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three 囚われのブレイクタイム
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これは、ゲーム開始から一週間が経った日の話。
「えー、みなさーん聞こえてますかー?」放送室から流れる哀さんの声は朝五時に響いた。
「うるせぇ聞こえてるわクソアマぁ‼︎何時だと思ってんだ朝っぱらからうるせぇんだよ‼︎」
毛布を投げ捨て立ち上がる校則違反の詰め合わせみたいな人物…即ちリュウヤ君が放送よりうるさい声で叫びました。
「えー、今日は設備のメンテナンスをするのでお休みです。校内は自由にお使い下さい。今日殺人を行った人はルール違反とみなし額撃ち抜きまーす。実は素晴らしいものを手に入れましてね、プファイツァー ツェリスカって言う一番強力な拳銃がやっとこさ手に入りましてねもうこれが凄いのなんのって…。」
すると、放送から発砲音が聴こえました。それは紛れも無い実弾の音。
「という訳で皆様楽しくお過ごし下さいませー。」
放送から時は立ち、昼時を迎えていた。
「おにぎり取ってきましたよ。リュウヤ君どっちがいいですか?」
僕は鮭と昆布を両手に持ち、リュウヤ君に差し出すと、リュウヤ君は鮭を持って行きました。
「…なんか、人数減ったな…」
「ぱっと見、まだ減った人数は一桁くらいでしょうかね…」
壁にもたれながら僕とリュウヤ君はおにぎりを頬ばりました。
「…リュウヤ君。少し質問してもいいですか?」
「あ?なんだよ?」
僕は一つ気になる点があったので問いかけました。
「この前、梻さんと対峙した時、「自分の為なら自分の子供でも見捨てる」みたいなこと言ってたじゃ無いですか。あれってどういう意味ですか?」
「……別に。俺さ、昔家がめちゃくちゃ貧困家庭で食費だのなんだのが出せねぇからって一番下の子供だった俺が養子に出されたんだ。今の母親は本当の家族じゃねぇ。血も繋がってないし…さらに、一年後に兄も養子に出されたそうだ。そこから俺は『親が生きる為だけになんの関わりも無かった人間となんで一緒に暮らさなきゃいけねぇんだ』って、思っちまったんだよ。」
俺の中では見捨てられたも同然だ。と、リュウヤ君は答えました。
「そうでしたか…なんかすいません、蒸し返すような事聞いちゃって。」
「別にいいんだよ。どーでもいい事だし。」
リュウヤ君は水を飲み干しゴミ箱に向かってペットボトルを投げました。
「…………ねぇリュウヤ君。少し…いや、かなりおかしいとは思いませんか?」
僕は少し躊躇いながら問いました。
「こんな事してる時点でおかしいけどな。何がおかしいんだよ?」
「…だって…一週間ですよ?一週間クラス全員が家に帰ってません。それなのに警察が動くような動作を全く見せませんし、哀さんはこの閉ざされた空間の中で『新しい銃』を手に入れることが出来ました。あんなに高い電流フェンスの急な設置にも近隣住民は全く触れません。これは外部に協力者がいるのではなく外部の人間全員がこのゲームの協力者なのではないでしょうか?」
リュウヤ君も珍しく考え込んでいますが、多分役に立たないことばかりでしょう。本人に言ったら殺されますから伏せておきますけど。
「………俺さ、こっからよく外を眺めてたんだよ。そんで気づいたんだけどさ。俺、『一回も外に人間を確認してない』んだよ。猫は何回か見たんだけど…」
「今度、屋上に登ってみましょう。そこなら何か分かるかもしれません。」
リュウヤ君はこの発言を聞き、何かを思い立ったようで…まぁ嫌な予感はしてましたけど。
『今から行こうぜ。』
僕らは南校舎の屋上に繋がる階段を上がりました。案の定鍵はかかっていましたが、窓から屋上に出る事が出来ました。
「………嘘だろ…?」
リュウヤ君と僕は絶句しました。屋上にも建てられた電流フェンス。その向こうに広がる景色は———
「………………海………ですね…。」
こんなど田舎の中学校から海が見えるはずもなかったのですが、眼に映るのは全てを青色に染められた青い海でした。
「真後ろも海、左右は森。学校の周りと殆ど同じ住宅が何件も何件も学校を中心に円を描いています。ここは…島ですね。リュウヤ君が言う通りなら無人島…」
「警察は動かないんじゃなくて、この島にたどり着けてなかったって事か…」
僕とリュウヤ君は頭を抱え込み視界を泳がせます。
刹那、背後から声がしました。
「君達は知ってしまったのかー。」
振り向くとそこには見慣れた顔が立っていました。
「…哀さん……。」
「おいクソアマ、どう言う事だ説明しやが…」
プファイツァー ツェリスカを向けられたリュウヤ君は立ち止まり、声を途切れさせました。
「この件は絶対に口外しないで下さい。口外した場合、貴方達を殺さなくてはならなくなるので。その代わり、三つだけなんでも質問に答えてあげます。」
僕は質問に取り掛かった。
「リュウヤ君質問はありますか?」
リュウヤ君は首を横に振りました。
「どうやってここまで連れてきたんですか?」
「スプリンクラーから睡眠薬を撒き散らして君ら全員眠らせた。そしてここまで運んできました。船で。」
「目的は何ですか?」
「これはただのゲームです。ゲームのプレイを観るのに理由は要りますか?私の趣味なだけですよ。」
「じゃあ最期の質問…『落葉 愛と貴方にはどんな関係がありますか?』」
哀さんは沈黙の後、呟いた。
「別に、外の世界で生きてきたか中の世界で生きてきたかの違いですよ。さぁ、戻って下さい。」
言われるがままに体育館へ戻り、同じ場所にもたれながら口を開いた。
「…だからやめようって言ったじゃないですか。」
「そんな言葉一言も聞いてねぇぞ…」
バレました?と、僕は返す。
「愛と哀の関係ねぇ…本当に何なんだろうな…」
「そのうちわかりますよ。きっと。」
僕はもう一度リュウヤ君に問いました。
「リュウヤ君。気づきました?」
「何がだよ?」
「哀さんは、他のグループに対しては殺す事に躊躇はありません。でもうちのグループだけ殺す事を躊躇う傾向があるんです。」
「現状最強のチームを殺したらつまらなくなるとかその辺だろ?どうせ。」
僕はため息をつきながら、
「だといいんですけどねぇ…」
と、呟いた。
「えー、みなさーん聞こえてますかー?」放送室から流れる哀さんの声は朝五時に響いた。
「うるせぇ聞こえてるわクソアマぁ‼︎何時だと思ってんだ朝っぱらからうるせぇんだよ‼︎」
毛布を投げ捨て立ち上がる校則違反の詰め合わせみたいな人物…即ちリュウヤ君が放送よりうるさい声で叫びました。
「えー、今日は設備のメンテナンスをするのでお休みです。校内は自由にお使い下さい。今日殺人を行った人はルール違反とみなし額撃ち抜きまーす。実は素晴らしいものを手に入れましてね、プファイツァー ツェリスカって言う一番強力な拳銃がやっとこさ手に入りましてねもうこれが凄いのなんのって…。」
すると、放送から発砲音が聴こえました。それは紛れも無い実弾の音。
「という訳で皆様楽しくお過ごし下さいませー。」
放送から時は立ち、昼時を迎えていた。
「おにぎり取ってきましたよ。リュウヤ君どっちがいいですか?」
僕は鮭と昆布を両手に持ち、リュウヤ君に差し出すと、リュウヤ君は鮭を持って行きました。
「…なんか、人数減ったな…」
「ぱっと見、まだ減った人数は一桁くらいでしょうかね…」
壁にもたれながら僕とリュウヤ君はおにぎりを頬ばりました。
「…リュウヤ君。少し質問してもいいですか?」
「あ?なんだよ?」
僕は一つ気になる点があったので問いかけました。
「この前、梻さんと対峙した時、「自分の為なら自分の子供でも見捨てる」みたいなこと言ってたじゃ無いですか。あれってどういう意味ですか?」
「……別に。俺さ、昔家がめちゃくちゃ貧困家庭で食費だのなんだのが出せねぇからって一番下の子供だった俺が養子に出されたんだ。今の母親は本当の家族じゃねぇ。血も繋がってないし…さらに、一年後に兄も養子に出されたそうだ。そこから俺は『親が生きる為だけになんの関わりも無かった人間となんで一緒に暮らさなきゃいけねぇんだ』って、思っちまったんだよ。」
俺の中では見捨てられたも同然だ。と、リュウヤ君は答えました。
「そうでしたか…なんかすいません、蒸し返すような事聞いちゃって。」
「別にいいんだよ。どーでもいい事だし。」
リュウヤ君は水を飲み干しゴミ箱に向かってペットボトルを投げました。
「…………ねぇリュウヤ君。少し…いや、かなりおかしいとは思いませんか?」
僕は少し躊躇いながら問いました。
「こんな事してる時点でおかしいけどな。何がおかしいんだよ?」
「…だって…一週間ですよ?一週間クラス全員が家に帰ってません。それなのに警察が動くような動作を全く見せませんし、哀さんはこの閉ざされた空間の中で『新しい銃』を手に入れることが出来ました。あんなに高い電流フェンスの急な設置にも近隣住民は全く触れません。これは外部に協力者がいるのではなく外部の人間全員がこのゲームの協力者なのではないでしょうか?」
リュウヤ君も珍しく考え込んでいますが、多分役に立たないことばかりでしょう。本人に言ったら殺されますから伏せておきますけど。
「………俺さ、こっからよく外を眺めてたんだよ。そんで気づいたんだけどさ。俺、『一回も外に人間を確認してない』んだよ。猫は何回か見たんだけど…」
「今度、屋上に登ってみましょう。そこなら何か分かるかもしれません。」
リュウヤ君はこの発言を聞き、何かを思い立ったようで…まぁ嫌な予感はしてましたけど。
『今から行こうぜ。』
僕らは南校舎の屋上に繋がる階段を上がりました。案の定鍵はかかっていましたが、窓から屋上に出る事が出来ました。
「………嘘だろ…?」
リュウヤ君と僕は絶句しました。屋上にも建てられた電流フェンス。その向こうに広がる景色は———
「………………海………ですね…。」
こんなど田舎の中学校から海が見えるはずもなかったのですが、眼に映るのは全てを青色に染められた青い海でした。
「真後ろも海、左右は森。学校の周りと殆ど同じ住宅が何件も何件も学校を中心に円を描いています。ここは…島ですね。リュウヤ君が言う通りなら無人島…」
「警察は動かないんじゃなくて、この島にたどり着けてなかったって事か…」
僕とリュウヤ君は頭を抱え込み視界を泳がせます。
刹那、背後から声がしました。
「君達は知ってしまったのかー。」
振り向くとそこには見慣れた顔が立っていました。
「…哀さん……。」
「おいクソアマ、どう言う事だ説明しやが…」
プファイツァー ツェリスカを向けられたリュウヤ君は立ち止まり、声を途切れさせました。
「この件は絶対に口外しないで下さい。口外した場合、貴方達を殺さなくてはならなくなるので。その代わり、三つだけなんでも質問に答えてあげます。」
僕は質問に取り掛かった。
「リュウヤ君質問はありますか?」
リュウヤ君は首を横に振りました。
「どうやってここまで連れてきたんですか?」
「スプリンクラーから睡眠薬を撒き散らして君ら全員眠らせた。そしてここまで運んできました。船で。」
「目的は何ですか?」
「これはただのゲームです。ゲームのプレイを観るのに理由は要りますか?私の趣味なだけですよ。」
「じゃあ最期の質問…『落葉 愛と貴方にはどんな関係がありますか?』」
哀さんは沈黙の後、呟いた。
「別に、外の世界で生きてきたか中の世界で生きてきたかの違いですよ。さぁ、戻って下さい。」
言われるがままに体育館へ戻り、同じ場所にもたれながら口を開いた。
「…だからやめようって言ったじゃないですか。」
「そんな言葉一言も聞いてねぇぞ…」
バレました?と、僕は返す。
「愛と哀の関係ねぇ…本当に何なんだろうな…」
「そのうちわかりますよ。きっと。」
僕はもう一度リュウヤ君に問いました。
「リュウヤ君。気づきました?」
「何がだよ?」
「哀さんは、他のグループに対しては殺す事に躊躇はありません。でもうちのグループだけ殺す事を躊躇う傾向があるんです。」
「現状最強のチームを殺したらつまらなくなるとかその辺だろ?どうせ。」
僕はため息をつきながら、
「だといいんですけどねぇ…」
と、呟いた。
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