【R18】恥ずかしくて好きな人から逃げてたら、無理やりに捕まえられた

水野恵無

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5.帰りたいんだけど

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「紗知、顔赤くね? 大丈夫か?」

 背の高い岡本に至近距離で顔をのぞき込まれた。
 知ってたけど、岡本は顔が良すぎる。
 サッカー部のエースの堺と同じかそれ以上に人気があるし、モデルにスカウトされたけど断ったみたいな噂だってある。
 実際に読モとしてストリートスナップが載ったこともある。ちなみにその雑誌、私も買ったけど岡本が格好良すぎて直視できてない。

 そんな岡本がこんな超至近距離にいて、腕に閉じ込められてるみたいな体勢で、私の心は限界だった。

「帰る」
「……え?」
「帰るね、ばいばい!」

 そう言ってそのままこの場を離れたいのに、岡本は私を見下ろしたまんま動かなかった。

「岡本?」
「ん?」
「……か、帰りたいんだけど」

 私はなんかいつの間にか窓枠にぴったり張り付くみたいになってて、身体の横には岡本の腕があって、正面には岡本が立ってて、動けない。
 岡本がどいてくれないと帰れないんだけど。

「なんか用事あんの?」
「い、いや、特には」
「じゃあ別に良くね? もうちょい俺と話そ?」

 用事があるって嘘付けば良かったって、気がついたけど今更遅かった。

「いや、でも、あの」
「なぁ、紗知ってそんな俺の事嫌い?」
「き……っ!? きら……っ」

 嫌いなんてない! むしろ大好きだよ!
 そう言えればいいのに、岡本の顔を見ると全然言えない。好きすぎて、頭ん中、真っ白になる。

 否定すら出来ない私に、岡本がため息をついた。
 一瞬目を伏せて、そしてまた私を見た時に、どうしてだか胸のあたりがザワってした。
 今まで見たこともなかった岡本が見えた気がして。
 岡本の笑顔に違和感がある気がするなんて、気のせいだよね?

「俺さ、夏休み始まってからずっと考えてたんだよな」
「……う、うん?」
「ほっとんどない、ていうかもうほぼゼロな可能性をそれでも万一に賭けて頑張るか、それとも」

 突然何を言ってるのか分かんなくて岡本を見上げる。
 窓からぬるい風が吹いてきて、岡本の金髪がさらさら揺れた。

 キレイ。

 じっと見てたら、頭の後ろに何かを感じた。一瞬後に、岡本の手だって気が付く。
 岡本の大きな手が私の頭をがっしりと掴んでいた。

 え、これ、どういう――

「やっぱ嫌われてもいいから紗知のオンリーワンになるって、いま決めた」
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