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犬が喋った!?
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「え?」
さっきと全く同じマヌケな声が出る。
私が居たのは部屋だった。
しかもめちゃくちゃ広い部屋で、大学の講義室くらいある。贅沢過ぎる空間の使い方をしていて、真ん中にベッドがどーん!ってあって、後は一人掛けのソファーが丸いテーブルを挟んで一つずつ。
壁には備え付けの暖炉まであった。
そのどれこもれもがすごく大きい。ベッドも私が5人はのんびり寝れそうなくらい、大きい。
そしてすっごく高そうなものばかりだった。
でもそれらは私が後になって気が付いた事だった。
この時の私には周りなんて全く目に入って無かった。
目の前の毛皮……じゃない動物?に驚きすぎていたからだ。
私が乗っかっていたのは毛皮じゃなくて、生き物だったのだ。
パチンと二人の瞬きのタイミングがぴったり合う。
「君は……女か!?」
「犬が喋った!?」
ふさふさの毛に覆われた顔、長い鼻先と大きな口、頭の上にピンと立った耳。どこからどう見たってわんこにしか見えないのに、その『犬』は言葉を喋った。
え、え、腹話術?どういうこと!?
混乱してる私の両の二の腕を『わんこ』ががしっと掴んでくる。その手は毛に覆われてはいるけど五本の指があって、人間にしか見えなかった。あ、でも爪は真っ黒で長い。
ぐっと近寄られて上から覗き込まれる。私はどうもこのわんこの上に跨がる感じで乗っかってるみたいなのに、それでも上半身を起こした相手の方が顔の位置が高かった。
あ、指だけじゃない。身体も人間っぽい。首があって肩があって、毛に覆われた人の身体の上に犬の頭が乗っかってる。
瞬きをして見上げた。私はこんな感じの『人』を知ってる。
勿論直接的な知り合いとかじゃない。でもよく知っていた。
世界的に有名なアニメ映画の登場キャラクターだから。
世界一有名なネズミのキャラクターを生み出した会社の、あの呪われて野獣の姿にされちゃった王子様の出てくるあの映画だ。
そう考えるとパニック一歩手前だった頭がストンと落ち着いた。
現実感なんてものは地面から落ちた瞬間に行方不明だ。今なら空に月が二個あっても海が真っ赤になってても郵便ポストが真っ青になっててもなんでも受け入れられる。
「僕は犬じゃない。が、君は女だね?」
「いやまぁそりゃこんな格好で男だって言う方が無理ないですかね」
さっきと全く同じマヌケな声が出る。
私が居たのは部屋だった。
しかもめちゃくちゃ広い部屋で、大学の講義室くらいある。贅沢過ぎる空間の使い方をしていて、真ん中にベッドがどーん!ってあって、後は一人掛けのソファーが丸いテーブルを挟んで一つずつ。
壁には備え付けの暖炉まであった。
そのどれこもれもがすごく大きい。ベッドも私が5人はのんびり寝れそうなくらい、大きい。
そしてすっごく高そうなものばかりだった。
でもそれらは私が後になって気が付いた事だった。
この時の私には周りなんて全く目に入って無かった。
目の前の毛皮……じゃない動物?に驚きすぎていたからだ。
私が乗っかっていたのは毛皮じゃなくて、生き物だったのだ。
パチンと二人の瞬きのタイミングがぴったり合う。
「君は……女か!?」
「犬が喋った!?」
ふさふさの毛に覆われた顔、長い鼻先と大きな口、頭の上にピンと立った耳。どこからどう見たってわんこにしか見えないのに、その『犬』は言葉を喋った。
え、え、腹話術?どういうこと!?
混乱してる私の両の二の腕を『わんこ』ががしっと掴んでくる。その手は毛に覆われてはいるけど五本の指があって、人間にしか見えなかった。あ、でも爪は真っ黒で長い。
ぐっと近寄られて上から覗き込まれる。私はどうもこのわんこの上に跨がる感じで乗っかってるみたいなのに、それでも上半身を起こした相手の方が顔の位置が高かった。
あ、指だけじゃない。身体も人間っぽい。首があって肩があって、毛に覆われた人の身体の上に犬の頭が乗っかってる。
瞬きをして見上げた。私はこんな感じの『人』を知ってる。
勿論直接的な知り合いとかじゃない。でもよく知っていた。
世界的に有名なアニメ映画の登場キャラクターだから。
世界一有名なネズミのキャラクターを生み出した会社の、あの呪われて野獣の姿にされちゃった王子様の出てくるあの映画だ。
そう考えるとパニック一歩手前だった頭がストンと落ち着いた。
現実感なんてものは地面から落ちた瞬間に行方不明だ。今なら空に月が二個あっても海が真っ赤になってても郵便ポストが真っ青になっててもなんでも受け入れられる。
「僕は犬じゃない。が、君は女だね?」
「いやまぁそりゃこんな格好で男だって言う方が無理ないですかね」
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