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6話 幻獣使い(本物)ロディオ
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目がチカチカしそうな、いくつものレースやリボンがついたカラフルで派手な服。極楽鳥みたいな頭。というか実際頭から羽が生えている。いや、羽飾りをいくつも差しているだけか。
とにかく、派手。誰だこいつは。
「我が名はロディオ! 幻獣と庇護の誓いを交わせし当代一の幻獣使い! 幻獣の敵は俺の敵ィ!! フゥーッ、フゥ!」
「ろ、ロディオ様!」
突然現れた派手な男の痛い言動に俺は完全にドン引いていたのだが、俺の取り調べをしていた保安兵はかしこまった姿勢でその男に向かって敬礼した。
「ロディオ様ともあろう方がどうしてこんなところへ」
「風が俺を呼んだのさァ」
うーん痛い。聞いててつらい。しかし、保安兵から様付けで呼ばれているということは、もしかして偉いやつなのか?
「このあたりに、主人にまともに世話をしてもらえず死にかかっている幻獣がいると聞いて……主人はブッコロ! そして幻獣はレスキュー! それが俺の使命ィ!」
俺はびくっとした。主人に――俺ではなくデンスのことだが――世話をしてもらえず死にかかっているとは、まさにマンダのことじゃないか。
「ん? そこの、お前っ」
ロディオが、俺を指差した。
「幻獣の気配がするぞ? 炎……そう、純粋な炎の匂いだ」
ロディオが犬みたいに鼻をひくひく動かした。匂い? 炎? マジか。デンスのこともあり幻獣使いと名乗る目の前の男をまったく信用していなかった……いや仮にデンスのことがなかったとしてもこの痛いノリの男を信用するというのはできなかったかもしれないが。もしかしてこいつ、本物の幻獣テイマー?
いや、でも、炎の匂いってなんだ?? 幻獣使いは匂いで幻獣を判別できるのか? 犬じゃあるまいし。
しかし事態はそんなのんびりとした疑問を抱いている場合ではなかったのである。
「貴様がッ! なんの罪もないサラマンダーを地獄に叩き落とした張本人か! 死ねええッ!」
「えっ?!」
とっさに防御姿勢をとった一瞬後に、俺はその部屋ごと通りまで吹き飛ばされた。
「きゃっ?!」
「なんだなんだ!!」
突然宿屋の一角が吹き飛び、あやうく巻き込まれかけた通行人が驚いて立ち止まる。
「痛てて……」
「ろ、ロディオ様、なぜ私まで……」
見れば、俺を取り調べしていたあの感じの悪い保安兵も一緒になって通りに倒れている。いい気味だ。ちょっとだけ。
もっとも、攻撃が直撃した俺のダメージは保安兵のものより大きい。しかも、瓦礫と化した部屋の残骸を踏み越えてくるやつがいる。その背後には、人間の背丈の二倍ほどもありそうな巨人。
大地より生まれし破壊の化身、ゴーレムだ。
本物の幻獣使い――こんなに間近で見たのは初めてだ。
「まァだァ生きてたかァァァ」
幻獣の力は恐ろしい。しかしそれよりも恐ろしいのは、それを操る人間である。
ていうか、すでに戦闘不能状態ですが。なんかもうしばらくは戦うどころか起きるのすら無理そうなんですが。まだやんの?
死ねって言ってたの、雰囲気的な意味じゃなくで、ガチで?
俺、殺されんの?
「ちょ、ちょっと待て! 俺の話を聞いてく……」
「問答無用! 死ねえええええええっ!」
「うわ、うわあああああああああああああああああっ!」
その時俺は、本気で死を覚悟した。
しかし、予想していた衝撃がなかなか来ない。
「……これは?」
顔をあげてみると、ひらり、ひらりと宙を舞うものにロディオが気を取られている。
「金か?」
俺が先ほど保安兵に渡そうとしたお札だ。これもまた攻撃に巻き込まれ、ここら一帯にばらまかれたらしい。煉瓦の上に落ちたお札にさりげなく手を伸ばした通行人が、ロディオの視線に気づいて慌てて素知らぬふりを決め込んだ。
「そっそれはっ! こいつが! 私を買収しようと……」
保安兵が俺を指差して叫んでいる。いやいや賄賂を要求したのはそっちだろ、そういう空気作ってただろ、と言いたいが、そんなことを言った覚えはない、勝手に出したんだ、と反論されればそれまでだ。まして、この――なんというか、ええと、遠回しに言えば、頭の作りが極めて単純そうな男が相手なら――
「なんだと貴様ァッ! 幻獣を虐待したばかりでなく、保安兵を買収までッ! なんと見下げ果てた輩ッ!!!」
ほらぁ。普通に信じてるぅ。
「こんなやァつッ! このロディオ様が直接手にかけるにも値しなァいッ! 逮捕ォ! そして、死刑ィ! 決定ェえええええええええ!!!」
とにかく、派手。誰だこいつは。
「我が名はロディオ! 幻獣と庇護の誓いを交わせし当代一の幻獣使い! 幻獣の敵は俺の敵ィ!! フゥーッ、フゥ!」
「ろ、ロディオ様!」
突然現れた派手な男の痛い言動に俺は完全にドン引いていたのだが、俺の取り調べをしていた保安兵はかしこまった姿勢でその男に向かって敬礼した。
「ロディオ様ともあろう方がどうしてこんなところへ」
「風が俺を呼んだのさァ」
うーん痛い。聞いててつらい。しかし、保安兵から様付けで呼ばれているということは、もしかして偉いやつなのか?
「このあたりに、主人にまともに世話をしてもらえず死にかかっている幻獣がいると聞いて……主人はブッコロ! そして幻獣はレスキュー! それが俺の使命ィ!」
俺はびくっとした。主人に――俺ではなくデンスのことだが――世話をしてもらえず死にかかっているとは、まさにマンダのことじゃないか。
「ん? そこの、お前っ」
ロディオが、俺を指差した。
「幻獣の気配がするぞ? 炎……そう、純粋な炎の匂いだ」
ロディオが犬みたいに鼻をひくひく動かした。匂い? 炎? マジか。デンスのこともあり幻獣使いと名乗る目の前の男をまったく信用していなかった……いや仮にデンスのことがなかったとしてもこの痛いノリの男を信用するというのはできなかったかもしれないが。もしかしてこいつ、本物の幻獣テイマー?
いや、でも、炎の匂いってなんだ?? 幻獣使いは匂いで幻獣を判別できるのか? 犬じゃあるまいし。
しかし事態はそんなのんびりとした疑問を抱いている場合ではなかったのである。
「貴様がッ! なんの罪もないサラマンダーを地獄に叩き落とした張本人か! 死ねええッ!」
「えっ?!」
とっさに防御姿勢をとった一瞬後に、俺はその部屋ごと通りまで吹き飛ばされた。
「きゃっ?!」
「なんだなんだ!!」
突然宿屋の一角が吹き飛び、あやうく巻き込まれかけた通行人が驚いて立ち止まる。
「痛てて……」
「ろ、ロディオ様、なぜ私まで……」
見れば、俺を取り調べしていたあの感じの悪い保安兵も一緒になって通りに倒れている。いい気味だ。ちょっとだけ。
もっとも、攻撃が直撃した俺のダメージは保安兵のものより大きい。しかも、瓦礫と化した部屋の残骸を踏み越えてくるやつがいる。その背後には、人間の背丈の二倍ほどもありそうな巨人。
大地より生まれし破壊の化身、ゴーレムだ。
本物の幻獣使い――こんなに間近で見たのは初めてだ。
「まァだァ生きてたかァァァ」
幻獣の力は恐ろしい。しかしそれよりも恐ろしいのは、それを操る人間である。
ていうか、すでに戦闘不能状態ですが。なんかもうしばらくは戦うどころか起きるのすら無理そうなんですが。まだやんの?
死ねって言ってたの、雰囲気的な意味じゃなくで、ガチで?
俺、殺されんの?
「ちょ、ちょっと待て! 俺の話を聞いてく……」
「問答無用! 死ねえええええええっ!」
「うわ、うわあああああああああああああああああっ!」
その時俺は、本気で死を覚悟した。
しかし、予想していた衝撃がなかなか来ない。
「……これは?」
顔をあげてみると、ひらり、ひらりと宙を舞うものにロディオが気を取られている。
「金か?」
俺が先ほど保安兵に渡そうとしたお札だ。これもまた攻撃に巻き込まれ、ここら一帯にばらまかれたらしい。煉瓦の上に落ちたお札にさりげなく手を伸ばした通行人が、ロディオの視線に気づいて慌てて素知らぬふりを決め込んだ。
「そっそれはっ! こいつが! 私を買収しようと……」
保安兵が俺を指差して叫んでいる。いやいや賄賂を要求したのはそっちだろ、そういう空気作ってただろ、と言いたいが、そんなことを言った覚えはない、勝手に出したんだ、と反論されればそれまでだ。まして、この――なんというか、ええと、遠回しに言えば、頭の作りが極めて単純そうな男が相手なら――
「なんだと貴様ァッ! 幻獣を虐待したばかりでなく、保安兵を買収までッ! なんと見下げ果てた輩ッ!!!」
ほらぁ。普通に信じてるぅ。
「こんなやァつッ! このロディオ様が直接手にかけるにも値しなァいッ! 逮捕ォ! そして、死刑ィ! 決定ェえええええええええ!!!」
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