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82.心臓が痛くなった気がした
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「ねぇ、レベッカは僕が第一王子でなくても変わらずに好きでいてくれる?」
「え……? 突然、とうして」
「好きでいてくれる?」
「そんなの当たり前です。私はエリオットが王子じゃなくても、変わらずにずっと大好きです!」
エリオットが私を好きじゃなくなっても、たとえまた生まれ変わっても。ずっと変わらずに、私はエリオットの事を好きだと思う。
私の返事にエリオットが嬉しそうに笑ってくれて、そして険しい表情になった。
「多分、ウォルター公に訴えてももう無理だと思う。貴族である以上体面というものがあるからね。国王陛下との間で僕らの婚約破棄が決まってしまった以上、取り下げるのはウォルター公のプライドが許さないだろう」
「そんな……!」
「国王陛下も僕に王位を譲るために長い間随分と色々と画策してくれていたけど、多分上手くは行かない」
「え?」
今まで考えもしなかったことを伝えられて、瞬きをしながらエリオットを見つめた。
暗い中でも、その顔はどこか疲れているように見える。
「どうして。だって今度、立太子の儀で王太子になるんですよね? そしたら」
「ルイス一派に引きずり落とされると思う」
ため息と共に、あっさりと当然のように言われた。
「僕の立太子は元々がウォルター公の後ろ盾ありきのことだったからね。ルイス一派が裏で画策しようとも、ウォルター公の力の前では驚異にはならないはずだったんだ」
エリオットの声は深刻で、冗談や根拠のない推測を言っているようには聞こえない。
「けれど僕とレベッカの婚約破棄と同時にアルビナ・ミナスーラとの婚約を発表されれば、居合わせた貴族はウォルター公が僕から手を引いたのだと思うだろう。そんな中で噂が真実だと言えば、一瞬で形勢は変化する」
エリオットがしてくれた説明に首を傾げた。
「噂?」
「僕が国王陛下の庶子だって噂だよ」
「そんな……っ! だってそれは誰も知らないはずで」
「当然ながら王妃殿下は知っている。ということはつまり、ルイス一派は知っているということだ」
そういえばセシリアは知っていたのかもしれない。
彼女が王妃教育を受けると言っていたし、「何も知らないんですねぇ」とバカにしてきたから。
事情は違うけれど、グレッグお兄様も知っていた。
二人ともエリオットの事を知っていて、国王にはなれないと思ったり、あんなにも酷いことを言ったりしていたんだ。
心臓が痛くなった気がして、思わずエリオットの頭を抱き寄せていた。
「レベッカ?」
「私はエリオットが好きです。エリオットがエリオットだから、好きになりました。これからもずっと、何があっても好きです」
「……ありがとう」
どうしてみんな親が王族や貴族じゃないって、たかがそれだけの事で酷いことを言えるんだろう。
国王陛下も自分が愛した女性の子供なんだから、もっと守ってくれればいいのに。
「ルイス派の狙いはもう分かってる。ミナスーラ王国の姫との婚約を利用して、婚約が成立してから庶子であることを発表するんだろうね。そうすれば他国の王室を謀ったという理由で、僕もそして話を持ってきたウォルター公一派もまとめて引きずり下ろせる。そうして改めて、正当な血筋であるルイスを持ち上げるつもりだ」
「そんな……お父様にその話をすれば、もしかしたら考え直してくれるかも」
「そう思って話をしようとしてるんだけど、全く取り合ってくれなくてね。手紙も読まずに捨てられてしまっているのかもしれない」
エリオットが私の胸に顔をうずめながら、静かで深いため息をついた。
「ねぇレベッカ、僕と一緒に逃げてくれないかな?」
「え……? 突然、とうして」
「好きでいてくれる?」
「そんなの当たり前です。私はエリオットが王子じゃなくても、変わらずにずっと大好きです!」
エリオットが私を好きじゃなくなっても、たとえまた生まれ変わっても。ずっと変わらずに、私はエリオットの事を好きだと思う。
私の返事にエリオットが嬉しそうに笑ってくれて、そして険しい表情になった。
「多分、ウォルター公に訴えてももう無理だと思う。貴族である以上体面というものがあるからね。国王陛下との間で僕らの婚約破棄が決まってしまった以上、取り下げるのはウォルター公のプライドが許さないだろう」
「そんな……!」
「国王陛下も僕に王位を譲るために長い間随分と色々と画策してくれていたけど、多分上手くは行かない」
「え?」
今まで考えもしなかったことを伝えられて、瞬きをしながらエリオットを見つめた。
暗い中でも、その顔はどこか疲れているように見える。
「どうして。だって今度、立太子の儀で王太子になるんですよね? そしたら」
「ルイス一派に引きずり落とされると思う」
ため息と共に、あっさりと当然のように言われた。
「僕の立太子は元々がウォルター公の後ろ盾ありきのことだったからね。ルイス一派が裏で画策しようとも、ウォルター公の力の前では驚異にはならないはずだったんだ」
エリオットの声は深刻で、冗談や根拠のない推測を言っているようには聞こえない。
「けれど僕とレベッカの婚約破棄と同時にアルビナ・ミナスーラとの婚約を発表されれば、居合わせた貴族はウォルター公が僕から手を引いたのだと思うだろう。そんな中で噂が真実だと言えば、一瞬で形勢は変化する」
エリオットがしてくれた説明に首を傾げた。
「噂?」
「僕が国王陛下の庶子だって噂だよ」
「そんな……っ! だってそれは誰も知らないはずで」
「当然ながら王妃殿下は知っている。ということはつまり、ルイス一派は知っているということだ」
そういえばセシリアは知っていたのかもしれない。
彼女が王妃教育を受けると言っていたし、「何も知らないんですねぇ」とバカにしてきたから。
事情は違うけれど、グレッグお兄様も知っていた。
二人ともエリオットの事を知っていて、国王にはなれないと思ったり、あんなにも酷いことを言ったりしていたんだ。
心臓が痛くなった気がして、思わずエリオットの頭を抱き寄せていた。
「レベッカ?」
「私はエリオットが好きです。エリオットがエリオットだから、好きになりました。これからもずっと、何があっても好きです」
「……ありがとう」
どうしてみんな親が王族や貴族じゃないって、たかがそれだけの事で酷いことを言えるんだろう。
国王陛下も自分が愛した女性の子供なんだから、もっと守ってくれればいいのに。
「ルイス派の狙いはもう分かってる。ミナスーラ王国の姫との婚約を利用して、婚約が成立してから庶子であることを発表するんだろうね。そうすれば他国の王室を謀ったという理由で、僕もそして話を持ってきたウォルター公一派もまとめて引きずり下ろせる。そうして改めて、正当な血筋であるルイスを持ち上げるつもりだ」
「そんな……お父様にその話をすれば、もしかしたら考え直してくれるかも」
「そう思って話をしようとしてるんだけど、全く取り合ってくれなくてね。手紙も読まずに捨てられてしまっているのかもしれない」
エリオットが私の胸に顔をうずめながら、静かで深いため息をついた。
「ねぇレベッカ、僕と一緒に逃げてくれないかな?」
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