不遇の天才幻獣テイマー(笑)にざまぁされたほうのパーティリーダーですが、あいつがいなくなったあと別の意味で大変なことになっているんだが?!

あまね

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50話 君はまだ世の中というものを知らない

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 ルルノアから預かったコカトリスの魔法石を発動させると、周囲一帯の人間が石化する――

 はずだった。

 しかし、目の前には石化したドリアスとガストンがいるものの、俺とデンス、それにバーレンも石化していない。

 見れば、俺たちの周囲に、薄い魔法バリアがはられている。それをはったのがデンスが連れている神龍であることは、すぐにわかった。

 なるほど――デンスが手放したがらないわけだ。

「ライアン、今のは君がやったのかい?」
「まあ……な」
「さすが! 君は以前からすごい人だって思ってたんだ!」
「…………」
「実は、僕はずっとこのドリアスに脅されていて……君にとってしまったひどい態度も全部、このドリアスにやれといわれてしかたなくやっていたことなんだ」
「え?」
「許してくれるかい、ライアン。いや、許してくれなんて言わないよ。けれど、ドリアスをこのままにしておくことは危険だ。せっかく石にしたんだし、このまま壊してしまおう!」

 デンスが石化したドリアスを指差し、嬉々として言った。

 俺は心底ぞぉっとした。

 コイツ――デンスは、本当に、誰でもあっさり裏切る。本当に。

 なんの悪意もなく。

 自分だけのために。

「いや……あのな、お前……」
「ああ、僕が信用できないんだね。わかったライアンがそこまで言うなら、僕がやるよ。信頼の証に。剣、貸りるね」
「え? え? いや、お前、おい、デンス!」
「そぉーれっ!」

 デンスは、魔法石を使った衝撃で落としていた俺の剣を拾うと、石化したドリアスのほうへ行き、ためらいなく振り上げた。

「やめろデンス!」
「やめろ!!」

 俺と、もう一人の叫びが交差すると同時に、デンスが俺の横に吹っ飛んできた。

 ドリアスの前で、ロディオがへたり込んでいる。どうやらそのロディオが、デンスに向かって体当たりをかましたようだ。

 ロディオの向こうには、マンダとタニアの姿も見える。タニアのほうでも石化防御のバリアをはっていたのか、単純に効果範囲ではなかったのか――。

「痛ぁ……えぇー、君、誰?」
「ロディオ様だッ!」
「誰だよ。ライアン、ドリアスの仲間がいるみたいだね。敵だよ、やっつけちゃおう」
「ロディオは俺の仲間だ」
「えぇー?」
「そしてデンス。お前こそが俺の――敵だ」
「えぇ、なんだよそれ。よくわからないなぁ。ああ、つまりは――」

 デンスが動く気配がしたのでそちらを見ると、すばやく鉄格子のほうへ這って行ったデンスが、牢屋の鍵を開けていた。

「――みんなこの国の敵ってことか、なるほどね。バーレン、君はこの国の騎士だろう? こいつらを倒してくれ。王への忠誠を見せれば――マルガレーテ様からかけられた謀反の疑いも晴れるよ、きっとね」

 そう言いながら、デンスは鉄格子の扉を大きく開いた。

 中から、バーレンが出てきて、デンスから剣を受け取る。

「ば、バーレンさん……」

 俺が呼ぶと、バーレンは横目でちらりと俺を見た。

 その瞳の色は暗い。

 俺たちはバーレンを助けにここまでやってきた。しかしそもそもバーレンは、俺たちを逃したことをきっかけに謀反の嫌疑をかけられたのだ。

 バーレンがその俺たちを成敗すれば、謀反の疑いが晴れる、というのは、残念ながら辻褄のあう話だ。とても。

「ライアンくん」
「はい……」
「君はいい剣士だ。いい冒険者でもあるのだろう。だが、まだ若い。世の中というものを知らない」
「…………」

 俺の剣はさきほどデンスにとられてしまい、今はバーレンの手にある。

 いざとなればバーレンに飛びかかって奪い返すことも考えたが、かつて騎士団長を務めたというバーレンの所作には、隙がない。

 剣を握るバーレンの腕がピクリと動いた。横薙ぎに来る――俺はバーレンの剣の間合いから逃げるように、斜め後ろに大きく下がった。

 しかし、バーレンの剣が狙っているものは俺ではなかった。

 バーレンの剣はデンスの服の端をかすめ――そのデンスをかばった、小さな神龍の腹に深々と突き刺さっていた。
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