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軟禁生活編

この矛盾が僕を潰す①※先生視点

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 できることならば地球上の全ての人間からあの子の記憶を消し去りたい。
 僕だけが知ってる僕だけの可愛いあの子にしたい。他の人間からあの子の名前を聞くだけで不愉快だ。
「なぁ、今日なんでいずもん休んでるの?」
「六人目……」
「なにそれ?」
「僕のところに、出雲が休んでる理由を……聞きに来た、生徒の数……」
 今日は三年生の登校日だが、当然出雲は休みをとっている。僕の家で変わらず可愛くお留守番だ。
 それはいいとして。朝から昼休みになる今まで、出雲の友人なんだか知らないがやたらと休んでいる理由を聞かれる。知人からしたら出雲が頻繁に保健室に出入りしていたことは周知の事実だったようだ。あれだけ毎日のように来ていれば目撃者が多いのも当然といえば当然だろう。
 この六人目の生徒……竿役をさせたことのある山下に関しては目撃したどころの話ではないけれど、この子はよくもまだ僕の前に顔を見せることができるなと度々驚かされる。ここまですれば出雲から離れていくだろうという想定の範囲を、何回も超えてくるのはメンタルが特別強いからなのか出雲を諦めきれないからなのか。
「三年生は……午前まで、だよね? 帰れば?」
「もう帰るけどさ。つーか先生の弁当、もしかしていずもんが作った? 既視感ある」
「黙秘……」
「やっぱりいずもんじゃん」
 やや乱暴にソファに腰を落とすのを見ながら、帰らないのかとうんざりした。イライラするだけなので無視して出雲が持たせてくれたお弁当に意識を向ける。朝に弱いくせして出雲は僕より先に起きており、姿を探してキッチンに行けば眠そうに目を擦りながらフライパンを振っていた。きっと六時前には起きて支度していたのだろうと思うとあまりにも愛しくて、後ろから抱きついたら火傷しますよと怒られてしまった。自分より僕の手を心配してくれたのが嬉しい。
 起きて寝顔があるのも、あの子の気配を感じるのも好きだ。しかしあの子が来てから家が埃一つ見かけないほど綺麗なので、日中ゆっくりとできているのかどうかは心配だ。夜は一緒にベッドに入るのに僕より早く起きているのだから昼寝でもしてくれてればいいのだけれど。あとでタバコを吸いがてら様子を見てみよう。
「でもなんで先生が学校に来てないいずもんの作った弁当持ってんの? まさか先生の家にいんの?」
 この子本当に面倒くさいな。無視したいけれど嗅ぎ回られるのもうざったい。
「君さ……あそこまでされて、まだ僕たちに関わろうとするの? 出雲からしても、迷惑。わからない?」
 ソファに顔も向けずに話したので表情は読めないが、きっとこんなことを言ってもあまり効果がないのは悟っていた。
「別に嫌われてたっていいけど、心配なんだよ。いずもんが傷つくのは嫌なんだ。先生が最低なやつってことだけはわかってるし。大鳥ハヤトといい、いずもんは男の趣味悪いな」
「僕のことは、何言ってもどうでもいいけど……出雲を悪く言うのは、不愉快」
「だってそうじゃん。背が高くて顔が良ければあとはなんだっていいんだろ」
「ああ……負け惜しみ……?」
 僕の発言と同時に立ち上がり、床が軋むほど荒々しい足音と共に彼が背後から迫ってくる。それでも振り向かないでいれば、白衣の襟元を掴んで無理に顔を向かせられた。わかりやすく怒っている顔と暗い目の色を見て、愛情と嫉妬と正義感が入り交じってこの子も相当複雑な感情を持ってしまっていることを知る。
「負け惜しみじゃない。先生より俺の方がいずもんのことわかってるし、想ってるよ」
「そう」
 あまりに薄い反応に山下の頬が引き攣る。白衣を握る手が震えて、生地がミシと嫌な音を立てた。
「余裕ぶっこいてるけど、動画流されたって俺は別にいいし。先生と出雲のこと他の先生や生徒にバラしたっていいんだからな。出雲のためにはできればしたくないけど」
 何を言うのかと思いきやと、思わず鼻で笑ってしまった。山下は少しは僕が焦ると思ったのか、そんな態度を見て気に食わなそうに口をへの字に曲げて顔をしかめる。
「君が……言わなくても、バレるよ。そのうち」
「は……なんだよそれ」
「君に説明する気は、ないけど」
 山下を除いて五人の生徒が僕に出雲のことを聞きに来る現状。目立つ駅前で何度か車に乗せているし、それを目撃されていてもおかしくない。同性じゃなければとっくにアウトだが、その点は助かったというべきか。
 最初のうちは気を使っていたが普通の恋人になることはできないだろうと察してからは衝動的に動いていた。どこかでバレてしまえと思っている。僕からあの子を取り上げてしまえと。今しているのはそれまでできるだけ傍にいるための悪あがき。
「先生、出雲を手放す気はないっつってたじゃん」
「そう……したかったんだけど、ね。君が、言うとおり……僕は……最低な男だから」
 襟を掴む手を剥がし、空のお弁当箱に手を合わせる。
「ほら、タバコ吸いに行くから……もう、帰りな」
 事務机から離れると、戸惑いがちに山下も後ろについてくる。そうして扉を開ける寸前にちょっとした気まぐれで彼に本音を漏らした。自分は今どんな顔をしているだろうか。笑えていればいいと、思うけれど。
「君が……羨ましいよ。出雲と同い年で……自分が想われていないと知っていても、ただ出雲のことが好きで。僕が君の立場なら何をするかわからない」
 悔しいから彼の顔は見ずにそのまま廊下を歩き出した。反対方向に向かって足音が遠ざかっていく。
 屋上へ続く階段を上がりながら一足早くタバコを白衣のポケットから取り出し口に咥える。鍵を開けて屋上へと出れば思いの外風が強く、髪が煽られうっとおしかった。前髪を燃やしそうだなと考えていたら前に出雲と屋上に出たときに同じようになり、後日ヘアゴムをもらったことを思い出した。ポケットを探るとやはり入れたままだ。
 髪を後ろにざっくりと結いながら、出雲と離れたあとも当分はあの子の残り香を感じて苦しむに違いない自分を憂う。
 風に吹かれながらなんとかタバコに火をつけ、スマートファンに入っているウェブカメラのアプリを立ち上げる。安価のペット用カメラだが画質も動作も問題なく、接続すればすぐに自宅の映像が映し出される。お昼ごはんを食べているだろうかとダイニングテーブルを見るが人影はなく、リビングのカメラに切り替えればソファで体育座りをしてうたた寝している出雲の姿が見えた。こっくりこっくりと危なげに首が動いている。落ちそうだなと心配していたら、ハッと顔を上げて目を開く……が、また小さな頭は膝に沈んでいく。
 いつ見ても可愛いな。ずっと見ていられる。早く帰りたい。
 出雲によく気持ち悪いと言われるが、こんなことをしてるのがバレたらまた気持ち悪いと言われてしまうな。それでも可愛い君をいつでも見たいし、ちゃんと家にいるのを確認できないと落ち着かない。
 僕の家の中と、この画面の中でだけ出雲が存在してる。それがいい。みんなこの子を忘れ去ってほしい。でもそんなの不可能だし、それで出雲が幸せなわけではない。
 タバコの煙を吐き出し、風にさらわれていくのを目で追う。
 画面の中にはソファでとうとう横になる出雲の寝顔と呼吸に合わせて上下する胸が映し出されていた。



 食事を終えて一緒に食器を片付けていたら出雲がとても言いづらそうに、二人で買い物に行くのもできないかと相談してきた。聞けば僕の手の大きさに箸が合っていないと考え、買い物に同行して選びたいのだそうだ。
 しかし僕は当然首を縦に振ることはない。
「俺のことなんか誰も気にしませんよ。目立つ先生が隣にいたらなおさら視界に入らないと思うのですが」
「そういう問題じゃない」
 いつもに比べて冷たい返事に出雲は俯いて沈んだ声で返事をした。
「そうですよね……ごめんなさい」
「もう二度とここから、出られなくてもいいって……言ってたよね?」
「ごめんなさい」
 気まずさからか下を向いたまま逃げるようにキッチンから去っていく腕を掴み、強引に引き寄せる。ルール違反だがひと声かけずに、僕の腕の中へよろめいてきた出雲を抱き上げた。
「え、あっ……先生? ごめんなさい、怒ってらっしゃいますか? 先生……」
 焦る声が耳元に響く。この声は久しぶりに聞いた気がする。
 焦り、早口になる可愛い声を聞きながらそのまま寝室まで出雲を連れていき、ベッドに転がした。仰向けに寝かせて足を大きく開かせば、Tシャツは捲れてすぐに隠すものはなく全てが晒される。だらりと柔らかそうな性器が小さくて可愛らしい。
「そんなにすぐに、意見が変わるなら……外に出たら、そのまま逃げ出したく、なるかもね?」
「そんなことありません! 俺はずっと先生のお傍にいたいんです」
「そうかな……きっと今、久しぶりに外に出たら。楽しくって、そんな気持ちも……なくなるよ?」
 両足の太ももを抑えて尻を高く上げさせ、いつ見ても触ってほしそうに口の薄く開いたお尻の穴に舌を伸ばす。びくっとふくらはぎが強ばるのが手に伝わって、さらに舌を上下させると腰が小刻みに跳ねる。
「あっ、あっ……せんせっ、あっ……!」
 ヒクヒクと窄まるのに合わせてぺちゃぺちゃと音が響く。
「自分で太もも、持って?」
「あ、ひぁっ、あ……」
 喘いだままゆっくりと出雲の手は自分の太ももを支える。僕は予定通り空いた手を胸元に持っていき、尖端に爪を立てぐりぐりと押し潰した。
「いっ……! いたい、せんせい、痛いですっ……!」
「言うこと聞くのはいいけど、返事。ちゃんとしようね?」
「あ、ごめんなさいっ……せんせ、やっ、いたいぃ……」
「そう? さっきまで、萎えてたのに……立ってるよ?」
 もっと痛くしてと言っているように、筋を立てて勃起した性器に触れると反動でだらりと我慢汁が垂れる。竿には触れず、柔らかな亀頭にそれを塗りつけ人差し指と中指と親指だけ使ってくちゅくちゅと小刻みに扱けば、出雲は大きなため息を漏らした。
「はぁぁあっ……! あー、あー……き、とう……きとうだけ、やっ、あっ、あー……」
 おしりを舐められながらの亀頭責めは脱力感が強い快感らしく、開きっぱなしの口から頭の悪そうな声を漏らして、目線は上を向いてどう見てもダメな顔をしてしまっている。それに気分を良くして乳首にだけはまた意地悪く爪を立ててあげると、電気が走ったかのように大きく背中を逸らし歯を食いしばる。
「イッ……! いあっ、や! いだ、あ、いたいの、よくなっちゃうう! やだぁ……!」
「良くなるなら、いいね? 嫌じゃないよ?」
「やだぁ……っ! やだ……っ、いたい、です……やだ……っ」
 首をいやいやと横に振って拒否反応を示すことに、せっかく気分を良くしていたのにまたイラ立ってくる。今日は随分と反抗的じゃないか。そんなに外出したかったのだろうか。気に入らないな。
 出雲から一度手を離し、彼がそのまま動けず肩で息をするのを確認してからその場から離れる。いくつか道具を持って戻ると、出雲はそれを見て顔を強ばらせ涙の浮かぶ目を細める。
「先生……ごめんなさい。俺、どこにも行きません。行きませんから……」
「うん? そうだね。当たり前のこと言って……どうしたの?」
 微笑みかけるが、出雲は安心するどころか泣きそうな顔で鼻をぐすっと啜る。噛まれたりしているのに今更なにをそんなに脅えるんだろうか。可愛いからいいけれど。
 右左それぞれの太ももとふくらはぎを一纏めに縛り付けて固定し、両腕を上げさせて手首も縛り上げる。ぶかぶかのTシャツ一枚着て完全に拘束された出雲の姿はあまりに背徳的で興奮に身震いした。
「抵抗しないで……いい子だね」
「違います、悪い子です……ごめんなさい、先生、ごめんなさい……」
「そう……そんなに悪い子なら、明日はずっとその格好で……待ってる?」
 手にローションを垂らし、さっきまで舐めていたために既に濡れて光っている尻穴に馴染ませる。冷たさに腰を引こうとするが、拘束されているためにそんな動きも満足にできないようだった。人差し指がするりと中に入るのを確認し、抜いてすぐに中指も一緒に挿入する。
「あ、あ……や、です……ずっと、このかっこ、や……」
「じゃあ今日、頑張ろうね? 可愛いところ、たくさん……見せて?」
 まだ前立腺には触れず、浅い所で激しくじゅぱじゅぱと音を立てながら出し入れを繰り返して入口を刺激する。身動きが上手くとれない状況で快感を逃すことも許されず、肩と腰だけシーツにつけビクンビクンと背を跳ねさせ、叫び出しそうなのを我慢するように顔を歪める。苦しそうで気持ちよさそうで、嗜虐心が煽られる。
「あ、あ、はげしっ、ひぁ、せんせっ、おしりあちゅ、あついぃ……! それやだ、やっ、あ、あ、おしりめくれちゃ、あ、あぁっ」
「やだって言うの、禁止。言うなら、もっとしてって言うんだよ?」
「ひああっ!」
 指をもう一本増やし、三本の指でさらに激しく掻き立てる。指が抜ける度に入口が捲れてぶじゅっと音を立てる様があまりに卑猥で、こちらも熱い息が漏れる。
「ほら、なんて言うの?」
「あっあっ、や、あ、ちがっ……もっと、もっと、ぐじゅぐじゅ、こしゅって……こしゅってくだしゃ……あっ! やだ、や、あっ、ごめんなさいいぃ……っ」
 虚ろな目で必死に要求を答えようとするが上手くできず、困惑しながらも声の止まらない出雲が可愛くて可愛くて、もっと喜ばせてあげたくて指を奥まで挿入する。すると中がぎゅっと締まって悦んだ。少し探ればすぐに物欲しそうに膨れた前立腺にぶつかり、触れただけで今まで以上に溶けた声が漏れる。
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