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第2部

第14話 予想外へ

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 それは、ゲートの目の前。多くの悪魔が人間との共存に必要とするものだが、一歩間違えれば戦争の火種になりかねない恐ろしいものである。
 先程盗み聞いた話では、これが天国とやらに繋がっているらしいではないか。
「……開けよ、アバドン。ウチを奈落から引きずり上げろ」
 
 
「つまり……サマエルがタブーを犯した事により天使に狙われていた。そしてそれを自主的に知ったルシファー様も狙われることになる、と」
 6柱の一片と支配者が集う。その場にてルシファーから告げられた現状に、状況を整理するフルーレティの声が一つ。
 ルシファー自身がこの負担を負う必要は全く持って無かったが、それほどまでに知らなくてはならない重要な機密だという。仮に記憶を失っていたなら、自身の過去に繋がる事実に他ならないからだ。
「天使だって、そのカマエルとかいう奴だけじゃないんだろ。本当に大丈夫か?」
 ベルゼブルは問う。それに対しての返答は、簡素に行われた。
「あのレベルなら、まだなんとかなる。調べた限り、能天使は戦闘特化の族だ。神だとかのレベルが湧いてこない限り脅威ではないかな」
 人間が我々悪魔の存在を目にしたときは、さぞ驚いた事だろう。我々も同じように人間という存在に驚いていたのだから。
 しかし、天使はまるで双方を監視しているかのような立場を持っていた。一体、奴らはこの世界にどういった役割で存在しているのだろうか。
「天使がこちらに交戦的で尚且つ詳細が掴めない以上、交渉や話し合いなんて平和解決は望めないでしょう。やはり悪手だったのでは……」
「だとしても、知らないと何も始まらない。この件が無ければ、天使も堕天使も完全に信じられなかったんだよ」
 続けて、ルキフグの言葉。こちらも簡素に、丁寧な言葉で返還された。
 皆、いつかは平和的解決が可能になると信じている。現状で天使に狙われているのはルシファーとサマエルの二人だけであり、双方簡単に負けてしまうような存在ではない。
 というか、6柱と支配者にとってサマエルがどうなろうと知った事ではない。
 その場に佇む6柱の五つの顔が、そんな感情を抱いていた。
 
 
「……何の用だてめぇ。その行為が何の意味あるかマジで理解してんのか」
 眼前に聳える、一本の蒼い長剣。それを携えるは、ひとりの女。荒い口調を吐き出して、矛先をこちらに向けていた。
「カマちゃん、客人に無礼ですよ」
「あぁ?ラファエルてめぇマジで目ぇ見えてんのか。こいつぁ悪魔だぞ」
 能天使指揮官の二つの影が、四方八方に広がる別世界に映る。それらがこの世界に馴染むように、それが自然だと思い知らされるように。
 明らかに、生きている世界が違う。
「もう一回聞くぞ、マジで答えろ。てめぇ何しにきた?」
 その質問の答えは、既に決まっていた。少しの悪あがきをしてみるが、やはり無力だ。
「ウチの能力、アンタらには効かないみたいだ。やっぱり存在そのものが違う」
「んだてめぇ天使サマの質問に答えろ。マジで殺されてえのか」
 野蛮な声に合わせて、剣の先が喉の部分に狙いを定めた。明らかに、命を奪うためのそれだった。
 迷う事なく、両掌を組んで手前に差し出す。
「……別にサマエルはどうなろうが知った事じゃない。だけどルシファー様はダメだ」
「どういう事ですか?しっかりとお話ください」
 大きくため息をついて、目線を逸らして口を開いた。別に、忠誠だからなんだというわけでもないのだが、これが必要だからこの身は動いているのだ。
 
 アガリアレプトの「全てを知ることができる」能力。しかし、未来予知に関してはあり得る可能性の詮索でしかない。
 今、彼が導き出しているのは最悪の未来だ。それを覆すのには、これが一番効果的だと思った。
 
 自分らしくないことをすれば。
 アガリアレプトの中にある「サタナキア」という存在が、絶対にしない行動をすれば。
 
 そうすれば、少しでも未来は変わってくれるだろうか。
 
 
「ウチが封印されてやる。だから、ルシファー様に今後手出しすんなよ『クソ偽善者』」
 
 
 こんな場面でようやく理解できた。サマエルの語った、偽善者ヅラで死を迎えた糞のような人間の末路という存在を。
 
 この言葉に意味を込めて。皮肉を込めて。
 
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