ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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本命(ウケ)と浮気相手(タチ)とその彼氏(ウケ)と宅飲みなんて泥酔覚悟で飲むしかない②

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「あーっ、はやとっ……ごめ、ぁ、出していい……? はやと……」

 けれど。
 限界が近いのに俺がまだ出しちゃダメって言うのを律儀に守って、腰を止める水泡を間近に見るとゾクゾクした。
 腰止めようとしてるのに我慢しきれてなくて、ゆるゆると動いちゃってる。俺の中でいっぱい気持ちよくなって、出したくてたまんなくなって、もう俺の中に出すことしか考えられない。
 苦しそうに細めた目で、ぼんやりと自分を見上げる俺を見つめ、頭に籠った熱を吐き出すみたいに熱くて深い息を何度も吐いて。
 色っぽくて、少し情けなくて、可愛くて、愛しい。
 顎に汗が伝って落ちる。それが降ってきて、過剰に肌が反応してしまうと、水泡は焦って俺からちんぽを引き抜こうとした。
 だめ、逃がさない。
 痙攣する太ももをなんとか持ち上げ、腰に両足を絡ませ抱き寄せる。

「抜くなよ……だめ……」
「ん……じゃあ、もう出すよ……?」
「あっ、耳元、や……」
「はやとの、中出し期待してきゅうきゅうしてくるこの可愛いまんこに、いーっぱい……出したい」
「はぁぁあ……!」

 やらしい言葉で求められ、囁かれて、全身震え上がって胸が跳ねる。
 ああ、やっぱり違う。
 射精に意味が無いなんてそんなこと全然ない。
 だって俺自身がこんなに求めてる。水泡の精子がほしくてほしくてほしくてどうにかなりそうになる。
 奥が熱くなってドロドロになる。出される前からぐちゃぐちゃになってしまう。それくらい求めてる。

「あ、あ、出して……ぇ! ほしい、水泡のせーし、ほしい、ほしいよぉ……! ほしぃぃっ」
「あー……ほんと、かわい」

 下唇の上に乗った舌をぺろりと舐められて、舌先同士を二人で上下左右に揺らして擦り合わせながら、ピストンが再開される。
 舌先を甘やかされながらでっけぇちんぽが中を激しく擦り上げてくる。ダメになっちゃうとこ全部押しつぶされて、揺すられて、怖いくらいの快感が駆け巡る。
 怖い。脳みそてっぺんから引きずり出されそう。イクって言うけどさ、それ以上に本当にどっか上に上にいっちゃう感じ。
 その脳にくるエグい刺激とぐちゃぐちゃに熱くなったケツん中のせいで、意識が上下に引っ張られるような、宙に浮くような、ヤバい感じがして腕も足も必死に水泡にしがみつく。そうしないと自分の形を保っていられない。

「うっわ、まんこの締まりやっば……出る、もう出すよ、出るっ出るっ……!」
「ゔっ、お、おおッ、ちんぽしゅごいぃ、はひっ、おっき、おっきぃ、おっ、ちんぽドクッてぇ、ちんぽうごいてりゅっ」
「うん、うん、出るから、出すからねっ……」

 俺の頭を囲うようにベッドに両腕をついて、物理的にも上へとずり上がっていた俺の身体を押さえつけながら深くまで突き入れる。身体の真ん中でグポンッて音がして、息が止まる。
 あ、あ、あ、あ。
 もう目の前は真っ白になってるのに、狭いS字を何度もグポグポ揺すられてる。音の度に心臓が止まってる気がする。
 そして中で水泡のちんぽの下あたりがドクドクとしてるのがわかって、奥がじんわりとして、それを塗りつけるみたいにぐるりと腰を回して亀頭を肉壁に押し付けられて。
 その熱で心臓がまた動き出す。
 目の前には、目を瞑って、中身からっぽになった男の顔がある。全部俺にくれたから、今はもう、何もない。
 力も全部抜けてからっぽの筈なのに、暫くして目が開いたら、その瞳からはもう愛情が溢れてる。
 微笑んで、愛おしそうに口元を緩ませて、俺を見てる。ゆっくりと瞬きをしながら。
 俺も。
 俺もこんな風に、玲児を愛せたら。
 おかしいな。俺が玲児を想う気持ちの方がずっと強いはずなのに。
 こうやって抱かれて見つめられていると負けた気分になる。玲児は俺とセックスしてもこんな満たされた気持ちになれないんじゃないかな。
 身体を弄られて強制的に感情めちゃくちゃになった後は、どうしてたって情緒が安定しない。ストレートに泣きそうになる。

「はやと?」

 やや瞳孔を小さくして目を大きくした、何かに気がついたような顔をした水泡に名前を呼ばれた。悟られないようになんともない顔をして無言で小首を傾げる。

「むっとした、顔……してる。物足りなかった?」
「はぁ……?」
「満足した?」

 頷こうと顎の先を少しばかり揺らして、やめる。
 満足したってなんだよ。満足。満足?
 すっげぇ気持ちよかったのは確かだけど。悩むくらい満ち足りてますけど。でも完璧ではない。

「らぶ……」
「うん? はは、あー、うん。ラブだね」

 よしよしされる。なんかムカつく。

「ラブじゃねぇーよ、ばぁか……ラブやだ」
「君が、言ったのに」
「言ってねぇよ」
「言った。かわいいよ?」
「玲児とは愛してるって言い合いながらセックスしたよ。この間」

 それなのに、お前とするより足りない。
 俺の頭を撫でていた優しい手の動きがピタリと止まる。暖かかった手が、一瞬で石のように固く冷たくなってしまったのが髪の毛越しに伝わる。
 その手に力が籠り、骨に指先からの圧を感じ始めると、ずらした視線がますます戻せなくなった。
 やば。ちょっと気に入らないから言ってみただけなのに。また変な嫉妬向けられて一晩中犯されるかも。やだな。もっと身体が壊れる。もっと足りなくなる。
 しかし俺の不安とは裏腹に挿入されっぱなしだったぶっといナマコみたいなチンポはズルンと抜けていった。萎えてるくせに存在感ありすぎる。

「あぁっ……や、うう、言ってから抜けよデカすぎて変な感じすんだよ、ばかぁ……っ」
「セックス、できたんだ?」
「したよ」

 できた、と言う言葉に違和感があったので、意図的に言い直す。すると頭の上で固まっていた手がまた動き始める。酷いことするためじゃなくて、俺を撫でるために。

「もう抱けないから抱いてって、股開いたの?」

 しかし手つきは優しいのに、その言葉や声は刺々しい。しかも鋭利なのに肉感のある生々しい硬さの棘。金属より、植物のような。それを俺の喉に刺してくるようだった。

「ハァ? お前何言ってんの?」

 痛かった、声を出すのがつらいほど痛かったけど、正しい反応ができた。
 水泡は俺を見てハッとしたようで、気まずそうに唇を固く結ぶ。

「……ごめん。嫌味……だ」
「マジ最悪」
「ごめん」
「知らねーよ、シャワー浴びてくる。ついてくんなよ」
「隼人、待ってほしい」
「やなこった」

 撫でる手を振り払い、鉛のように重い肩を起こし、逃げるようにベッドを後にする――。

「あっ」

 そのはずだったが、急に目の前が揺れる。
 片足を下ろした時にベッドから片膝が滑り落ち、そのまま膝から床へ崩れ落ちていく。
 ガクンと落ちる視界、重くてコントロールの効かない体、しかしダメだ落ちると諦めた時、それを全て支えてくれる長い腕に後ろから守られる。
 ぐっと強い力で引き寄せられ、そのまま抱き寄せられた。
 もう一度、あ、と声が漏れる。そして心臓がバクバクと高鳴りを始めた。

「ごめんね」

 助けてくれた左腕に右腕が重なって、両腕で抱きしめられる。こんなにくっついたらビビってんのバレちまう。

「怒ってて、いい。でもね……ちゃんと、綺麗にしてあげたい。一緒にいこう?」

 水泡に寄りかかってズルズルと身体を沈めていって、胸のあたりを抱いていた腕の中に顔の下半分を埋める。そうして無言で首を横に振った。

「怖かった? もう少し、休もうか」

 まだ、首を横に振る。

「シャワー、する?」

 また、首を横に振る。

「どうしたい?」

 別にどうもしたくない。

「お前が…………なんか、いい感じのこと言ったらそれする」
「むずかしい」
「俺怒ってんの」
「あー……そう、だよね。そっか…………困った」

 弦を弾くような、細いけれどよく通る声。
 しかし「困った」の一言は弱々しく落ちていき、シーツに染み込んでいく。
 そのまま部屋は静まり返ってしまい、意識すると隣の部屋の喘ぎ声が壁の向こうに微かに聞こえてきた。女の声だ。俺の低い声も聞こえてるだろうなと思ったらますます顔が水泡の腕の中に沈んでしまう。
 女の「アッアッ」と鳴く声を遠くに聞きながら、膝を立てて太腿をぴったりと閉じた俺の足に二人揃って視線を向けている。ただ二人の目の前にあるからという理由で。

「お腹、すいた?」

 ああ空いてるよ。すげー空いてる。
 でも返事はしない。返事してないのに、水泡はゆっくり、何度も無言を繰り返しながら、話しかけてくる。

 ごめんね、僕がすぐにえっちしたいって言ったから。
 お腹空くと、隼人、機嫌悪くなるね。可愛いね。
 チキン、食べるの?
 食べる前に、やっぱり、綺麗にしよう。
 洗ってあげる。
 抱っこでお風呂、行こう。
 抱っこして、部屋の中ぐるっとしようか。

 ずっとずっと、そうやって話しかけてくる。俺なんも返事しないのに。首も振らないし、顔も向けないのに。聞いてるうちに水泡の声まで遠くにあるみたいに聞こえてきた。ガラス一枚隔てたような感じだ。
 なんとなく不安になって、腕から顔を抜き出して、頭越しに上を見る。
 すると水泡の目尻がふっと下がって、笑うんだ。

「お前さ、俺に甘すぎなんじゃね? 俺もお前にとっちゃ嫌なこと言ったろ」
「でも、元を辿れば……それは愛おしいものだから」
「なにがだよ」
「いや……」

 言葉としてもらえなくても本当はわかる。
 その見る目や手が、態度が語ってる。
 ううん、見つめ合わなくても、触れ合わなくても、水泡がそばにいるだけで、その気配を感じるだけで、わかる。
 お前が俺のことどう想ってるのか。
 悔しい。よくわかんねぇけど、悔しい。胸がざわつく。
 俺はもっと玲児を愛してるし、水泡ももっと出雲を愛してる。
 こんなに悔しいのは、負けた気がするのは、何に対してなんだろう。

「全部……」
「全部?」
「やんなくていーから。お前がだらっだら悩んで話してるうちに回復したわ。シャワー行ってくる」

 腕から完全に抜けて、崩していた体勢を整えて一息つく。見なくても背後からは戸惑いの空気が流れてる。つまんねぇって顔したいのに、それが面白くて口角が自然と上がりそうになるのを頬の裏を噛んで堪えた。

「えっ…………そこは……全部やれよ、じゃ……ないの?」
「はぁ? だーめだよ。お前喜んじゃうじゃん。失言した奴にご褒美あげてどうすんだよ」
「えっと……」

 ちらりと、横目に見る。小首傾げて狼狽えてる。
 面白いので振り返って、水泡の前に両手をつき、少し屈んで上目遣いに見つめてやった。ほら、思った通り釘付けだ。

「俺のこと抱っこして部屋一周して、そのまま風呂場行って俺の体洗って中まで綺麗にして、そのあと飯食わせて?」
「……うん!」
「ほら、どんだけ喜んでんだよ! めっちゃ笑うじゃん! ドMかよ!」

 ほわっと……風が草木をゆらすみたいに。
 そんな子供みたいな邪気のない顔して頷きやがるから、鼻つまんで左右に顔面振ったあと、トドメのデコピンを食らわせた。
 自分でも鼻つまんで額さすって目を丸くしてる姿にハッと笑って、さっき崩れ落ちそうになったのが嘘みたいな身のこなしでひょいと立ち上がる。

「あー? 俺もしかして、結局ご褒美あげちゃったか?」
「そう……かも」
「まぁいい子で待ってろよ」
「……さっきまでぐちゃぐちゃだったくせに、そんな風にされると…………君はなんでそんなに、僕を困らせるの」
「知らねーけど」

 額さすってんだか頭抱えてんだか、手のひらで額と八の字に下がった眉毛を隠して狼狽える頬をペチペチと叩いてその場を後にする。
 いつも平坦な水泡を乱してやっていくらか胸がすっきりとする。
 はい、俺の勝ち。
 何に勝ったんだよって感じだけど。



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