたと共に足が地面から離れる。
ひと呼吸置いて、吹き飛ばされていることに気付いた俺は身体を捻って両足で着地した。
な、なんつー威力だ。ただの猫パンチじゃないぞ……。
『どんどん行きますよー』
猫がそう口にした瞬間、足元から間欠泉のように水がぶわっと噴き出してきて、俺は空中に放り出された。
その後、地面から噴き出た水はフッと消え去り、代わりに上空から勢い良く水が噴出してくる。
『――うぁっ』
それによって地面に思いっきり叩きつけられ、身体中に激痛が走った。
「あ、アイズっ!」
『だ、大丈夫だ……』
俺は痛みをこらえて起き上がり、カイルの心配そうな声に対して背中越しに答えた。
『うぅっ!』
『ぬぅっ……!』
「エリノアっ! フィルっ!」
直後、背後からエリノアとフィルの唸り声とカイルの叫び声が聞こえる。
二匹とも押されているんだろう。
無事を確認したいけど、あの猫から目を離す訳にはいかない。
他の二匹はエリノアとフィルに何とか頑張ってもらって、俺はまずあいつを倒すことに集中しないと……。
そんなことを考えていると、尻尾を二本生やした猫は一瞬で距離を詰めてきた。
『えーい』
ゆったりとした口調とは裏腹に、物凄いスピードで顔に肉球が迫ってくる。
その猫パンチを俺は上半身を後ろに反らすことでかわし、そのまま後転して距離を取った。
『おおー、良く避けましたねー』
『それはどうもっ!』
言いながら俺は地面を蹴り、間合いを詰めてから横に縦にと腕を振るう。
しかし、いずれも簡単にかわされてしまい、お返しとばかりにパンチが飛んできた。
ギリギリのところで反応して鉤爪で受け止めると、衝撃により後ろへ押し出されてしまう。
同時に足元から水が発生した。
――ま、まずい!
俺は即座に横へ飛び込み、地面に身体を強く打ちながらも魔法から逃れた。
くっ、強すぎだろあの猫!
まだ一撃も浴びせられてないぞ。
何とかして攻撃を当てなければならないけど、正面からぶつかっても簡単にかわされるだけだしな……。
こ、こうなったらダメもとで!
『あっ!』
俺は猫の後方を指差しつつ、大きく声を発した。
『んー?』
すると猫はそれに釣られて、顔をゆっくりと後ろに向ける。
その瞬間、俺は踏み込んで猫に全力で鉤爪を叩きつけた。
しかし、腕に伝わったのは地面の硬い感触。
『ぐっ!』
さらに腹部に強い衝撃を覚えた。
『ふー。危なかったですー』
言ってくれるぜ……。
後ろに目が付いているかのように、簡単に避けたくせに。
流石にあんな子供だましの方法じゃ出し抜けないか。
なら次は!
俺は走りながら息を思いっきり吸い、猫の目の前まで近づいたところで息を吐いた。
それにより、口から噴出された炎が猫に向かって伸びていく。
『それー』
けれども、炎は瞬間的に表れた水泡に阻まれ、猫に直撃する前にジュッっと音を立てて消え去ってしまった。
『――がはっ』
同時に胸の辺りに激痛が走る。
うう……。後、一回でもあの猫パンチを喰らったら下手したら死ぬかも……。
まあ、あの猫に限って殺しはしないだろうけど。
いや、そんなことよりどうする。
子供だましはともかく、至近距離での炎でさえもまるで通用しなかったぞ。
一体どうしろってんだ!
くそっ、マタタビでもあれば猫なんて――ん? ちょっと待てよ。
猫ってことは!
……よし、試してみるか。
俺はすっかりと飾りになってしまっていた自分の尻尾を手に取り、猫じゃらしに見立ててゆらゆらと揺らしてみた。
『――はっ!』
その瞬間、二本の尻尾を生やした猫は一目散に俺の元へ駆け寄ってきた。
何だか、今までとはまるで雰囲気が違って見える。
これはもしや!
俺は真っ直ぐに向かってきた猫に向け、再度炎を吐いた。
驚いたことにその炎は直撃し、猫の身体が燃え上がる。
『熱っ! ま、まずいですねっ』
直後、猫は自分の真上に水泡を発現させ、破裂させることで水を被って火を消した。
――今ならっ!
間合いに入って腕を大きく横に振った。
『ギャッ!』
消火に気を取られていたのか、今度は避けられずに鉤爪がクリティカルヒット。
猫の身体に痛々しい三本の引っ掻き傷が残り、ひと呼吸おいた後、その場にバタっと倒れた。
俺はその上に跨り、首元に鉤爪の先をそっと当たる。
『や、やるですねー。分かりました、降参ですー』
よし、二尾の猫は倒したぞっ!
エリノアとフィルの加勢に行かないと――って、その必要はないみたいだな。
二匹のほうへ視線をやると、それぞれの足元に二匹の猫が倒れていた。
「ティア選手の従魔のうち、二匹が戦闘不能、一匹が棄権により、第一グループ三回戦はカイル選手の勝利っ! 見事、第一グループを勝ち抜いたのはカイル・ルースター選手ですっ! 皆様、大きな拍手を!」
勝った……。よし、勝ったぞ! これで三回戦突破だ!
控室に戻って二回戦の突破を喜び合っていると、一分も経たないうちに運営委員が呼びに来た。
「えっ、もうですか?」
「はい。二回戦第二試合が一瞬で終わってしまったので」
「……そうですか、分かりました」
俺達は言われた通り、部屋を出て選手用の通路に向かう。
その道中、頭上で飛んでいるフィルが口を開いた。
『どうやらかなりの強敵のようだな。気を抜くなよ』
確かに……。この早さからすると、試合が始まって数十秒で決着が付いたってことだもんな。
それも二回戦を勝ち上がってきている相手に対して。
『もちろんです! 今日の試合はこれで最後ですし、私達も全力でいきましょう!』
『そうだな。幸いなことに、これまで我らはほとんど力を出さずに済んだ。次は出し惜しみすることなく、全ての力を出して臨むとしよう』
『ああ! 頑張ろう!』
今日はまだ、切り札である炎を一度も吐いてないんだ。
多少相手が強くても何とかなるはず!
「これより第一グループの三回戦を行いますっ! 先に登場するのは本大会の注目株、初出場でありながら見事ここまで勝ち上がってきた――カイル・ルースター選手っ!」
「これで今日は最後の試合だ! みんな、行くよ!」
『おう!』
『はい!』
『ああ』
通路を抜け、舞台に上がった瞬間、観客席中から歓声が立ち上った。
「カイルー! みんなーっ! 頑張ってーっ!」
「ここが正念場だ! 気合い入れろーっ!」
「絶対に負けんなーっ!」
右からカイルの両親、左からボンズの声援が届く。
「お兄さーん、頑張ってねーっ! ほら、みんなも!」
「「「「が、頑張れー」」」」
それに加えて聞こえたのは、先ほど戦った美少女とロリコンどもの声。
あの女の子も応援してくれているのか。
ロリコンどもは別として、みんなの期待を背負ってるんだ。絶対に勝たないとな。
「みんな……。うん、ありがとう!」
カイルはその場をグルグル回りながら、声援に対して両手を振った。
「対しますのは、王国の平和を守る麗しき騎士っ! リバラルティア警護団所属――ティア・タトニス選手っ!」
「あの人は!」
『あ、あの時の!』
反対側の通路から現れたのは、銀色の鎧に身を包んだ金髪の美女。
その足元には尻尾が二本生えていたり、隻眼だったり、目が六つあったりと、それぞれ特徴の異なる猫の姿がある。
この人、前に俺が森で火事を起こした時に助けてくれた人だ!
「おや、君は前にどこかで」
「はい! 森で助けて頂いた者です」
「森――ああ、思い出したぞっ! ゴブリンキングを駆除してくれた少年だな! こんなところで再会するとは奇遇だな」
『お久しぶりですー。あなたも出場していたのですねー』
『あん時のちっこいドラゴンか。しばらくだな』
『お変わりないようで何よりです』
『ええ、そちらこそ!』
『お知り合いですか?』
『ああ、こいつはな――』
『う、うん、知り合いだよ、エリノア! 前にお世話になったんだ!』
失礼だとは分かりつつも、隻眼の猫の話を遮らせてもらった。
あの時のドジはエリノアとフィルには知られたくない……。
特にフィルに知られたら、どれだけバカにされるか分かったものじゃないからな……。
『しかし、リバラルティア警護団のテイマーと従魔が出場してくるとはな』
『んー? まあ、色々あるんですよー』
『そうか。大方の見当は付くが、まあいい。アイズ、こっちへ来い』
俺は言われた通り、フィルの元に駆け寄った。
『さて、どいつを狙う?』
『あ、そのことすっかり忘れてた! えーっと、あの尻尾が二本生えている猫、あいつは水の魔法を使うんだ。俺の炎が通用しないと思うから、まずはその猫から削りたい』
『うむ、承知した』
『分かりました!』
「それでは少年、お互い正々堂々と戦おう!」
「はい!」
「両者共、気合い十分の様子! 第一グループを勝ち抜けるのは、果たしてどちらなのでしょうかっ! それでは、第一グループ三回戦っ! 開始っ!」
よし、行くぞ!
俺は一目散に駆け出し、二本の尻尾が生えている猫に迫った。
その勢いのまま、腕を大きく横に払う。
が、後ろに飛び退かれてしまい、鉤爪は虚しく空を切った。
ただそれは想定内。俺は単なる陽動だ!
直後、俺は横に飛び退き、エリノアとフィルの魔法が直撃するのを待つ。
しかし、それから数秒が経っても、氷柱と風の刃が飛んでくることはなかった。
どうしたのかと二匹のほうに目をやると、フィルは隻眼の猫、エリノアは目が六つある猫とそれぞれ応戦している。
くっ! 俺と入れ替わるように、向こうも飛び出してきていたのか。
『余所見していていいんですかー』
のんびりとした声にハッとなって振り返ると、猫の左手が目の前に伸びてきていた。
『――ぐぅっ!』
額の部分に強い衝撃を感じたと共に足が地面から離れる。
ひと呼吸置いて、吹き飛ばされていることに気付いた俺は身体を捻って両足で着地した。
な、なんつー威力だ。ただの猫パンチじゃないぞ……。
『どんどん行きますよー』
猫がそう口にした瞬間、足元から間欠泉のように水がぶわっと噴き出してきて、俺は空中に放り出された。
その後、地面から噴き出た水はフッと消え去り、代わりに上空から勢い良く水が噴出してくる。
『――うぁっ』
それによって地面に思いっきり叩きつけられ、身体中に激痛が走った。
「あ、アイズっ!」
『だ、大丈夫だ……』
俺は痛みをこらえて起き上がり、カイルの心配そうな声に対して背中越しに答えた。
『うぅっ!』
『ぬぅっ……!』
「エリノアっ! フィルっ!」
直後、背後からエリノアとフィルの唸り声とカイルの叫び声が聞こえる。
二匹とも押されているんだろう。
無事を確認したいけど、あの猫から目を離す訳にはいかない。
他の二匹はエリノアとフィルに何とか頑張ってもらって、俺はまずあいつを倒すことに集中しないと……。
そんなことを考えていると、尻尾を二本生やした猫は一瞬で距離を詰めてきた。
『えーい』
ゆったりとした口調とは裏腹に、物凄いスピードで顔に肉球が迫ってくる。
その猫パンチを俺は上半身を後ろに反らすことでかわし、そのまま後転して距離を取った。
『おおー、良く避けましたねー』
『それはどうもっ!』
言いながら俺は地面を蹴り、間合いを詰めてから横に縦にと腕を振るう。
しかし、いずれも簡単にかわされてしまい、お返しとばかりにパンチが飛んできた。
ギリギリのところで反応して鉤爪で受け止めると、衝撃により後ろへ押し出されてしまう。
同時に足元から水が発生した。
――ま、まずい!
俺は即座に横へ飛び込み、地面に身体を強く打ちながらも魔法から逃れた。
くっ、強すぎだろあの猫!
まだ一撃も浴びせられてないぞ。
何とかして攻撃を当てなければならないけど、正面からぶつかっても簡単にかわされるだけだしな……。
こ、こうなったらダメもとで!
『あっ!』
俺は猫の後方を指差しつつ、大きく声を発した。
『んー?』
すると猫はそれに釣られて、顔をゆっくりと後ろに向ける。
その瞬間、俺は踏み込んで猫に全力で鉤爪を叩きつけた。
しかし、腕に伝わったのは地面の硬い感触。
『ぐっ!』
さらに腹部に強い衝撃を覚えた。
『ふー。危なかったですー』
言ってくれるぜ……。
後ろに目が付いているかのように、簡単に避けたくせに。
流石にあんな子供だましの方法じゃ出し抜けないか。
なら次は!
俺は走りながら息を思いっきり吸い、猫の目の前まで近づいたところで息を吐いた。
それにより、口から噴出された炎が猫に向かって伸びていく。
『それー』
けれども、炎は瞬間的に表れた水泡に阻まれ、猫に直撃する前にジュッっと音を立てて消え去ってしまった。
『――がはっ』
同時に胸の辺りに激痛が走る。
うう……。後、一回でもあの猫パンチを喰らったら下手したら死ぬかも……。
まあ、あの猫に限って殺しはしないだろうけど。
いや、そんなことよりどうする。
子供だましはともかく、至近距離での炎でさえもまるで通用しなかったぞ。
一体どうしろってんだ!
くそっ、マタタビでもあれば猫なんて――ん? ちょっと待てよ。
猫ってことは!
……よし、試してみるか。
俺はすっかりと飾りになってしまっていた自分の尻尾を手に取り、猫じゃらしに見立ててゆらゆらと揺らしてみた。
『――はっ!』
その瞬間、二本の尻尾を生やした猫は一目散に俺の元へ駆け寄ってきた。
何だか、今までとはまるで雰囲気が違って見える。
これはもしや!
俺は真っ直ぐに向かってきた猫に向け、再度炎を吐いた。
驚いたことにその炎は直撃し、猫の身体が燃え上がる。
『熱っ! ま、まずいですねっ』
直後、猫は自分の真上に水泡を発現させ、破裂させることで水を被って火を消した。
――今ならっ!
間合いに入って腕を大きく横に振った。
『ギャッ!』
消火に気を取られていたのか、今度は避けられずに鉤爪がクリティカルヒット。
猫の身体に痛々しい三本の引っ掻き傷が残り、ひと呼吸おいた後、その場にバタっと倒れた。
俺はその上に跨り、首元に鉤爪の先をそっと当たる。
『や、やるですねー。分かりました、降参ですー』
よし、二尾の猫は倒したぞっ!
エリノアとフィルの加勢に行かないと――って、その必要はないみたいだな。
二匹のほうへ視線をやると、それぞれの足元に二匹の猫が倒れていた。
「ティア選手の従魔のうち、二匹が戦闘不能、一匹が棄権により、第一グループ三回戦はカイル選手の勝利っ! 見事、第一グループを勝ち抜いたのはカイル・ルースター選手ですっ! 皆様、大きな拍手を!」
勝った……。よし、勝ったぞ! これで三回戦突破だ!
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