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two ゲームの始まりと平穏の終わり
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朝目が醒めると、そこにはクラスメイト全員が寝転がっていた。
起こさないようにそろそろと隙間を歩いていくと、哀さんが入り口から現れた。
「おはよーシラハ君。昨日は眠れたかな?」
昨日と変わらぬテンションで問いかける哀さんはダンボール箱を抱え、歩調を縮める。
「こんな状況で快眠出来たのは僕くらいだと思いますよ。みんな帰りたいとか殺されるとか恐怖に怯えたりして。」
僕は小声で答える。それに対し、哀さんは笑って応えた。
「そうかー、んじゃ、準備は万全って事か。あと五時間でゲームは始まるから準備しといてね、あーあとシラハ君…」
哀さんは僕の耳元で優しく呟きました。優しいのにどこか不安になるような声でした。
「君は全力でオチバ アイちゃんを守ってあげてね?」
僕は脳内で言葉の意味を探った。でも、何故僕が落葉さんを守らなければいけないのか分からなかった。でも、これだけは分かった。
このゲームと落葉 愛は、なんらかの関連性がある。
五時間と少しが経った時刻、ゲームは開始した中、外に出たチームは二組、どちらも全員で行動している。
このまま何処かで居合わせた場合、殺し合いが始まるだろうと皆分かっているので外に出ようとはしない。
だが、逆手にとってみれば早いうちに武器となるものを全て取っておけば他のチームを有利に殺すことができる。少なくとも、最初に出て行った二組以外はそれに気づいていない。後々不利に陥る事なんて、思ってもいない。
まず一人一人の武器を調達する事にした。
まず向かったのは家庭科室。少なくとも近い部屋から物色されているなら体育館から遠い家庭科室にはまだ刃物があるはずだ。
「鍵…あいてやがるぞ…」
リュウヤ君は、扉を蹴り開ける、そしてグループ全員が家庭科室の物色を始めた。
落葉さんが何か見つけたようだ。
「ねぇ、いいもの見つけたよ!」
それは包丁だった。柄の部分に四つ葉のクローバーが彫られた包丁だ。
「お、おう…いいんじゃねぇか?」
リュウヤ君はなんか普通に動揺していた。
僕は口を開いた。
「殺傷能力の高さから考えてその包丁はなかなかの品です。ゲットできてよかったですね。」
ちなみにリュウヤ君は常に持ってるバットで闘うそうです。
「んじゃあ行くぞ。包丁はもういいだろ…」
リュウヤ君は普通に戸惑っている。落葉さんこの前リスカしかけて有名になってたけどよく考えたらあの時リュウヤ君授業サボってたな。
「ねぇ、あれもいいかな?」
落葉さんが指を指していたのは、まごう事なき出刃包丁。
それに対し、梻さんが「危ないのでやめて下さいっ!」と叫んでいた。
次に訪れたのは、家庭科室の隣にある理科室。
「ここは私の武器を調達します!」
紅街さんが胸を張りながら棚を物色する。
「なんですかね、硫酸とか硝酸を敵に飲ませるとかする気でしょうか?」
日向君がめちゃくちゃエグい事を言っているが、最強の乙女と呼ばれていた紅街さんがそんな事をするはずが無い。多分。
「えーっと…この琉黄を15%と…硝酸カリウムが75%で、黒色火薬とマグネシウムが共に40%にアルミニウム20%。あ、あと強度の高い鉄製パイプ…防災備蓄倉庫に木炭があると思うから…それをエタノール漬けにして10%…」
はい。なんかもう察しが付くけどやばいもの作ってる模様。
「あの…紅街さん何作ってるんですか?」
梻さんは問うが、凶器であることに察しが付いているのかめちゃくちゃ怯えている。
「閃光弾だよ?もーこれ最強だからね!あ、でも使うときは目瞑ってね、失明するから!」
普段から何をやってればこんな物を作り出す技術が学べるんだ。きっとうちのクラスで爆弾作りに慣れている人なんて紅街さんだけだろう。
「しつ…めい……?せんこう…だん?」
「目が見えなくなる事ですよリュウヤ君。あと閃光弾は強烈な光と破裂音を生み出す爆弾の一種です。」
ここまでずっと抑えるのに手間取ると思われたクラスで関わりたく無い人間ランキング三位の彼と思われたが、無事ツッコミとアホキャラの立ち回りを無事に進行させている。
因みに一位は落葉さんで二位は僕だ。
「おい、厨二病。お前は何使って闘うんだ?」
眼帯の厨二病…もとい時雨君は、こう答える。
「…いつまでも隠し通せるとは思わないから今言っておく。僕は六年前に事故で右目を無くした。今も眼帯の下に眼球は無い。はっきり言って僕は距離を捉えたりするのが苦手なので役に立つことはない。」
時雨君は眼帯を外して見せた。本来眼球が埋め込まれているはずの場所はいくつも縫った後があり、瞼は上下が繋がっていた。
「そうか…でも保険で何かしら持っといた方がいいぞ。」
まさにその通りだが、そんな現状にあるなら刃物は避けたい所だ。
「…じゃあ、これで。」
時雨君が棚から持ち上げたのは何故か置かれていたサバイバルナイフだった。
結局みんな刃物なんだなぁって思ったが、自分も刃物だったことに今更気付く。
「…んじゃあ、あとはメガネとロリの武器調達か。」
「鍵倉です。白波でもいいです。でもメガネはやめて下さい。」
「私はロリじゃ無いです。正真正銘の中学生です。」
二人とも呼び方に非難があったが、リュウヤ君は普通に反論しました。
「メガネはいいとして…お前さ、身長って知ってる?」
リュウヤ君の身長は高い方だ。それに対して梻さんは身長が低い。
「お前身長何センチだよ…」
「147cmですけど何か文句ありますか?」
小さいとは思っていたが、まさか150を下回っていたとは。
「えー、俺の身長が169センチだから…えー…」
「22センチ差ですね。あと僕はカッター使うんで大丈夫ですよ。」
ついでに言ってみたが、通じているだろうか…
「じゃあロリお前本当にどーすんだ?」
「私はさっき家庭科室から鋏を拝借したので大丈夫です。そしてロリはやめて下さい。」
こうして全員が武器を手に入れたが、体育館に戻ろうと廊下を歩く別のグループと出会った。さっきはまだ全員待機していたグループだ。体育館に近いこの廊下では、ついさっき出てきたばかりかと伺える。
「……ンだテメェら何見てんだ?あ?」
リュウヤ君はメンチ切りを始める。敵グループのメンバーは男ばかり。心置き無くリュウヤ君は暴れることが出来るでしょう。
「まってくれ…!俺たちはただ武器を取りに来ただけなん…」
敵グループの一人の発言を遮るように紅街さんは呟いた。
「…じゃあ、厄介なもん持たれる前に排除しなきゃね!」
リュウヤ君もノリノリで返事を返し、バットを構えてシャツの一番上のボタンを引きちぎった。
紅街さんは僕らに合図をして、ゴーグルを目に付けて閃光弾の栓を『ぴんっ』という音と共に抜き、投げ捨てられた閃光弾は大きな音と光を放ち煙を巻き上げ、光が消える頃には焼け残ったパイプだけが残っていた。
敵グループは全員眼を眩ませ、その場にしゃがみ込んだ。
そんな中、敵の顔面をバットでうち続けるリュウヤ君の姿に僕は圧倒され、落葉さんは眼を輝かせ、梻さんは涙目で口を覆い隠す。
日向君に至ってはサバイバルナイフを構え、僕たちを守ろうとしてくれている。果てしなく必要は無さそうだが。
梻さんの気持ちはわからないでも無い。だって、目の前でクラスメイト同士、殺し合っ…一方的に死ぬまで殴り続けられる惨状なんて、まともに見る事は普通出来ない。まともに見ていることが出来る僕たちの方が異常なんだって、誰でも分かる。
気付く頃には、平日に毎日顔を合わせ、喋ったことこそ無いが、それでもクラスメイトだった人達は、血まみれの残りカスに成り果てていた。
「……やっぱり、使い捨ての武器は効率悪いかな…」
呑気なことを漏らす紅街さんはリュウヤ君とハイタッチをかました。
後ろで眼を覆っていた梻さんは、無言で立ち上がりリュウヤ君と紅街さんに歩み寄る。
「…っどうして…どうしてこんな事が…出来るの?嫌いでも仕方なくても、どれだけ短い時間でも同じクラスで生活してきた人達なんだよ?そんな…簡単に…人を殺せるなんて…貴方達…狂ってるっ!」
今までか弱い印象の強かった梻さんは、大声で叫び始める。
「うるせぇ。狂ってようが何だろうが人間なんざ自分を助ける為ならどんなに身近な人間の犠牲も顧みねぇんだよ。それが例え親友だろうが身内だろうが…自分の子供だろうが…。そんな生物なんだよ。受け入れられないなら哀のヤツに殺してもらえ。」
「そんな事はない!私は…少なくとも…」
「他人を守る為に自分は死ねるってか。じゃあ試すか?」
リュウヤ君は、後ろに転がる屍をバットで突きながら言った。
「今殺そうとしたこいつらは辛うじて生きている。俺が今、こいつとお前のどちらかを殺すと言った。こんな生きているだけで不快感を与えるゴミの為にお前は死ねるのか?」
「その人はっ…ゴミなんかじゃ…」
「白波。お前はこいつに何度暴言を吐かれた?何度殴られた?」
僕は、覚えてないくらい沢山。と答えた。
「いいか?よく聞けクソロリ。テメェの価値はこいつらに負ける事はねぇ。死んだ方がいい人間なんざ世の中には幾らでも居るんだよ。俺もその一人だ。でもお前はそんなゴミの為に、普通に生活できるのにもかかわらずその命を捨てるって言ってるんだぞ?お前は命ってものを重く見過ぎなんだよ。心臓止まるだけで終わるようなもんに価値なんざあるわけねぇだろうが。つまり人は殺してなんぼだ。それを国とかいう頭の悪い連中が取り締まってるだけなんだよ。」
リュウヤ君はバットを瀕死の生徒の心臓に叩きつけた。
「どうすんだ。お前も狂うか、我流を通して殺されるか選べ。」
梻さんは、長い沈黙の後に涙をほろほろと流しながら「狂うしか…ないんでしょ?」と、呟いた。
「チッ…胸糞悪りぃ…」
いきなり放送が鳴り始めた。瞬時に哀さんの声だと判断した。
「やー、さっすがだねぇスメラギ君とアカマチちゃんは。まぁ、君達が殺しちゃったから残ってる人達は外に出る事を拒むだろうなー、まぁいいけど。」
哀さんは笑いながら、おめでとう。と、呟いて放送を切った。
僕たちは、各グループの中で最も危険なグループとレッテル貼りをされてグループ内でしか関わりを持てなくなってしまった。
まぁいいさ。別グループが全員が死ぬか僕たちが死ぬか、はたまたどちらも死ぬか。
このゲームの終了後、関わりがあるクラスメイトは同じグループの人達だけだろう。
起こさないようにそろそろと隙間を歩いていくと、哀さんが入り口から現れた。
「おはよーシラハ君。昨日は眠れたかな?」
昨日と変わらぬテンションで問いかける哀さんはダンボール箱を抱え、歩調を縮める。
「こんな状況で快眠出来たのは僕くらいだと思いますよ。みんな帰りたいとか殺されるとか恐怖に怯えたりして。」
僕は小声で答える。それに対し、哀さんは笑って応えた。
「そうかー、んじゃ、準備は万全って事か。あと五時間でゲームは始まるから準備しといてね、あーあとシラハ君…」
哀さんは僕の耳元で優しく呟きました。優しいのにどこか不安になるような声でした。
「君は全力でオチバ アイちゃんを守ってあげてね?」
僕は脳内で言葉の意味を探った。でも、何故僕が落葉さんを守らなければいけないのか分からなかった。でも、これだけは分かった。
このゲームと落葉 愛は、なんらかの関連性がある。
五時間と少しが経った時刻、ゲームは開始した中、外に出たチームは二組、どちらも全員で行動している。
このまま何処かで居合わせた場合、殺し合いが始まるだろうと皆分かっているので外に出ようとはしない。
だが、逆手にとってみれば早いうちに武器となるものを全て取っておけば他のチームを有利に殺すことができる。少なくとも、最初に出て行った二組以外はそれに気づいていない。後々不利に陥る事なんて、思ってもいない。
まず一人一人の武器を調達する事にした。
まず向かったのは家庭科室。少なくとも近い部屋から物色されているなら体育館から遠い家庭科室にはまだ刃物があるはずだ。
「鍵…あいてやがるぞ…」
リュウヤ君は、扉を蹴り開ける、そしてグループ全員が家庭科室の物色を始めた。
落葉さんが何か見つけたようだ。
「ねぇ、いいもの見つけたよ!」
それは包丁だった。柄の部分に四つ葉のクローバーが彫られた包丁だ。
「お、おう…いいんじゃねぇか?」
リュウヤ君はなんか普通に動揺していた。
僕は口を開いた。
「殺傷能力の高さから考えてその包丁はなかなかの品です。ゲットできてよかったですね。」
ちなみにリュウヤ君は常に持ってるバットで闘うそうです。
「んじゃあ行くぞ。包丁はもういいだろ…」
リュウヤ君は普通に戸惑っている。落葉さんこの前リスカしかけて有名になってたけどよく考えたらあの時リュウヤ君授業サボってたな。
「ねぇ、あれもいいかな?」
落葉さんが指を指していたのは、まごう事なき出刃包丁。
それに対し、梻さんが「危ないのでやめて下さいっ!」と叫んでいた。
次に訪れたのは、家庭科室の隣にある理科室。
「ここは私の武器を調達します!」
紅街さんが胸を張りながら棚を物色する。
「なんですかね、硫酸とか硝酸を敵に飲ませるとかする気でしょうか?」
日向君がめちゃくちゃエグい事を言っているが、最強の乙女と呼ばれていた紅街さんがそんな事をするはずが無い。多分。
「えーっと…この琉黄を15%と…硝酸カリウムが75%で、黒色火薬とマグネシウムが共に40%にアルミニウム20%。あ、あと強度の高い鉄製パイプ…防災備蓄倉庫に木炭があると思うから…それをエタノール漬けにして10%…」
はい。なんかもう察しが付くけどやばいもの作ってる模様。
「あの…紅街さん何作ってるんですか?」
梻さんは問うが、凶器であることに察しが付いているのかめちゃくちゃ怯えている。
「閃光弾だよ?もーこれ最強だからね!あ、でも使うときは目瞑ってね、失明するから!」
普段から何をやってればこんな物を作り出す技術が学べるんだ。きっとうちのクラスで爆弾作りに慣れている人なんて紅街さんだけだろう。
「しつ…めい……?せんこう…だん?」
「目が見えなくなる事ですよリュウヤ君。あと閃光弾は強烈な光と破裂音を生み出す爆弾の一種です。」
ここまでずっと抑えるのに手間取ると思われたクラスで関わりたく無い人間ランキング三位の彼と思われたが、無事ツッコミとアホキャラの立ち回りを無事に進行させている。
因みに一位は落葉さんで二位は僕だ。
「おい、厨二病。お前は何使って闘うんだ?」
眼帯の厨二病…もとい時雨君は、こう答える。
「…いつまでも隠し通せるとは思わないから今言っておく。僕は六年前に事故で右目を無くした。今も眼帯の下に眼球は無い。はっきり言って僕は距離を捉えたりするのが苦手なので役に立つことはない。」
時雨君は眼帯を外して見せた。本来眼球が埋め込まれているはずの場所はいくつも縫った後があり、瞼は上下が繋がっていた。
「そうか…でも保険で何かしら持っといた方がいいぞ。」
まさにその通りだが、そんな現状にあるなら刃物は避けたい所だ。
「…じゃあ、これで。」
時雨君が棚から持ち上げたのは何故か置かれていたサバイバルナイフだった。
結局みんな刃物なんだなぁって思ったが、自分も刃物だったことに今更気付く。
「…んじゃあ、あとはメガネとロリの武器調達か。」
「鍵倉です。白波でもいいです。でもメガネはやめて下さい。」
「私はロリじゃ無いです。正真正銘の中学生です。」
二人とも呼び方に非難があったが、リュウヤ君は普通に反論しました。
「メガネはいいとして…お前さ、身長って知ってる?」
リュウヤ君の身長は高い方だ。それに対して梻さんは身長が低い。
「お前身長何センチだよ…」
「147cmですけど何か文句ありますか?」
小さいとは思っていたが、まさか150を下回っていたとは。
「えー、俺の身長が169センチだから…えー…」
「22センチ差ですね。あと僕はカッター使うんで大丈夫ですよ。」
ついでに言ってみたが、通じているだろうか…
「じゃあロリお前本当にどーすんだ?」
「私はさっき家庭科室から鋏を拝借したので大丈夫です。そしてロリはやめて下さい。」
こうして全員が武器を手に入れたが、体育館に戻ろうと廊下を歩く別のグループと出会った。さっきはまだ全員待機していたグループだ。体育館に近いこの廊下では、ついさっき出てきたばかりかと伺える。
「……ンだテメェら何見てんだ?あ?」
リュウヤ君はメンチ切りを始める。敵グループのメンバーは男ばかり。心置き無くリュウヤ君は暴れることが出来るでしょう。
「まってくれ…!俺たちはただ武器を取りに来ただけなん…」
敵グループの一人の発言を遮るように紅街さんは呟いた。
「…じゃあ、厄介なもん持たれる前に排除しなきゃね!」
リュウヤ君もノリノリで返事を返し、バットを構えてシャツの一番上のボタンを引きちぎった。
紅街さんは僕らに合図をして、ゴーグルを目に付けて閃光弾の栓を『ぴんっ』という音と共に抜き、投げ捨てられた閃光弾は大きな音と光を放ち煙を巻き上げ、光が消える頃には焼け残ったパイプだけが残っていた。
敵グループは全員眼を眩ませ、その場にしゃがみ込んだ。
そんな中、敵の顔面をバットでうち続けるリュウヤ君の姿に僕は圧倒され、落葉さんは眼を輝かせ、梻さんは涙目で口を覆い隠す。
日向君に至ってはサバイバルナイフを構え、僕たちを守ろうとしてくれている。果てしなく必要は無さそうだが。
梻さんの気持ちはわからないでも無い。だって、目の前でクラスメイト同士、殺し合っ…一方的に死ぬまで殴り続けられる惨状なんて、まともに見る事は普通出来ない。まともに見ていることが出来る僕たちの方が異常なんだって、誰でも分かる。
気付く頃には、平日に毎日顔を合わせ、喋ったことこそ無いが、それでもクラスメイトだった人達は、血まみれの残りカスに成り果てていた。
「……やっぱり、使い捨ての武器は効率悪いかな…」
呑気なことを漏らす紅街さんはリュウヤ君とハイタッチをかました。
後ろで眼を覆っていた梻さんは、無言で立ち上がりリュウヤ君と紅街さんに歩み寄る。
「…っどうして…どうしてこんな事が…出来るの?嫌いでも仕方なくても、どれだけ短い時間でも同じクラスで生活してきた人達なんだよ?そんな…簡単に…人を殺せるなんて…貴方達…狂ってるっ!」
今までか弱い印象の強かった梻さんは、大声で叫び始める。
「うるせぇ。狂ってようが何だろうが人間なんざ自分を助ける為ならどんなに身近な人間の犠牲も顧みねぇんだよ。それが例え親友だろうが身内だろうが…自分の子供だろうが…。そんな生物なんだよ。受け入れられないなら哀のヤツに殺してもらえ。」
「そんな事はない!私は…少なくとも…」
「他人を守る為に自分は死ねるってか。じゃあ試すか?」
リュウヤ君は、後ろに転がる屍をバットで突きながら言った。
「今殺そうとしたこいつらは辛うじて生きている。俺が今、こいつとお前のどちらかを殺すと言った。こんな生きているだけで不快感を与えるゴミの為にお前は死ねるのか?」
「その人はっ…ゴミなんかじゃ…」
「白波。お前はこいつに何度暴言を吐かれた?何度殴られた?」
僕は、覚えてないくらい沢山。と答えた。
「いいか?よく聞けクソロリ。テメェの価値はこいつらに負ける事はねぇ。死んだ方がいい人間なんざ世の中には幾らでも居るんだよ。俺もその一人だ。でもお前はそんなゴミの為に、普通に生活できるのにもかかわらずその命を捨てるって言ってるんだぞ?お前は命ってものを重く見過ぎなんだよ。心臓止まるだけで終わるようなもんに価値なんざあるわけねぇだろうが。つまり人は殺してなんぼだ。それを国とかいう頭の悪い連中が取り締まってるだけなんだよ。」
リュウヤ君はバットを瀕死の生徒の心臓に叩きつけた。
「どうすんだ。お前も狂うか、我流を通して殺されるか選べ。」
梻さんは、長い沈黙の後に涙をほろほろと流しながら「狂うしか…ないんでしょ?」と、呟いた。
「チッ…胸糞悪りぃ…」
いきなり放送が鳴り始めた。瞬時に哀さんの声だと判断した。
「やー、さっすがだねぇスメラギ君とアカマチちゃんは。まぁ、君達が殺しちゃったから残ってる人達は外に出る事を拒むだろうなー、まぁいいけど。」
哀さんは笑いながら、おめでとう。と、呟いて放送を切った。
僕たちは、各グループの中で最も危険なグループとレッテル貼りをされてグループ内でしか関わりを持てなくなってしまった。
まぁいいさ。別グループが全員が死ぬか僕たちが死ぬか、はたまたどちらも死ぬか。
このゲームの終了後、関わりがあるクラスメイトは同じグループの人達だけだろう。
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