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異類婚姻譚
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むかし、寺という村に十郎という男がいました。十郎は良く働く男で、村の人々からの信頼も厚かったのです。十郎は主に山仕事、田んぼ、畑仕事を生業としていました。
ある日、十郎が山へ薪を取りに行った時のこと。山の中腹にある大きな岩の上に美しい娘が立っていました。十郎は、こんなところで一体何をしているのだろうかと不審に思い、近寄って話しかけようとしました。すると、なんと美しい娘でしょうか。十郎はほんの少しその美しさに見とれてしまいました。
ふと我に返り、あんな岩の上で何をやっているかわからないが、危ないことだと思い、その娘に話しかけました。
「そこで何をしている。そんなところにいては危ないぞ」
娘は十郎に気づいたようで、十郎の方を向くと、振り返って岩を少し降り、斜面の上の方へ向かっていきました。
十郎は山の方へ行く彼女を怪しみ、どこから来た者か聞こうと追いかけました。
すると、岩の付近から地面には何匹もの蛇がおり、近づける状態ではありませんでした。早く追いかけなければ見失ってしまうと思い、その蛇らを踏まず、刺激しないように追いかけました。
十郎は彼女の跡をたどっていこうと思いましたが、すでに彼女は見当たりません。ただ残るのは、一筋の蛇の群れでした。十郎は
「もしやこの蛇をたどってゆくと会えるのか?」
と思い、一か八か蛇の群れをたどる方法で彼女を追いかけました。
すると、その方法が的中したのでした。
彼女は蛇の群れの一番奥にいて、山のくぼみにある小さな池の際にたたずんでいました。その様子は十郎から見て異様な光景でした。美しい着物を着た美しい娘が、山奥の小さな池のほとりにたたずんでいるのです。彼女の足元を見ると、蛇が数匹うねっていました。
「あなたは何者か。どこから来たのか。」
十郎は薄々気づきつつ、しかしはっきりとどうどうと言葉を発しました。
「あなたはもうわかっているのではないですか?」
娘は十郎に向かって優しい声で、ただどこか距離を置いたかのようにいいました。
十郎はその時点で彼女を蛇の化身であると確信しました。しかし十郎は蛇に対する恐れよりも、その娘の美しさに一目惚れしてしまったのです。
「名前は何という。」
十郎は彼女が距離を取っているのをすぐに理解しました。だからこそ、せめて名前だけでも知りたいと思い、彼女に名前を聞きました。彼女は、それに応えました。
「ミヨと言います。」
ミヨはこの周辺の村や森の自然界の高貴な存在でありました。蛇のみならず多くの動物たちから慕われ、自然信仰の中で人間から姿を現さない自然界の神としても崇敬されてきました。長い年月を生き、動物や人々からの信仰の力もあって、神通力を持ち、ついには人の姿に化けることさえもできるようになり、特別な存在になったのでした。
しかしミヨは常に自然界の存在であり、人間と交わることはありませんでした。ましてや人間は危険な存在とも思っていました。なので、十郎のことも最初は警戒し、一定の距離を保つようにしていました。
しかし、十郎はそんなミヨのことを理解していたのか、ほぼ毎日のように出会った岩、そこにミヨがいなければ池の畔に赴き、それでもいなければ名前を呼んで何とか会おうとしました。且つ、土産物を持ってきてはふるまおうとしたり、人間界の面白い話をしては楽しませようとしたりしました。それでもミヨは十郎に心を許しはしませんでした。
ある時、そんなミヨのもとへ行った帰り道。十郎は見たこともない大蛇に遭遇しました。しかも道を完全にふさいでいたのでした。持っているのは、枝を切るための鉈のみ。しかし、十郎は
「生き物を殺すときは食べる時のみだ、ただむやみに殺すだけなのはかわいそうである。」
として、大蛇のしっぽの方から回り込んで大回りし、急な斜面を、危険を承知で滑り落ちて帰路につきました。
翌日、また山仕事とともにミヨのもとへ行きました。すると岩の上に出会った時のようにミヨが立っていました。十郎が声をかけると、ミヨは素直に降りてきて、こう言いました。
「あなたは心優しい方なのですね。」
十郎は急にそんなことを言われて、いったい何のことかさっぱりわかりませんでした。しかし、その様子を見てミヨはくすっと笑い、
「今日はどのようなお話を聞かせてくれるのですか?」
と、いいました。
十郎は余計になぜそんな急に距離が縮まったのか訳が分からず、いったい何があったのかと聞くと、ミヨはこういいました。
「人間が人間以外の動物にも優しい場合、私はその方を尊敬します。」
といったのでした。十郎は昨日のことだとはつゆ知らず、確かに自分は、動物は好きな方ではあるが、なぜ急にそんなことを言い出すのかわからないという風でした。しかし、いずれにせよミヨに心を許されたという事実があり、十郎は何よりそれがうれしかったのでした。
それからというもの、ミヨと十郎とは森の中で語り合う中になり、ミヨはさらに十郎の誠実さや純粋さ、心優しさに触れ、十郎はミヨの容姿だけではなく、心の深さや温かさに触れ、お互いに惹かれあってゆく仲となっていったのでした。
ある日、十郎は
「一度で良いからうちに来てみないか。」
といいました。しかし、ミヨはそれだけはできないといいました。十郎はなぜか問うと、ほかの人間が十郎のように心優しいものばかりとは限らないし、もし正体がばれたら村人に何をされるかわからないといい、十郎は確かに言う通りではあると一度は納得しました。しかし、十郎はミヨとの関係をどうしても発展させたいと思っていました。十郎にとっては初恋の相手であり、もうミヨを知ってしまってはほかの女性は愛せないと確信していたからです。実はミヨも十郎に相当惹かれており、そんな中で十郎の気持にも気づいていました。しかし、だからこそミヨは十郎のためにそろそろ人間の女性に目を向けてみてはどうかと提案しました。十郎もミヨが自分のことを思って言ってくれているのだということを察していましたが、それでも、そんな優しいミヨにさらに惹かれていくばかりでした。出会ってからそれなりに月日がたち、彼らはもう、お互いを想う気持ちをお互いが察することができるほどになっていました。
十郎は諦めませんでした。十郎は想っている言葉をすべてミヨに伝えました。どれほどミヨを愛しているか、そして、もうミヨしか愛せないのだと。ミヨはそんな十郎の気持ちをすでに察してはいました。それでもやはり、言葉にされて、伝えられたということがとても嬉しかったのでした。
そして、ミヨは覚悟を決めました。
「行きましょう」
十郎の言葉に動かされ、十郎とともに生きていたいと強く思い、人間界へ行く決意をしたのでした。
十郎は大喜びでした。ずっと近くにいて遠かったミヨが、やっと本当の意味で近くにいてくれるようになる。そう思ったからです。十郎のミヨへの愛は何物にも代えられぬものへとなっていたのでした。
ミヨが人間界に降りる日が来ました。十郎は森へ行き、ミヨを迎えに行きました。
その日は森がざわめき、森の生き物たちが別れを惜しんでいるようにも思えました。しかしミヨは森に言いました。
「私はここからいなくなるわけではない。すぐ近くにいるし、いつでも戻ってくる。」
そう言い残すと、森は少し静かになりました。十郎はその光景を見て、改めてミヨという存在の偉大さを知り、尊敬したのでした。
森を降りていく途中、様々な話をしました。そんな中でも、ミヨはやはり人間に見破られることがないかを心配していました。十郎は大丈夫だと何度も慰めました。
そして森を抜け、ついに人間の住む集落に降りてきました。ミヨは人間の集落は初めてではなかったので、そこまで気を張ってはいませんでしたが、それでもいつも少し緊張してしまうのでした。しかも今回は十郎の村の村人に紹介するために来たので、面と向かって人間と出会うことになります。森の神の位置にいるミヨであろうとも、それだけは少し怖いと感じていたのでした。
ミヨはいったん十郎とともに十郎の家に上がることになりました。
十郎の家は十郎の一人しか住んでいませんでした。十郎の親はすでに亡くなっており、兄弟もおらず、十郎は村の者の力を時に借りて、一人で暮らしていたのです。
ミヨは一人ならば、わざわざほかの村人に知らせる必要などないのではないかといいましたが、十郎は小さい村だからいずれすぐにばれてしまうし、ばれた時に隠していた方が怪しまれるからと、先に村人に挨拶をすることに決めたのでした。そのほかにも、単純にほかの村からの住民を迎えるときは村人に挨拶をしなければならないという決まりもあったことから、その決まりを守らないといけないということもありました。古い村ではいろいろと大変なのです。
翌日、十郎が予定を組んでいた通り、村の神社でミヨを紹介することになりました。
村人たちはあの真面目で誠実な十郎についに嫁が来るのかと、みなどんな人が来るのか楽しみにしていました。
ミヨが十郎と現れた時、村人はその美しさに言葉を失いました。そして皆納得したのでした。
「真面目で誠実な十郎にふさわしい女性だ」
と。
ミヨの心配していたことは起こらず、すんなりと受け入れられました。村人からは祝福の声が上がり、ミヨはその日から村の人気者となりました。そして、十郎とミヨは、まだ結婚もしていないのに、この村の自慢の夫婦と呼ばれるようになってしまいました。十郎はまだ結婚はしていないのにと、照れくさくもあきれた様子で、ミヨはそれを照れくさく思っていましたが、とてもうれしく、そして安心していました。
そこからミヨは十郎の家で暮らし、主に畑仕事をやっていました。ミヨの力があれば、動物に食われることもないし、野菜が枯れることもなかったのです。ミヨが来てからというもの、その年の村は豊作になり、村人は豊穣の神も十郎とミヨを祝っているのだと信じました。そしてよく働き、疲れた顔を一切見せないミヨに村人は目をみはるばかりでした。
そんな生活が続いて、冬が来ました。
ミヨは冬が苦手で、冬だけは家の中だけでしか動くことができず、雪が降るころには全く外に出なくなりました。この地域の冬は雪深く、長いです。村人は、ミヨはどうしたと不安がりましたが、家に訪ねてくるとミヨは特に変わり無くいたので、特に怪しむ様子もありませんでした。
長い冬が終わり、春がやってきました。村人は十郎とミヨの婚約を今か今かと待ち望んでいました。
ところがそんなとき、一人の人間が村を訪ねてきました。
本人曰く、廻国僧だといいます。その人は、村の様子を見て異変を感じていました。ほかの村は去年の作物の成りがそんなに良くなかったのに、この村だけあまりにも充実した村人や蓄えがあったのでした。廻国僧がなぜこの村だけこんなにも豊作だったのかと聞くと、一人の村人が、それは去年うちの若いもんがきれいな嫁さんを連れてきたから豊穣の神さんも祝ってくれたからだ、といいました。廻国僧はその二人のことが気になって、どこにいるのかと聞くと、村人は案内をしました。
廻国僧が十郎の家に着き、十郎は山から、ミヨはちょうど畑から帰ってきました。そこで廻国僧は鬼のような形相となって、ミヨを指さし叫びました。
「こいつは大蛇だ!」
廻国僧は諸国を回りやすくするために、自分を廻国僧といっていましたが、本当は八卦見だったのでした。八卦見は常に占いながら修行をしていたのです。見ただけで、ミヨは蛇であることを見破られてしまったのでした。案内した村人は、こいつは何を言っているのだと驚いた様子でした。叫び声を聞いて、村中から人が集まってきました。
「こいつは森に棲む大蛇だ。なぜここにいる。村を食い荒らすためか。」
八卦見は興奮した様子で問い続けました。村人は皆この男を気が狂ったものだと思っていましたが、ふとミヨを見ると、とても動揺を隠せていない姿でした。一部の村人から不穏な声が上がったのです。
「もしかして、この村が豊作になったのも蛇の力によるものなのか」
それに続くように、
「冬に外に出なかったのは、その正体が蛇だったからか」
「どんなに仕事をしていても、疲れたかを一つしなかったのは化け物だったからか」
「こんなに完璧に美しい娘だったのは、蛇が化けていたからなのか」
皆、八卦見の勢いにつられるように、今までの不審な点を次々と言葉に出してゆきます。
ミヨはもう青ざめてしまい、言葉も出ませんでした。
そんな中、十郎は叫びました。
「ふざけるな!こんなどこの誰とも知らないやつがいきなり来ては私のミヨを侮辱して、お前らはこんな奴の言うことを信じるというのか!」
一度は、村人たちは黙りましたが、八卦見がこう答えました。
「では、その女が蛇でないということを証明して見せよ。まずは私の質問に答えるところからだ。どこで出会った。」
その時点で十郎はすぐに答えられませんでした。隣村と言ってしまえば、すぐに確認に行くことになるでしょう。だからといって遠い村の名前を出してもそんな遠い村まで行く用事もないし、十郎が二日家を空けたこともありません。たとえその言い訳が可能であっても、いままで様々な所を回ってきた八卦見がその村に確認に行くだけです。
「では、もう一つ、先ほど冬に家から出ていなかったといったがそれはなぜか。蛇には、冬の寒さや雪が答えるからなのではないか?もしよければ、今年雪が降りだした頃に来るから、その時その娘を雪の中を歩かせてみよ。人間の娘であれば寒くとも歩けることは歩けるであろう。」
それを聞いた十郎は、怒りました。
「お前からあらぬ疑いを勝手にかけてきているが、ミヨが蛇だというのなら、お前の方が、ミヨが蛇であることを証明するべきなのではないか。」
すると、八卦見は言いました。
「良いのか?私はそれで一向にかまわん。いくらでもやりようはある。良いのか?ミヨとやら。」
ミヨは青ざめた様子で、目に涙を浮かべていました。
そして、十郎に声にならない声でこう言いました。
「もうここにはいられません。一緒にはいられません。」
そう言い残すと、ミヨは山の方を向いて、歩いていきました。十郎は立ち尽くしました。八卦見は満足した様子でしたが、村人の反発はこれでやむものではありませんでした。
「大蛇なら野放しにしておくのはまずい、ここで仕留めなければ。」
十郎はミヨを追おうとしましたが、村人がミヨを襲おうとしたので、一人でそれを止めに入りました。
「ミヨ!走って逃げろ!」
ミヨは振り向かず、一瞬立ち止まってこぶしを握りうつむいて、名残惜しそうにしながらも、すぐに山の方へ駆け出しました。十郎は多勢に無勢、もはや力負けし、ミヨの後を村人が追う形となりました。しかし、村人が山に入ろうとしたときには、すでにミヨはいなくなっており、痕跡さえも残っていませんでした。
村人は十郎を問い詰めました。そして、そこから十郎への信頼は落ち、十郎は村から迫害されるようになったのでした。すべての村人がそうするわけではありませんが、十郎を助けようとするものも同じように迫害を受ける可能性があったので、十郎を哀れに思った村人も十郎を助けることはできませんでした。
十郎はそれでもミヨを愛していました。そしてミヨに申し訳ないと思っていました。自分のせいでひどい目に合わせてしまった。ミヨに会いたいと。
十郎はまだ居座っている八卦見と村人から迫害を受けながらも、監視の目を盗んで山へ入りました。そしてミヨに会いに行くのでした。
しかし、ミヨはお気に入りの岩にも、小さな池にもいません。どれだけ探しても、何度呼ばっても、何度訪れてもミヨはどこにもいませんでした。
それでも十郎はミヨに会いたい、たとえどんな場所であろうともミヨと一緒にいたいと願い、あきらめず通い続けました。そうしているうちも、迫害を受け続け、ミヨにも会えず、ろくに食事ものどを通らず、畑も世話をしなくなり枯れ、仕事も手につかず、心身ともに疲弊していきました。
十郎があきらめずに池にいっていると、ある時、水面に振動が走りました。そして声が聞こえてきます。
「もう一度あなたに姿を見せます。でもこれで最後。もう私たちは終わりにしましょう。」
そんな声が聞こえた瞬間。池の底から大蛇が現れたのでした。
その姿は薄白色の大きな蛇でまさに大蛇です。しかし、そのいでたち、目、声、静けさ、そして美しさはまさにミヨであると十郎にはわかりました。
「すまないミヨ。私のせいでこんなことになってしまった。」
ミヨは首を垂れると、水の中に戻ってゆきました。
十郎はミヨを呼び続けました。しかしそれから一切、ミヨは現れてくれなくなりました。
ミヨは十郎のためを思っていました。十郎にはやはり人間の女性と結婚してもらわなければならない。そうしないと社会の立ち位置もない。そうでなければ子供も作れないかもしれない。
そして十郎は、そんなミヨのことをわからなくなっていました。嫌われてしまったのか、それとも自分を思ってのことなのか。嫌われてしまったのかもしれない。自分が村にミヨを連れて行かなかったらこんなことにはなっていないのだから。そう思って、だんだん気も病んでゆきました。
数日後、十郎はまた池の畔に立っていました。その姿は以前の十郎とは全く違い、やせ細って、生気も感じられない様子でした。
十郎はそこでこう言いました。
「ミヨ、君と一緒にいられない世はなにも無い世だ。君が出てきてくれないなら、君に此の先もう会えないなら、私はここに身を投げて死ぬ。君が生きがいだった。ありがとう。」
そして、十郎は池に一歩踏み入れ、入水しようとしました。
すると、後ろから誰かが抱き着いてきて、後ろに重心を向け、入水直前で陸に倒れこみました。
「なんていうことをするのですか。私はこんな事望んでいません。」
ミヨでした。十郎はミヨに会えた嬉しさのあまり、何も言わずただ泣いたのでした。そして、そのまま意識が遠のいていきました。ミヨはそれを見て、必死に十郎を呼ばりましたが、十郎は起きません。心身ともに限界が来ていて、病にかかっていたのでした。
ミヨは池の近くの岩窟に十郎を連れてゆき、そこで十郎の看病をしました。神通力を使い、時には薬草を使い、必死に看病したのでした。
そして、そんなミヨの献身的な看病の末、病が治り、十郎は意識を取り戻しました。
ミヨは安心しきって、神通力の使い過ぎで疲れてしまって、一時的に大蛇の姿に戻ってしまいました。
十郎はそんなミヨを抱きしめました。
「ありがとう、ミヨ。また会えてよかった。もう離さない。」
そしてミヨは言いました。
「今の私は大蛇ですよ。こんな姿の私でも抱きしめてくれるのですか。」
ミヨはとても嬉しそうでした。
十郎はその後、正式に村を出ました。ミヨの元で、森の中で暮らすことにしたのです。
その際、一部、十郎とミヨを哀れに思っていた村人たちから、十郎に必要最低限の生活必需品をもらいました。十郎を手助けしたことがミヨを追い出した一派にばれたらその村人も迫害されるかもしれないのに、こんなに助けてもらって、十郎は泣いてお礼を言いました。
そして十郎は森の中に小さな庵のような家を建てました。ミヨと暮らす家です。
ミヨはいいました。
「私があなたに心を許したのは、あなたが優しく純粋で誠実だったからだけではありませんよ。私たちが初めて出会った日、あなたは私の正体を知りましたね。それでも蛇の私を恐れず、忌み嫌わずに、その後も接してくれましたね。そして大蛇の姿になった私をも抱きしめてくれた。実は、それがとても嬉しかったのです。」
といいました。
十郎は感涙にむせび泣き、改めてミヨと出会った幸せをかみしめました。
こうしてミヨと十郎は自分たちの中で、結婚したのでした。
ミヨはその後、神通力を十郎のため、そしてミヨと十郎を哀れに思って助けてくれた一部の村人の幸福と安寧のために使いました。
そこから長い年月を二人だけで過ごしました。自然の摂理から反してしまっていることをお互いが自覚しながらも誰よりも愛し合ったのでした。
ミヨから神力をもらった村人の家は、ひそかに村に祠を立て、ミヨを祀りました。
山には大きな縦長の岩が、さらに奥には今は水が枯れてしまいましたが、池の跡である大きな窪地が残っています。
ある日、十郎が山へ薪を取りに行った時のこと。山の中腹にある大きな岩の上に美しい娘が立っていました。十郎は、こんなところで一体何をしているのだろうかと不審に思い、近寄って話しかけようとしました。すると、なんと美しい娘でしょうか。十郎はほんの少しその美しさに見とれてしまいました。
ふと我に返り、あんな岩の上で何をやっているかわからないが、危ないことだと思い、その娘に話しかけました。
「そこで何をしている。そんなところにいては危ないぞ」
娘は十郎に気づいたようで、十郎の方を向くと、振り返って岩を少し降り、斜面の上の方へ向かっていきました。
十郎は山の方へ行く彼女を怪しみ、どこから来た者か聞こうと追いかけました。
すると、岩の付近から地面には何匹もの蛇がおり、近づける状態ではありませんでした。早く追いかけなければ見失ってしまうと思い、その蛇らを踏まず、刺激しないように追いかけました。
十郎は彼女の跡をたどっていこうと思いましたが、すでに彼女は見当たりません。ただ残るのは、一筋の蛇の群れでした。十郎は
「もしやこの蛇をたどってゆくと会えるのか?」
と思い、一か八か蛇の群れをたどる方法で彼女を追いかけました。
すると、その方法が的中したのでした。
彼女は蛇の群れの一番奥にいて、山のくぼみにある小さな池の際にたたずんでいました。その様子は十郎から見て異様な光景でした。美しい着物を着た美しい娘が、山奥の小さな池のほとりにたたずんでいるのです。彼女の足元を見ると、蛇が数匹うねっていました。
「あなたは何者か。どこから来たのか。」
十郎は薄々気づきつつ、しかしはっきりとどうどうと言葉を発しました。
「あなたはもうわかっているのではないですか?」
娘は十郎に向かって優しい声で、ただどこか距離を置いたかのようにいいました。
十郎はその時点で彼女を蛇の化身であると確信しました。しかし十郎は蛇に対する恐れよりも、その娘の美しさに一目惚れしてしまったのです。
「名前は何という。」
十郎は彼女が距離を取っているのをすぐに理解しました。だからこそ、せめて名前だけでも知りたいと思い、彼女に名前を聞きました。彼女は、それに応えました。
「ミヨと言います。」
ミヨはこの周辺の村や森の自然界の高貴な存在でありました。蛇のみならず多くの動物たちから慕われ、自然信仰の中で人間から姿を現さない自然界の神としても崇敬されてきました。長い年月を生き、動物や人々からの信仰の力もあって、神通力を持ち、ついには人の姿に化けることさえもできるようになり、特別な存在になったのでした。
しかしミヨは常に自然界の存在であり、人間と交わることはありませんでした。ましてや人間は危険な存在とも思っていました。なので、十郎のことも最初は警戒し、一定の距離を保つようにしていました。
しかし、十郎はそんなミヨのことを理解していたのか、ほぼ毎日のように出会った岩、そこにミヨがいなければ池の畔に赴き、それでもいなければ名前を呼んで何とか会おうとしました。且つ、土産物を持ってきてはふるまおうとしたり、人間界の面白い話をしては楽しませようとしたりしました。それでもミヨは十郎に心を許しはしませんでした。
ある時、そんなミヨのもとへ行った帰り道。十郎は見たこともない大蛇に遭遇しました。しかも道を完全にふさいでいたのでした。持っているのは、枝を切るための鉈のみ。しかし、十郎は
「生き物を殺すときは食べる時のみだ、ただむやみに殺すだけなのはかわいそうである。」
として、大蛇のしっぽの方から回り込んで大回りし、急な斜面を、危険を承知で滑り落ちて帰路につきました。
翌日、また山仕事とともにミヨのもとへ行きました。すると岩の上に出会った時のようにミヨが立っていました。十郎が声をかけると、ミヨは素直に降りてきて、こう言いました。
「あなたは心優しい方なのですね。」
十郎は急にそんなことを言われて、いったい何のことかさっぱりわかりませんでした。しかし、その様子を見てミヨはくすっと笑い、
「今日はどのようなお話を聞かせてくれるのですか?」
と、いいました。
十郎は余計になぜそんな急に距離が縮まったのか訳が分からず、いったい何があったのかと聞くと、ミヨはこういいました。
「人間が人間以外の動物にも優しい場合、私はその方を尊敬します。」
といったのでした。十郎は昨日のことだとはつゆ知らず、確かに自分は、動物は好きな方ではあるが、なぜ急にそんなことを言い出すのかわからないという風でした。しかし、いずれにせよミヨに心を許されたという事実があり、十郎は何よりそれがうれしかったのでした。
それからというもの、ミヨと十郎とは森の中で語り合う中になり、ミヨはさらに十郎の誠実さや純粋さ、心優しさに触れ、十郎はミヨの容姿だけではなく、心の深さや温かさに触れ、お互いに惹かれあってゆく仲となっていったのでした。
ある日、十郎は
「一度で良いからうちに来てみないか。」
といいました。しかし、ミヨはそれだけはできないといいました。十郎はなぜか問うと、ほかの人間が十郎のように心優しいものばかりとは限らないし、もし正体がばれたら村人に何をされるかわからないといい、十郎は確かに言う通りではあると一度は納得しました。しかし、十郎はミヨとの関係をどうしても発展させたいと思っていました。十郎にとっては初恋の相手であり、もうミヨを知ってしまってはほかの女性は愛せないと確信していたからです。実はミヨも十郎に相当惹かれており、そんな中で十郎の気持にも気づいていました。しかし、だからこそミヨは十郎のためにそろそろ人間の女性に目を向けてみてはどうかと提案しました。十郎もミヨが自分のことを思って言ってくれているのだということを察していましたが、それでも、そんな優しいミヨにさらに惹かれていくばかりでした。出会ってからそれなりに月日がたち、彼らはもう、お互いを想う気持ちをお互いが察することができるほどになっていました。
十郎は諦めませんでした。十郎は想っている言葉をすべてミヨに伝えました。どれほどミヨを愛しているか、そして、もうミヨしか愛せないのだと。ミヨはそんな十郎の気持ちをすでに察してはいました。それでもやはり、言葉にされて、伝えられたということがとても嬉しかったのでした。
そして、ミヨは覚悟を決めました。
「行きましょう」
十郎の言葉に動かされ、十郎とともに生きていたいと強く思い、人間界へ行く決意をしたのでした。
十郎は大喜びでした。ずっと近くにいて遠かったミヨが、やっと本当の意味で近くにいてくれるようになる。そう思ったからです。十郎のミヨへの愛は何物にも代えられぬものへとなっていたのでした。
ミヨが人間界に降りる日が来ました。十郎は森へ行き、ミヨを迎えに行きました。
その日は森がざわめき、森の生き物たちが別れを惜しんでいるようにも思えました。しかしミヨは森に言いました。
「私はここからいなくなるわけではない。すぐ近くにいるし、いつでも戻ってくる。」
そう言い残すと、森は少し静かになりました。十郎はその光景を見て、改めてミヨという存在の偉大さを知り、尊敬したのでした。
森を降りていく途中、様々な話をしました。そんな中でも、ミヨはやはり人間に見破られることがないかを心配していました。十郎は大丈夫だと何度も慰めました。
そして森を抜け、ついに人間の住む集落に降りてきました。ミヨは人間の集落は初めてではなかったので、そこまで気を張ってはいませんでしたが、それでもいつも少し緊張してしまうのでした。しかも今回は十郎の村の村人に紹介するために来たので、面と向かって人間と出会うことになります。森の神の位置にいるミヨであろうとも、それだけは少し怖いと感じていたのでした。
ミヨはいったん十郎とともに十郎の家に上がることになりました。
十郎の家は十郎の一人しか住んでいませんでした。十郎の親はすでに亡くなっており、兄弟もおらず、十郎は村の者の力を時に借りて、一人で暮らしていたのです。
ミヨは一人ならば、わざわざほかの村人に知らせる必要などないのではないかといいましたが、十郎は小さい村だからいずれすぐにばれてしまうし、ばれた時に隠していた方が怪しまれるからと、先に村人に挨拶をすることに決めたのでした。そのほかにも、単純にほかの村からの住民を迎えるときは村人に挨拶をしなければならないという決まりもあったことから、その決まりを守らないといけないということもありました。古い村ではいろいろと大変なのです。
翌日、十郎が予定を組んでいた通り、村の神社でミヨを紹介することになりました。
村人たちはあの真面目で誠実な十郎についに嫁が来るのかと、みなどんな人が来るのか楽しみにしていました。
ミヨが十郎と現れた時、村人はその美しさに言葉を失いました。そして皆納得したのでした。
「真面目で誠実な十郎にふさわしい女性だ」
と。
ミヨの心配していたことは起こらず、すんなりと受け入れられました。村人からは祝福の声が上がり、ミヨはその日から村の人気者となりました。そして、十郎とミヨは、まだ結婚もしていないのに、この村の自慢の夫婦と呼ばれるようになってしまいました。十郎はまだ結婚はしていないのにと、照れくさくもあきれた様子で、ミヨはそれを照れくさく思っていましたが、とてもうれしく、そして安心していました。
そこからミヨは十郎の家で暮らし、主に畑仕事をやっていました。ミヨの力があれば、動物に食われることもないし、野菜が枯れることもなかったのです。ミヨが来てからというもの、その年の村は豊作になり、村人は豊穣の神も十郎とミヨを祝っているのだと信じました。そしてよく働き、疲れた顔を一切見せないミヨに村人は目をみはるばかりでした。
そんな生活が続いて、冬が来ました。
ミヨは冬が苦手で、冬だけは家の中だけでしか動くことができず、雪が降るころには全く外に出なくなりました。この地域の冬は雪深く、長いです。村人は、ミヨはどうしたと不安がりましたが、家に訪ねてくるとミヨは特に変わり無くいたので、特に怪しむ様子もありませんでした。
長い冬が終わり、春がやってきました。村人は十郎とミヨの婚約を今か今かと待ち望んでいました。
ところがそんなとき、一人の人間が村を訪ねてきました。
本人曰く、廻国僧だといいます。その人は、村の様子を見て異変を感じていました。ほかの村は去年の作物の成りがそんなに良くなかったのに、この村だけあまりにも充実した村人や蓄えがあったのでした。廻国僧がなぜこの村だけこんなにも豊作だったのかと聞くと、一人の村人が、それは去年うちの若いもんがきれいな嫁さんを連れてきたから豊穣の神さんも祝ってくれたからだ、といいました。廻国僧はその二人のことが気になって、どこにいるのかと聞くと、村人は案内をしました。
廻国僧が十郎の家に着き、十郎は山から、ミヨはちょうど畑から帰ってきました。そこで廻国僧は鬼のような形相となって、ミヨを指さし叫びました。
「こいつは大蛇だ!」
廻国僧は諸国を回りやすくするために、自分を廻国僧といっていましたが、本当は八卦見だったのでした。八卦見は常に占いながら修行をしていたのです。見ただけで、ミヨは蛇であることを見破られてしまったのでした。案内した村人は、こいつは何を言っているのだと驚いた様子でした。叫び声を聞いて、村中から人が集まってきました。
「こいつは森に棲む大蛇だ。なぜここにいる。村を食い荒らすためか。」
八卦見は興奮した様子で問い続けました。村人は皆この男を気が狂ったものだと思っていましたが、ふとミヨを見ると、とても動揺を隠せていない姿でした。一部の村人から不穏な声が上がったのです。
「もしかして、この村が豊作になったのも蛇の力によるものなのか」
それに続くように、
「冬に外に出なかったのは、その正体が蛇だったからか」
「どんなに仕事をしていても、疲れたかを一つしなかったのは化け物だったからか」
「こんなに完璧に美しい娘だったのは、蛇が化けていたからなのか」
皆、八卦見の勢いにつられるように、今までの不審な点を次々と言葉に出してゆきます。
ミヨはもう青ざめてしまい、言葉も出ませんでした。
そんな中、十郎は叫びました。
「ふざけるな!こんなどこの誰とも知らないやつがいきなり来ては私のミヨを侮辱して、お前らはこんな奴の言うことを信じるというのか!」
一度は、村人たちは黙りましたが、八卦見がこう答えました。
「では、その女が蛇でないということを証明して見せよ。まずは私の質問に答えるところからだ。どこで出会った。」
その時点で十郎はすぐに答えられませんでした。隣村と言ってしまえば、すぐに確認に行くことになるでしょう。だからといって遠い村の名前を出してもそんな遠い村まで行く用事もないし、十郎が二日家を空けたこともありません。たとえその言い訳が可能であっても、いままで様々な所を回ってきた八卦見がその村に確認に行くだけです。
「では、もう一つ、先ほど冬に家から出ていなかったといったがそれはなぜか。蛇には、冬の寒さや雪が答えるからなのではないか?もしよければ、今年雪が降りだした頃に来るから、その時その娘を雪の中を歩かせてみよ。人間の娘であれば寒くとも歩けることは歩けるであろう。」
それを聞いた十郎は、怒りました。
「お前からあらぬ疑いを勝手にかけてきているが、ミヨが蛇だというのなら、お前の方が、ミヨが蛇であることを証明するべきなのではないか。」
すると、八卦見は言いました。
「良いのか?私はそれで一向にかまわん。いくらでもやりようはある。良いのか?ミヨとやら。」
ミヨは青ざめた様子で、目に涙を浮かべていました。
そして、十郎に声にならない声でこう言いました。
「もうここにはいられません。一緒にはいられません。」
そう言い残すと、ミヨは山の方を向いて、歩いていきました。十郎は立ち尽くしました。八卦見は満足した様子でしたが、村人の反発はこれでやむものではありませんでした。
「大蛇なら野放しにしておくのはまずい、ここで仕留めなければ。」
十郎はミヨを追おうとしましたが、村人がミヨを襲おうとしたので、一人でそれを止めに入りました。
「ミヨ!走って逃げろ!」
ミヨは振り向かず、一瞬立ち止まってこぶしを握りうつむいて、名残惜しそうにしながらも、すぐに山の方へ駆け出しました。十郎は多勢に無勢、もはや力負けし、ミヨの後を村人が追う形となりました。しかし、村人が山に入ろうとしたときには、すでにミヨはいなくなっており、痕跡さえも残っていませんでした。
村人は十郎を問い詰めました。そして、そこから十郎への信頼は落ち、十郎は村から迫害されるようになったのでした。すべての村人がそうするわけではありませんが、十郎を助けようとするものも同じように迫害を受ける可能性があったので、十郎を哀れに思った村人も十郎を助けることはできませんでした。
十郎はそれでもミヨを愛していました。そしてミヨに申し訳ないと思っていました。自分のせいでひどい目に合わせてしまった。ミヨに会いたいと。
十郎はまだ居座っている八卦見と村人から迫害を受けながらも、監視の目を盗んで山へ入りました。そしてミヨに会いに行くのでした。
しかし、ミヨはお気に入りの岩にも、小さな池にもいません。どれだけ探しても、何度呼ばっても、何度訪れてもミヨはどこにもいませんでした。
それでも十郎はミヨに会いたい、たとえどんな場所であろうともミヨと一緒にいたいと願い、あきらめず通い続けました。そうしているうちも、迫害を受け続け、ミヨにも会えず、ろくに食事ものどを通らず、畑も世話をしなくなり枯れ、仕事も手につかず、心身ともに疲弊していきました。
十郎があきらめずに池にいっていると、ある時、水面に振動が走りました。そして声が聞こえてきます。
「もう一度あなたに姿を見せます。でもこれで最後。もう私たちは終わりにしましょう。」
そんな声が聞こえた瞬間。池の底から大蛇が現れたのでした。
その姿は薄白色の大きな蛇でまさに大蛇です。しかし、そのいでたち、目、声、静けさ、そして美しさはまさにミヨであると十郎にはわかりました。
「すまないミヨ。私のせいでこんなことになってしまった。」
ミヨは首を垂れると、水の中に戻ってゆきました。
十郎はミヨを呼び続けました。しかしそれから一切、ミヨは現れてくれなくなりました。
ミヨは十郎のためを思っていました。十郎にはやはり人間の女性と結婚してもらわなければならない。そうしないと社会の立ち位置もない。そうでなければ子供も作れないかもしれない。
そして十郎は、そんなミヨのことをわからなくなっていました。嫌われてしまったのか、それとも自分を思ってのことなのか。嫌われてしまったのかもしれない。自分が村にミヨを連れて行かなかったらこんなことにはなっていないのだから。そう思って、だんだん気も病んでゆきました。
数日後、十郎はまた池の畔に立っていました。その姿は以前の十郎とは全く違い、やせ細って、生気も感じられない様子でした。
十郎はそこでこう言いました。
「ミヨ、君と一緒にいられない世はなにも無い世だ。君が出てきてくれないなら、君に此の先もう会えないなら、私はここに身を投げて死ぬ。君が生きがいだった。ありがとう。」
そして、十郎は池に一歩踏み入れ、入水しようとしました。
すると、後ろから誰かが抱き着いてきて、後ろに重心を向け、入水直前で陸に倒れこみました。
「なんていうことをするのですか。私はこんな事望んでいません。」
ミヨでした。十郎はミヨに会えた嬉しさのあまり、何も言わずただ泣いたのでした。そして、そのまま意識が遠のいていきました。ミヨはそれを見て、必死に十郎を呼ばりましたが、十郎は起きません。心身ともに限界が来ていて、病にかかっていたのでした。
ミヨは池の近くの岩窟に十郎を連れてゆき、そこで十郎の看病をしました。神通力を使い、時には薬草を使い、必死に看病したのでした。
そして、そんなミヨの献身的な看病の末、病が治り、十郎は意識を取り戻しました。
ミヨは安心しきって、神通力の使い過ぎで疲れてしまって、一時的に大蛇の姿に戻ってしまいました。
十郎はそんなミヨを抱きしめました。
「ありがとう、ミヨ。また会えてよかった。もう離さない。」
そしてミヨは言いました。
「今の私は大蛇ですよ。こんな姿の私でも抱きしめてくれるのですか。」
ミヨはとても嬉しそうでした。
十郎はその後、正式に村を出ました。ミヨの元で、森の中で暮らすことにしたのです。
その際、一部、十郎とミヨを哀れに思っていた村人たちから、十郎に必要最低限の生活必需品をもらいました。十郎を手助けしたことがミヨを追い出した一派にばれたらその村人も迫害されるかもしれないのに、こんなに助けてもらって、十郎は泣いてお礼を言いました。
そして十郎は森の中に小さな庵のような家を建てました。ミヨと暮らす家です。
ミヨはいいました。
「私があなたに心を許したのは、あなたが優しく純粋で誠実だったからだけではありませんよ。私たちが初めて出会った日、あなたは私の正体を知りましたね。それでも蛇の私を恐れず、忌み嫌わずに、その後も接してくれましたね。そして大蛇の姿になった私をも抱きしめてくれた。実は、それがとても嬉しかったのです。」
といいました。
十郎は感涙にむせび泣き、改めてミヨと出会った幸せをかみしめました。
こうしてミヨと十郎は自分たちの中で、結婚したのでした。
ミヨはその後、神通力を十郎のため、そしてミヨと十郎を哀れに思って助けてくれた一部の村人の幸福と安寧のために使いました。
そこから長い年月を二人だけで過ごしました。自然の摂理から反してしまっていることをお互いが自覚しながらも誰よりも愛し合ったのでした。
ミヨから神力をもらった村人の家は、ひそかに村に祠を立て、ミヨを祀りました。
山には大きな縦長の岩が、さらに奥には今は水が枯れてしまいましたが、池の跡である大きな窪地が残っています。
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