ドラゴンに転生したら少年にテイムされました 〜心優しいマスターの夢を叶えるため、仲間と共に戦います〜

白水廉

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第6話 お買い物

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「じゃあ行ってきます! 父さん、母さん!」
『行ってきまーす』
「はい、行ってらっしゃい!」
「気を付けてなー!」

 カイルの両親に見送られながら、俺とカイルは家を出た。
 今日の予定は俺の武器の買い物と道場の申し込みだ。

「よし、着いた。ここだよ」

 家を出てからニ十分ほど経った頃だろうか、カイルは周囲よりも一回り大きい建物の前で足を止めた。
 顔を上げると、獣の牙を描いた大きな看板が目に入る。

 武器屋といったらなんとなく剣をイメージするけど、この世界では牙なんだな。
 まあ、基本的に魔物が戦うみたいだし、剣より牙のほうが適切なのか。

 カイルが入口の扉を押し開けると、チリンチリンと鈴が俺達を歓迎してくれる。

「いらっしゃい! 今日は何をお探し――って、カイルじゃない! こんなところにどうしたの?」

 驚いたことに、俺達を出迎えてくれたのは昨日会った少女――リリだった。

「こんにちは、リリ。今日はアイズの武器を買いに来たんだ。鉤爪なんてどうかなって思ってるんだけど」

 リリは武器屋の娘だったのか。
 明るくて可愛らしいし、まさに看板娘だな。
 そういやピピ・モモ・ポポの姿が見えないけど、別のところに居るんだろうか。

「なるほどね! 確かにアイズ君が使うのなら鉤爪が一番良さそう! じゃあこっちに来て」

 言われるがままリリの後を付いていくと、大小さまざまな鉤爪が棚と壁に飾られていた。
 これは凄いな。鉤爪一つでもこんなに種類があるのか。

「うーん、アイズ君にピッタリな物はっと……。うん、これなんてどうかな!」

 リリは籠手の先に三本の爪が付けられた小柄な鉤爪を手に取った。

「それならアイズでも付けられそうだね。試着させてもらってもいいかな?」
「もちろん!」

 カイルが俺を肩から降ろすと、リリがその鉤爪を装着させてくれた。
 試しに腕を振ってみると見事にフィットしているようで、まるで自分の手であるかのように振り回せる。
 思ったよりもかなり軽いし、腕の部分にある紐のお陰で全くずれないし、これ良いな。
 この爪さえあれば倒せるかどうかは別として、相手にダメージを負わせること位は出来そうだ。

「使い心地はどう、アイズ?」

 カイルの質問に首を縦に振ることで答える。

「良かった! それでリリ、これってお値段はどのくらいかな?」
「えっと、これは――」
「おっ、お客さんかと思ったらカイルか。どうしたんだい、こんなちんけな店に」

 店の奥から現れた、スキンヘッドで厳つい男性がリリの話を遮ってきた。

「あっ、お父さん! 丁度いいところに!」
「お邪魔してます、おじさん。今日はこの子の鉤爪を買いに来ました」

 リリのお父さんだったか。まさに武器屋のオヤジそのものだな。

「んっ? そいつは一体?」
「一昨日テイムしたんです!」
「そうかい! とうとうカイルもテイム出来たんだな! こいつはめでたい!」
「でしょー! それでね、お祝いとして安くしてあげてほしいんだけど、どれ位だったらいい? 半額?」
「うーん……」

 娘からの問いかけに、リリのお父さんは腕を組んで考えている。
 確かに難しいところだよな。いくら娘の友達といっても商売は商売だし。

「よし! それは俺からのプレゼントだ。代金はいらないから持っていきな!」

 おおー! このオヤジさん気前がいいな。

「さすがお父さん! よっ、太っ腹!」
「えっ、それは流石に……」
「若造が遠慮なんてするもんじゃないぞ。なあ、あんちゃん」

 ……あんちゃんって俺のことか?
 まあ、こんなに立派な物をタダでって言われたらそりゃ遠慮するのが当然だけど、相手が良いって言ってるんだ。
 ここは素直に受け取らないと、逆に気を悪くさせてしまうってもんだし、ここはありがたく受け取らせてもらうべきだな。

『そうだそうだ!』
「ほら、チビもこう言ってるぞ」
「おじさん……。本当にありがとうございます!」

 カイルは深く頭を下げた後、俺から鉤爪を外して自身のバッグへ入れた。

「良いってことよ! そうだ、リリ。店はもう良いから、カイルと遊びにでも行って来たらどうだ?」
「ほんとっ!? ありがとうお父さん! って訳で、カイル。どう、カフェでも行かない?」
「うん、行く行く!」

 おいおい、道場に行くのはどうなったんだ……。
 でも二人とも嬉しそうだし、とても邪魔は出来ないな。まあ、道場は明日でもいいか。

「決まりね! じゃあお父さん、行ってくるね!」
「おじさん、ありがとうございました!」
「おう! 行ってきな!」

 カイルは俺を肩に乗せて、リリと一緒に店を出た。
 リリのお父さん、本当に良い人だったな。俺もこの鉤爪大事にしないと。

「あっ、アイズ君も居ることだし、モモ達も一緒にいい?」
「もちろん! アイズもそれでいい?」
『おう!』
「良かった! なら、まずはピピ達を迎えに行きましょ!」

 カイルの肩で揺られながらぼんやりと街並みを眺めていること数分、ガレージのような大きな建物の前で二人は立ち止まった。
 リリは手慣れた様子でシャッターを開けると、ピピ・モモ・ポポの三匹の姿と散乱した武器の数々が目に入る。

『あら、リリ。まだお昼だけど、どうしたの?』
「みんなお疲れ様、今日はもうお仕事終わり。カフェに行きましょ。あっ、それと明日から六日間、私とお父さんは仕事で街を離れるからみんなは休みよ。良い子にお留守番しててね」
『やった……! お休み……!』
『そいつは嬉しいねぇ。久々にゆっくり出来そうだ』

 モモは両手に担いでいた木箱を降ろし、仕事終わりのサラリーマンであるかの如く、大きく肩を回していた。
 三匹ともここで武器屋の手伝いをしているのか。
 見たところ物流系の仕事を任されているみたいだな。

『あらっ、カイルとアイズも居るじゃない』

 俺とカイルに気付いた三匹がこちらに駆け寄ってくる。

 その後、それぞれ挨拶を交わした俺達は建物を出てカフェへと向かった。
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