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番外編

隼人✕玲児バレンタイン小話

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 “こんにちは”の挨拶のようにごくごく自然と当たり前に手元へ押し付けられる大量のチョコレートの話をすれば、人は口々に寂しいバレンタインなどお前は知らないだろうなと言うわけだが、俺からしたら虚しさが嵩張って荷物がクソ重たくなるだけの日だった。わざわざ持ち帰る用に普段使わないようなボストンバッグとリュック持参で学校に来るとか馬鹿の極みだと自分でも思うのだが、それをしないと困るのもまた自分。
 しかし今年はその限りではなく。 
 学校帰り、例年通りの大荷物のまま、しかし例年より軽い足取りで、一度帰宅することすらせずに瑞生家へ直行した。玄関のチャイムを鳴らし、可愛い恋人が出迎えてくれるのを待つ。
 玲児とやっと恋人になれて初めてのバレンタイン。
 いや、まぁでもそこまで期待しているわけじゃない。俺にとっては毎年印象深い日ではあるが、玲児のことだ、こういう行事には疎いかもしれない。それでも妹がいるわけだし、恋人もいるわけだし、もしかしたら、もしかしたらがあるかもしれない。やっぱり期待しているかもしれない。
 肩からずり落ちそうになるボストンバッグを直しながら待っていたら、玄関の扉が開かれた。平日この時間、瑞生家には玲児しかいない……眉間に皺を寄せた不機嫌そうな、でも本人は至って普通のつもりの顔をして出迎えてくれた。
「今日は制服のまま着たのか? む⁉」
 制服のままの俺を見て、次にクソデカ鞄たちを見て玲児は目を輝かせる。
「さては“ちょこれいと”だな? 食いきれないからとお裾分けに来たのだろう?」
「んん⁉ いや、まー、全然あげるんだけど……」
「む、悪いな。せっかく勇気をだして渡した女子たちには悪いが、有り難くいただこう。ちょこれいとならば茶よりコーヒーだろうか? インスタントくらいは淹れられるようになったぞ」
 あーこれは貰えねぇな。まぁわかってたし。わかってたわかってた。
 残念ではあるが、チョコのお裾分けにうきうきと廊下を歩く玲児の後頭部を見ていたら、可愛いからいいやと諦めはついた。玲児が入れてくれたコーヒーを飲みながら二人でチョコレートを食べる。十分バレンタインらしい。よその女に貰ったチョコだけど。
 玲児が淹れてくれた粉にお湯を入れて溶かすだけのコーヒーは引くほど苦くてじゃりじゃりしてたけど、不器用カワイイということで何も問題はない。俺が台所を借りて淹れ直せばいい。
「すまぬ…………マグカップの容量がわからなかったのだ……」
「どこにも書いてねぇもんなぁ。俺も適当だよ。失敗することもあるだろ」
「むぅ……優しさがつらい。精進する」
「いいよ別に。コーヒーくらい俺がやるって」
 ローテーブルにコーヒーを置いて、ベッドを背に座る。隣に座ればいいのに玲児が対面に座るから、隣に来いよと手招きをした。自分にいじけてるのかちょっとムスッとしながらも、ずりずりと立膝で隣に移動して来る様子がなんだか可笑しい。
 近づいてきたところで腕を引いて、よろけた玲児を抱きとめる。そして自分に寄りかからせたままその場に座らせた。肩を抱いて、せめていつもよりイチャイチャしてやろうとくっつかせる。
「おい隼人、これではさすがに近すぎるだろう。食べづらいぞ」
「チョコつまむのに食べづらいもないだろ。それとも食べさせてやろうか? これ美味そう」
 いくつか開封して箱を開けた状態で並べたチョコレートたちの中から、一粒摘みあげる。ミルクチョコレートなのか、薄茶色に赤い小さな砂糖の粒のようなものがいくつも飾られている。
「む……かわいいな」
「ほら、口開けろよ。あーん」
「む、むぅ……恥ずかしいのだが」
「あーん」
 口に入れられないようにもごもごと小さく口を開けて反論していたが、観念したようで口を開ける。それでも。やっとそのチョコの一粒が入るくらい小さくだ。
 白い肌のから控えめに伸びる、赤い舌が可愛らしい。その舌に乗せるようにチョコレートを口の中に入れてやると、ん、と声を漏らして瞼を閉じ、うんうんと頷いた。
「む、うまい。これは良いちょこれいとと見た」
「お前なんでそんなにチョコレートの発音危ういの?」
「む? ちょこれいと、だろう」
「チョコレート」
「ちょこれいと」
「チョコレートだって」
「ちょこれえと、か……?」
「ふはっ、そうそう、ちょこれえと、な」
 そういえば玲児って筆記は完璧なのに英語のリスニング全然できねぇんだよなぁと思い出して、そんなところも愛おしくて笑いながら髪をくしゃくしゃにして撫で回してやった。
 やめろ、と抵抗するが、抵抗する腕ごとぎゅーっと抱きしめてやればすぐに大人しくなってため息一つ。しかもそのため息がちょっと嬉しそうなのだ。
「もっと食えよ。どれがいい? ピンクのやつイチゴ味かな」
「もういい、やめろ、自分で食べられる!」
「えーいいじゃん。バレンタインなんだぜ、甘々でいいだろ? よその女から貰ったチョコだけどなー」
「むっ……」
 ピンクのハート型のチョコを玲児の口に押し込みながら、今のは失言だったと冷や汗をかいた。玲児も口の中でチョコレートを転がしながらますます眉間に皺を寄せて神妙な顔をしている。
 そうしてゴクンと飲み込むと、ハッと口を開けて、その次にはふふんと口の端を上げた。なんだなんだ面白いな。
「隼人! 実はな、渡すものがあるのだ」
「えっ」
「ほら、離せ。持ってくる」
 ぽんぽんと捕獲していた腕を叩かれ、それはもう銃を向けられたテレビヒーローのようにパッと大人しく即座に両手を上げた。
「待っていろ」
 そう言って部屋を出る後ろ姿を見ながら、諦めからテンション爆上がりしていく体内の躍動を感じる。
 まじか。まじか! これは絶対貰える流れだろ。玲児からチョコ? ちょこれいととか言ってる玲児が? チョコくれんの? うわー!
 顔がニヤけてしまうが、ニヤニヤしながら受け取りたくない。かっこ悪いしキモすぎだろ。両方の頬を手の平で押さえて引き下げながら、ぺちぺちと二回叩く。うん、たぶん大丈夫だ。
 しかし廊下から玲児の足音が聞こえてきて、近づいてくる毎にやっぱり頬の肉が上がってしまってもう駄目だった。いやだって嬉しくないわけないもんな。しょーがねーだろ。こうなったら喜びをめいっぱい表現すりゃいい。
 ガチャリと扉が開き、弾けるように振り返る。口角をあげてちょっとドヤ顔気味に入ってきた玲児の手には、皿に盛られたチョコレート色のマフィンのようなものが乗っていた。
 ん、手作り? 手作りなのか? 玲児が。コーヒーじゃりじゃりにする玲児が。この美味しそうなマフィンを。
「今日隼人が来ると言ってあったからな。玉貴が貴様にもやれと置いていってくれたのだ。玉貴が作ったのだぞ! 凄いだろう?」
 玲児に手作りとか無理だろ、と頭の中で結論を出すのと、玲児が誇らしげに種明かしをするのは同時だった。
「ちなみに俺は二つもらったぞ」
 目の前で玲児がすっごいドヤ顔してるんだけど、可愛いんだけど、俺は笑顔を顔に貼り付けたまま固まってしまった。
「だよなぁ…………だと思った。いや、わかってた、わかってたよ。そんなことだろうと思ってたよ実は。俺だって。はぁぁぁぁっ……」
「む?! なんだ、どうした? 玉貴からだぞ?」
「おう……」
 がっくしと肩を落としてずるずると目の前の机にもたれかかり、果てには突っ伏してしまった俺の隣で、玲児がおろおろしている気配が伝わってくる。
 ごめん、玲児。全然、全ッ然いいんだけど。ちょっと少し時間をくれ。
「どうした……? 感激している、わけではなさそうだな。処理しきれそうにない数のちょこれいとが嫌になったか?」
「いや……別にそれはいいんだけど。玲児食うだろ?」
「む。むっ! まさか俺が淹れたコーヒーで腹が痛くなったか?!」
「違う、全然元気。どーこも痛くねぇよ」
「元気そうに見えん……無理をするな。すまない……コーヒーを淹れてもてなそうとした筈がこんなことになるとは……」
 しょんぼりとした声が頭の後ろ辺りから聞こえてきて、そっと背中をさする手があって。
 可哀想になってきて本音を言おうかと思ったが、それはそれで気にしてしまうかなとも思って。
 どうしようかなと突っ伏した腕から顔を覗かせて玲児を見れば目があった。
「隼人。大丈夫か?」
「玲児」
「む?」
「バレンタインくれよ。なんでもいいから」
 投げやりに言ったおねだりに玲児は目をぱちくりとさせて俺を見た。しかしすぐに眉を八の字に下げて狼狽えてしまう。目を泳がせて言葉を探しながら、俺の目元にかかる前髪を後ろへ撫で付ける。気持ちがいい。
「俺から貰いたかったのか?」
「ん」
「そうか……すまない、自分が渡すという考えがなかった。ああいうものは女のやることかと……」
「うん、まーそうだよな。よく考えたら俺も用意してないし。自分だけもらうこと考えてた。でもなんつーか、毎年たくさんもらってて、玲児から貰いたいなって思ってたというか……勝手に落ち込んでごめんな?」
 落ちる髪を耳にかけたあと、そのまま俺の頭を撫でてくれていた玲児の頭を撫で返す。机にもたれたままの俺を、心配そうに見下ろす玲児をじっと見上げながら。
「今年は何もないが来年は必ず何か用意をしよう! 約束だ。本命は作ったりするのか?」
「作ってくれんの?」
「む、むぅ……そうだな。玉貴と一緒に……しかしそうすると玉貴からもらえなくなるのか? それは嫌だ。ならば出雲に手伝ってもらって……むむ、結局出雲にすべて作ってもらってしまいそうだ。そうすると出雲がほぼ作ったものを隼人にあげるという何とも複雑な感じになるぞ! 気まずいのではないか? 努力はしてみるが、無理だったら買ったものでもいいだろうか?」
「ははっ……すっげぇ真剣に考えてくれんのな。いいよ。なんでもいいんだ別に」
 顔色をころころと変えながら悩む姿が可愛くて、たまらずに起き上がってその身体を抱き寄せた。それでもまだ距離があって、もっと近づきたくて、腕を引いて自分の膝の上へその華奢な体を招き入れる。
 今日はせめて甘えてやろうかなと胸に顔を埋めて抱きついて、玲児もそれを受け入れて俺の頭を抱いてくれた。
「どうした? 甘えん坊か?」
「うるせ」
「しかし隼人がそんなことを考えているとは思いもしなかったぞ。可愛らしいところもあるのだな」
「うるせーって」
「ふ、そう言うな。なんだか嬉しくてな。隼人はいつも頼りになるだろう? 甘えられるのも悪くないぞ」
「へー? じゃあもっと甘えちゃおうかな」
「む?」
 ラフな長袖のTシャツ越しに、さっきから鼻先に突起があるなぁと気になっていた。人を可愛い可愛いと油断しきっている無防備な胸の先を、布越しに唇で挟む。
「あっ……!」
 唇を動かして擦り、熱い息を吐く。玲児はビクンと仰け反って、俺の頭にぎゅっとしがみついた。
「き、貴様ッ! そんなことしていいとはっ」
「なんでだよ。慰める甘えるといえばおっぱいだろ」
「たわけ! お前は赤ん坊、か……っ、ん、おい、やめろっ」
 調子に乗って服をたくし上げると、外気に触れたからか刺激したからかわからないが、ピンと先を尖らせ硬くなった小さな乳首が顔を出した。薄いピンク色でほんと小指の先程もないくらい小さい。その可愛い尖端が痛くないように優しく舌の腹で転がしてやった。
「あ、はやっ…………ん、んんぅっ……」
「声出せよ」
「むりだ、恥ずかし、ぃっ……あっ、話しかけるな、声が、ンッ」
「声出したくないのにちゃんと返事してくれるんだもんなー? 玲児は優しいなほんと」
「ん、ん、ぅ……あっ、はぁ、あ……」
 呼吸は乱れ、声がどんどん艶っぽくなっていく。俺の腹にガチガチに勃起した自分のが当たって、しかも擦り付けてるのなんて気がついてないんだろうな。いやだいやだと言いながら玲児はすぐにとろとろになってしまう。
「なぁ、チョコなくていいからキスしてくれよ」
「きす……?」
「玲児からすることって少ないだろ? ほら、キス」
 顔を上げ、鼻先が触れる距離で色っぽく湿った唇を誘う。俺の唾液でぬるぬるになった乳首が留守になってしまうので、優しく親指の爪の先でカリカリと引っ掻いてやりながら。
 玲児は時折短く声を上げながら、そっと俺の唇にキスをした。
「じゃあ次は舌入れろよ」
「なら……ん、すこし、舌を出してくれ……」
「いいよ、ほらどうぞ」
 舌の先を出してやると、玲児もぱかっと口を開けて舌を突き出してきた。舌と舌が触れ合って、先をこしょこしょとくすぐり、玲児の舌が俺の口内に入ってくる。
 一生懸命に舌を動かしてくれているのはわかるが、ちょっとばかし長さが足りないのか舌がただただ必死に俺の中で背伸びしていて、上顎や舌の裏をすくおうとしているのが可愛くてたまらない。もどかしさにじゅっと吸って、驚きに引っ込んだ舌を追って今度は俺が玲児の中に入る。
「ふ、ぅあっ……ん、んんっ、ふぁ」
 気持ちよさそうな声に俺の下半身も反応して制服のスラックスの中がきつい。腰を抱いて、こんななってるぞと太ももに擦り付けて主張すると、一際大きな声を上げ、唇が離れていった。
 潤んだ瞳で熱い息を漏らしながら、ズボンの上からその形を確認する。それだけで玲児は、あぁぁ、と声をあげた。
「はやと、舐めたい……いいか?」
「触っただけで舐めたくなっちゃった?」
「む、ほしい……」
 意識してないんだろうが、俺のを擦り上げながら口が少しずつだらしなく開いていっている。はぁ、はぁと犬みたいに呼吸しながら、俺のちんこを必死で扱いてる。こんなの早くぶち込んでとおねだりしてる他ない。
 俺は膝から玲児を下ろして、ベッドに座ってベルトを外した。玲児はそんなのも待っていられなかったらしく、すぐに俺が座る膝の間に入ってきて、ズボンの前を開いて男性器を取りだした。
「ああ、もうしっかり立ってるな。はやくほしい……」
「お前ほんと好きだなー、そんなに舐めたいんだ?」
「む、舐めたい……隼人の、好きだ。隼人、良いと言ってくれ、早く、はやとぉ……」
 黙って咥えりゃいいのに、いつもしていいかと聞いてくれる。それが礼儀なのか、それともプレイの一環なのかわからないが、必死で強請られるのは気分がいい。
 いいよ、と笑いかけて頭を撫でてやると、はぁぁ、て感嘆のため息をもらしてパクッと亀頭に食いついた。口内で裏筋をぺろぺろと舐めながら、目がとろんとしてくる。俺のちんこ咥えてこんなにだらしなく喜んで本当たまんねぇ。
「よしよし、気持ちいいよ。俺のちんこ、そんなにうまいの?」
「はぁ、あ、うまい……? む……そぉ、だな……すき……」
「じゃー、隼人のちんこおいしいって言えよ?」
「は、やだっ…………ん、言わ、ぬ」
 奥まで咥え込んだり、口から抜いてべろべろと根元から亀頭まで舐め回したり、先走りが溢れてくれば鼻先を近付けて匂いを嗅いだり。これだけ楽しんでる姿晒しといて、今更何が恥ずかしいんだかな。
 ちょっと意地悪したくなって、口から男性器を抜いたところで玲児の頭を掴み、ギリギリ舐められないように固定した。あ、あ、と玲児は必死で舌を伸ばす。
「舐めたい?」
「あ、舐めたい……はやとやめろ、いじわるをするなっ……」
「じゃあ恥ずかしいこと言おっかー?」
「むっ…………きさまぁ…………」
 潤んだ瞳に真っ赤な顔で、眉間にめいっぱい皺を寄せて睨みつけてくる。あーもう、それ可愛いだけだから。
「ほらほら、バレンタインのプレゼント代わりだと思って。俺のこと甘やかしてくれよ、なぁ?」
「むぅぅぅ……っ!」
 ギリギリ歯を食いしばっているが、ずいっと鼻の穴にちんこを擦り寄せてやったら、途端に顔に力が抜けて、あ、あ、とまた情けない声を漏らし始めた。先走りが鼻につくのも気にせず匂いを嗅いで、舌を伸ばそうとしたので顔を少し後ろに引いてやる。
「あっ……やだ、ああ……」
「俺のちんこおいしい?」
「うう……おいしい…………はやとのちっ……ちん…………こ、すき、おいしい……たくさん、舐めたいっ…………早くくれ、はやと」
「はは、いい子いい子。いいぜー? 好きなだけ舐めろよ。あーでもイく前にやめろよ……っておい!」
 我慢してた分、タガが外れたのか、玲児はぴったりとちんこに吸い付いて恍惚とした顔でじゅぼじゅぼと激しくストロークをはじめた。
 繰り返し、何度も吸い上げられ下半身持ってかれそうな気分だ。やばいやばい、このままされたら普通に出る。
「あ、おま……っ……玲児、待てよ、イッちゃうだろ、そんなされたらッ……」
 余裕のなくなってきた俺を見て、玲児はちょっと嬉しそうにコクコクと頷く。
「なんだよ、口ん中にほしいの……?」
 問いかけに、吸いながら裏筋を舌でくすぐって返事をされた。
「んっ! あー、それやばいって…………やばいやばい、出るっ……」
 舌で器用に撫で回しながら口内の熱い粘膜に何度も擦り上げ吸われ、たまらず玲児の頭を掴んで喉の奥に射精した。しかし後頭部を押さえつけてビュクビュクと出している間も玲児は逃げる素振りはせず、んく、んくっと素直に喉を鳴らして精液を飲み込んだ。
「すっげ…………ちんこぶっこ抜けるかと思ったわ……」
 こちらもさすがに息を荒らげながら頭を離してやれば、玲児はまだ少し名残惜しそうにちんこを軽く吸いながら、ちゅぽんと口から抜きとった。そのあとも残った精液を吸い取るようにずっとちゅうちゅうと先っちょを吸ったり舐めたりしている。
「やめろって……ん、ちょ、敏感なんだって……れいじ、な、だめだって……わかるだろ?」
 ビクンとしながら腰が引ける俺を見て、玲児はちんこに吸い付きながら上目遣いにニヤリと笑った。
「なんだ……? 随分可愛い反応をする…………イッたばかりで変な感じか? お前もいつも俺にやってるんだぞ」
「ごめんって、その通りだよっ! やめろ!」
「むぅ、仕方ない……」
 玲児の頭が股間から離れたところで、隙ありと俺は玲児の腕を引っ張ってベッドへ引き込み、そのひょろひょろの身体に覆い被さってやった。やられっぱなしでたまるかっつーの。
 驚いてまだ目を丸くしている玲児のスウェットパンツと下着をぐいっと強引に下ろし、片足だけとりあえず抜いて足を広げさせる。
「おい、貴様っ! 急に何を」
「急でもないだろ? 一緒に綺麗にしてくるか? とりあえずちょっと触らせてみ?」
「必要、ない」
「ん?」
 何かと顔を覗き込めば、ふいっとそっぽを向いてしまう。それでもじっと視線を送っていたら、顔を真っ赤にして自分の腕で顔を隠した。
「触ってみろ」
「あー? なんだよ。触るけどさ…………ん?」
 股を大きく開かせ尻の割れ目に指を這わせていくと、ぬるりとした感触が指を伝う。お、とそのまま人差し指をつき立てれば、見る見るうちに玲児の尻穴に飲み込まれていった。
「あっ! あ、あ……」
「へぇ? 準備してくれてたんだな。ヤりたかったんだ?」
 ちゅぽ、ちゅぽ、と指の第一関節までしか入れず浅く出し入れを繰り返しながら聞くと、意外にも玲児はすぐに素直に頷いた。
「今日は……ばれんたいん、だろう?」
「ああ、そだな」
「ちょこれいとの用意は考えてなかったが、その……なかよくは、したいと……」
「イチャイチャしたかったんだ?」
「むっ…………」
 これまた素直に頷く玲児が、もう可愛くて可愛くてたまらなかった。
 腕を優しく押しのけて退かすと、拗ねたように尖らせた唇が顔を出す。恥ずかしくてたまらないのだろう。可愛いやつ。
 そのツンとした唇に愛しさでキスをして、浅く弄っていた指をゆっくり奥まで挿入していく。少し中を擦るとそれだけでヒクンヒクンと反応して、調度第二関節をゆるく曲げたあたりにある膨らみを愛撫してやればきゅうう指に抱きついて甘えてくる。
「あっ、う、うんん……ん、んッ……うっ」
「そんなに歯ぁ食いしばんなよ。声出して聞かせてくれたら嬉しいのに」
「そうは、ん、言ってもっ……あ、あ、だめだ、こえ、がっ……あっ……!」
「うんうん、出せって。ほら、気持ちいいだろ?」
 じっと顔を見つめ、子供に言い聞かせるように語りかけると、ぽうっと俺を見つめた後、恥ずかしそうに目を瞑って睫毛を震わせて頷いた。そうして俺の背に腕を回し、きゅっと抱きついて少しずつ我慢しきれない声を漏らす。
 自身が完勃ちするまでじっくり触ってやろうと思っていたが、もう既にその必要はなさそうだった。玲児の嘘みたいに軽い両膝を抱えて、開いた入り口に亀頭を擦り付ける。
「あ、あっ、はやとっ……すごいな、もうそんなに……」
「ん、出したばっかなのにちょー元気。なぁもう挿れていい? 俺のこともまた気持ちよくして」
 などと伺うフリをして、さっき枕の下に仕込んであるのを見つけたコンドームを取り出す。挿入一択だ。玲児だって俺が来る前から準備していたくらいなのだから、欲しくて仕方がないはずだ。あんなに無邪気に俺が貰ってきたチョコに喜んでいたというのにエロいったらありゃしない。
 咥えて犬歯で開封したら、伸びてきた青白く細い腕が俺の口からコンドームを奪い、身体を起こして男性器にするすると装着してくれた。愛おしそうに数回上下に扱いて、また身体を倒すと、股の間から手を伸ばして先端を自分の熟れた穴にあてがう。
「はやと……」
「挿れる?」
 目を細めて玲児が小さく頷くと、頬を汗が伝って光るのが見えた。
「一緒に、気持ちよくなろう……挿れてくれ」
「うん」
 軽い口づけの後、ゆっくり腰を沈めていく。自分でしてくれたけど、俺はあんまりほぐしてやれなかったから、慎重に、皮膚の突っ張る感じや、中を広げていくのをよく味わいながら。
 ちゃんと中まで柔らかく、熱に包まれて気持ちがいい。つい腰を動かしてしまいそうになるが、まずは中を探り、玲児をもっと高めてやるために上壁のほうを擦ってやる。上に反った亀頭を引っ掛けるように何度も掻くと、その度に玲児の背が反って跳ねる。
「あ、あぁ、はやと、そこもっと……!」
「すっげぇ良さそうじゃん……俺もこの感触好きだよ。もっと擦ってやるからぎゅーって締めて」
「んん……? あっ……はやとの、はやとのかたちが……あ、あ、なか、なかすごいぃ……」
「よくわかるだろ? あー、やっば、気持ちいい。もっと奥もしていい?」
「え、もうすこし待っ……あ、ああぁッ」
「大きく動いて前立腺も擦るから……いいだろ? ここほら、狭くてすげぇいいっ……」
 前立腺よりもっと奥の、きゅっと腸壁が窄んだような辺りまで、ぐぽっとちんこをハメ込むと、ぎゅうっとカリ首が引っかかるように締め付けられてめちゃくちゃ気持ちいい。まじやばい、声出る。声聞きたいって思うけどいざ自分となるとやっぱり嫌だ。はぁぁ、と大きく震えた息を吐いて、声が出るのを誤魔化した。
「あっ……はや、と、はやと、そこだめ……あ、あ、あぁぁー……」
 中がどろどろになって、ストロークが長く尻穴が繰り返し大きく開いて窄んでを繰り返し、ぱちゅん、ぱちゅん、と肌のぶつかる音に粘ついた音が混じる。俺のが上に反っているためどうしても抜けやすく、抜ける度にまた挿入して、浅いところも深いところも弄り倒す。
 俺が腰を掴んで固定しているため、ただただ俺を受け入れている玲児は、半目のとろんとした目をして甘い声をあげながら、自然と自分のちんこも扱き始めた。あまり激しくはせず、先走りを指の先に絡め、ぬるぬるとそれを塗りたくるようにしている。それでもだんだんと俺の動きに合わせて手の動きも早くなってきて、ずっと口を開けっ放しで舌まで覗かせながら、ケツもちんこもどろどろにしていた。
「玲児えっろ……ちんことケツどっちがきもちい?」
「ん、あ、きもちいい……あ、あー、きもちいぃ」
「どっちもいっか。俺も、やばい。れいじが気持ちいいと、中がすっげー押し返して、きて……あ、うあ、やべぇ、やっぱ声出る、あーくそ」
 自分の低く喉を震わす声が耳につく。まいったなと額をさすったら汗だくになっていて、ついでに手の甲で拭った。二回目なのにあんまり持ちそうにない。
「はやと……はやと……」
「ん?」
 何度も呼ぶので顔を見れば、両手を伸ばしていたので玲児の身体を覆い隠すように俺も身体を倒した。中途半端に脱いで残ってる衣服が邪魔だし暑い。もう今更だけど。
 玲児は俺の首に片手で抱きついて、そっと耳元で囁いた。
「は、はぁ……俺も、はやとの声……こうふん、するぞ……? きもちよさそうで、うれしい……」
「はぁ? なに……言ってんだよ、ばーか」
「あ、んん、いいっ、はやとッ……」
 バカとは言ったものの、俺に興奮するえろい玲児に反応して中で元気が増すのがわかる。
「れいじっ、激しくするからな? お前が興奮させたんだから、全部受け止めろッ……!」
 頭ぐらぐらしながら腰を打ちるけるがもっと強くしたくて、ケツもっと上げて、と言えば、ためらいがちに自ら膝の下に手を入れ足を抱え……それでもその手を自分のちんこに伸ばすのがエロくてますます興奮した。堪らず口づけ、上からガンガン圧迫しながら腰を強く打ち付ける。
「ぐッ……う、う、うんつ、んんんッ……!」
 声が出せず唇から漏れるうめき声がつづき、それすら止まって玲児の息が止まる……と、ぐぢゅう、という濁音と共に中が大きくうねる。奥に突き挿れているのにその逆側、外に向かってぎゅうぎゅう締め上げてきた。
 あ、玲児イッてる、と気付いたの高まりと、その強い刺激にこちらももう我慢できず、唇を離して思いっきり奥まで突き上げた。もう根本まで入っているのにまだ足りないと、掴んだ腰を引き寄せぐりぐりと押し付けて、一番奥に自分を擦り付けるように射精した。
 ゴムの中に精液が溜まって、押し付けるとぬぷ、と変な感触がする。イキながら押し付ける腰が止められなくて、シーツを掴んで藻掻く玲児に視線を落としながら、男性器が受ける全ての感覚に没入した。
「はぁ、はぁ、はぁ……はやとっ、もう、だめ、やめろ、はぁぁぁ……あ、息が、うぅ……」
 やっと腰を止めて荒い息を整えながら、やっと終わった刺激に安心したように瞼を下ろす玲児をなおもただ見つめていた。ただ黙って肩で息をする以外の動きはできず、可愛い、すっげー可愛いと頭の中ではまだ落ち着かない玲児への愛情でいっぱいになってる。
「隼人……? 大丈夫か?」
「あーもー! すっげぇ気持ちいい、玲児とのセックス! 」 
「で、でかい声を出すな、そして変なことを言うな!」
 なだれ込むように抱きしめようとしたら、待てと手で制止され、ぽやんとした顔をしながら玲児はティッシュを数枚出して自分のやら俺のやら拭き始めた。萎えてつるんと抜けたちんこからもゴムを外してくれてる。
「なんだよ、つまんねぇの」
 ごろんと玲児の隣へ横向きに寝転がりながら、大人しく拭かれる。玲児はぴくりと眉根をより寄せたが、あまり気にしてないのかそのまま綺麗に拭きあげポイッと軽くゴミ箱になにもかも放った。
「なぁ、もうぎゅーってしていい?」
「好きにしろ」
「よっしゃ、来いよホラ」
 肩をぐっと抱き寄せ、背中に手を回してぎゅーっと玲児の細い身体が潰れてしまいそうなほど抱きしめる。ああ、ちょっと汗の香りがする。好きな匂いだ。
「ちょーラブラブじゃん」
「ばれんたいん効果だな」
「はぁ、違うだろ。いつだってラブラブだっつーの」
「たわけ」
 連れない態度のくせに、なんだよと顔を向ければ頬にちゅっ、と可愛くキスされた。えー。えー可愛い。
 しかも可愛いと惚けていたら、今度は額にキスされた。次は逆側の頬。顎。鼻先。
「すっげーキスするじゃん」
「ちょこれいとの代わりだからな」
「まじかよ。最高じゃん」
「お前は俺のことか本当に好きだな」
 恥ずかしいのかむすっとしているが、頬が赤い。何もなくてもあんまり可愛くて、幸せで、胸がいっぱいだった。
「俺もうなんもいらねぇや。玲児の可愛さの前ではチョコとかくっだらねぇよ。来年から受け取るのやめようかな」
「む! それはだめだ! 俺のために貰ってこい」
「ヤキモチ妬かねぇの?」
「隼人は俺が大好きだから大丈夫だ」
「へぇ、男らしいな。俺は玲児がチョコの一個でも貰ってきたらはっ倒すけど」
 笑顔で言ったが、声が結構真面目なトーンになってしまい、本心がだだ漏れになってしまった。
 こう言っておけば玲児なら断ってくれるだろうからいいか、と思ったが、顔を見ればなんだかギクリと表情が固まっていて宜しくない顔をしている。
「あぁ? 玲児ぃ? お前……」
「いや、あの……」
「は、まじかよ」
「玉貴からは毎年もらっているし、今日は玉貴が麗奈からも預かってくると言っていた! すまん、それは受け取らせてくれ!」
 めちゃくちゃ真剣に訴えてくるから何かと焦ったが、冷静に言葉を整理してみればブハッと盛大に吹き出してしまった。それはノーカンだろって玲児を抱えたまま大笑いしていたら、それもそうか、と玲児も笑い出して、二人でめちゃくちゃ笑って、二人揃って笑いすぎて目尻に涙が溜まってるのを見て、また口元がにやける。
 にやけながら、どちらともなく唇を寄せて、玲児と恋人になれて良かったと改めてこの日に感謝した。






end
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