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タチカレが友達のタチカレに寝取られたので子羊の逆襲を決行します⑧
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「玲児は? 何考えてんの?」
「何がだ」
降ろしかけた腕は今度は隼人に掴まれる。もう完全に彼の興味は俺にはなく、琥珀色の瞳を燃やしながら、恋人と睨み合いを続ける。
俺だったらすぐその迫力に負けて目を逸らしてしまうだろう。さすが玲児くんだ。
「こんな格好の奴の酒飲んでたんだろ? 何考えて飲むわけ? 中身どうなってたか教えてやろうか。それとも見せてもらった?」
「くだらん。帰るぞ」
「あーでもお前ら二人じゃなんもできねぇよな。せっかくぶら下がってても使い物にならねぇんじゃ」
「大鳥」
二人が作った、獣が唸り威嚇し合うような空間に、涼やかな葉を揺らすような声が凛と響く。
「喧嘩、しないよ」
隼人の肩にそっと手を置いて、耳元でそれだけ伝える。
「チッ」
本当にたったそれだけ、その一言だけで、隼人は玲児くんの手を離した。顔も逸らして睨み合うのをやめて舌打ちすると、次の瞬間にはニッと片側の口の端だけあげて笑ってみせる。
「喧嘩じゃねぇよ。可愛いヤキモチだって。な、玲児ぃ?」
話を振られた玲児くんも、険しかった表情のおもかげがないほど目を丸くしていたが、ここは話に乗った方がいいと判断したのか咳払いをして頷いた。
「たわけ。人前で大声を出すな。みっともない」
「じゃあ二人きりで大声出しに行こうぜ。このイライラ鎮めてくれよ」
これは……冗談っぽく言っているように見せているが、実際まったく落ち着いてないのだろう。玲児くんの肩を引き寄せる腕からも、近づけた顔からも強引さが消えず、感情がひしひしと伝わってくる。
しかし当の本人は俺でもわかるこの態度に対し、持ち前の鈍感さで肩を浮かせて驚きと照れに声を荒げるだけだった。
「なっ、貴様何を! 人前だと言っているだろう?!」
白い肌を赤らめて、ただ近づいた顔に照れてる。玲児くんは本当に、ほんっとうに、あの顔に弱いのだろう。ご愁傷さまです。人のことはあまり言えないけれど。顔の作りが良いのはもちろん、毛穴という毛穴からいい香りのフェロモンが出てると思う。
「何考えてんだよ、むっつりスケベ。あー、加賀見、送ってくのやっぱナシでいいわ。どっか寄って帰るから。な?」
「こんな時間から……気が進まん……」
「そういうなよ。あ、お前らじゃあなーお邪魔しましたーっ」
呼びかけているようでこちらのことなどまるで眼中にはなく、それなので当然返事など待つこともなく、あっという間に二人は玄関の扉から出ていってしまった。
扉が閉まった直後はガヤガヤと二人の話す声が聞こえていたが、それも次第になくなって家はいつもの静けさを取り戻す。
「おかえりなさい」
「ただいま」
もう一度二人で帰宅の挨拶を交わして微笑み合う。
「どうだった? 初めての、お客さん」
「楽しかったですよ。ありがとうございました」
「そう。よかった」
やっと靴を脱いで玄関に上がる水泡さんのスーツのジャケットを受け取りながら、それぞれ洗面台と寝室へ別れる。
俺はこの家に何台カメラがあるのか、どこに配置されているのかは知らない。
約束では寝室以外はすべての部屋に配置されたカメラの接続を切ってくれたことになっているし、俺自身カメラが切られるのをこの目で確認している。しかし、それが全部屋の全カメラかどうかはわからない。
スーツをハンガーにかけて、ブラシで整える。クリーニングに出すよう水泡さんに頼まないと。
隼人の香りがする。ついさっき裾から入ってきた指を思い出す。もっと奥に意識を向ければ、玲児くんの吐息が肌を撫でる。
「出雲」
突然背後から水泡さんの声が聞こえてきてハッとする。
振り返ろうと思ったら、クローゼットの扉に手を置かれて、うなじに唇が当てられて、身動きが取れなくなった。
「なんでしょう……?」
「明日、ね? 新しいソファー……来るから。対応、してくれる?」
「えっ?」
「古いのは、引き取ってもらうから。よろしく」
一緒に暮らし始めてそんなお願いをされたのは初めてだった。ずっと家に俺がいるにも関わらず、郵便物などの対応は全部水泡さんがしてくれる。彼は俺をひと目に晒すのを好まないし、人前に出られる衣服も持ち合わせてないからだ。
「あの、明日はご在宅では……」
「うん、いる」
「でしたら」
「その格好で、人前に出るのが……好き、みたいだね? 明日も、その格好で対応するんだよ?」
「え、嫌ですそんな……相手の方にご迷惑でしょうし、不快な思いを……」
「危なくなったら、助けてあげる。君の、好みの人だといいね……?」
隼人より、もっと遠慮のない指が裾に入って、すぐにお尻の奥まった部分を擦る。
当たり前だ、この身体は自分のものではなくこの人のもので、彼のTシャツのみ身につけて過ごしているのだっていつでも好きに触ることができるためなのだから。
そんな格好で俺は水泡さん以外の人と過ごしていた。
「穴、ゆるゆるだね……何もしてないのに。君が、満足できる大きさの人……来るかな」
「あっ、や、あぁ……せんせ……」
「すぐ、先生って呼ぶ」
「み、なわさん……ん、アッ……や、やです、水泡さんじゃなきゃ、や……」
玲児くんを受け入れてから一時間も経っていない穴は、緩んでローションも必要なく指を受け入れる。
くちくちと入口を広げて、奥へ指を滑らせて。
水泡さんが俺の思考を鈍らせる。
こんな格好でいたから怒っているだけ?
なんでソファーを買い換えるのだろう?
俺が元々そのつもりだって気づいてた?
俺の不貞はバレている?
あ、あ、指が抜けてく。ぞくぞくしてきもちいい。背が反って、おしりを突き出して、揺らしてしまう。もっとおしり擦ってと甘えてしまう。
「いま……どんな顔してる? 大鳥を見る君の目は、可愛いね。あんな顔、してる?」
「やだ……そんなこと、言わないでください……せんせいが、いいの、いま、きもちいぃのぉ……」
「ふぅん?」
「あぁぁっ!」
長い指が、関節と指の腹を使って、前立腺とその上のポルチオを器用に押してくる。ぐるぐると円を描かれて、それに合わせて腰を揺らしながら、頭の中に浮かんだ疑問まで掻き回される。
「君が、他に抱かれたいなら……たまには、いいんだよ?」
嫌なの、だめなの、そんなの嫌。
「でも……僕の前で、抱かれようね? 君が抱かれてるとこ、見たいな」
今日だってきっと、見られてた。どこかのカメラはきっと生きてた。
全部全部、見られてた。
玲児くんを誘うところも、実際に堕としたら少し物足りなかったところも。
玲児くんが悪いわけじゃない。
でも先生、そうと知ってれば俺、もっと気持ちよくなれたのに。
「大鳥に今度、抱いてもらおうね」
その言葉に俺は首を必死で左右に振りながらも、玲児くんの射精を受けた時よりも深く深く、カラの絶頂を迎えた。
「何がだ」
降ろしかけた腕は今度は隼人に掴まれる。もう完全に彼の興味は俺にはなく、琥珀色の瞳を燃やしながら、恋人と睨み合いを続ける。
俺だったらすぐその迫力に負けて目を逸らしてしまうだろう。さすが玲児くんだ。
「こんな格好の奴の酒飲んでたんだろ? 何考えて飲むわけ? 中身どうなってたか教えてやろうか。それとも見せてもらった?」
「くだらん。帰るぞ」
「あーでもお前ら二人じゃなんもできねぇよな。せっかくぶら下がってても使い物にならねぇんじゃ」
「大鳥」
二人が作った、獣が唸り威嚇し合うような空間に、涼やかな葉を揺らすような声が凛と響く。
「喧嘩、しないよ」
隼人の肩にそっと手を置いて、耳元でそれだけ伝える。
「チッ」
本当にたったそれだけ、その一言だけで、隼人は玲児くんの手を離した。顔も逸らして睨み合うのをやめて舌打ちすると、次の瞬間にはニッと片側の口の端だけあげて笑ってみせる。
「喧嘩じゃねぇよ。可愛いヤキモチだって。な、玲児ぃ?」
話を振られた玲児くんも、険しかった表情のおもかげがないほど目を丸くしていたが、ここは話に乗った方がいいと判断したのか咳払いをして頷いた。
「たわけ。人前で大声を出すな。みっともない」
「じゃあ二人きりで大声出しに行こうぜ。このイライラ鎮めてくれよ」
これは……冗談っぽく言っているように見せているが、実際まったく落ち着いてないのだろう。玲児くんの肩を引き寄せる腕からも、近づけた顔からも強引さが消えず、感情がひしひしと伝わってくる。
しかし当の本人は俺でもわかるこの態度に対し、持ち前の鈍感さで肩を浮かせて驚きと照れに声を荒げるだけだった。
「なっ、貴様何を! 人前だと言っているだろう?!」
白い肌を赤らめて、ただ近づいた顔に照れてる。玲児くんは本当に、ほんっとうに、あの顔に弱いのだろう。ご愁傷さまです。人のことはあまり言えないけれど。顔の作りが良いのはもちろん、毛穴という毛穴からいい香りのフェロモンが出てると思う。
「何考えてんだよ、むっつりスケベ。あー、加賀見、送ってくのやっぱナシでいいわ。どっか寄って帰るから。な?」
「こんな時間から……気が進まん……」
「そういうなよ。あ、お前らじゃあなーお邪魔しましたーっ」
呼びかけているようでこちらのことなどまるで眼中にはなく、それなので当然返事など待つこともなく、あっという間に二人は玄関の扉から出ていってしまった。
扉が閉まった直後はガヤガヤと二人の話す声が聞こえていたが、それも次第になくなって家はいつもの静けさを取り戻す。
「おかえりなさい」
「ただいま」
もう一度二人で帰宅の挨拶を交わして微笑み合う。
「どうだった? 初めての、お客さん」
「楽しかったですよ。ありがとうございました」
「そう。よかった」
やっと靴を脱いで玄関に上がる水泡さんのスーツのジャケットを受け取りながら、それぞれ洗面台と寝室へ別れる。
俺はこの家に何台カメラがあるのか、どこに配置されているのかは知らない。
約束では寝室以外はすべての部屋に配置されたカメラの接続を切ってくれたことになっているし、俺自身カメラが切られるのをこの目で確認している。しかし、それが全部屋の全カメラかどうかはわからない。
スーツをハンガーにかけて、ブラシで整える。クリーニングに出すよう水泡さんに頼まないと。
隼人の香りがする。ついさっき裾から入ってきた指を思い出す。もっと奥に意識を向ければ、玲児くんの吐息が肌を撫でる。
「出雲」
突然背後から水泡さんの声が聞こえてきてハッとする。
振り返ろうと思ったら、クローゼットの扉に手を置かれて、うなじに唇が当てられて、身動きが取れなくなった。
「なんでしょう……?」
「明日、ね? 新しいソファー……来るから。対応、してくれる?」
「えっ?」
「古いのは、引き取ってもらうから。よろしく」
一緒に暮らし始めてそんなお願いをされたのは初めてだった。ずっと家に俺がいるにも関わらず、郵便物などの対応は全部水泡さんがしてくれる。彼は俺をひと目に晒すのを好まないし、人前に出られる衣服も持ち合わせてないからだ。
「あの、明日はご在宅では……」
「うん、いる」
「でしたら」
「その格好で、人前に出るのが……好き、みたいだね? 明日も、その格好で対応するんだよ?」
「え、嫌ですそんな……相手の方にご迷惑でしょうし、不快な思いを……」
「危なくなったら、助けてあげる。君の、好みの人だといいね……?」
隼人より、もっと遠慮のない指が裾に入って、すぐにお尻の奥まった部分を擦る。
当たり前だ、この身体は自分のものではなくこの人のもので、彼のTシャツのみ身につけて過ごしているのだっていつでも好きに触ることができるためなのだから。
そんな格好で俺は水泡さん以外の人と過ごしていた。
「穴、ゆるゆるだね……何もしてないのに。君が、満足できる大きさの人……来るかな」
「あっ、や、あぁ……せんせ……」
「すぐ、先生って呼ぶ」
「み、なわさん……ん、アッ……や、やです、水泡さんじゃなきゃ、や……」
玲児くんを受け入れてから一時間も経っていない穴は、緩んでローションも必要なく指を受け入れる。
くちくちと入口を広げて、奥へ指を滑らせて。
水泡さんが俺の思考を鈍らせる。
こんな格好でいたから怒っているだけ?
なんでソファーを買い換えるのだろう?
俺が元々そのつもりだって気づいてた?
俺の不貞はバレている?
あ、あ、指が抜けてく。ぞくぞくしてきもちいい。背が反って、おしりを突き出して、揺らしてしまう。もっとおしり擦ってと甘えてしまう。
「いま……どんな顔してる? 大鳥を見る君の目は、可愛いね。あんな顔、してる?」
「やだ……そんなこと、言わないでください……せんせいが、いいの、いま、きもちいぃのぉ……」
「ふぅん?」
「あぁぁっ!」
長い指が、関節と指の腹を使って、前立腺とその上のポルチオを器用に押してくる。ぐるぐると円を描かれて、それに合わせて腰を揺らしながら、頭の中に浮かんだ疑問まで掻き回される。
「君が、他に抱かれたいなら……たまには、いいんだよ?」
嫌なの、だめなの、そんなの嫌。
「でも……僕の前で、抱かれようね? 君が抱かれてるとこ、見たいな」
今日だってきっと、見られてた。どこかのカメラはきっと生きてた。
全部全部、見られてた。
玲児くんを誘うところも、実際に堕としたら少し物足りなかったところも。
玲児くんが悪いわけじゃない。
でも先生、そうと知ってれば俺、もっと気持ちよくなれたのに。
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