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「エーヴァルト様、ちょっと待ってくださいっ」
「ん?ディアナ、どうしたんだ?」
殆ど裸の私に対して、まだきっちりと服を着込んだまただったエーヴァルト様の肩を押し返した。体重をかけるようにのし掛かられていたのにあっさりと身体を離してくれた事に、ほんのちょっとだけ残念に思いながらほっとする。
見上げるエーヴァルト様の腕は肩から生える二本だ。うん、当たり前だ。何考えてたんだろう、私。初えっちで緊張し過ぎたかな。
エーヴァルト様の顔に視線を移すと小さく微笑むその唇が濡れているのが見えてしまった。それが今までの唾液を交換するくらいの激しいキスの名残だって、誰に指摘されなくても分かりすぎるくらい分かってしまって頬が熱くなる。
「ディアナ?」
見惚れる笑みで名前を呼ばれる。
完璧な顔、完璧な声、完璧な王子様。私の知ってるエーヴァルト様は何もかもが完璧で、だから私はこの場に似つかわしくなさすぎるその存在を無意識に視界と意識から切り離していたんだと思う。
エーヴァルト様の背後ににゅるりと一本の触手が現れる、その瞬間まで。
しっとりした質感に白くて半透明のその細長いイカの足みたいな存在は、尖端がつるりと丸くなっていた。
触手だ。触手だとしか言いようが無い。なんていうか、男性向けえろゲームとかえろ漫画でよく見たやつだ。
私の視線がズレた事に気がついたんだろう。エーヴァルト様の碧眼が私の視線を辿るように後ろを向いて、そこでうにょりと動いた触手を見た。
なんでこんなトコにこんな触手が居るの!?王宮だよ!王太子殿下が来る、王太子殿下妃の寝室だよ!?警備とかどうなってんの!?
「エーヴァルト様!『ソレ』から離れてくださいっ」
キスなんてしてる場合じゃない。私はエーヴァルト様だけでも逃げてもらおうと身体を起こそうとして、手も足も動かない事に気がついた。
それもそのはずだ。手足にそれぞれ一本ずつ、四本もの触手が絡んでいる。それだけじゃなくて、さっきまで私とエーヴァルト様しか居なかったはずの寝室には天蓋付きベッドから溢れるくらいの触手がうようよと蠢いていた。こんなものが近寄ってきてるなんて全然気が付かなかった。
焦る私と反対に、おかしい程にゆったりとエーヴァルト様が微笑む。あれ、でもなんだろう。さっきまでは完璧に見えた笑顔がなんだか怖い。
そうまるで、腹黒キャラが本性を表したみたい、な……。
「ディアナ、やはり君は最高だな。私の伴侶には君こそが相応しい、いや君以外には考えられない」
「ひゃん!え、エーヴァルト様っ!?」
「大丈夫、この触手は私の分身だ」
「ん?ディアナ、どうしたんだ?」
殆ど裸の私に対して、まだきっちりと服を着込んだまただったエーヴァルト様の肩を押し返した。体重をかけるようにのし掛かられていたのにあっさりと身体を離してくれた事に、ほんのちょっとだけ残念に思いながらほっとする。
見上げるエーヴァルト様の腕は肩から生える二本だ。うん、当たり前だ。何考えてたんだろう、私。初えっちで緊張し過ぎたかな。
エーヴァルト様の顔に視線を移すと小さく微笑むその唇が濡れているのが見えてしまった。それが今までの唾液を交換するくらいの激しいキスの名残だって、誰に指摘されなくても分かりすぎるくらい分かってしまって頬が熱くなる。
「ディアナ?」
見惚れる笑みで名前を呼ばれる。
完璧な顔、完璧な声、完璧な王子様。私の知ってるエーヴァルト様は何もかもが完璧で、だから私はこの場に似つかわしくなさすぎるその存在を無意識に視界と意識から切り離していたんだと思う。
エーヴァルト様の背後ににゅるりと一本の触手が現れる、その瞬間まで。
しっとりした質感に白くて半透明のその細長いイカの足みたいな存在は、尖端がつるりと丸くなっていた。
触手だ。触手だとしか言いようが無い。なんていうか、男性向けえろゲームとかえろ漫画でよく見たやつだ。
私の視線がズレた事に気がついたんだろう。エーヴァルト様の碧眼が私の視線を辿るように後ろを向いて、そこでうにょりと動いた触手を見た。
なんでこんなトコにこんな触手が居るの!?王宮だよ!王太子殿下が来る、王太子殿下妃の寝室だよ!?警備とかどうなってんの!?
「エーヴァルト様!『ソレ』から離れてくださいっ」
キスなんてしてる場合じゃない。私はエーヴァルト様だけでも逃げてもらおうと身体を起こそうとして、手も足も動かない事に気がついた。
それもそのはずだ。手足にそれぞれ一本ずつ、四本もの触手が絡んでいる。それだけじゃなくて、さっきまで私とエーヴァルト様しか居なかったはずの寝室には天蓋付きベッドから溢れるくらいの触手がうようよと蠢いていた。こんなものが近寄ってきてるなんて全然気が付かなかった。
焦る私と反対に、おかしい程にゆったりとエーヴァルト様が微笑む。あれ、でもなんだろう。さっきまでは完璧に見えた笑顔がなんだか怖い。
そうまるで、腹黒キャラが本性を表したみたい、な……。
「ディアナ、やはり君は最高だな。私の伴侶には君こそが相応しい、いや君以外には考えられない」
「ひゃん!え、エーヴァルト様っ!?」
「大丈夫、この触手は私の分身だ」
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