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 うちの国としては最大限のおもてなしを意識した最高のパーティーだった。田舎の国だからこのルトブルク国で開かれるようなものとはきっと規模も何もかも違うとは思うけど。
 でもとにかくそのパーティーで国賓であるエーヴァルト様をもてなそうと挨拶をしようとした時、私は突然プロポーズされたんだ。そんな、愛だの恋だのなんて余地は無かった。
 ちなみに私は本当に傾国の美女ってわけじゃないから、一目惚れなんて言い訳は通用しない。

 そんな出来の悪い嘘を付いてでも私を騙しておきたい理由があるんだろうか。別に王族として生まれたからには前世の自由恋愛の価値観を持ち出さないくらいの分別はあるつもりなんだけど。

 むしろ今まで気になるけど気にしないようにしてたのに。
 そんな私の考えを読んだのか、エーヴァルト様が大きな溜息をついた。頭をがしがしとかいて、そして何かを吹っ切ったように椅子にふんぞり返える。
 今までの気品ある立ち振る舞いとは別人だとしか思えない行動に、私はきょとんと瞬きをしてしまった。あれ、エーヴァルト様って二重人格とか?

「大人しく結婚したから言わないだけで気がついてるかと思ってたんだが、まさかほんっとに何も気がついてねぇとはな」
「エーヴァルト、さま?」
「会ったばかりじゃねえよ、俺達は。小さい頃に会ってる。この王宮の端の小屋で」
「……王宮の?」
「端の小屋、だ。覚えてんだろ、それくらい」

 覚えてる。

 小さい頃、私は一度だけこのルトブルク国に来たことがある。国王である父親に連れられて来た。父親がこの国に何の用事だったのかはもう覚えてないけど、私は一人で迷子になってしまったのだ。
 だってこの王宮、迷路みたいなんだもん。一週間経ったけど未だに自分が何処にいるのか、誰かと一緒じゃないと全然分かんない。

 そんな時、うろうろしてる中で私は小屋を見つけた。中に居る人に道を教えてもらおうと思ってドアを開けて、そして。

 そこに触手を見つけた。

 あの時見たのはここに居るのよりもっとずっと小さいやつだったけど。
 王宮の敷地内に触手だなんて見てはいけないものを見た気がして、私はそっとドアを閉めようとした。その時に突然後ろから声をかけられて。

 振り返った先に居たのは金髪碧眼の。

「いや、女の子でしたよね」
「男だよ。っつか、俺だ」

 まっさかぁ。ドレス着てたし髪だって長かったし超絶美少女だったんだから!
 私の疑いの目に、またもエーヴァルト様が大きな溜息を付いた。
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