疼いて疼いて仕方ないのに先生が手を出してくれない

松原 慎

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日常編

できたら依存してほしい ※先生視点

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 初めて出雲をハッキリと認識したのは生徒会会長就任の挨拶の時だった。それまでも生徒会役員を務めていた彼は特に緊張した様子もなく挨拶をしていたが、緊張とは違う、無理をしているような疲れているような憂いがある。視線の動かし方、話の合間に少し俯き瞬きをする、たったそれだけのことだが違和感を感じた。真面目そうだが崩れたら危うそうな子だと言うのが第一印象だった。
 初めて会話をしたのはそれから少しあと。保健室までわざわざ足を運び、人の良さそうな笑顔をして丁寧に挨拶をしたあの子は、笑顔を作ったままクレームを告げたのだ。
「体調を悪くして保健室でお世話になったところタバコ臭かったと生徒会の意見箱に苦情がきています。一件ではありません。数件きています」
「善処する……」
「プライベートなことまで一生徒として口出しはできませんが、校内では控えていただけませんか」
「善処する……」
 真面目に取り合わない僕に対し、出雲はこの時頬を一瞬引き攣らせた。チックだろうかと気になって注視すると、元々微笑を含んだ顔にさらに笑顔を上塗りした。
「なんでしょう。禁煙する気にでもなりましたか」
「あんまり」
「困りましたねぇ……」
 口ではそう言いながらちっとも困ってなさそうだ。彼にとってはどうでもよく、他人事なのだろう。
 しかし頬の引き攣りに無理やり上へ口を引き上げ笑う表情は非常に気になった。幼児期にチックを発症したのか最近になって出始めたのかはわからないが、彼の年齢ならばストレスから出ている可能性が高いだろうか。
 顎に手を添え眉を下げて困ったように笑っている。物腰が柔らかく親しみやすい、生徒に頼られる生徒会長。けれども端々に、すぐに見逃してしまいそうなほど微かに苛立ちのようなものをやはり感じ取れる。
 しかしスクールカウンセラーなどをこちらから勧めるほどのものでは勿論なく、問題があるどころか優秀な生徒なのでそのままとなった。そのままにしていたら、いつの間にか大鳥ハヤト……件のセックスフレンドに食われていたというわけだ。
 出雲には話していないが実は二回ほど二人が校内で行為をしているのに遭遇してしまったことがある。一度目は屋上へ煙草を吸いに行った時に、屋上へ出る扉の前で。二回目は保健室で。こんなことでストレス解消か、それも結構だが人の仕事場で勘弁してほしい……そうは思ったが、二回とも面倒なので放置した。今となっては放置していなければ何か違っていただろうかと思わなくもないが、自分の性格を考えると放置することは必然であり、今更何を考えても仕方がない。
 結局はあの、綱渡りをして正した姿勢に張り付けた笑顔の隙をつかれた彼は、真っ逆さまに墜ちてしまったという事実が残っただけだ。
 結果を見てこんなことを言うのは格好が悪いのはわかっているが、僕がやりたかった。羨ましいと思った。自分だったなら最後まで可愛がるのに。手放さないのに。
 しかしそれも無理な話なのだ。生徒に先に手を出せたかと言えばノーだからだ。崩す前に籠にしまっておくこともできない。だからこの流れは絶対に踏まきゃいけない決められた道筋なのだろう。
 先生、先生、とよく呼ぶ。
 ほしい、ほしい、とよく求める。
 それにしては僕自身のことはまだまだ見てくれていないあの子。
 求められるのはとても気持ちがいいから別にいいのだけれど。
 きっと僕の考えていることなど(無自覚に)大した興味はもっていないだろう。それこそ他人事だ。自分は好かれている、ただその事実があり、情欲を解消するほんの少しの刺激があればいいのだろう。
 出雲を好いていることに間違いはない。
 ただこの思いがどれほどのものかなど爪の先程も理解できていない。
「ん、んっ……せんせぇ……」
 背面から膝の上に座らせているため、出雲がびくびくと背中を震わすのがよく伝わる。髪を切ったばかりなのだろう、綺麗に刈り上げられているうなじが可愛らしい。清潔感たっぷりなのに汗で湿っていやらしい。
 舐めたい。その汗を全部舐め取って自分の唾液と彼の汗でそのうなじをどろどろに汚したい。しかしそれはしない。それは堪えて唇を落とすだけとする。
「先生、これはっ……もう、ん、手を出してると、いうのでは……?」
 体操服の上から両方の乳首を弄ばれ、息も絶え絶えに訴えてくるその言葉に否定はできない。
「きみが、悪い子だから」
 それぞれの乳首を転がしていた人差し指を突起の下までずらす。ツヤのあるポリエステル生地からぷっくりとした乳首が透け、形が丸見えだ。運動直後で暑かったのかジャージは手に持ち、体操服のドライシャツ姿で保健室にやってきたのだが、よくこんな胸を晒して授業を受けここまで来たものだと驚いた。
「見られるの……そんなに好きになった? こんなに見せつけて……悪い子」
 柔らかな毛質の栗色の髪が耳にかかっている。そこに口付けながら訊ねると、出雲は首を横に振る。鼻をくすぐる髪の毛が可愛らしい。
「違うんです、全然気にしていなくて……ごめんなさい、先生……ごめんなさい……」
「ほんと……?」
 布地を引っ張る硬くなった乳首を爪で少し強めに擦ると、出雲の腰が跳ねた。
「んんっ……せんせぇ……」
「気持ちいいの?」
 頷きながらまた、ごめんなさい、と呟く姿にゾクゾクする。
 出雲はすぐに謝る。あの彼によほど酷い扱いを受けていたからなのかその詳細は興味がないが、気持ちよさそうにごめんなさいと言うものだから加虐心が煽られる。
「ん、ん……先生、もう……もう、おちんちん触ってもいいですか……?」
「だめ」
「やぁ……せんせぇ……」
 突起を摘んで引っ張ると、顎を上に向け腰を引いて反応する。欲しがりで少し痛いくらいを好むからこんなに乳首が大きくってしまうのだろう。痛くしたあとは指の腹で優しく転がしてやると、またよく喘ぐ。
「あぁ……せんせぇ……きもちいい、おっぱいすきです……」
 いつもは大人びた話し方をするのに、行為中はおちんちんとかおっぱいなどと幼児のように言い、話し方も幼くなる。甘えているのか、素の部分でこういうところがあるのか……そんなことを考えていたら、出雲は後ろを振り向いて僕の顔を見上げていた。目が合うと涙の滲む目で笑う。
「先生……今日はたくさん触ってくれて嬉しいです。気持ちよくしてくれて、ありがとうございます」
 可愛い。
 本当はもっと触りたい。入れたい。
 しかしそれはできないので代わりに可愛い唇を塞ぐ。唇の感触を楽しむまでもなく、小さな舌を必死に伸ばして歯列を舐め、中に入ってきた。本当にこの子は堪え性がない。
 いつもならそんなキスはまだしないと咎めるところだが、今日はもうこれだけ触ってしまっているし、特別ということにしよう。絡めてくる可愛らしい舌を彼の口の中に押し戻して、ぐりぐりと舌の中央を舌の根を押し回す。ん、ん、と声が漏れている。
 膝の上で腰や背中をびくびくと震わせ、運動後の若い肌の匂いを立ちのぼらせ、乳首をピンと尖らせ、声を漏らしながら舌を絡ませてきて……よく、よく我慢をしている。セックスしたい。この子のあの縦割れのいやらしいおしりの穴にぶち込んでしまいたい。したい、したくてたまらない。
 お腹の中も頭の中もぐちゃぐちゃにかき回してやりたい。
 漏らす息がだんだん苦しそうになっていたので、唇を解放するとぷはっと息を吐いて虚ろな目を向けてくる。口の端がどちらのものかわからない涎で濡れている。
「せんせぇ……きもちいい、きもちいいです……もぉ、我慢できないです、パンツの中、ぐしょぐしょなんです…………ごめんなさい……っ」
 薄目を開けて半泣きで懇願してくるその下半身は、確かに下着を抜けてズボンにまで小さな染みが漏れだしていた。
「じゃあ、出してみて」
 出雲は小さく頷いて、ズボンと下着を下へとずらす。やっと空気に晒された男性器は亀頭全体が濡れて光り、竿の方までまだらにぬらぬらとしているのがわかる。背中から自分のいやらしいものを見て息を飲むのが伝わる。そしてまた俺を見上げ、口を半開きにして許しが出るのを待つのだ。
「触って……いいよ」
 僕が気に入っている、耳たぶの少し上にあるほくろに舌を這わせながら許可を出せば、あっ、と声を漏らしてそこにすぐ手を伸ばした。人差し指と中指で尿道口を濡らすそれを絡め取り、亀頭に塗りつけながら撫で回していく。そしてたっぷりと我慢汁を馴染ませたところでゆっくりと扱きはじめた。
「あぁっ……あ、あっ……あっ、あっあっ」
 腰を揺らしながら夢中で扱く姿にため息が漏れる。胸も引き続き弄りながら、耳の縁を舐める。出雲は少し腰を浮かせて、当然後ろで立ち上がっている僕の男性器を尻の割れ目にピッタリと添わせた。出雲が腰を揺らす度に刺激され、息が荒くなる。
「せんせぇ、んん、おちんちん、おっきい……あ、あっ、せっくすしてるみたいで、ぁ、うれしいです……はぁ……っ」
「ほんと……悪い子だね。えっちで困る」
「わるいこ……っ、わるいこでいい、ですっ……えっち、すき……すきっ……」
 ぎゅっと目を瞑ると涙が一筋流れた。あ、あ、あ、と声が止まらない。頬はこれ以上ないほど紅潮している。
 こんなに可愛らしいのに無我夢中で自分の性器をしこしこと扱いているのだからたまらない。いつも緩急つけて長い時間をかけて扱く出雲の手が、今日はずっと激しく止まらない。ベッドを囲うカーテンのせいなのかじっとり重い空気の中、水音が響く。
「せんせ、せんせぇ、イッて、いいですか……? きょう、だめれす……ぁ、あっ、だめだめだめ……っ、んっんんっ」
 はぁーっはぁーっと呼吸が激しく、辛そうにして何とか堪えているのが伝わってくる。踵が浮いてつま先だけ床につけて、我慢している。可愛い。こんなになってもちゃんと許可を求めてる。
「じゃあ……今日のこと、謝って。そしたら、イッていいよ……?」
「えっ? あ、や……んん……」
 小さく首を横に振っていやいやするが、早くと急かすと唇をきゅっと噤んで覚悟を決めたようだった。躊躇う顔と頬に浮かぶ汗のつぶが色っぽい。
「みんなに、おっぱい……あ、あ、ちくび、ちくび、見せてっ、ごめんなさい……! あ、あ、イッちゃう、ごめんなさ……っ、あ、あ、あ、あぁっ」
 じゅ、じゅ、じゅ、じゅ、と一際激しく擦り上げられた性器は、びゅるるっとそれまで分泌した大量の我慢汁に負けない量の精液を排出し、膝に引っかかっていたジャージと床を汚した。出雲は背中を逸らして痙攣し、ふと脱力して後ろにいる僕にも抱っこされた子供のようにもたれかかった。
 目を瞑ってそのまま肩で息をし動かない可愛い子の頭を優しく撫でる。
 たくさん気持ちよくなってこんなにたくさん出して、出雲は本当は悪い子じゃなくてとても良い子だ。愛おしい。
「先生……」
 暫くそのまま抱っこして頭を撫でていたら出雲が目を開けた。上目遣いに顔を確認して微笑み、前に向き直ってまた僕を背もたれにする。
「先生……もうすぐ、冬休みなんですよ。気付いてました?」
「うん? そうだね」
「先生に会えないと、困ります……」
 沈んだ声を出すので顔を覗き込むと、むくれていて。目が合うとハッとして微笑を作る。別にむくれていていいのに。
「冬休み……二週間くらい、だよ?」
 それぐらい、というニュアンスで言うと、出雲はがばっと身体を起こし、半身を少しずらして胸板に抱きついてきた。背中に腕を回し、ぎゅっと少し痛いくらいに抱き締められる。
「先生のせいで……家で一人ですると先生が恋しくなるんです。それだけじゃなくて先生を思い出すとしたくなるんです。先生のせいです……二週間も我慢できませんっ……」
 これがよく言うパブロフの犬と言うやつか、と頬がゆるむ。お預け食らってたくさん我慢してそれでいっぱいになって、僕でいっぱいにさせるのもいいなと思う。けれどあまりに欲しがりなので変なことをしでかさないかも心配だ。
「冬休みも会いたいです」
 再度可愛く甘えるので、うん、と頷いてあげた。すると微笑んで胸板に頬擦りする。
 こんなに素直なのはしたい時とイッた後ぐらいなのだが、学校の外で長く時間を過ごすとなったらどんな顔をするのだろうか。
 この日はじめて僕達は連絡先を交換した。僕の連絡先が表示された画面をじっと出雲は見つめていた。


 
 
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