ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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イキすぎ酔いすぎでふわぽやな元タチと甘々飲み会からの最悪な3P①

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 隼人の口にピザが次々と吸い込まれていくのを見つめながら、もうお腹を刺激するのは良くないな、などと考えていた。
 僕はあまり食べないしMサイズにしようと提案したが、絶対にLサイズじゃないと足りないと言われ、過去に出雲が冷凍保存していたのを思い出し、仕方なく了承した……のだが、既にテーブルの上には空箱が二つならんでおり、最後の箱も残りあと少し。大量に残すかもなんて杞憂だったと彼の胃袋にドン引きしている。
 せっかく綺麗にしてくれたテーブルにはビールの空き缶が並び、縦に積まれ、まだ残っているポテトや唐揚げのサイドメニュー、さっきコンビニで買い足した乾き物などなどですっかり散らかってしまった。
 煙草を買いに行こうとしただけなのに、まさか食べ物やらお酒やらを追加で買わされるとは。お酒を物色してる間にちょいちょい消えては背中に抱きつかれて動揺しているうちにカゴにあんなに盛られているとは。
 いちいち背中にくっついて「水泡、これも」「これも欲しい」「これも食いたい」て甘えた声を出してきて……もしや僕は騙されているのでは。高額な買い物をしたわけでもなんでもないけれど。

「おい、口開けろよ」
「やだ」
「食えよ、全然食ってねーじゃんお前」
「見てるだけで、いっぱい……」
「はぁー? おら、ポテトォ!」

 膝には乗らないと言っていた割には、広いソファでぎゅうっとくっついて隣合って座り、隼人にいたっては僕の肩に頭を乗せ完全にもたれかかっている。
 それはいいのだが、僕の唇にポテトをぐりぐり押し付けるのはやめてほしい。油でベタベタするだろう。

「いらないって……」
「えーお前の口にくっつけちまったんだけど……これ俺が食べんのぉ? キモぉ……」

 なんて言いながらも、ぱくり。

「なー、じゃあションベン連れてって」
「やだ」
「はーぁ?! お前なんかアレ、そーゆーの趣味だろ?!」

 飛び起きて怒鳴る声がうるさくて耳を塞ぐ。

「やだよ、エッチできないのに……」

 横目でちらりと見れば、顔が真っ赤だ。食べる量だけではなく飲む量も多いし酔ってるなとは思ったけど、二重幅もやや広がって目がとろんとしてる。
 一人で帰れるのかな、この子。僕もお酒飲んじゃったから車は出せないし。午後六時半になろうとしている。日曜の夜に帰るとしか聞いてないが、早ければそろそろ出雲が帰ってきてもおかしくない。

「じゃあチューしろよ」
「……なに?」
「ちゅー」
「なんかしてもらわないと……気が済まないの……?」

 しかしそれぐらいならまぁ、と唇が触れるだけのキスをする。
 しかし要望に応えてしてあげたのに隼人はぽやんとした顔のまま大した反応はせず、また肩にもたれてグラスに口をつける。そして。

「チューしろよ」
「今、した」
「俺が言ったらいつでもしろよ」
「やだよ」

 バシッと肩に平手が打ち込まれる。痛い。

「トイレ、行きなよ……」
「まだ我慢できっからいい」
「はぁ……ほら、連れてくから……」
「んー」

 語尾に音符が飛んでる。随分嬉しそうだ。手を繋いで引っ張り、一緒に立ち上がる。

「抱っこじゃねぇの?」
「しないよ。手は、繋いでるから」
「んー……」

 今度は語尾が沈んでく。ちょっと残念そうだ。
 手を繋いで、トイレの前まで一緒に歩いて連れて行って。扉を開けてあげたのになかなか入ろうとしない。

「見る?」
「見ない」
「見たら嬉しくねぇの?」
「嬉しくない」
「はー? お前今さらまともぶってんしゃねぇよ」
「……まともじゃ、ないから。そんなとこ見たら、襲っちゃうの」
「ふーん。水泡が喜ばねぇならいいや。そこで待ってろよ」

 よたよたと足がもつれているのを見ると、一緒に入ってやったほうが良かったかとも思ったが、ガチャりと扉が閉まってしまえばやっと一息つくことができた。
 あー。帰したくない。
 いっそのこと早く出雲が帰ってくればいいのに。そうすれば家にすんなり帰せるのに。
 二人きりで、こんなに甘えられて、もう帰れなんて言えない。
 でもちゃんと帰れるのかどうかも心配で、やっぱり帰したくない。しかしこれ以上飲んだらもっと酔って、もっと心配になるわけで。
 扉越しにおしっこしてる水音が聞こえてきて、頭を抱える。あの子のこと、即ハメオナホにして良いんだっけ。五分で終わらせればいいのか。
 聞こえないよう壁を背にして頭を抱えたまましゃがんでいたら、いつの間にか隼人の足先が視界に入った。

「何してんの?」
「自己防衛」
「やっぱお前変だよな」
「ほっといて」

 ギッ、と床が軋む音がして、目の前で隼人がしゃがむのがわかる。顔をあげると、ムスッとした顔で首を傾げる姿。

「一人でしてきたから褒めろー」
「褒めてほしいの?」
「水泡に褒められんの好きなんだもん。しょーがねーだろ。いつでもいっぱい褒めていいよ、俺のこと」

 自分の両膝を抱いて、ん、と頭を僕の方へ下げる。
 かっわいい。可愛い。可愛いなぁ。毎秒可愛くて偉いねって褒めてあげようか。息してて偉いね、生きてて偉いねって。

「一人でおしっこできて、偉いね」

 いいこいいこ、と頭を撫でる。目を閉じて、ちょっとくすぐったそうに身を捩るのがまた可愛い。
 そうして目を閉じた安心しきった顔をして、むにゃむにゃと口を開く。

「水泡も俺のことたくさん褒めてくれるから偉い……」
「君も、変なこと言うね」
「変じゃねぇし……褒められて嬉しい?」
「うん。ありがとう」

 抱えた膝から顔を覗かせて、薄く目を開けて微笑む。
 ため息しか出ない。呆れたり、困ったり、可愛かったり。
 しかし廊下でいつまでも二人で小さくなってる訳にもいかないので、また手を繋いでリビングに戻った。
 ソファに腰を落ち着けた隼人は、ピザをまた一切れ食べて、グラスに入ったソーダ割りを一気に飲み干し、僕の膝の上に頭を乗せて転がった。

「眠い?」
「眠くねぇよ。でもこうしてるといい感じじゃん」
「そうなの?」
「おー」
「じゃあ、ちょっとそこで……大人しくしてな」
「んー」

 本人は眠くないと言ったが、とろんとした顔をして僕が頭を撫でるのに合わせてゆっくり瞬きをしている姿は、今にも眠ってしまいそうに見える。寝不足だろうし、このまま仮眠をとらせて酔いを覚ますのもいいかもしれない。
 しかしつい、と袖を引っ張られて。

「キス……」

 またおねだりされた。
 腰をかがめて唇を寄せると、先に唇をはむはむと啄まれ。そのあとに優しいキスをする。
 セフレを始めた当初、キスを禁止にしていたのが嘘みたいだ。ハメキスが気持ちいいからと解禁し、今では恋人みたいなキスもする。

「キス、好きだね」
「俺、結構お前の顔好きだから」
「そう……?」

 僕の顔が平均より整った形をしているのは理解しているが、隼人に好いてもらえるとは。しかし瑞生が好みならば、可愛い顔立ちが好きというわけでもないか。

「お前は俺の顔とか気にしてないよな」
「え」

 気にしてないわけがないのだが。というより、この顔を目の前にして気にしないというのは無理がないか。盲目でもない限り。

「出雲みたいに可愛い感じでも、なんつーんだろ……真面目で柔らかい母性キラキラーみたいな感じでもねぇし? ぶっちゃけ好みじゃねぇだろ」
「そんなことは……」
「いいって。だって俺たちずっと友達だったじゃん。顔とか関係ねぇし、どうでもいいんだろ」

 これは。これは、肯定を求められているのだろうか。本当にそう信じきっているのだろうか。
 君の魅力は顔だけじゃない。でも僕は、顔を含めて君の容姿が大好きだ。完璧で均整のとれたものは美しく、見ていて気持ちがいい。だから君の、パーツはもちろん骨や皮膚から美しいその造形をずっと見ていたいと思う。

「僕は、君の写真集で……抜いてたんだよ?」
「それはだって、あれだろ……セックスするようになったから顔がどうのとかじゃなくて、お前が俺をやらしい目で見てんだろ。それに顔好きじゃなくても、一緒にいたりそいつのこと知ると愛嬌で可愛く見えたりするだろ」
「う……ん」
「俺の顔見てヤリたいって思ってたら、もっと早くにヤッてんだろ? 俺、お前のこと十七ん時から知ってんだぜ? なのに夏まで色っぽいことなんか一回もなかったろ」

 それは……確かに頷ける。
 夏より前、初めて隼人を抱くより前。
 君の顔立ちが特別に綺麗だとはもちろん認識していた。昔やったゲームキャラに似てるなと思ったり。しかしそれで今みたいにムラムラしたりすることはなかった。
 そもそも、顔が綺麗だからってこの顔が好きとか考えたことがあっただろうか。
 誘われるから一緒にいた。元生徒だし、なんとなくだが気にかけている部分もあった。意識してそう思ったことはないが、楽しかったのだと思う。僕に懐く姿に可愛げも感じていたと思う。
 今の僕は可愛い君がとても好きだと思うけれど、君の圧倒的な容姿に抗えない、僕の特別な者を独占したい欲を刺激してくる美しさに惹かれている部分も強いと、そう思っていた。
 でも僕は……いや、わからない。僕が君の何を求めて何を好きかなんて。

「みんな俺にさ、顔しか取り柄がないって言うんだぜ。スポーツもいけるし、頭も悪くねぇし、料理とか色々ちゃんとやるし、んなことねぇっつーの!」
「女癖に、難あり?」
「それはっ、そうだけど……俺だって頑張ってんだぜ。こんなこと気にしてんのも、頑張ってるとか言うのも情けねぇから嫌だけどさ。玲児ですら俺のどこが好きって聞くと真っ先に“顔”って言うんだぜ? 冗談なのはわかってるけどさぁ、傷つくだろさすがに……」
「君、そんなこと恋人に聞くんだ」
「いいだろ別に! 仕事してたってそうだよ、仕事柄しょーがねぇーけど、顔、スタイル、顔って……みんな顔の話ばっか……ポージングとか身体作りとか、スタッフさんにも気ぃ使ったり、頑張ってんのにな……」

 頭を撫でていた手を、隼人は握った。
 そして自分の頬に寄せ、頬擦りする。

「だから、お前は本当変わってるよなぁ。でも楽だよ、そーゆーのが。俺にかっこよさとか求めてこねぇし。俺だってかっこつけたいんだけどさ……」
「君は可愛いよ」
「はは、うるせ。ほんと、変なの。お前といるとなんも考えなくてもいいし、頑張んなくてもいいし、それなのにたくさん褒めてくれるし」
「僕のために頑張ってくれるから、褒めてるよ?」
「うん…………だよな、だから嬉しい」

 いつの間にか僕を見あげている隼人の顔を見つめ返す。
 口を小さく結んで、じっと僕を見る顔が美しい。
 顔立ちだけでいったら彫刻みたいなつくりをしてるのに、紅潮した肌の色ムラがあって、濡れて艶が出て、僅かながら柔らかな産毛生えていて、温度がある。当たり前なのに綺麗すぎてそれが不思議に思ってしまう。
 作り物みたいに綺麗なのに、作り物よりも美しいのは、彼自身に生気が満ち溢れているからだろう。強く強く、惹かれてしまう。

「僕も……君の顔は、好きだよ。綺麗なのは、もちろんだけど。君がこの顔で生まれたから、今の君の人格ができたのだから」
「顔で性格が決まんの? まぁあるだろうけど、俺はあんまり……」
「君は傍若無人、自信満々だけど……それはその容姿で他人から甘やかされ、認められ、そういった態度が許されていたんだろうね。というより、君が微笑むだけで大抵の事は許されるだろう。でも逆に、その顔のせいで君は自信喪失している部分もある。今、君が話してくれたようなこと。だね」

 突出しているからこそ、そこばかり賞賛されて他が疎かになる。賞賛してしまう者の気持ちも理解してしまうけれど。
 でも見た目ばかりじゃなく、君はこんなにも可愛らしいのに。

「僕は君のそういうところを」

 つい甘い告白が口から零れそうになる。言葉を飲む間、隼人は何かを期待するように一生懸命に僕を見つめていた。

「好ましい、と思うよ」

 ちょっと不自然だっただろうか。しかしこれで言おうとしたこととは外れずにニュアンスは変わったはず。
 言葉にできない違和感を感じとったのか、隼人はやや口をむず痒そうに動かしたが、すぐに切り替え笑顔を見せた。

「俺、また褒められた?」
「うん。そうだね」
「へへ……」

 頬に当ててた手にぐりぐりと頬ずりして甘えてくるので、またたくさん撫でてやる。犬や猫みたいだな本当に。よしよし。
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