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第14話 白い狼
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城下町を発ってから早二十日。
「おお、アイズやるね! 僕なんてまだ二つしか見つけてないのに、そんなに沢山! それマジックバックに入れといてくれる?」
『おう!』
俺は言われた通り、そこら中で拾ったまん丸の石を地面に置かれている四角く底のない箱の中に落とす。
しかし、これで本当にリリのところの倉庫に届いているんだろうか。
カイルが言うには魔法によって転送されるらしいけど、そんな物が存在するなんて今でも信じられない。
まあ、魔法が存在するこの世界でこんなことを考えるのも野暮だけど。
「ありがとねアイズ! そろそろ日も暮れてきたし、今日はここら辺で休もうか」
カイルはそう言いながら、巨大なバックパックから畳まれた布を取り出し地面に広げた。
その上に腰を下ろすと、次は棒状の食べ物を取り出し俺に手渡してくる。
『ありがとう』
俺はその食べ物を一口で食すと、あっという間に満腹になった。
いやー、食べる度に思うけどこの食料本当に凄いな。
いわゆる栄養食品みたいなものなんだろうけど、地球の物より遥かに満足度が高い。
リリも良い物を用意してくれたもんだ。
カイルは俺が食べ終えたのを見て、自身も棒状の食べ物を口にした。
俺のと全く同じ物のように見えるけど、あれは人間用で俺が食べた魔物用とは味や成分が異なるらしい。
「ふぅ、ご馳走様でした。それじゃあアイズ、僕はもう寝るね。アイズも早く寝るんだよ」
『ああ、おやすみカイル』
いつも通り、カイルはバックパックを枕代わりにして横になると、すぐに眠りに落ちた。
よし、じゃあ今日も特訓するか。
俺は首から紐でぶら下がっている鉤爪を腕に装着し、カイルと少しだけ離れてからシャドーボクシングを開始した。
トーナメントで優勝するためにも頑張らないとな。
そうして数十分間、ひたすら虚空に向かって身体を動かし続けた後、次に俺は空中に向かって三回炎を吐いた。
直後、もう一度炎を吐こうと試みるも、その後は何も出ない。
ヴァルムさんが言っていた通り、俺には三回が限度のようだ。
今日も四回目は無理だったか。やっぱり魔力は鍛えても身に付かないのかな。
まあ、まだ二十日目だ。
無駄じゃないと信じて、これからも続けよう。
……にしても、旅に出てからもう二十日が経ったのか。
かなり歩いたつもりだけど、テイムどころか魔物とすらあまり遭遇しなかったな。
珍しく出会ったでかいカエルやハチは打ち負かした瞬間、カイルがテイムを試みる間もなく逃げていってしまったし。
この調子で仲間が集まるんだろうか……。
ま、なるようになるか! よし、俺もそろそろ寝よう。
明日はカイルがテイム出来ますように――
☆
「――イズ。アイズ起きて! そろそろ行くよ!」
ん……? あぁ、もう朝か。よっこいしょっと。
「おはよう、アイズ! さあ、今日も素材集め頑張ろう!」
何か素材集めが主な目的になってないか……?
いや、リリとの約束のためにも頑張るべきではあるけども。
まあ、とにかく行くとするか。
俺とカイルはこれまで通り南側に向かって、ひたすら広がる草原を歩き始めた。
そうして石や草など、正直武器を作るのにどうして必要なのか分からない素材を拾い集めながら進むこと数時間が経った頃、
「ん? あっ、アイズ、あれ!」
カイルが何かに気付いたような声を上げた。
差された指の先を目を凝らして見てみると、そこには真っ白な小型犬が横たわっている。
側まで駆け寄ると、こちらに気付いたようで顔だけこちらに向けてきた。
これはシベリアン・ハスキーか?
何か見るからに弱っているけど、怪我をしている訳ではないな。
どうしたんだろう。
「この狼、ちょっと痩せ過ぎな気が……。あっ、もしかしたらお腹が空いているから動けないのかも」
犬じゃなくて、狼だったか。
確かに言われてみれば、あばら骨が少し浮き出ているっぽいな。
そうと分かれば。
俺はカイルの袖を引っ張り、こちらに注意を向けた後、両手を口に近づけてモグモグと動かした。
「そうだね。食べてくれるか分からないけど、ご飯をあげてみようか」
カイルはバッグを降ろし、中から棒状の食べ物を取り出した。
「クゥ……」
すると、狼は弱々しく声を上げ、カイルが手に持っている餌をジッと見ている。
やっぱり空腹が原因だったみたいだな。
カイルが包みを剥がして餌を地面に置くと、その狼はゆっくりと起き上がって餌を食べだした。
「良かった、食べてくれたよ」
そうだな、これで元気になれば……待てよ。
これはもしや、テイム出来るんじゃないか?
そう感じた俺はカイルのバッグを漁り、中から銀色のリングを取り出してカイルに手渡した。
「ん? もしかしてテイムしろってこと?」
カイルの問いかけに対し、俺は何度も頷くことでテイムすることを促す。
「うーん。でも、こんな恩を着せるような形でテイムするのは悪いよ。偶然倒れていたところを助けただけだし」
えっ!? 俺の時は弓で撃ってきたくせに!?
……まあ、カイルがそう言うのなら仕方ないか。
「それじゃあ少しだけどご飯を置いていくから、お腹が空いたら食べるんだよ」
カイルはそう言いながら、バッグの中から五つほど棒状の餌を取り出し、白い狼の目の前に置いた。
それに対し、餌を食べ終えた狼は置いた餌ではなく、カイルの顔をジッと見ている。
「さて、もう元気になったみたいだし、僕達はそろそろ行こうか。じゃあね」
カイルはバッグを背負い、先に歩き出した。
俺もその後を追いかけ、素材を拾い集めつつ南に進む。
そんなこんなで数十分が過ぎた頃、カイルは立ち止まって口を開いた。
「あのさ、アイズ」
『ん?』
「あれ、多分僕達に付いてきてるよね……?」
『だな』
俺は頷いてから後ろに振り返ると、数メートル先に棒状の食べ物を包みのままくわえた白い狼が座っている。
カイルはその狼の元に歩み寄り、声を掛けた。
「どうしたの? もっとご飯が欲しいとか? って、伝わってないよね」
狼はその問いかけに対し、首をかしげた。
確かにリングを付けてないから、何を言っているのか分かってないんだろうな。
でも本当にどうしたんだろう。置いていった餌を食べずにくわえているし、餌の催促ではないように思えるけど。
あっ、もしかしたら餌をあげたから懐かれたんじゃないか?
それなら絶好のテイムチャンスだぞ。
『カイル!』
「ん? どうしたのアイズ?」
こちらに視線を向けさせた後、俺は自分の右足に付いているリングを指差した。
「リング……? あっ、確かにリングを付ければ伝わるよね、流石アイズ! まだ僕の魔力を込めていないリングもあるし、それを付けてみよっか。それならテイムにはならないし」
『お、おう!』
俺が伝えたかったのとは別の捉え方をされてしまったけど、まあいいか。
っていうか、リングを付ける=テイムだと思ってたけど、そうじゃないんだな。知らなかった。
カイルはバッグの中から銀色のリングを取り出し、狼の左前足を持ち上げてくぐらせた。
すると、そのリングは足に合わせて縮まり、ピッタリとフィットする。
ただ俺の時とは異なり、謎の文字は浮かび上がっていない。
これが魔力が込められているかどうかの違いなのか?
『わあ、凄い! 自動的に縮まりました!』
おっ。これで俺とも話せるようになったな。
声からして、この狼はメスか。
「どう? 僕の言っていること分かるかな?」
『はい! 本当に人間の言葉が分かるようになるんですね!』
狼はそう言いながら、首を縦に振った。
「伝わってるみたいだね。それでどうしたの? もっとご飯が欲しいの?」
『いえ、そうじゃありません』
次は首を横に振って、否定を示している。
「違うってことか。じゃあなんだろう」
『あの、私をテイムしてほしいんです! けど、伝わりませんよね……』
顎に手を当てて考え込んでいるカイルに対し、狼はそう口にした。
ただ当然伝わる訳もなく、カイルは「うーん」と頭を悩ませている。
『やっぱり懐いてたんだな! そういうことなら俺が伝えるよ!』
『あ、ドラゴンさんは私の言っていることが分かるんですね! って、リングを付けているんだから当たり前ですよね、えへへ。はい、そうしてもらえると嬉しいです!』
『任せとけ! おーい、カイルー』
再びカイルを呼び、顔をこちらに向けさせる。
そして右手で狼の右足前を握り、その状態で上下に動かす。
「握手……。握手ってことは、仲良しとか友達とかってことかな?」
俺は頷いた後、俺のリングと狼のリングを交互に指差した。
「次はリングだね。友達とリングってことは……仲間? もしかして、テイムしてくれって言ってるとか?」
『はい、その通りです!』
狼は嬉しそうに何度も頷く。
その様子を見たカイルは一瞬顔が明るくなったものの、すぐに真面目な顔つきになってしまった。
あれ、どうしたんだろう? 念願のテイムが出来るのに。
「気持ちは凄く嬉しいんだけど、僕、契約の魔法を使えないんだ……」
ああ、そういうことか。
魔物は自分にメリットがあるからテイムされる訳で、カイルはそのメリットを与えてあげられないんだから、それを聞いたらこの狼も――
『別に契約はなくて大丈夫ですよ! 懐きテイムでしたっけ? それでいいです』
『えっ、ほんとに?』
『はいっ!』
やった!
カイル、俺みたいな変わり者がここにも居たぞ!
「それでも良いなら喜んでテイムしたいんだけど、それを聞いたらやっぱり嫌だよね?」
狼は首を横に振る。
「――えっ? 嫌じゃないの? ってことはまさか、僕に懐きテイムされてくれるってこと……?」
『はい!』
『だってよ、カイル! 良かったな!』
狼と俺は頷くことで正解だということを伝えた。
その直後、カイルに笑顔が戻る。
「やった、ありがとう! それじゃあリングに僕の魔力を込めるね!」
カイルはそう言いながら、狼の左前足に付いているリングに手を触れた。
すると、俺のと同じように謎の文字がリングに浮かび上がる。
「これでテイム完了だ! 早速名前を付けないと! うーん、どんなのがいいかな」
名前かぁ。
そういえば、この世界の動物もとい魔物は知能が高いみたいだし、親から名前を付けてもらってそうだけど。
聞いておくか。
『既に名前があるんじゃないのか?』
『ありますよ。でもテイムされたら、新しく名前を付けてもらうのが決まりじゃないですか』
そうだったのか。
まだまだ知らないことばかりだな。
「よし、君はエリノアだ! これからよろしくね、エリノア。あっ、僕はカイルだよ」
『はい、とっても素敵な名前をありがとうございます! こちらこそよろしくお願いします、カイルさん』
エリノアだな。
うん、由来は分からないけど、女の子っぽくてピッタリだ。
『俺はアイズ。エリノア、これからよろしく!』
『こちらこそ!』
「アイズも挨拶が済んだみたいだね。じゃあ僕達がしていること、これからすることを説明しとくね。えっと僕達は――」
カイルは俺とリバラルティア王国から来たこと、トーナメントに出場して優勝を目指していること、今は仲間探し兼リリの依頼で素材を集めていることを伝えた。
『大体分かりました! 私も素材集め頑張りますね!』
『おう! 今は丸い石とこの草を集めてるから、それを拾ってくれると助かるよ』
『石と草ですね、了解です』
俺達は新たな仲間を加えて、再び歩みを進めた。
「おお、アイズやるね! 僕なんてまだ二つしか見つけてないのに、そんなに沢山! それマジックバックに入れといてくれる?」
『おう!』
俺は言われた通り、そこら中で拾ったまん丸の石を地面に置かれている四角く底のない箱の中に落とす。
しかし、これで本当にリリのところの倉庫に届いているんだろうか。
カイルが言うには魔法によって転送されるらしいけど、そんな物が存在するなんて今でも信じられない。
まあ、魔法が存在するこの世界でこんなことを考えるのも野暮だけど。
「ありがとねアイズ! そろそろ日も暮れてきたし、今日はここら辺で休もうか」
カイルはそう言いながら、巨大なバックパックから畳まれた布を取り出し地面に広げた。
その上に腰を下ろすと、次は棒状の食べ物を取り出し俺に手渡してくる。
『ありがとう』
俺はその食べ物を一口で食すと、あっという間に満腹になった。
いやー、食べる度に思うけどこの食料本当に凄いな。
いわゆる栄養食品みたいなものなんだろうけど、地球の物より遥かに満足度が高い。
リリも良い物を用意してくれたもんだ。
カイルは俺が食べ終えたのを見て、自身も棒状の食べ物を口にした。
俺のと全く同じ物のように見えるけど、あれは人間用で俺が食べた魔物用とは味や成分が異なるらしい。
「ふぅ、ご馳走様でした。それじゃあアイズ、僕はもう寝るね。アイズも早く寝るんだよ」
『ああ、おやすみカイル』
いつも通り、カイルはバックパックを枕代わりにして横になると、すぐに眠りに落ちた。
よし、じゃあ今日も特訓するか。
俺は首から紐でぶら下がっている鉤爪を腕に装着し、カイルと少しだけ離れてからシャドーボクシングを開始した。
トーナメントで優勝するためにも頑張らないとな。
そうして数十分間、ひたすら虚空に向かって身体を動かし続けた後、次に俺は空中に向かって三回炎を吐いた。
直後、もう一度炎を吐こうと試みるも、その後は何も出ない。
ヴァルムさんが言っていた通り、俺には三回が限度のようだ。
今日も四回目は無理だったか。やっぱり魔力は鍛えても身に付かないのかな。
まあ、まだ二十日目だ。
無駄じゃないと信じて、これからも続けよう。
……にしても、旅に出てからもう二十日が経ったのか。
かなり歩いたつもりだけど、テイムどころか魔物とすらあまり遭遇しなかったな。
珍しく出会ったでかいカエルやハチは打ち負かした瞬間、カイルがテイムを試みる間もなく逃げていってしまったし。
この調子で仲間が集まるんだろうか……。
ま、なるようになるか! よし、俺もそろそろ寝よう。
明日はカイルがテイム出来ますように――
☆
「――イズ。アイズ起きて! そろそろ行くよ!」
ん……? あぁ、もう朝か。よっこいしょっと。
「おはよう、アイズ! さあ、今日も素材集め頑張ろう!」
何か素材集めが主な目的になってないか……?
いや、リリとの約束のためにも頑張るべきではあるけども。
まあ、とにかく行くとするか。
俺とカイルはこれまで通り南側に向かって、ひたすら広がる草原を歩き始めた。
そうして石や草など、正直武器を作るのにどうして必要なのか分からない素材を拾い集めながら進むこと数時間が経った頃、
「ん? あっ、アイズ、あれ!」
カイルが何かに気付いたような声を上げた。
差された指の先を目を凝らして見てみると、そこには真っ白な小型犬が横たわっている。
側まで駆け寄ると、こちらに気付いたようで顔だけこちらに向けてきた。
これはシベリアン・ハスキーか?
何か見るからに弱っているけど、怪我をしている訳ではないな。
どうしたんだろう。
「この狼、ちょっと痩せ過ぎな気が……。あっ、もしかしたらお腹が空いているから動けないのかも」
犬じゃなくて、狼だったか。
確かに言われてみれば、あばら骨が少し浮き出ているっぽいな。
そうと分かれば。
俺はカイルの袖を引っ張り、こちらに注意を向けた後、両手を口に近づけてモグモグと動かした。
「そうだね。食べてくれるか分からないけど、ご飯をあげてみようか」
カイルはバッグを降ろし、中から棒状の食べ物を取り出した。
「クゥ……」
すると、狼は弱々しく声を上げ、カイルが手に持っている餌をジッと見ている。
やっぱり空腹が原因だったみたいだな。
カイルが包みを剥がして餌を地面に置くと、その狼はゆっくりと起き上がって餌を食べだした。
「良かった、食べてくれたよ」
そうだな、これで元気になれば……待てよ。
これはもしや、テイム出来るんじゃないか?
そう感じた俺はカイルのバッグを漁り、中から銀色のリングを取り出してカイルに手渡した。
「ん? もしかしてテイムしろってこと?」
カイルの問いかけに対し、俺は何度も頷くことでテイムすることを促す。
「うーん。でも、こんな恩を着せるような形でテイムするのは悪いよ。偶然倒れていたところを助けただけだし」
えっ!? 俺の時は弓で撃ってきたくせに!?
……まあ、カイルがそう言うのなら仕方ないか。
「それじゃあ少しだけどご飯を置いていくから、お腹が空いたら食べるんだよ」
カイルはそう言いながら、バッグの中から五つほど棒状の餌を取り出し、白い狼の目の前に置いた。
それに対し、餌を食べ終えた狼は置いた餌ではなく、カイルの顔をジッと見ている。
「さて、もう元気になったみたいだし、僕達はそろそろ行こうか。じゃあね」
カイルはバッグを背負い、先に歩き出した。
俺もその後を追いかけ、素材を拾い集めつつ南に進む。
そんなこんなで数十分が過ぎた頃、カイルは立ち止まって口を開いた。
「あのさ、アイズ」
『ん?』
「あれ、多分僕達に付いてきてるよね……?」
『だな』
俺は頷いてから後ろに振り返ると、数メートル先に棒状の食べ物を包みのままくわえた白い狼が座っている。
カイルはその狼の元に歩み寄り、声を掛けた。
「どうしたの? もっとご飯が欲しいとか? って、伝わってないよね」
狼はその問いかけに対し、首をかしげた。
確かにリングを付けてないから、何を言っているのか分かってないんだろうな。
でも本当にどうしたんだろう。置いていった餌を食べずにくわえているし、餌の催促ではないように思えるけど。
あっ、もしかしたら餌をあげたから懐かれたんじゃないか?
それなら絶好のテイムチャンスだぞ。
『カイル!』
「ん? どうしたのアイズ?」
こちらに視線を向けさせた後、俺は自分の右足に付いているリングを指差した。
「リング……? あっ、確かにリングを付ければ伝わるよね、流石アイズ! まだ僕の魔力を込めていないリングもあるし、それを付けてみよっか。それならテイムにはならないし」
『お、おう!』
俺が伝えたかったのとは別の捉え方をされてしまったけど、まあいいか。
っていうか、リングを付ける=テイムだと思ってたけど、そうじゃないんだな。知らなかった。
カイルはバッグの中から銀色のリングを取り出し、狼の左前足を持ち上げてくぐらせた。
すると、そのリングは足に合わせて縮まり、ピッタリとフィットする。
ただ俺の時とは異なり、謎の文字は浮かび上がっていない。
これが魔力が込められているかどうかの違いなのか?
『わあ、凄い! 自動的に縮まりました!』
おっ。これで俺とも話せるようになったな。
声からして、この狼はメスか。
「どう? 僕の言っていること分かるかな?」
『はい! 本当に人間の言葉が分かるようになるんですね!』
狼はそう言いながら、首を縦に振った。
「伝わってるみたいだね。それでどうしたの? もっとご飯が欲しいの?」
『いえ、そうじゃありません』
次は首を横に振って、否定を示している。
「違うってことか。じゃあなんだろう」
『あの、私をテイムしてほしいんです! けど、伝わりませんよね……』
顎に手を当てて考え込んでいるカイルに対し、狼はそう口にした。
ただ当然伝わる訳もなく、カイルは「うーん」と頭を悩ませている。
『やっぱり懐いてたんだな! そういうことなら俺が伝えるよ!』
『あ、ドラゴンさんは私の言っていることが分かるんですね! って、リングを付けているんだから当たり前ですよね、えへへ。はい、そうしてもらえると嬉しいです!』
『任せとけ! おーい、カイルー』
再びカイルを呼び、顔をこちらに向けさせる。
そして右手で狼の右足前を握り、その状態で上下に動かす。
「握手……。握手ってことは、仲良しとか友達とかってことかな?」
俺は頷いた後、俺のリングと狼のリングを交互に指差した。
「次はリングだね。友達とリングってことは……仲間? もしかして、テイムしてくれって言ってるとか?」
『はい、その通りです!』
狼は嬉しそうに何度も頷く。
その様子を見たカイルは一瞬顔が明るくなったものの、すぐに真面目な顔つきになってしまった。
あれ、どうしたんだろう? 念願のテイムが出来るのに。
「気持ちは凄く嬉しいんだけど、僕、契約の魔法を使えないんだ……」
ああ、そういうことか。
魔物は自分にメリットがあるからテイムされる訳で、カイルはそのメリットを与えてあげられないんだから、それを聞いたらこの狼も――
『別に契約はなくて大丈夫ですよ! 懐きテイムでしたっけ? それでいいです』
『えっ、ほんとに?』
『はいっ!』
やった!
カイル、俺みたいな変わり者がここにも居たぞ!
「それでも良いなら喜んでテイムしたいんだけど、それを聞いたらやっぱり嫌だよね?」
狼は首を横に振る。
「――えっ? 嫌じゃないの? ってことはまさか、僕に懐きテイムされてくれるってこと……?」
『はい!』
『だってよ、カイル! 良かったな!』
狼と俺は頷くことで正解だということを伝えた。
その直後、カイルに笑顔が戻る。
「やった、ありがとう! それじゃあリングに僕の魔力を込めるね!」
カイルはそう言いながら、狼の左前足に付いているリングに手を触れた。
すると、俺のと同じように謎の文字がリングに浮かび上がる。
「これでテイム完了だ! 早速名前を付けないと! うーん、どんなのがいいかな」
名前かぁ。
そういえば、この世界の動物もとい魔物は知能が高いみたいだし、親から名前を付けてもらってそうだけど。
聞いておくか。
『既に名前があるんじゃないのか?』
『ありますよ。でもテイムされたら、新しく名前を付けてもらうのが決まりじゃないですか』
そうだったのか。
まだまだ知らないことばかりだな。
「よし、君はエリノアだ! これからよろしくね、エリノア。あっ、僕はカイルだよ」
『はい、とっても素敵な名前をありがとうございます! こちらこそよろしくお願いします、カイルさん』
エリノアだな。
うん、由来は分からないけど、女の子っぽくてピッタリだ。
『俺はアイズ。エリノア、これからよろしく!』
『こちらこそ!』
「アイズも挨拶が済んだみたいだね。じゃあ僕達がしていること、これからすることを説明しとくね。えっと僕達は――」
カイルは俺とリバラルティア王国から来たこと、トーナメントに出場して優勝を目指していること、今は仲間探し兼リリの依頼で素材を集めていることを伝えた。
『大体分かりました! 私も素材集め頑張りますね!』
『おう! 今は丸い石とこの草を集めてるから、それを拾ってくれると助かるよ』
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目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
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