疼いて疼いて仕方ないのに先生が手を出してくれない

松原 慎

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泥沼編

可愛い可愛い馬鹿なあの子(後編)※先生視点

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「ほら、また……僕の顔、汚して。こういう時はなんて言うの?」
「ん……ごめんなさい……」
「もっと、してほしい?」
 太ももに口付け問いかける。すぐに可愛いおねだりが聞けると思ったが、 息遣いが聞こえるだけで言葉がおりてこない。目線だけ上に向け確認すれば、出雲は息を乱しながらも静かな瞳で僕を見下ろしていた。
「せんせい……?」
 そしてついさっきまで僕が舐め回していた足先をピンと綺麗に伸ばし、僕の肩にトンとつま先を置いた。
「ほしがってるのは先生でしょう?」
 吐息混じりの熱い声をしてそんな風に囁く。予期しない返事に出雲の顔を反射的に見上げれば、つま先は僕の頬を撫でていった。
「俺の足、よだれまみれですよ? あんなに必死に舐めて変態さんですね」
 出雲の足から僕のつけた匂いがする。マーキングしたかのようだ。その足が顔の輪郭を優しく優しくなぞっていって、顎に触れるとぐっと上に持ち上げられ首が反る。顎につま先を引っ掛けたまま、出雲は涙袋を浮かべて微笑んだ。
「そんなに綺麗なお顔を汚して、足とかお尻の穴とか汚いところばかり舐めて、悪い子はどちらですか?」
 ここも汚れてる、とくすくす笑いながら足の親指で頬骨の濡れた部分を撫で、また顎をくっと上げる。
 こめかみがドクドクいってる。脈が痛いほどに早い。
 冷めた顔して求めてきたり、挑発してきたり、脅えてみせたり、従順な態度をとったり。
 かと思えばまた、こんな。
 ぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。もうカラカラという音すら聞こえない。息遣いがうるさいと思ったら、僕自身のものだった。
「先生、さっきはあんなに血を舐めたそうにしていたのに……上手におねだりできませんでしたね?」
 すっと顎からつま先が離れていくのを見て、たまらず踵を掴んでまた足の先に舌を伸ばした。親指を吸って、軽く歯を当て、指の腹をぺろぺろと犬みたいに息を荒くしながら舐める。
「あ、せんせい……だめです、そこじゃないでしょう?」
 両手で足に縋るように包み、足の指の間に丁寧に舌を這わせて舐める。理性的じゃない。こんなに本能的に求めている自分が信じられない。
 出雲の身体を長い時間ずっと愛でている時もそうだが、いつの間にか僕がこの子に奉仕するようになっている。触れないようにしていたはずなのに。
「先生、だめですよ? 先生?」
 太ももからふくらはぎまで高く上げ、つま先が遠くへいってしまう。跪いたままではさすがに到底届かない位置だ。目で追う僕を見て出雲は口に手を当ててやはりくすくす笑う。そうして今度は自分で太ももを支えて足を広げ、そこを見せつけてくる。
「先生が舐めたいのはおしりの穴ですよね。たくさん気持ち良くしてくれるんですよね?」
 またヒクヒクと動いてる。舐めてほしそう、というよりなにか飲み込みたいといっているように窄ませて。
 自分の口を汚す唾液を手の甲で拭い、片手は腰をこちらに寄せ、もう片方の手は太ももをぐっとおさえつけた。
「舐めたい」
 そこに顔を近づけると、僕の息がかかって出雲の太ももがぴくっと反応した。
「舐めて、いい……?」
 舌を出せばもうそこに触れられる。でも出雲がまだうんと言わないため、僕は上目遣いに見つめ返事を待った。
 だめだと言われたらどうしようかと不安に思いながら待っていると、出雲は僕の頭をそっと撫でた。
「先生ったら可愛いですね……ふふ、いいですよ? たくさん舐めてくださ、ぁ、んんっ」
 言い終わるのを待たずに口をつけ、表面を舐め始めた。
 ここを舐めるのは今日が初めてだが、いつも出雲に愛撫する時は丁寧に、少しずつ高めていけるように刺激していく。しかしそんなこと考える余裕はなくただがっつくように上下に舌を動かして乱暴に舐めた。
「あ、あ、せんせ、はげしい……はぁ、そんなに、ほしがって、あっ……あぁ、きもちいいです、ん、いぃ……」
 それでも出雲がちゃんと感じてくれるのが嬉しくて、太ももをぐいっと押して座っていた身体を横に倒した。両足を押さえつけて上に向いた穴の入口に舌を浅く出し入れする。意外と皺は感じられず、つるつるしたような滑らかな感触だ。
「あっ、舌が、した、はいってる……あぁぁ……むじゅむじゅ、する……せんせ、もっと、もっと……むずむずするの、とまらなくて……ん、がまんできない……もっと舌で、おくまでほじほじ、ほしいですっ……」
 ちゃんと君も欲しがってくれるのか。
 可愛い声が聞けて安心して、言われた通り舌をもっと奥まで押し込む。不思議な感覚だ、指を入れている時は腸が締まるのを感じられたがさすがに舌の大きさではそこまで感じることはできない。しかし入口だけはぎゅうぎゅうきつく締まる。
 限界まで入れた舌をなるべく大きく円を描くように動かし、壁を探る。太ももの裏がビクビクしているのでそこを人差し指と中指で撫でると、軽く仰け反ってその拍子にお尻が押し付けられる。
「ひゃ、ぁ……っ! はぁ、あぁ、あぁ……や、これ、や……ずっと、焦らされてるみた、い……せんせい……せんせい……」
「ちゃんと、気持ちいい……?」
「ん、はい……でも、やですっ……もっと、つよいの、ほしくて……たまらないんです……!」
「強いの? 何して、ほしい?」
 口を離し、指で表面を撫でながら様子を伺う。出雲は潤んだ瞳で部屋の遠くを見ていたが、ゆっくりと僕に視線を向けた。
「早く、先生のいれてほしいです……」
 涙を浮かべて薄ら開いた濡れた唇でそんな要求をこんな興奮した状態でされ、もう何もかもどうでも良くなってくるな。
 深いため息とともに眉間をさすって、少しは冷静になろうと努める。
 ここまでしていても入れないのは、もう高校卒業がどうたらとかそんなことを気にしている訳ではない。
 自分がどうなってしまうかわからず恐怖しているからだ。
 僕は恋人という存在がきちんといたことはない。二度だけ押しに押されてそれらしい関係になった女性がいたが、いざ挿入となると一人には泣いて拒否され、もう一人はあんまり痛がるので可哀想になって中断した。
 元々人間関係が煩わしい僕がまた試してみようという気になる訳もなく、だが性的欲求はなかなか強く、それ以降はお金を出して解消してそれで全く問題なかった訳だが、まさかこんな出会いがあるなんて思ってもみなかった。
 こんなに可愛くて愛しくて全部が欲しいと思った相手が、これまでだけでもこんなに僕を受け入れた君が、身体まで問題なく受け入れることができてしまったら、自分はどうなってしまうだろう。
 性的な問題だけじゃなく、誰にも受け入れられたことなんてない。それを要求したこともない。
 どうでもいいことだった。
 受け入れられることで自分のバランスが崩れていく。
 だから君から完全に離れならなくなるのが怖い。怖くて仕方がない。
「先生……?」
 自分の足元に座り込んだまま動かなくなった僕を心配して、出雲は体を起こして膝立ちになり、頭をぎゅっと抱いて頭を撫でてくれた。
「ごめんなさい。しない約束……ですもんね?」
「出雲……」
「はい?」
「もう、帰って」
「え……嫌です」
 ますます僕の頭を強く抱きしめる。僕はその手は剥がすことはできない。すごく居心地がいい。
「君は、もっと。僕を怖がって、いい。僕も、君が……怖い」
「怖いって、どうしてですか? 離れません。俺は先生のものです。さっきお話したじゃないですか」
 そっと身体を話した出雲が僕を見下ろして頬を撫でて、額を撫でて。今度は撫でた場所に唇を落として。
 動けない僕の耳に口を寄せた。
「何してもいいんですよ。怖がらないでください。足、切り落としてみます?」
 そうやってすぐ煽る。どこまで本気なのか、僕も、君も。
 そのまま出雲は、僕がいつもするように耳の縁をなぞるように舐めた。ふっと息を吹きかけられ、耳たぶを甘噛みして。そのまま首筋に唇を滑らせる。
「先生、好きです」
 首筋から鎖骨まであちこちキスしながら、性器に手を伸ばしズボンの上からさすり、握る。
「俺のこと欲しくて独占したくてしょうがない先生が、可愛くて、大好きです」
 愛なんてわからないけれど、君の感情も僕の感情も正しい愛の形じゃないのだけはわかる。
「帰った方が、いい」
「嫌です」
「帰って」
「今帰ったらもうここに連れてきてくれないでしょう」
 出雲は制服を脱いでいき、僕の服も脱がせ始めた。
 言葉でしか拒否できない僕は大人しく脱がされていき、座っている僕の股間に顔を埋め、出雲は半勃ち状態のそこを咥えた。先だけ口に含んで、竿をじっくりと扱かれていく。
 尿道をちゅうちゅう吸いながらも裏筋を器用に舐められ、気持ちが良くてすぐに完全に立ち上がってしまったのを見て、はぁぁ、と深いため息をつく。先端にキスをして、カリ首や竿、根元に向かってたくさんたくさん、愛しくてたまらないという顔で口付ける。
「入れたくて仕方ないんでしょう」
 そして鈴口を口に入れて少しづつ、その小さな口にはあまりに太いモノを埋めていく。さすがにこの姿勢では全て口に入れることはできないが、それでも喉に当たるのがわかり吐息を漏らすと、僕を見て目を細めて喉の奥をきゅっと締めた。
「いずも……やめて」
 口で言って聞く子じゃないのはわかってる。
 舌を動かしながら頭を上下に動かし、喉の奥の限界のところまで入れ、上顎をごしごしと擦って、う、うっと漏らす声は苦しいだけじゃなくて気持ちよさそうだ。
 身体の中が熱い、気持ちよさと興奮で熱くて溶けそうだ。
 こんなもんじゃなくて、またこの間みたいに食道の入口まで突っ込んでやりたくなる。
「いま……帰らない、なら……ああ、もう……ん、いずも……?」
 息が荒くて上手く話せない。夢中で僕を頬張る頬を軽く叩く。すると口には咥えたままだが、動きを止めて生理的な涙を溢れさせた瞳で見上げてくる。
「もう、僕は。君をここから、出したくない。だから、帰って」
 出雲はちゃんと聞いてなかったのか、また性器を口の中で舐め、ぐっと奥まで入れて上顎を擦る。そして奥まで入れるためか口内に少し空間を作っていたのをやめ、じゅうっと口の中全体、特に頬の壁を使ってじゅるじゅると音を立てて吸い始めた。
「う……いずも……いずも……っ」
「んぐ、ん、はぁっ……先生、いつでも、イッてくださいね……? 好きなとこで、出していいですから」
 中で下を丸めて裏筋に擦り付けられながら何度も何度も吸い上げられて、もう限界に近かった。出すことで頭がいっぱいになる。特に時折また喉奥まで滑り込んで締められると中に入れているみたいでたまらなかった。
 そうだよ。
 ずっと入れたくて入れたくてたまらない。
 そんなの当たり前だ。
 君に入れたい。
「いずもっ……で、る……もう、でるよ……?」
 はぁ、と息を漏らせば、出雲が吸い付きながら奥まで咥え、奥を短く何度も突くように小刻みに頭を動かされ、あんまりにも気持ち良くて情けない声と共に僕は出す場所を考える余裕もなく果ててしまった。
「う……あぁ……」
「んぐっ……ぐ、かはっ」
 小さな口から、何かの手品かと思うほどに大きな男性器がずるりと抜けていき、出雲は口を抑えて何度か咳き込んだ。
 まだ直後でぼんやりした頭ではそれを気遣ってあげることもできず、手に吐き出された精液をまた舐め取り啜る姿をただ見ていた。
「俺じゃなくて先生が気持ちよくなっちゃいましたね」
 何事も無かったように微笑み目の前に座る、その愛しい体を抱き寄せた。
「帰らないの?」
 これで聞くのは最後にしようと思った。自分がなんて答えて欲しいのかも分からない。
「はい」
 迷いなく頷く君は馬鹿だと思った。
 子供だから何も分かっていないんだ。
 どう考えたって僕は悪い大人なのに。
 僕らはお互いの汚れた唇を自然と重ね合わせた。
 聞こえなくなったと思ったカラカラとうるさい乾いた音がまだ聞こえていると思ったら、揺れが止まったかのように少しずつゆっくりになっていき、だが確実に、その音はピタリと止まった。僕はこの耳でそれを、しっかりと感じとっていた。
 
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