ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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番外編・最愛の恋人には俺の知らないことがたくさんある(後編・隼人×玲児)

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 フェラチオする前に指で柔らかくしてもらった穴に、亀頭があてがわれる。

「ほら、ほしい?」
「む……ぅ……」
「ちゃんとほしいって言えよ」
「ほしい……」
「なにが」
「はやとが……っ、はやとが……ほしぃ……」
「俺のナニ?」
「……こ、これ以上は……勘弁してくれっ……」

 求められる言葉に、顔が熱くなる。頭に言葉を思い浮かべただけで、涙目になる。
 恥ずかしい、実際に口にするなんて無理だ。
 下唇をぎゅうっと結んで、顔を逸らす。すると上を向いた左耳をぺろりと舐められ、耳たぶをちゅっと吸われた。

「そーんな恥ずかしいの?」
「むぅぅぅ……」
「かわい……な、耳元でこっそりほしいって言えよ? 聞こえないくらい小さい声でいいからさ」

 ゆっくりと顔を上へ向けて、見つめ合う。目を細めて微笑んで、隼人は俺を待っている。
 なかなか言葉がでなくて、口を動かして、目を泳がせている俺を待っている。
 そうしてやっと、隼人の肩を抱いて、耳元に唇を寄せる。

「……うぅ、むぅぅ…………その、はやとの……はやと、の…………っ、が、ほし、ぃ……」

 結局その単語はほとんど言葉にならなくて、隼人の耳には届かなかったと思う。音になったか自信がない。
 けれど隼人は、はぁーっと熱い息を吐いたあと、俺の身体をベッドに抑え込み、熱く硬くなった男性器を俺の中に沈めていった。

「あッ……!」
「玲児……すきだよ。あぁ、中あったけぇ……きもちいい」

 愛の言葉を吐きながら、まず奥までゆっくりと入ってくる。自分の身体のどこまでだろうと思うほど、奥まで。
 指で解してもらったのとは比べ物にならない質量に押し広げられ、耐えるために目を閉じ隼人の背にしがみつく。
 そうすると中も力が入ってしまい、きゅうきゅうと隼人を締めつけて、より擦れて感度は上がるし、何より恥ずかしくて、ますます腕に力が入る。
 そうすることで何とか声を飲み込むことができたが、代わりに耳元で隼人の甘い声が響く。

「ん、あ……はぁ、れいじ……」

 興奮に、ぐりっと中を強く押されて……そこはとても、よいところで。

「あ、やべ、すっげぇうねって……玲児、きもちい、すげ、きもちいいよ。玲児のケツん中、めちゃくちゃやらしー動きしてる……」

 耳から、中から、犯されて。ゾクゾクして、歯を食いしばる。
 背中を駆け上がるモノに我慢できなくて、身体がガクガクと震えて。
 薄暗かった目の前が真っ白になった時、自分が絶頂していることを自覚した。

「っく、あ……あっ、あっ……」

 隼人の腹を挟むように開かれた足の膝が、ビクンビクンと何度も何度も跳ね、余韻が止まらない。
 後頭部を引っ張られるような感覚を残したまま、なんでなんでとと混乱する。激しく突かれたわけでもないのに。
 ただ、挿入されただけなのに。

「なー……すっげぇ痙攣してんだけどっ……?」
「う、んん……っ、は、あっあぁぁ……」
「空イキしてんじゃん……まだ何もしてねぇーけど? どした?」
「はや、とっ……」
「んー?」
「はや、と、きて……うれし…………なか、きて……すき、はやと、すき、俺もすき、はやと、もっと……もっとぉ……」
「……ほんと、可愛いのな」

 低く、意地悪な声が途端に優しくなる。そしてキスをされて、口の中をたくさん舐められて。中でイッてしまうとそれだけで頭の中までトロトロになってしまうのに、こんなふうに甘やかされたらおかしくなってしまう。
 舌先で愛し合って、歯列や上顎を撫でられて、中も、おちんちんもきゅんきゅんする。
 先っぽが隼人のお腹に擦れて、ぬとぬとしてきもちいい。しこしこしたい、もっと気持ちよくなりたくて自ら手を伸ばす。

「えっろ……ちんぽ我慢できなかった? ほんとお前って堪え性ねぇよな」
「あっあぁっ、はやと、きもちーっ、きもちーっ……」
「ちんぽとまんこ、どっちいいの?」
「あ、はやとが、もっと、うごいたら……おしり……おしりの、が、よくなるぅ…………はやとぉ……っ」
「はっ、随分おねだり上手だな」
「あッ」

 ずるっと抜けていった性器が、肉壁をごりごり擦りながらまた戻ってくる。奥を突いて、また少し抜けて……今度は前立腺を上反りの男性器で的確にぐいっ、ぐいっと押し当てる。
 亀頭に押されて、カリが引っかかって、異なる快感にぐちゃぐちゃにされる。自分の中も、お尻から溢れ出る音も、ぐちゃぐちゃだ。
 こんなにお尻に快感を与えられているのに貪欲に自分を扱く手も止められなくて、そこからも卑猥な音が漏れている。信じられないくらい我慢汁が流れて手首まで濡れている。
 あー、やばい、やばいやばいやばいっ……。
 精液出る、出ちゃう、でも手が止められない、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい!

「あっあっあっ、でるっ、でちゃうっ、でるでるでるっ、あ、あ、ぇ……?」

 大きく開いた口、突き出た舌……そして天井を向いてしまっていた瞳が、ぐるっと元に位置へ戻って、自分の腹のあたりを覗く。すると脈打って限界だった男性器は、必死で自身を扱いていた手の上から根元をギュッと隼人に握られてしまっていた。
 これではどんなにイキたくても物理的に射精が叶わない。

「あ、はやと、やだ、いやだっ、いきたい、いきたい、しゃせーしたいぃぃ……っ」
「お前はほんっと、メスになりきれねぇなぁ。せっかく中イキできんのに」
「メスじゃなっ……はやと、やだ、イキたい、たのむ、たのむ、イかせて」

 イキたい、隼人をその気にさせたい、隼人も一緒にイこう?
 もう出すことしか頭になく、必死だった。
 必死で伸ばした手は、自分の我慢汁でよく濡れていて。
 本人が嫌がるので滅多に触らない、でも弱点だと知っている胸の先を、濡れた指で引っ掻いた。

「ンッ」

 ああ、やはりいい反応をする。
 声を抑えているが、中で男性器が硬くなっていくのがわかる。
 爪の先で何度も引っ掻いて、押して、転がして。
 続けていくと乳首に触れられた衝撃で一度止まった隼人の腰がゆるゆると動き出し、顔が俺の肩口に沈んでいく。
 前から密かに敏感だとは思っていたが、ここまでだっただろうか? 多少疑問が浮かんだが、乳首を責めるのを止めず、この隙にすりすりと自身をまた隼人の腹に擦り付ける。

「隼人、きもちいいのか……? 中で、ンッ、すごく、ビクビクしている……なぁ、一緒に、イこう……?」
「う、やめ……やめろ、れいじ、やだってほんと……やめろよ……っ! あっんんっ」
「はぁ、はぁ、あっ……はやと、おまえっ…………ほんとに、きもちいいのだな……このまま、イジっててやるから……一緒に、出そう?」

 肌にかかる隼人の吐息が荒く、熱い。こんなに気持ちよくなってくれるものなのか。欲を言えば感じている顔も見たかった。

「れいじ……」
「ゔッ!」

 しかしそんなことを考えて油断したのも束の間、隼人に肩を思い切り噛み付かれた。
 ただ話しているだけでもチラと見えるのが少し怖いくらいに鋭い、隼人の犬歯が皮膚に刺さる。痛みに身体が硬直する。
 ギリギリと噛みつかれ、恐らくしっかりと歯型をつけられて……隼人は、起き上がった。前髪をかきあげて、わずかに開いた唇から見える血のついた犬歯を親指で撫でる。全くこいつは皮膚まで破ったのか。お陰で肩がジンジンと痛む。

「調子にのんなよ、ドMのくせに」

 吐き捨てるようにそう言うと、先ほど堰き止められた男性器を今度は丁寧に擦りあげられた。

「噛まれてイキそうなくらい勃ってんじゃん」
「うっ……それ、は……さっきので……」
「つーか随分イジんのうまいじゃん? どこで教わったんだよ」

 こちらを見下す目を見て、ゾッとした。
 キラキラとして見えた飴色の瞳が、瞼を細めて濃いべっ甲のような色に変わる。それはそれで美しいのだが、その鈍い光り方に怒っているのだと伝わった。
 そして同時に、出雲の顔が自然と浮かんでしまっていた。

「お前の触り方を……真似ただけだ」
「へぇ?」

 ゆっくりと、長い指をもつ綺麗な手がおりてくる。そして指先が喉仏を撫で、そのまま首をきゅっと絞める。それほど苦しくはない、それでも少しばかり呼吸がしづらい。
 しかしそんな物理的な息苦しさよりも嘘をついてしまったことが、苦しかった。

「そんなにイキたいなら天国見せてやるよ」
「ぐっ、うっ……!」

 首に手をかけられたまま、激しく腰を打ちつけられる。

「あっ、あっ、あっ、あっ」

 あああ、やばい、久しぶりだ。このプレイはまずいのに。
 隼人は自分の気分でとことん優しく抱いたり、少し意地悪にでも甘く抱いてきたり、様々な方法で俺を可愛がる。
 そして本当に機嫌が悪い時は、首を絞め、皮膚に歯を立て、息のできない俺を快楽に溺れさせる。
 首を絞められ息のできないまま奥まで突かれると、何度も何度も意識が飛ぶ。でもそれがとても……とても、気持ちがいい。恐ろしいと思いながら病みつきになっている自分がいる。
 意識が戻る度に一気に吸い込まれる空気に溺れて、また快楽に溺れて。
 隼人はどんな抱き方をしても、俺の身体を可愛がるのがとてもうまい。
 うまいのだが、でも俺は、口には到底出せないが、この、殺されるみたいに抱かれるのが一番好きだ。

 ――愛してる、玲児、愛してるよ。

 いつもより口数多く愛してると言いながら、何度も何度も俺を殺す、そんな重たい重たい愛され方が好きなんだ。




 ※※※※※※※




 どうやら自分は行為の最中、気を失ってしまったらしい。
 まぁしかし、あの抱かれ方をした時にはよくあること。
 身体を起こそうとしたが、うまくいかない。なのでベッドの端に座っている背中を、人差し指でつんつんと二度つつく。

「あ、起きた?」
「む……」
「どっか痛む?」
「むぅ……? 全部だな」
「まじか、ごめん」
「貴様の気が晴れたなら構わん」
「んー……」
「……あんなにしたのに晴れんのか?」
「いや、だって……」

 首をさすって項垂れる背中を見て、容易にしょぼくれた顔が想像できた。思わずくすりと笑いが零れる。

「何笑ってんだよ」
「いや……そんなに嫌だったならアソコにはもう触らん」
「ちっげぇよ、そうじゃなくて…………乳首とか触られんのも嫌だけど、なんか触り方がさ……玲児らしくないっつーか」
「む……?」
「……だから、さ。なんかあった?」

 そんな、些細なことで。
 隼人が他の女を抱いてるとか、射精の回数が減ったとか、自分もモヤモヤしていたことはあったが、抱かれている間にそれらのことはもうどうでもよくなっていた。
 それよりもそんな大したことのない、些細なことであんなに怒って殺さんばかりに俺を抱いてくるこの男が愛おしくて堪らない。
 俺が出雲とセックスしたと知ったら、どんな反応をするのだろう。
 罪悪感は確かに存在している。しかし今度こそ俺を殺してしまうのではないかと考えると異様に心が弾んだ。
 コイツときたら、どんなによそで悪さをしようが、いい思いをしようが、俺のことをこんなにも愛しているのだ。
 本当に、本当に、可愛い男だ。

「何もないに決まってる。貴様の反応があんまり良かったから楽しくなっただけだ」
「はぁ? お前なぁ!」
「む、やっと振り向いたな。ほら、起こせ」
「あぁ? なんだよ」

 むすっとした顔が振り向いて、むすっとしたまま伸ばした手を掴んで引っ張り起こす。乱暴だが、ちゃんと自分の胸におさめて、抱きとめてくれるから嬉しい。
 それにしても。
 目の前にある、隼人の乳首をじっと見つめる。
 見てると思わず触りたくなる。何故だろうか? 昔より美味しそうに見えるのだ。少し大きくなったのか。俺には嫌がる癖に、他の女には触らせているのか。
 まぁ俺には情けない姿を見せたくないとか、そんなとこなのだろう。

「隼人」
「ん?」
「首の……噛まれたところが、すごく痛む……痛いぞ、むむむ、痛い……」
「は、そんなに?! ちょっと見せて」

 噛み跡のくっきりついた肩に顔を寄せてきた隼人の唇に、つんと肩で触れる。そして不思議そうに目を丸くしてこちらを見た隼人に、くっと口の端を持ち上げて笑みを見せる。

「痛いから……舐めてはくれないか? 俺がいいと言うまで」
「なんだよそれ……」
「少しくらい我儘を言ってもいいだろう? 舐めてくれ。歯を立てて傷を増やすなよ。たくさん舐めてくれ」

 からかわれているんだと気がつき、眉根を寄せて目を細めて俺を見る。しかし俺が素知らぬ風に肩をすくめてみせると、ふとため息をついた。

「……わかったよ。気が済んだら言ってくださいね、お姫さま」
「ああ、肩がふやけてきたらもういいと言ってやる」

 噛み跡に舌が這う。気持ちがいい。
 そしてとても気分がいい。
 隼人は、この美しい男は、俺のもの。
 俺の前ではこんなに男らしく、そして可愛らしい。
 こいつが誰を抱いていようが構わない。
 知らないところがいくらあろうが構わない。
 誰と何があろうが、隼人は絶対に、俺のものなのだ。



 ※※※※※※



「あ、あん、んっ、玲児くん、やぁ……おっぱいいじりすぎ、ですよぉ……」
「何故だ? 触ると中が……ん、すごく、気持ちよさそうだ」
「だって……おしり、きゅんきゅんして……あっ、も、だめですぅ、だめぇ……れいじくんの、えっち……」

 腰をくねらせ、中をうねらせる姿に興奮する。別にいいんだ、隼人が触らせてくれないなら。
 こんなに可愛らしい反応をしてくれる出雲がいる。
 出雲はこんなに可愛いけれど、俺をたくさん気持ちよくさせてくれるけれど、愛してはいない。
 好きという気持ちもあるけれど、愛じゃない。
 隼人も同じだ。
 いまならわかる。
 俺も、隼人も、どこで何をしようとお互いのもの。
 そうだろう。
 隼人も同じなのだろう。
 そうだろう。
 心の中で呼びかけながら、俺を見て頬を染める可愛らしい唇にキスをした。







 end.
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