【R18】呪いを解くために中●しオッケーしたけどそもそも獣化の呪いじゃなかったってどういうこと！？

スルーして無かった事にしよう

　どことなくピリッとした気がしていた空気を、大広間に居た女性が和らげてくれる。この女性もわんこ姿だけど、メイド服を着ていたからメイドさんなんだっていうのが分かった。
　大広間の中の全員の視線がテオフィル王子じゃなくて私に突き刺さったのが分かる。やめて、見ないで、このシーツの中が無防備すぎて心元ないんですよーっ！
　そんな私の気持ちを察してくれたのか、テオフィル王子が広い胸に隠すみたいにぎゅって抱き締めてくれた。

「この子はね、呪いを解いてくれた僕の番だよ」
「呪いっ！？まさかそんなっ」
「そう、僕は呪いによって魔法を封じられ、言葉を封じられていた。神の祝福を受けた僕に呪いを掛ける事が出来るのは半分と言えども血を分けた兄弟であるパトリック、君しかいないよね」

　ざわりと大広間の空気が揺れる。

「ふ、ふざけるな！兄貴については神域を侵した神罰だと皆も納得していただろう！」
「神罰だったらどんな手段を持ってしても回復できるはずがない。神の力は絶対だからね。そもそもがまさか弟王子が兄王子を呪うだなんてあるはずがないからこそ、神罰だと考えるしかなかっただけだ。お前の計画は悪くなかった。ただ、運が無かっただけだ。……残念だったな」

　お前が呪ったんじゃなくて本当に神罰であったならどんなに良かっただろうな。

　小さな声は私にしか聞こえなかっただろう。きっとテオフィル王子も聞かせるつもりなんて無かったに違いない。
　切ない響きに胸が痛くなって、シーツの中できゅっと両手を握り締めた。

「王族を呪う行為は罪が重い。それは第二王子自身であっても変わらない、そうですよね国王陛下？」
「あ、ああ。……ああ、パトリック。兄であるテオフィルを呪うなど、なんと愚かな事を」
「元はといえば父上が側室など作るからこのような跡目争いが起こるのですよ。狼族であるのなら狼族らしく、番である母上一人を愛しぬけば良かったものを」
「……今更それを言ってくれるな、テオフィル」

　しょげたように尻尾を垂れ下げたわんこが、恐らく王様でテオフィル王子のお父さんなんだろう。王子のついた小さな溜息が聞こえた。

「パトリックは連れて行け。処分は追って伝える」

　朗々と周囲に命令を下すテオフィル王子は、さっきまで人の身体をぺろぺろ舐めてたのと同じわんことは思えない。
　……うん、さっき聞こえた気になる単語をスルーして無かった事にしようとしたけど無理だよね。分かってた。

「狼族」って何デスカー！？