ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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イキすぎ酔いすぎでふわぽやな元タチと甘々飲み会からの最悪な3P⑨

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 出雲の声に隠れて、加賀見の気持ちよさそうな息遣いが聞こえる。腰を打ちつける振動が伝わってくる。

「あーっあーっ、しゅごぃ、おっきいよぉ、ナカ全部こしゅれて、全部よくなるぅぅぅっ!」
「これで今日、おちんちん何本目……?」
「う、うー、えーとぉ、さんぼんめぇ」
「悪い子だな、本当に」
「せんせぇのおちんちんがいちばんすきぃっ」
「それはどうも……っと!」
「おッッ! らめ、なかのお口入っちゃアッ」

 すっげぇ声。苦しそうなのに気持ちよさそう。俺もこんな声出してんのかな、嫌だな。
 顔を隠す腕を少し浮かせて、横目で出雲を見る。口の端からヨダレ垂らして、目はどこ見てんだかわかんねぇすんごいアヘ顔。子供みたいなチンポからビジャビジャ潮吹き出してて、腹が水浸しになってる。
 それだけ見て、また何も見えないように顔を隠す。加賀見の顔は見られなかった。見たことないような顔してたら耐えられそうにない。
 今度からもっと声、我慢しようかな。あんな顔も見られたくない。野太い声とか、キショいアヘ顔とか、引いてるかも。
 俺のこと可愛いってなんか勘違いしてるみたいだし、そういうの嫌だろうな。気色悪いなんて思ったことないって言ってたけど、でもわかんないし。すっごい恥ずかしくなってきた。

「すき、せんせいすき、すき、好きって言ってぇ……!」

 あ、もうやだ、苦しい。本当しんどい。肺が震える。唇がわなわな震える。
 やだ、俺、なんで。泣きそう。泣きたくない、泣きたくない。
 言わないで、無理だけど、言わないで。

「うん…………好きだよ」

 しばらくの間をおいて降りてきた言葉に、溢れ出しそうになる。切羽詰まった苦しさが解き放たれそうになる。
 でも、先ほどまで出雲に握られていた、いつの間にかフリーになっていた左手に、ふと汗ばむ手が重ねられた。
 人より大きい俺の手でも余裕で包める、指が長くスラッとした綺麗な手。
 床についた手がたまたま重なったのではない。
 手首を返して指先を下に向けて重なった手は、どう考えても俺と指を絡めてしっかり手を握るためのものだった。

「好きだよ」

 繰り返される言葉とともに、手の力が強まる。
 ――……いま、俺に向けて?
 つい、そう錯覚してしまいそうになる。その目は愛する恋人に向いているだろうに。

「本当に、大好きだよ」

 手をもっと強く握られる。痛てぇよって離したくなるくらい。
 顔は見られない、声もちゃんとは聞きたくない。
 でも俺は痛いと振りほどくのではなく、握られた手に力を込めて、応えた。それに返事をするみたいに加賀見はまた、大好きだと繰り返した。
 抱かれていても思うけれど、加賀見は本当に器用な奴で。
 出雲に腰を打ちつけながら、俺の手を握る指先はとても雄弁だった。
 指の股を指が滑っていくのが気持ちよくて。手首を掴まれて手のひらをなぞられるのも。指先で手を開かれて、指先同士を擦り合わせるのも。ギュッと力強く握られるのも。
 気持ちよくてゾクゾクと背が震えて、時折声まで漏れそうになるのをギュッと唇を噛んで我慢した。
 身体が震えると胸の先がきゅぅっとして、尖ってくのがわかって恥ずかしかった。それに触ってほしくて、うずうずして、辛くて。
 加賀見が俺に語りかけてくれるのは手のひらだけで、嬉しいけど、とても寂しかった。
 でもだんだんとそんな余裕もなくなってきて、ただ握られる手にもうすぐだと悟らされた。もう加賀見の頭は「出雲の中に出したい」でいっぱいのはずだ。俺の事なんか構ってられないのも仕方ない。
 そして、最後に。
 果てる時、それまでで一番手を強く握られて。
 とても気持ちが悪くなった。
 尋常ではない速さで手を振りほどき、二人には目もくれず、床に落ちてたワイシャツだけ引っ掴んで。開けっ放しの扉から廊下へ出て、トイレに駆け込んだ。
 気持ち悪い。しかし気持ち悪いものを全部吐き出して一気に解放するのは、ある種の快感がある。
 でもうまく吐けなくて苦しいままで、加賀見の長い指が喉の奥を刺激してくれたらと考えていた。途中扉をノックする音が聞こえた気がするけど、本当に聞こえたかわからない。
 そうしているうちに、うとうと眠くなってきてしまった。便座に崩れたまま微睡みの中で、布団で寝ないと、二人はもういないだろうか、あの布団で寝るの嫌だな、とぼやけた思考をゆっくりと回していた。
 意を決して立ち上がり、廊下を出る。
 部屋を出る際に掴んできたワイシャツを羽織っていると、寝室から煙草の臭いが香ってきた。
 そっと音を立てないようにドアノブを倒し、寝室の扉を開けてみる。
 ベットに座る背中から煙が昇るのが見えて、すり足でやはり音を立てないように近づいた。加賀見の背の後ろでは出雲が眠っている。
 加賀見の目の前に立つと、彼は俺を見上げて小首を傾げた。

「どうしたの」

 その問いには答えず、膝に乗って首に腕を回して抱きついた。

「煙草、吸ってる。危ないよ?」

 少しの間、首を抱く腕を緩めてじっと至近距離で加賀見を見つめる。いつもの無表情でやはり小首を傾げ、右の首筋を露わにする。俺はまた加賀見の首にぎゅっと近づいて、その首筋に頬を擦り寄せた。

「ねぇ? どうしたの?」
「出雲に見せつけに来た」
「出雲、寝てる」
「んなこと知ってる。見せられねぇし、見せたくねぇし。でも見せつけに来た」
「……もう勃たないな」
「そんなつもりじゃねぇよ、馬鹿じゃねーの」

 首を抱く手を肩へ移動させ、そのまま二の腕、前腕への滑らせていく。そしてベッドに着いたままの手をきゅっと握って、そっと手のひらを返し、指を絡めて握った。
 指の股の間に、指を滑らせて。手のひらを指先でなぞって。指先同士でキスをして。またきゅっと握って。

「キスだけ、して。出雲のいるこのベッドで。見せつけさせろよ?」

 はぁ、と熱いため息を漏らす加賀見にキスをねだった。

「あんまり……やらしいキスは、だめ。だからね?」
「なんでだよ? れろれろ舐めまわせよ、俺のこと。好きだろ?」
「好きだよ」

 俺のこと好きだろ、て言ったみたい。
 力の入った大きな手にそわそわする。

「なぁ、キスしろよここで」
「隼人」

 人差し指と中指に煙草を挟んだままの手が頬に触れる。煙草臭い手。別に好きな匂いじゃないのに。

「隼人。泣かないで」

 言われて鼻を啜るとぐすりと鳴った。

「泣いてねぇし……」
「ほっぺた、濡れてる」
「お前の涎だよ」
「まだ、キスしてないよ?」

 親指が小鼻と頬の谷間を撫でる。そして顎を上に向けられ、ほろ苦いバニラ味のキスをした。
 唇が重なるだけのキスだ。
 でもそれだけで首の根っこ掴まれたみたいな気分になる。膝の上で腰を揺すって、下唇をものほしげにはむはむする。

「すぐ呼んでくれる?」
「うん?」
「俺のこと……オナホにして使ってくれる?」
「君のほうが忙しいんだから、君が呼んでくれたほうが……君が、ほしい時に」

 顎に手を添え、今度は加賀見が俺の下唇をあそぶ。親指で触れて、唇を開かせて。
 俺はその親指に甘噛みする。

「やだ。お前が呼べ。俺のこと使いたいって言えよ。オナニーだけの日だけだからな。週三日まで呼んでいいよ。毎日オナニーで、出雲と週四回って言ってたよな?」
「そんなに、呼んでいいの?」
「うん」
「本当に呼んじゃうよ?」
「行けるかはわかんねぇけど、いいよ」

 親指を挟んだまま上目遣いに見て、口の端をあげて勝気に笑ってみせる。すると加賀見が息を飲むのがわかった。

「隼人……僕にいっぱい、会いたい?」
「…………ん。ちんこ欲しいからな」

 俺の腹と加賀見の腹の下を覗くと、平常時でもでけぇちんこがある。出雲に中出ししたばっかで、俺がこんなにくっついてやっても勃たねぇちんこ。

「俺としたら、出雲としちゃヤダ」
「わかってる」
「やだからな」
「うん、しない」

 返事をしながら煙草を吸って、ゆったりと煙を吐き出すのを肩に凭れながら眺める。暗い部屋に白い煙が浮かぶ。
 加賀見は俺を見て、もう一度煙草に口をつけて。今度は深いため息とともに、煙を吐いた。

「君が……来てくれて、良かった。心配だった。トイレ、ノックしても返事がないし」
「あーやっぱノックしてたんだ。ごめん、なんかぼーっとしてて……」
「ううん。また、戻しちゃったの?」
「いんや、なんも出なかった」
「そう……」

 返事をしながら加賀見は視線を床に落とした。煙草を持った手で、額をさすって、前髪を耳のほうへ退ける。

「もう僕の顔、見たくないかと思った」

 そうして頼りない細い声で、絞り出した。

「本格的に、嫌われちゃったかもって」

 細めた目は苦しそうで。
 こいつがそんなこと言うのが意外で俺は目を丸くする。

「つかお前が怒ってんじゃねぇの?」
「何を?」
「約束破ったの」
「怒ってたよ」

 短くなった煙草をベッドサイドに置かれていた灰皿に押し付ける。

「ムカついた。君にも、出雲にも。特に君とは約束、したばっかだったのに。でも、興奮もした……だから、せっかくならこの状況を楽しもうかなっておもった。二人とも可愛くてやらしくて、最高だったよ。でも、やるんじゃなかった」
「は……なんで」
「君が……あんなに、悲しそうにするから。ごめん。やりすぎてしまった」

 ずっと床を見ていたり、手の甲で眉間をさする加賀見は、俺に目を向けることを躊躇っているように思えた。気まずさか罪悪感かわからないが。

「お前がそんなこと言うと思わなかった」

 俺を見ない左頬を見上げながら素直な言葉がこぼれる。

「うん……僕もだよ。でも君は可愛い顔を平気で出雲に見せて、えっちな声も我慢できなくて、それにも腹が立ったし。でもやっぱり、君が可哀想で……興奮より、それが嫌で。駄目だね、僕は。君相手に酷いこと、したくない。今まで快楽優先、だったんだけどな」

 加賀見の目がやっと俺を向く。
 もう俺は泣いてない。いやさっきも泣いてないけど。そんな俺の目元や頬、小鼻まわり。濡れてた箇所をこしこしと優しく指の背がさすっていく。

「君には……少しも、悲しい思いをしてほしくない。悲しい思い、たくさんさせてしまってるけど。きっとこれからも……」

 そんな顔されるほうが、俺泣きそうになっちゃうんだけど。

「ごめんね、隼人」

 垂れた睫毛に目元が曇る。胸が苦しい。

「俺も約束破ったし……」
「うん」

 加賀見の頭を撫でる。両頬に垂れる長い前髪を後ろに流す。

「ごめん、加賀見……」
「水泡、だよ」
「ごめん水泡…………なぁ、水泡?」
「うん?」

 加賀見の髪の毛サラサラで気持ちいい。手のひらをまっすぐに滑ってく。

「俺、ちゃんと約束守る。もうしねぇから。そしたらまた褒めてくれる……?」
「もちろん」

 薄く笑うのを見て、安心した。頭を撫でるのをやめてまた首筋に顔を埋めて身を任せる。
 そうしていると加賀見が腕を伸ばして煙草を手に取る筋肉の動きまで身体に伝わった。

「もう一本煙草吸い終わるまで、ここにいてほしいな」
「ん、いーよ」
「ありがとう」

 煙草の香り。そういえば煙草の香りとは違った臭いがさっきからしてる。適当に羽織ってたワイシャツを掴んで鼻先に寄せ、クンクンと嗅いで、思わず顔をしかめる。
 臭っ! 学生時代によく嗅いだ、夏に丸一日着たあとの制服のシャツみたいな臭い。それより臭いかも。そういえばちょっと湿った感じもするような。

「なぁ、このシャツくせぇ!」
「あれ。それ、どうしたの」
「お前の部屋に転がってた。汗? かな、体臭って感じのにおい」
「ううん、いつのだろう」
「うぇぇ、汚ぇやつじゃん」

 酒や吸殻で汚れてはいたが、家の中全体はよく整理整頓されていて綺麗なのに、あの部屋だけ乱雑として汚かった。あの部屋は出雲の管理下にないのだろうか。

「そういやなんか壊れたコンポみてぇのあったけど、あれなに?」
「あれはね……修理中」
「壊れたの自分で直せんの?」
「ていうより……普段使ってるもの、とかじゃなくて。ガラクタとかジャンク品を直すの、好きなんだ。パーツ集めたりして」

 好きなことを話してるって感じのしない、淡々とした語り口。それが加賀見らしくてクスリと笑う。やっとコイツらしい顔になった。

「お前そんな趣味あったんだ。初めて聞いた」
「言うことでもないからね」
「んなことねぇよ」

 あの部屋にあったものを思い返す。ガラクタに……本がたくさんあった。でかい本棚もあるのに、床にまで。どんな本があるのかじっくり見てみたいな。こいつって何に興味があるんだろう。床に置かれてた本に紛れて学術雑誌があったのは見た気がする。

「俺、お前に話聞いてもらってばっかだったもんなぁ」

 そうだ、こっそり俺が読んでる本とか紛れさせておいたら気がつくかな。

「お前の話も、もっと聞きてぇなぁ……」

 なんか気分いいな。加賀見の体温、腕が動くときの筋肉、心臓の音。煙草の匂い、いつ着たかもわからない体臭染みたシャツのにおい。

「隼人、あったかい。眠い?」
「んー……」

 そうか、これ眠いって感覚かも。思考はいつもより上のほうにあるのに、身体は重くて下に下がってる感じ。きもちいい。

「眠くなってくれたんだね。嬉しい。運んであげようか」
「いーの?」

 抱っこしてもらえる。眠くて布団まで運んでもらうって、ガキみたい。本で読んだことがあるだけで、経験したことはないけど。ちょっとわくわくする。

「おやすみのキス、してあげる」
「ふーん? くっだらねぇけど、してもいいよ」

 でも加賀見は俺の親父じゃない。だからキスしてくれる。頬じゃなくて口に、優しいのに気持ちよすぎるやつ。
 キスしてもらえるまで、起きてられるかな。
 俺が寝ちゃってもキスしてくれるかな。
 キスしてくれると思う。
 キスして、頭とか撫でてくれて、布団かけ直してくれると思う。
 本当に加賀見は、俺のことが大好きだから。



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