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14.弱くてごめんね
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私の中のヨアキムは子供の頃のままで止まっていて、性的なものとは一切無縁だった。子供のヨアキムをずっと胸に抱えていた私も、多分成長を止めていた。
ヨアキムだって成長している。
その上で何年も手紙一つ寄越さないのだ。
子供の他愛ない約束なんて忘れてるに違いないなんて、私は考えもしなかった。
けれど現実は残酷で、大人になってもヨアキムは迎えに来てはくれなくて。
私はヨアキムにとってそれだけの存在だったのだと突きつけられたのだ。
幸いにしてお父さんがたまたま近くを通りかかってくれて、私はその男にどうこうされる事は無かった。
でも村に居続けるのは苦痛だった。迎えに来ることもないヨアキムをどうしても待ってしまう自分が居たから。
だから私は村を出た。
村の男には知られたくなかったから、お父さんとお母さんには誰にも行き先を伝えないで欲しいってお願いをして。
男に振り回されるのはもう嫌だった。
男のためだけに生きるのはもう止めようと決意して、そうして逆に男なんてなんでもないんだって思い込もうとして何人もと身体の関係を持った。セックスはただの身体の快楽で、それ以上の意味なんてないんだって。
結婚なんてしない。男を選ぶのも捨てるのも私の選択次第。
一人でも楽しく生きていってみせるって、ずっと必死だった。
そうやって必死に虚勢を張ってる事自体、ヨアキムを忘れられない証拠だったのに。
「ごめんね、ヨアキム。待てなくてごめん。信じられなくてごめん。ヨアキムはずっと私を思ってくれてたのに、私なんか想像できないくらいずっとずっと、辛い思いをしてたのに。……弱くて、ごめんね」
涙が溢れる。
悲しくて申し訳なくて心が苦しくて。
拭ってもぬぐっても涙が止まらない。気が付けばヨアキムに抱き締められて、その胸に顔を押し付けながら私は泣いていた。
「アリーサ、愛してる」
「うん……っ」
「愛してるんだ、どうしようもなく。お前に触れた男が憎くて仕方がないっ」
「ごめんね……、ごめんねヨアキム」
「アリーサのこの肌に触れた男が居るのだと、考えただけで皆殺しにしてしまいたくなる! この世界に俺とアリーサだけにしてしまいたくなる! 自由騎士となる時に心も何もかもを偽ることを覚え、危険思想など排除したはずだったのに!」
「……いいよ」
涙を止められないまま、ヨアキムを見上げた。
私を見下ろすヨアキムの、真っ暗に濁った瞳を正面から受け止める。
小さかった頃の面影はない。それでもヨアキムはヨアキムだ。私にはもう疑いようがなかった。
ずっと待ち続けていた、ヨアキムだ。
「ヨアキムがしたいように、しよう? それで世界中の人に恨まれてもいいよ、私の責任だから。ヨアキムの子供なら何人でも産むよ。もう二度とヨアキム以外の男とは会わないよ、口もきかない」
「アリーサ?」
「私もね、ずっとヨアキムを待ってた。だからヨアキムと一緒にいられるなら、もう他の事はどうでもいいや」
世界が壊されようと、私が壊されようと。
えへへ、と小さく笑った。
「……でもヨアキムと、村で静かに暮らしてみたかったな。沢山の子供に囲まれてなんてことの無い毎日をゆっくり静かに平和に、暮らしてみたかった」
ヨアキムだって成長している。
その上で何年も手紙一つ寄越さないのだ。
子供の他愛ない約束なんて忘れてるに違いないなんて、私は考えもしなかった。
けれど現実は残酷で、大人になってもヨアキムは迎えに来てはくれなくて。
私はヨアキムにとってそれだけの存在だったのだと突きつけられたのだ。
幸いにしてお父さんがたまたま近くを通りかかってくれて、私はその男にどうこうされる事は無かった。
でも村に居続けるのは苦痛だった。迎えに来ることもないヨアキムをどうしても待ってしまう自分が居たから。
だから私は村を出た。
村の男には知られたくなかったから、お父さんとお母さんには誰にも行き先を伝えないで欲しいってお願いをして。
男に振り回されるのはもう嫌だった。
男のためだけに生きるのはもう止めようと決意して、そうして逆に男なんてなんでもないんだって思い込もうとして何人もと身体の関係を持った。セックスはただの身体の快楽で、それ以上の意味なんてないんだって。
結婚なんてしない。男を選ぶのも捨てるのも私の選択次第。
一人でも楽しく生きていってみせるって、ずっと必死だった。
そうやって必死に虚勢を張ってる事自体、ヨアキムを忘れられない証拠だったのに。
「ごめんね、ヨアキム。待てなくてごめん。信じられなくてごめん。ヨアキムはずっと私を思ってくれてたのに、私なんか想像できないくらいずっとずっと、辛い思いをしてたのに。……弱くて、ごめんね」
涙が溢れる。
悲しくて申し訳なくて心が苦しくて。
拭ってもぬぐっても涙が止まらない。気が付けばヨアキムに抱き締められて、その胸に顔を押し付けながら私は泣いていた。
「アリーサ、愛してる」
「うん……っ」
「愛してるんだ、どうしようもなく。お前に触れた男が憎くて仕方がないっ」
「ごめんね……、ごめんねヨアキム」
「アリーサのこの肌に触れた男が居るのだと、考えただけで皆殺しにしてしまいたくなる! この世界に俺とアリーサだけにしてしまいたくなる! 自由騎士となる時に心も何もかもを偽ることを覚え、危険思想など排除したはずだったのに!」
「……いいよ」
涙を止められないまま、ヨアキムを見上げた。
私を見下ろすヨアキムの、真っ暗に濁った瞳を正面から受け止める。
小さかった頃の面影はない。それでもヨアキムはヨアキムだ。私にはもう疑いようがなかった。
ずっと待ち続けていた、ヨアキムだ。
「ヨアキムがしたいように、しよう? それで世界中の人に恨まれてもいいよ、私の責任だから。ヨアキムの子供なら何人でも産むよ。もう二度とヨアキム以外の男とは会わないよ、口もきかない」
「アリーサ?」
「私もね、ずっとヨアキムを待ってた。だからヨアキムと一緒にいられるなら、もう他の事はどうでもいいや」
世界が壊されようと、私が壊されようと。
えへへ、と小さく笑った。
「……でもヨアキムと、村で静かに暮らしてみたかったな。沢山の子供に囲まれてなんてことの無い毎日をゆっくり静かに平和に、暮らしてみたかった」
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