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崩壊

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 ぼーっとする頭で隼人のことを見ていたが、だんだんと性器が尻に加わえる力が強くなり、めり込んでくるのを感じた。入るわけもないのにグッグッと何度も押し込んでくる。
「お前さ、初めての時よくこんなところに入れたよな。全然入んねぇじゃん」
 言われて初めての時のことを思い出す。
 確かに全然入らなくて全体重をかけて無理矢理に押し込んだのだ。あんなことをしてよく無事だったと今なら思える。かなり痛かったはずなのだが、激しい興奮状態にあったためかちゃんと気持ち良かったのだから驚きだ。
「玲児……俺、何十回も、いや何百回も後悔したよ。あの時お前の中に入っていたらって。あんな形じゃなくて、ちゃんと二人の初めてができてたらって」
 性器はそのままの状態で、腰を折って隼人の顔がこちらに下りてきた。眉を顰めて笑う顔は切ないけれど綺麗で、じっと見つめる。
「今日は俺が入れてやるから」
 優しい声とともに唇が下りて重なった。
 下唇を舐めながら、唇の裏まで舐められながら、口内に舌が入ってくる。絡ませ合うのではなく、その舌は上から強くこちらの舌を圧迫してきた。舌先でグリグリと舌の真ん中よりも少し奥を押し回される。
 隼人に苦しくされるのが好きかもしれない。さっきからずっと気持ちが良くて自分の頭はおかしくなってしまったのではないかと思う。
 隼人に入れもらうのは、突かれるのはどんな感じなのだろう?
 内蔵が押し上げられるのを想像するとゾクゾクした。
 やっと、やっと俺は隼人に抱いてもらえる。
 決してこれだっていい形ではないが、犯すよりも犯されたい。
 隼人になら、犯されたい。
 期待に心臓を高鳴らせていると、唇が離れた。隼人はにっこりと笑って俺の耳元に口を寄せる。
「もう誰ともできないように使い物にならなくしような」
 え、と考える間もなく、穴に隼人の全体重がかけられていくのがわかる。ギチと軋むような音をさせながら亀頭が入ってくる。
「ごめんな、玲児。俺があの時抱いてればこんなことにならずに済んだのにな」
 隙間なくピッタリと亀頭が収まった感覚は悶絶ものだった。身体に穴を無理矢理開けられてモノが挟まれているのだ。亀頭がすべて入るとその凶悪な性器に奥まで一気に貫かれ、部屋には俺の絶叫が響いた。
「いあああああああ!!」
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
 痛みが思考を支配し、下半身のどこが痛いかもよくわからず、必死で隼人の背にしがみついてそこに力いっぱい爪を立てた。そうでもしないと痛みに耐えられない。
「いた、痛い、痛い、痛い、痛いぃ!」
「そりゃ痛いだろ。切れて血が出てる」
「やだ、いたい、いたいぃ、抜いて、いたい、いたいっ」
「ほら、あの時みたいに血だらけ」
 陰嚢へと垂れていく血液を指で滑らせ、そこが濡れていることを教えるだけでなく、その指を見せつけられて怖くて目を閉じた。自分の血液など見たくない、なんだか余計に傷が痛く感じる。隼人はその指で頬を撫でた。
「玲児の肌白いから赤いのが映えるな」
 身体を密着させ、ずっと耳元で囁かれるその声は弾んでとても楽しそうだった。くく、と低く笑う声まで漏らしている。
「玲児の中だ……ちゃんと入れられた。ほら入ったよ、玲児。嬉しいだろ?」
「抜いて、抜いてくれ! 痛い!」
「絶対に嫌だ。あぁ、だめだ、興奮する。玲児の中だ……」
 ゆっくりと腰が引かれ入口を擦られると、傷が広がっていくのが感覚でわかり足がビクビクと痙攣した。絶叫する力はなく、熱い息を吐き出しながら顔を歪め痛みに喘ぐ。
「やだ、はやと、やだ、痛い」
「大丈夫だよ、中はそこまできつくない。ほら」
 ズッと抜かれるのと同時にギチギチと裂けていく。 
「あぁ、ああああ、あ、あ」
「力入りすぎなんだよ。もう動くから力抜いた方がいい。まぁ俺はどっちでもいいけど」
 息を吐いて力を逃そうとした途端に奥をズンと突かれ、また思わず力が入ってしまう。傷が広がっているかどうかはわからないが、裂ける感覚と染みるような感覚がして痛い。さらにまた力を抜く時間など与えられず、腰の律動は始まってしまった。
 何度も深く腰を打ち付けられ奥を突かれながら傷口を擦られヒリヒリする。
 こちらは歯が磨り減りそうなほど食いしばっているというのに、隼人は俺を見下ろして恍惚の表情を見せる。目を細め、頬を紅潮させて笑っている。
「玲児痛いの? お前ほんと可愛いな、どんな顔してても可愛い……可愛いよ、可愛い玲児」
 隼人の様子は明らかにおかしい。俺がこんな風にさせてしまったのか。
 熱に浮かされた声で俺の名前を呼び可愛いと繰り返す姿に、上半身ががガクガクと揺れるほど中を突かれながらも涙が出た。
 痛みよりも悲しみが増してくる。
 初めて俺が隼人を犯した時、彼もこんな気持ちだったのだろうか。
 どうして俺達はまともに身体を繋げることすらできないのだろう。
「あっ……」
 痛いところが麻痺してくると、中を擦られる感覚が強くなってきた。痛みからくるものではなく、甘い声が一瞬漏れる。隼人はそれを聞き漏らすことなく口の端をニィッと引き上げ笑うと、そこばかり先端で擦りあげて刺激してきた。
 気持ちよさが芽生えると加速的に身体の疼きが甘くなっていき驚いた。痛みで硬直していた身体がほぐされていく。
「あ、あっ、そこ、あっあっ」
「気持ちいい?」
 揺られながらも、こくりと頷く。額が汗で濡れて気持ち悪い。それに気が付くとお互いの身体も汗で濡れているのがわかった。そんな身体を密着させて前立腺をゴリゴリと抉るようにされると羽の舞うような幸福感に満たされていく気持ちの良さを感じてくらくらした。溶けて混ざってしまいそうだ。
「あ、あ、きもちいぃぃ、ぐりぐりって、あっ、ぐりぐりってぇ……あぁ、いいぃ」
「あー可愛い、なにそれ……ほら、ほら、してやるからもっと言って」
 先端が押し付けられて傘の張ったカリでグリッグリッと引っ掛けられると、達しはしないもののそれに近い絶頂感を何度も感じ、頭の中……脳に直接揺さぶりをかけられているような気持ちよさを感じた。気持ちいいなんて言葉じゃ足りないくらいの刺激だ。
「ぐりぐり、きもちいいぃ……ぐりぐりされると、あ、ふわふわ、する……っきもちいいぃ……」
 溶けて身体がなくなってしまいそう。
 相手に、隼人に入れてもらうとこんなに気持ちがいいのか。自分で好きなところにちゃんと当てていた筈なのに、自分の好きなようにしていた筈なのに、中を擦ってもらう快感の方がこんなに上回るのか。
 隼人にされてこんな風になってしまう自分の身体が嬉しい。
 隼人はずっと溶かされた俺を見ている。肌を汗で湿らせ、少し苦しそうに眩しそうに目を細め、息を乱して。その顔が色っぽくて、かっこよくて、さらに奥がきゅんとする。
「はやとに、みられるの、きもちいいぃ……」
「え……?」
「はやとぉ、はやとぉ、はやとぉ……」
 隼人を中に迎え入れ、こんなに隼人を感じているのにもっとほしい。気持ちがいいのに満ち足りない。
 奥を突かれる度に隼人の名前を呼んだ。隼人が欲しい、もっと欲しい。
「はやと、はやと、はやと、はやと……っ」
「玲児……」
「あ、あ、はやと、はやとがほし、あっ、ほしいぃ」
 隼人にしがみついてポロポロと涙を流しながら上擦った声で懇願した。
 隼人がほしい。
 隼人がほしくてたまらない。
 隼人は右手で腰を抱き、左手をベットについて今までよりも激しく腰を動かし始めた。血なのかお互いの先走りなのかわからないが、ぢゅぱんぢゅぱんと嫌な水音が響く。
 内蔵全てが持ち上げられるような苦しみに息ができない。
「玲児、好きだよ玲児……愛してる」
 ただでさえ苦しいのに、腰を抱いていた隼人の手がまた首にかかる。その手は俺の頸動脈を圧迫し、追い詰める。
「だから、そんな軽はずみに言われるとマジで殺したくなるんだよ」
「ぅ、ぁがッ……!」
 違う、軽はずみなんかじゃない。
 首を絞める隼人の手を両手で剥がそうと抵抗しながらできる限り首を横に振った。しかしそうすると余計に首が絞まり、苦しみは増すばかりだ。
 苦しいのに、下半身ではしつこく前立腺を擦られており、気持ちよさと息苦しさが混ざり何度も目の前に閃光が走った。そうしていくうちに何故だか苦しさは薄れていき、快感で頭が真っ白になる。
 あ、あ、あ、あ、あ――
 声も出せず、ただただ迫ってくるものを待つしかない。
 ふいに、魂がふっと飛んでいくのを感じた。
 あ、今飛んでる。
 すごい、すごい、気持ちいい――
 そのまま意識を失い、もう自分は死んでしまったのかと思った。死ぬのってこんなに気持ちがいいのか。
 浮遊感と共に変に感心していると、バチン、と言う音と共に叩き起された。
 頬が痛いと思ったら、大量の酸素に溺れてついていけず、横向きに寝転んで腹を抑えながら涎が垂れるほど咳き込んだ。
「がはっ、はぁっはぁっはぁっ……」
 苦しくてたまらないし、なかなか呼吸も戻せない。それなのに快感の余韻があり、なんともおかしな状態だった。
 涙目になりながらふと下半身に目をやると、太ももや脇腹に精液を吐き出し、萎えた自分の性器が見えた。
 意識が飛んだ瞬間、確かに気持ちよさを覚えていた。俺は首を絞められて絶頂に達したのか。
「れいじ……?」
 虫の鳴くようなか細い声に一瞬誰の声だか分からなかった。
 しかし今俺を呼びかけるのは彼しかいないわけで、片手で口元を覆ったまま恐る恐るその顔を見上げた。
 俺の足元に腰を下ろしている隼人の顔は真っ青だった。薄く唇を開いて驚愕したようにこちらを見て、目が合うと頭を抱えて俯いた……両手が震えている。
「隼人……?」
 身体を起こそうとしたが上手くいかなかった。
「俺……本気でお前のこと殺そうとし……」
 言葉は途中で途切れ、間もなくそれは嗚咽へと変わっていった。
 小さく何度も息を吸ったり吐いたりして声を押し殺すのが聞こえてくる。
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