ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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メス堕ちさせた元タチへの愛のあるセックスの教え方⑪

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「みなわ……」
「うん?」
「俺といるのも苦しい?」

 口元を肩にくっつけたせいで声がこもっている。腕にしがみついたままで、たまに額を擦り寄せてきて。そんな様子を可愛いなと眺めていたら、返事のない僕を気にしてチラリと目線だけこちらに向けてきた。
 置いてあったものを全部持ってきたのかと疑うほどに皿に重なって山盛りに積まれた蟹の足を一本とって、切れ込みにそって殻を割りながら中の身を慎重に抜いていく……が、細長い殻の奥に引っかかった身が少し残ってしまった。

「俺より下手じゃん」
「あーん……」
「あー」

 沈んでた顎が上に向いて、大きく開いた口を素直に向けられる。下唇に乗った迎え舌がいやらしく、妙な気分になりそうなのを堪えて蟹を食べさせる。とりあえずこれで当初の目的は果たせたので満足である。

「たくさん、食べな」

 眼鏡があるせいで表情がいつもより読みづらいが、斜めにズレていたのを直してあげたら少しマシになった。
 見えた表情眺めていると……もくもくと口を動かし始めた時は目が真ん丸になって輝いたが、次第に口を動かしながらも唇は尖って、眉間にはしわが寄って、気難しい顔になってしまった。面白いのでまた口に蟹を突っ込むと同じように最初は美味しさにハッとするが、また首を傾げてる。愉快だな。愉快だけどこの感じ、不思議と既視感がある。

「……何だよ」
「ほら、蟹」
「食うけどそうじゃなくて」
「ん……なんか、瑞生も……そんな感じの顔、するなって。一緒にいると似るのかなって、考えてた……でも、いつもの君は別に……似てない」
「お前玲児のこと可愛いなって見てたのかよ?! 死ね!」
「え? ん? 思ってない」

 普段口が悪くても“死ね”とか言わないのに。ひどいな。瑞生のこと可愛いって思ってたらこんなにストレートに殺意を向けられるのか。それより今のって、どういう。
 少し考えて、ハッとする。自分が瑞生と似てるのが瑞生が可愛いと同義だということはつまり。

「君、自分のこと可愛いって思うようになっちゃったの?」

 僕が可愛い可愛い言い続けた賜物か。

「は? なってねーし」

 違ったらしい。

「でもいま」
「お前の顔見たらわかんだよ、こいつ俺のこと可愛いーとかきしょいこと思ってんなって。デレデレ鼻の下伸ばしてるから」
「え……ほんと? やだな」
「そんな顔でジロジロ見られる方がやだっつーのー。天ぷら喰らえぇっ」
「むぐ」

 大振りな上に厚切りなサツマイモの天ぷらを半分ほど口に押し込まれる。美味しいけど口の中の水分を全て持っていかれてしまい、これは辛い。しかも「もっと食えー」てゆるく言いながらさらに押し込んでくる。本当に殺意を向けられているのかもしれない。

「へへへ、みなわ苦しそー」

 なんで君は嬉しそうなんだ。
 なんとか咀嚼を終え、隼人のビールを拝借して流し込みつつ喉を潤す。
 コラ、喉仏を触るんじゃない、むせてしまうじゃないか。しかし今まさに飲んでいるからこんな文句も言えない。
 結局中ジョッキは空にしてしまい、口元を拭いながら恨めしげに隼人を横目に見やる。
 蟹食べてる最中によくモリモリとカレーを食べられるな。さらにカレーの合間に天ぷら食べてる。今度は……その流し込んでるのはお茶漬けだろうか。見てるだけでゲップが出そうだ。僕なんて君にもらった蟹と天ぷらでもう腹具合はいい感じになりつつあるのに。
 でも。
 ちょっと気持ち悪いくらい食べると思ってしまったが、膨らんだほっぺただけでも可愛いのに、その頬をほんのり桃色に染めて、目を大きく開けたり細めたりしながら美味しそうに食べてる姿は可愛い、いや、愛おしかった。
 どんなに辛い幼少期を過ごしたのだろうと思っていたが、美味しいごはんという楽しみがあったのか。よかった。うん、本当によかった。
 しかし、何事にも関心の薄い隼人が食に対しては貪欲な理由と繋がるのかと思ったら、胸の真ん中あたりがきゅっと痛くなった。

「で…………なんで可愛い顔、してたの?」

 お茶漬けの入っていたお椀を下げるのを待って聞いてみる。

「んー? 可愛い顔とかしてねーし……でも、蟹で誤魔化されてんじゃんってムカついてた」
「おいしいとムカつくの間で、揺れてたんだね」
「けっ……あ、ビール無ぇ! 日本酒よこせ」
「どうぞ」

 グラスを抜いたあとの升を渡すと両手で受け取ったあと角に口をつけようとするので、そっと手に触れて静止する。

「角から飲まないよって、前に教えたよ?」
「んだよぉ……お前酒だけは飲み方うるせぇーよな」
「そう?」
「んー……グラスの方ちょうだい」

 升は返され、グラスが目の前を横切る。隼人はグラスでちびちびと日本酒を舐めながら、升のふちに口をつける僕をじっと見てる。それが正しい飲み方かと観察されているのだろうか。そう思ってしまったら意味もなく背筋が伸びる気がしていた、のに。

「俺はぁ……水泡といると、気持ちいいよ?」

 急にこんなこと言うものだから吹き出しそうになった。食事処にきてからずーっとこの子のペースで困ったな。

「君さ…………気持ちいいって、ちょっと」
「水泡といると身体ん中まで撫でられてるみたいで気持ちいい……奥の方まであったかくなる」
「それ……どう受け取るのが、正しいの?」
「んー?」
「んー?」

 隼人が首を傾げるのに合わせて首を傾げる。
 さっきつけたキスマークが白熱灯の下に晒される。興奮していたので濃くつけてしまったみたいだ、とても目立つ。

「へへへ……」
「楽しそうだね」
「一緒に首傾げてる、へへ、うける」
「おもしろいね」
「ちょーラブラブカップルにしか見えねぇなぁこれはぁ……」
「そうかな」
「見えねぇもん」

 小さなデザートがたくさん盛られたお皿から、一口サイズのシュークリームをとって食べさせられる。噛めばなめらかなクリームが生地の外へ溢れ、口内はカスタードの甘さに満たされる。

「だからお前も今は気持ちいいの。俺といると。ラブラブカップルが苦しいわけねーじゃん」
「…………ラブラブカップルだったら……こんなところでも、キスしちゃうかな」
「それじゃバカップルだろ」
「バカップルなら、いいの?」
「だーめー」

 せっかく向かい合って一緒に首を傾げていたのに、隼人の顔は僕の肩に隠れていった。眼鏡がずりあがって肩に乗っかってる。カチューシャみたいになってる。

「早く、食べちゃいなよ。二人きりになりたい」
「やだ」
「え」
「もう一周すんもん。他にも食いたいもんあったし」
「え」

 まだ食べるのか。この後お腹ごりごりして平気なのか。ふと目を向ければ、四人掛けのテーブルにぎっしり並んだ皿は気がつけば空になっている。こんなもにょもにょしながらよく食べたな。

「うん……お酒、追加……」
「俺ももっと飲むー。ワイン飲むー」
「大丈夫?」
「いざとなったら水泡が抱っこしてくれるだろー?」
「なるべく、避けたい……」
「よし! とってこよ!」

 ガタッと椅子が後ろへひっくり返りそうな勢いで立ち上がったかと思えば、長い足がもつれて椅子の代わりにぐらりと揺れたので慌てて立ち上がって片腕で肩を抱いて支える。隼人の身は守れたが、僕の肩に引っかかっていた眼鏡がカシャンと音を立てて床に落ちる。
 隼人は目を白黒させたあと、そっと僕を見あげて気まずそうに眉を下げて笑った。
 床に落ちた眼鏡を拾い無事か確認してみたが、割れも歪みもなさそうなので軽く手で埃を払ってかけさせてあげた。そうして頭に数回手を置きながら注意する。

「危ないよ?」
「ごめん。な、ついてきて」
「しかたない」

 危なっかしいので腰を抱いて支えながら食事を取りに行く。もう人目とかどうでもよくなってきたなと
 周囲を一瞥すると、一つテーブルを挟んだ席の女性と目が合った。
 顎が外れそうなほど口を大きく開けて、今まさにかぶりつこうとしていた蟹の爪を落とすのを見て、あっ、と思った。
 眼鏡を落とした時に、彼の素顔を見てしまったのかもしれない。二十代前半から半ばらしき彼女が隼人を知っているのはごく自然なことだ。
 しかし彼女の顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、何故だかしきりに頷き始めた。なにかと隣を見てみれば、人差し指を唇に当てて雑誌の顔で眼鏡越しに微笑む“大鳥隼人”がいた。

「かっこいいな、君」
「そーだよ、可愛くねぇよ」

 そう言ってニパッと歯を見せて笑う僕の恋人は、間違いなく可愛かった。





 あの後はもう一度テーブルが山盛り料理の皿で埋まるのを見て、たらふく食べてたらふく飲んでいたら指定の時間になってしまった。もう一回取りに行こうかと思ったのにと嘆く彼を見て、制限時間があって本当に良かったと安堵のため息をこっそり吐きつつ、売店へ行って部屋で飲むお酒でも買おうと提案して機嫌をとる。
 地元の日本酒飲み比べセットやワイン、黒たまごなどなど購入して部屋に戻ると、テーブルが端に寄せられ布団が敷いてあった。その枕元には浴衣が二組。先ほど部屋を出る前に浴衣のサイズがないかフロントに聞いたところ「外国のお客様向けの大きなサイズのものがあるので貸出されていないか確認します」と言っていたが、どうやら残っていたようだ。
 風呂はとりあえずいいやというので、早速浴衣に着替えて端っこのテーブルで布団を眺めながら日本酒を開け、改めて乾杯をする。
 グラスの底をカチ、とぶつけ、グラスに口をつける。すっきりと飲みやすいのにあとからくる香りが華やかでおいしい。
 買った日本酒三本を並べてラベルを眺めていると、放置してしまっていた彼に袖を引かれる。

「なぁー……」
「うん?」
「キスしよ」
「……うーん。キスしたら、今すぐえっちしたくなっちゃうな」
「いいじゃん別に。さっき飯食いながらしたそうにしてただろ」
「今は、二人だから。そのままえっちしちゃうよ。まだ君と……話したい」
「それって俺の昔のこと?」
「違う話でも、いい。好きなご飯の話も……楽しいね。君の話、聞かせて」
「全然関係ない話してもいー? その話もあとでしてやってもいいから」
「うん? なに」
「んー……」

 曖昧な態度のまま隼人は、テーブルにあったリモコンを操作してテレビをつけた。いわゆるゴールデンタイムというやつだ、バラエティ番組の笑い声が静かな部屋を唐突にガヤガヤとうるさくする。
 隼人がいる方向と反対側のテレビには目を向けないまま、ぼんやりと画面に焦点をあてているのかも怪しい様子で画面を見つめる顔を観察する。そういえば眼鏡をつけっぱなしだ。黒縁のフレームが綺麗な瞳の色を隠してしまっている。

「玲児のこと可愛いって思ってんの?」
「え?」
「元生徒食うのが趣味だったりすんの?」
「そんな趣味、ない」
「玲児に興味あんの?」
「あの子をそういう風に見たことは、ないよ」
「じゃあ玲児にちょっかいかけない?」
「ありえない」
「ありえないは失礼だろ」
「でも、ない」

 食事している時に返事をしなかったから、今更こんな意味のない、やや不愉快な質問を投げかけられたのだろうか。
 本当に君にしか興味がないから瑞生の話に進まなかっただけなのに。

「どうしたの」

 表情の読み取れない顔に手を伸ばし、頬に触れる。眼鏡のフレームが人差し指に当たる。

「俺、玲児にそのうち振られるんだろうなって」
「君が? まさか」
「だって俺もう、玲児のこと抱いてやれない」

 視線はずっと、テレビに向いたまま。僕を見ようとしない。それでも声が僅かに震えているのがわかる。

「君たちが別れたら……僕が瑞生に、何かすると……思ったの?」
「思わねぇけど、もしあったらやだ……」

 くだらない。本当にくだらない。なんでそんなこと、考えるんだろう。僕は君だから可愛いんだよ。なんでわからないの。僕が瑞生と何か同じことしても君だって僕を可愛いとは思わないだろ。
 ――……そう詰め寄ってやりたかったけれど、我慢して代わりに煙草を咥え火をつける。

「抱いてあげればいい」

 隼人から目を離して紫煙を吐く。

「抱きたくない」
「なんで」

 隼人は動かない。動かないけれど、一度呼吸が深くなった。

「……汚いから?」

 聞いた直後、聞き覚えのある音楽が背後から流れる。思わず振り向けば目の前にあるのと同じようで違う顔をした彼が映っていた。テレビ画面を鏡に見立て、ずっとこちらを見ながら朝の支度をしている様子が流れている。
 髪を整えて、屈んで覗き込んできたり、顎を上へ向けて見下ろしてきたり、色んな角度の彼を見ることができる。この目の前にいるかのように錯覚するシチュエーションのCMに皆が夢中になっている。

「こんなに綺麗なのに」

 思わず口から出る、隼人が喜ばない言葉。

「……見てくれだけだろ」
「見かけが綺麗なだけなら……こんなに魅力的に見えないよ」

 隼人に向き直って顔を隠すための眼鏡に触れ、そのままそっと外す。温もりの残るそれをそっとテーブルに置いて、不貞腐れたような顔をまじまじと見つめる。

「やっぱり、見かけだけじゃない」
「なにがだよ」
「だってテレビに映る君はかっこいいけど、目の前の君は可愛いから。顔は同じなのにね」

 そこまで言って、隼人はやっと僕を見た。
 でもきっと僕の言葉が嬉しかったわけではない。頬の肉を噛んで閉じた唇に力が入る瞬間を見守っていると、床に手をつけて隼人がにじり寄ってきた。
 目の前まできて、上目遣いに僕を見て、浴衣の合わせに手を入れて肌に触れてくる。

「お前なら俺が抱かれてる時どんなにみっともなくて汚いかも知ってるもんな」
「みっともなくて、情けなくて、かわいいよ」
「飯食ってる時周りにいた奴らもさ……俺がお前のオンナだってわかったよな。見ちゃいけないもん見る目してた。本当はさ、アレが俺に向けられるべき視線なんだろうな」
「僕らがなかよしで、気まずくなっていただけだよ」
「そんな優しいもんじゃねぇよ。混んでるところでケツ触られたし」
「は?」
「しかもケツ揉むだけじゃなくて割れ目ぐりぐりされてエロかった……ちょっと気持ちよかった」

 いつだ? 一人で歩いてた時? 僕がついて歩いてた時?
 特に様子が変わった記憶もなく、ずっとほろ酔い状態でへらへらとしていたので気が付かなかった。
 周りにいた人間の顔なんて覚えてない。これが出雲だったら周囲を警戒して目線にも過敏になっていたが、僕は隼人が性的な目を向けられること自体は不思議と嫌ではないので深く注意していなかった。
 見るのはいい。でも触るのはダメだ。硬さも柔らかさも温度も知ってはいけない。僕のものだ。

「お前すげぇー怖い顔してるよ」
「なんでその時、言わないの?」
「お前が死ぬほど怒るから」
「怒りたかったよ、その場で。今から探しに行きたい」
「俺も顔なんて覚えてねぇよ。大したことねぇからそんな怒んなって。綺麗なもの汚されて怒るのはわかるけど、俺なんて手垢まみれだよ」

 性感に酔った名残がいつの間に消えたのか、平坦な声で言う。綺麗なものは君のにとって瑞生だけだろうと思ったけれど、口を噤んだ。

「今はお前のキスマークだらけ」

 悪戯っぽく笑って、僕の肌から離れた手で自分の浴衣の前を開く。腹、胸の下、胸の間、乳首の近くに浮かぶ赤を指でなぞる。本当はそのもっと上の鎖骨や首筋や首の付け根、耳の下にまである。僕の舌が這って唇で吸って歯を立てて、愛撫した痕跡。
 僕のものだと誇示する象徴。

「こんなもんなくても……わかる奴にはわかるんだろーな。よく俺のこと撮ってくれるカメラマンさんがさ、最近しつこいんだよ。男の味覚えた? 男に抱かれちゃったの? って」

 尊厳を損なう卑猥な問いに後頭部を殴られるような衝撃を受けながら“カメラマン”というワードに記憶が掘り起こされる。
 前にも「カメラマンにケツ触られた」と言っていた。でもいい写真撮ってくれるから我慢している、と……そして名前を聞けば、僕の気に入ってる写真集も、先日の革手袋が印象的な雑誌の表紙も、彼の仕事だった。
 いい写真が撮れるはずだ。美しい彼の人に触れさせない恥ずかしいところまで見透かして、興奮に身を滾らせているのが写真から伝わってくる。

「おふざけの範囲くらいでケツとかちんこ触ってきてさ、体つきも表情もやらしくなったねとかセクハラまがいなこと言われてさ」
「セクハラまがいじゃない、セクハラ」
「でもそうやって煽ったあとの写真は表情がいいらしいぜ。写真のためにやってんのかな。知らねぇけど」
「そうだとしても、駄目だ。そんな発言許されない。君は黙って触らせてるの?」
「いや、まぁ笑って誤魔化してるよ。何ふざけてるんですかって。つーか俺、別に嫌じゃねぇし……嫌じゃなさすぎて、本気で誘われた時に乗っちゃったらどうしよってそっちが悩み」
「だめ!!」
「わかってる」

 こんなに……こんなに、危なっかしかったか?
 このままじゃ本当に。いやだ。君のことも監禁しないとならないのか。
 君が他の男に抱かれるなんて耐えられない。考えただけで胸が苦しく、呼吸困難になりそうだ。君が誰かに抱かれるくらいなら僕が持ってる君のはしたない画像でも動画でも流出させて僕のものだって知らしめる方がマシだ。
 ファンからも事務所からも見放されて僕のところにずっといればいい。
 だめだ。
 これじゃあ出雲にずっと抱き続ける罪悪感から逃れるどころか傷を深めてしまう。
 だめだ。
 僕は素直に生きている君が好きだ。世界中みんなを恋させる太陽みたいな君が好きだ。
 だめだ。
 だめだ。
 苦しくなる。

「僕じゃないと、やだよね?」
「うん……やだよ。お前以外が入ってくるなんてやだ」
「隼人……」
「ん……?」
「君は汚くなんか、ないよ。汚くなんかないんだから、嫌がっていいんだよ。自分で自分を……汚さないで。自分を大事にして、いいんだよ」



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