【R18】呪いを解くために中●しオッケーしたけどそもそも獣化の呪いじゃなかったってどういうこと！？

クーリング・オフが適用されるべき

　今を逃したらこのまま流される！
　そんな危機感を感じて私は叫ぶように主張した。

　番って要はあれだよね、結婚相手だよね。さっき散々テオフィル王子には『愛してる』だのなんだの言われたし、多分そういうことだよね。
　まぁ私もちょっとというか大分そんな気になっちゃってたのは確かだけど。

　でもさ、ほらさ。
　どうも前提の部分に重大な誤認があったっぽいんだよね。

　私はテオフィル王子の事を『呪われてわんこにされちゃった王子様』だと思っていたわけでさ。映画の野獣みたく、呪いを解けば人間になると思っていたわけで。
　いや勿論わんこ……じゃなくて、狼なテオフィル王子が悪いってわけじゃない。格好良いと思うし、嫌いじゃない。むしろ好きだと思う。
　あくまでも自分の結婚相手としてどうかっていうのを考えなければ。

　だって狼だよ？種族が全然違うじゃん。この世界ではもしかしたらテオフィル王子達が普通なのかもしれないけど、でも少なくとも私にとってはそんなすぐに受け入れられる話じゃない。

　って、思ったんだけど。

　テオフィル王子がなんだかこれ以上ないくらいににっこにっこって微笑んでる。けど、視界をちらつくはずの尻尾が見えない。さっき私を紹介してくれてた時には確かに左右に揺れてたのに。
　なんでだろう。
　笑顔なのに、背中に汗が出る。

「キャンセル？それって、どういう意味かな？」
「いやつまり、無かった事にさせていただけないかなって。ほら私たちってまだ出会ったばっかりですし、お互いの事もよく知りませんし、ちょっと勢いに任せすぎじゃないかなって」
「ヤヨイ。ヤヨイは知らないかもしれないけど、僕たち狼族は匂いで惹かれ合うんだ」
「……匂い？」

　そう、匂いだよ。
　テオフィル王子が繰り返す。
　思い出してみればテオフィル王子は私の事を「甘くて魅力的な匂い」だとか言っていた気がする。

　えっとそれってつまり種族とか時間とか関係ないってこと？

「僕はヤヨイの全てが欲しいって言って、ヤヨイも僕を欲しがってくれたよね。言葉には力が宿るから、そんな簡単に無かった事には出来ないよ」
「そ、それは」

　だってあんな状況で、何にも知らなくて、判断力なんてマイナス以下だったんだから。
　こんなの押しかけ訪問販売と変わらなくない？クーリング・オフが適用されるべきだと思う。

「テオフィル様？」
「大丈夫だよ、世界の落し子は少し混乱してるだけ」

　心配そうにしているメイドさんにテオフィル王子が断言する。