5 / 20
5.帰りたいんだけど
しおりを挟む
「紗知、顔赤くね? 大丈夫か?」
背の高い岡本に至近距離で顔をのぞき込まれた。
知ってたけど、岡本は顔が良すぎる。
サッカー部のエースの堺と同じかそれ以上に人気があるし、モデルにスカウトされたけど断ったみたいな噂だってある。
実際に読モとしてストリートスナップが載ったこともある。ちなみにその雑誌、私も買ったけど岡本が格好良すぎて直視できてない。
そんな岡本がこんな超至近距離にいて、腕に閉じ込められてるみたいな体勢で、私の心は限界だった。
「帰る」
「……え?」
「帰るね、ばいばい!」
そう言ってそのままこの場を離れたいのに、岡本は私を見下ろしたまんま動かなかった。
「岡本?」
「ん?」
「……か、帰りたいんだけど」
私はなんかいつの間にか窓枠にぴったり張り付くみたいになってて、身体の横には岡本の腕があって、正面には岡本が立ってて、動けない。
岡本がどいてくれないと帰れないんだけど。
「なんか用事あんの?」
「い、いや、特には」
「じゃあ別に良くね? もうちょい俺と話そ?」
用事があるって嘘付けば良かったって、気がついたけど今更遅かった。
「いや、でも、あの」
「なぁ、紗知ってそんな俺の事嫌い?」
「き……っ!? きら……っ」
嫌いなんてない! むしろ大好きだよ!
そう言えればいいのに、岡本の顔を見ると全然言えない。好きすぎて、頭ん中、真っ白になる。
否定すら出来ない私に、岡本がため息をついた。
一瞬目を伏せて、そしてまた私を見た時に、どうしてだか胸のあたりがザワってした。
今まで見たこともなかった岡本が見えた気がして。
岡本の笑顔に違和感がある気がするなんて、気のせいだよね?
「俺さ、夏休み始まってからずっと考えてたんだよな」
「……う、うん?」
「ほっとんどない、ていうかもうほぼゼロな可能性をそれでも万一に賭けて頑張るか、それとも」
突然何を言ってるのか分かんなくて岡本を見上げる。
窓からぬるい風が吹いてきて、岡本の金髪がさらさら揺れた。
キレイ。
じっと見てたら、頭の後ろに何かを感じた。一瞬後に、岡本の手だって気が付く。
岡本の大きな手が私の頭をがっしりと掴んでいた。
え、これ、どういう――
「やっぱ嫌われてもいいから紗知のオンリーワンになるって、いま決めた」
背の高い岡本に至近距離で顔をのぞき込まれた。
知ってたけど、岡本は顔が良すぎる。
サッカー部のエースの堺と同じかそれ以上に人気があるし、モデルにスカウトされたけど断ったみたいな噂だってある。
実際に読モとしてストリートスナップが載ったこともある。ちなみにその雑誌、私も買ったけど岡本が格好良すぎて直視できてない。
そんな岡本がこんな超至近距離にいて、腕に閉じ込められてるみたいな体勢で、私の心は限界だった。
「帰る」
「……え?」
「帰るね、ばいばい!」
そう言ってそのままこの場を離れたいのに、岡本は私を見下ろしたまんま動かなかった。
「岡本?」
「ん?」
「……か、帰りたいんだけど」
私はなんかいつの間にか窓枠にぴったり張り付くみたいになってて、身体の横には岡本の腕があって、正面には岡本が立ってて、動けない。
岡本がどいてくれないと帰れないんだけど。
「なんか用事あんの?」
「い、いや、特には」
「じゃあ別に良くね? もうちょい俺と話そ?」
用事があるって嘘付けば良かったって、気がついたけど今更遅かった。
「いや、でも、あの」
「なぁ、紗知ってそんな俺の事嫌い?」
「き……っ!? きら……っ」
嫌いなんてない! むしろ大好きだよ!
そう言えればいいのに、岡本の顔を見ると全然言えない。好きすぎて、頭ん中、真っ白になる。
否定すら出来ない私に、岡本がため息をついた。
一瞬目を伏せて、そしてまた私を見た時に、どうしてだか胸のあたりがザワってした。
今まで見たこともなかった岡本が見えた気がして。
岡本の笑顔に違和感がある気がするなんて、気のせいだよね?
「俺さ、夏休み始まってからずっと考えてたんだよな」
「……う、うん?」
「ほっとんどない、ていうかもうほぼゼロな可能性をそれでも万一に賭けて頑張るか、それとも」
突然何を言ってるのか分かんなくて岡本を見上げる。
窓からぬるい風が吹いてきて、岡本の金髪がさらさら揺れた。
キレイ。
じっと見てたら、頭の後ろに何かを感じた。一瞬後に、岡本の手だって気が付く。
岡本の大きな手が私の頭をがっしりと掴んでいた。
え、これ、どういう――
「やっぱ嫌われてもいいから紗知のオンリーワンになるって、いま決めた」
0
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる