ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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メス堕ちさせた元タチへの愛のあるセックスの教え方⑥

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「出したくなってきた?」
「ん……」
「じゃあ、もっと動かして、気持ちよくなって、出しちゃおう。大浴場混んじゃうよ?」
「うぅ……みなわも動かせよぉ……?」
「もちろん」
「んー……」
「まだ、怖い?」

 頬は紅潮しているし目は潤んでるのに、小さく結んだ唇と力の入った眉間からは緊張が窺える。
 それでも瞼を閉じて、僕に包まれた手を上下にしっかりと動かし始めた。

「一緒に動かしてろよ、絶対……手ぇ離したら許さねぇから……」
「離すわけないよ、大丈夫」

 握った手を親指でそっと擦り、撫でる。

「ね?」

 隼人は瞼を閉じたまま、うんうんうん、と三度ほど首を上下させて見せた。頬に浮かんでいた汗が唇まで流れていき、熱のこもった吐息と一緒に舌が覗いて、上唇の端のほうをぺろりと舐める。
 開いた唇と一緒に瞼が薄く開いて、虚ろな伏せた睫毛が濡れた瞳に被る。
 あまりに官能的で美しい仕草だが、下半身はややがに股気味に腰を反らした下品な格好をして性器を必死に扱いているのだ。
 ごくりと自分の喉が上下する音が耳の奥で響く。胸が膨らむほど息を大きく吐く。
 だめだ。抑えないと。

「そうそう……上手だよ。上下に動かそうね。隼人がシコシコ上手だから、いっぱいトロトロ出てきてるよ? おちんちん気持ちいいね」
「ふぅ、ふぅっ、んんっ……ちんぽきもちいぃ、みなわあ、俺ちゃんときもちい、オナニーきもちい」
「僕が動かさなくてもおてて動いてる。人にしてもらうんじゃなくて……そうやって自分の好きなようにするのも、とっても気持ちいいんだよ? よしよし、オナニー気持ちいいね。一人でもできちゃうかな?」

 自らの気を落ち着かせるための言葉責めに、大人びた色香の溢れる顔をして幼い言葉を使って答えられ、これでは逆効果なのではと更に饒舌になってついつい意地悪を言ってしまう。
 それに隼人は素直に顔をくしゃくしゃにさせて。

「あっ、や、手離したらやだっ、みなわやだ、やだぁっ……一緒にシコシコしてくんねぇとやだぁ……っ」
「ふふ、ごめん。嘘。離さないよ。安心して。不安にならないで」
「はぁっ……? んな嘘つくなよぉっ! ムカつくっ……」

 弱々しく振り上げられた拳が、ぽすっ、と肩に当たる。怒って鼻息ふーふーしてる隼人が、子犬みたいに顎を引いて睨み威嚇している。
 見た目は全然、大型犬なんだけど。

「ごめん、怒った?」
「ん、怒ったぁ……」

 よしよし、と頭を撫でると首筋に顔をぐりぐり擦り寄せて来てゴロゴロと甘える。今度は猫か。

「君が可愛くて……ごめんね? 許して?」
「許してほしーならもっと褒めろよぉ、ばかみなわぁ……上手上手って、いい子いい子してくんねぇとできねーもん、ベタベタに甘やかして可愛がるっつったろ……?」

 さっきまで拳を握っていた手は、僕の喉仏に人差し指を突き立てたと思ったら、くるくると指先で撫で回してきて。下から上へ、すっと指が滑ると、んん、と声が漏れそうになる。

「はぁ……今日の隼人は、駄々っ子ちゃんかな?」
「るせっ、ばか……」
「隼人、いい子だよ。いいこいいこ、とーっても、いいこだ。おちんちん上手だね。お話しながらでもシコシコできてるね。隼人は凄いね。ちゃんと自分で気持ちよくなれるね」
「んあっ……」

 亀頭を一緒にくちゅくちゅと捏ねながら、頭を撫でて、側頭部に頬ずりをして、優しく優しく甘やかす。すると隼人からも甘えきった嬌声が聞こえてきて。

「もっと、もっと、言って……そしたら、がんばる」
「いいこいいこ、かわいいね」
「んぅっ……みなわぁ、おれきもちい、ちんぽきもちい……」
「うんうん、しこしこ上手。おちんぽ気持ちいいね」
「ひゃぅっ……でちゃう、そんな甘やかされるとぉ、出る、出ちゃう、出ちゃうよぉ……っ」
「甘やかされて嬉しくてイッちゃうの? いいんだよ、出して。いっぱい甘やかしてあげるから、いっぱい出していいんだよ」
「あッ、あッ、耳きもちっ、ちんぽいくっ、イッちゃう、ん、んッ、あ」

 どんどん呼吸が忙しなくなってきたのと一緒に、顎が上を向く。握っている手首の角度を調整しながら、僕にしがみつく身体を自分の胸に引き入れて、不安にならないよう休みなく頭を撫で続ける。
 いいんだよ、いいこだね、気持ちいいね、と。
 あぁ、あぁ、とぼんやりとした声が肌にあたる。
 イッちゃうかな、隼人の手と僕の手で覆っているから、ティッシュなどなくても服は汚さずに済むかな。
 そんなことをチラリと考えた時だった。
 僕の顎から頬を蒸らしていた隼人の呼吸が止まる。
 代わりに、ヒュッと細く息を吸う音がわずかに聞こえた。

「あっ、やだっ、やだっ、やっぱイクの、やだっ!!」

 そしてその直後、快感とは違う種類のもので追い詰められた、わなわなと震える叫びにも近い声が、上がった。

「やだっイキたくねぇよぉ、やだっやだっ!」
「はやと?」
「あっ、あ、んっ」

 やだやだと言いながら隼人の手は止まらない。
 止まった呼吸が再開された頃には止まる前よりも激しく、ハァッハァッと深い呼吸をし、僕が手を無理矢理止めようか躊躇っているのも振り切るようにずちゅずちゅと性器を扱く。
 まずい、このまま絶頂してしまったら。
 この状態で射精後の脱力感、無気力感に襲われたら。
 しかし密着しているせいで隼人に被せたのとは逆の手で腕の動きを封じるのは不可能に近かった。それをするには必死でしがみついてる身体を引き剥がすか、離さないと約束したこの手を離すか、どちらかしかない。
 でも僕が手を離した一瞬の間に隼人が達してしまったら?
 この状態で、自分一人で、自分一人の行いで。

 ――……だめだ、できるわけがない。

「あっあっあっ、手止まんなっ、あっ、イッちゃうイッちゃう、やだやだやだっ、あッ……」

 僕が悩める時間なんて、実際ほとんどなくて。
 隼人の嗚咽と一緒に、手の中は濡れて、生温い感触が広がっていった。

「あ……」

 短い、絶望の声。
 性器と隼人の手、隼人の指の隙間から僕の掌、それぞれの間から微かな水音が聞こえた気がした。
 音はしていないかもしれない、けれどその感触が頭の中で勝手に、ぬとぬととした音に変換されるのだ。

「あ、あ、やだ、手出ちゃ……きたな、これ、やだ」

 隼人の手が、男性器から離れる。
 拳を作ったり、指で手のひらを擦って、自分の出したものを確かめている。
 僕はなんと言葉を出せばいいかわからず、ただその手を握ったままでいた。

「やだったのになんで止めらんねぇの……きもちいいから? 射精したいから? は? きもちわる」

 そうだ。僕がかけるべき言葉は「気持ち悪くないよ」と教えてあげる言葉だ。
 隼人は汚くない、気持ち悪くない。何度でも伝えるよって言ったばかりだ。

 ――……そう、思うのに。

 僕から半歩離れて、恐る恐る広げた手のひらを上に向け、涙の膜をたっぷり張り付けた目で、それを直視する。
 そんな彼にかける言葉はそれではないと直感的に思ってしまった。
 自分の手に吐き出された快感に果てた証をじっと見つめていた隼人は、わかっているはずなのに信じられないと、まるで初めて精液を見たかのような顔をしていた。そうしてじわじわと唇がひしゃげて、顔がくしゃくしゃになっていく。
 くしゃくしゃになった顔が、ゆっくりと僕の方へ向く。
 そしてその手を僕に差し出して、瞬きと共に涙の膜は弾けた。

「みな、あ、や……たすけ、て」

 僕の手は、まだ隼人に重なってる。
 隼人の手の甲を下から支えてる。

「大丈夫……大丈夫だから」

 やっとの思いでそれだけ告げて、ボトムのサイドポケットからティッシュを……取り出そうとしたのだが、なんとも間抜けなことに床へぽとりと落としてしまい、仕方なく残ったハンカチで手のひらをそっと覆う。
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