40 / 42
ストーリー
記憶と正体
しおりを挟む
ジニアはひと通りリュカスに何があったかを伝えると、短い沈黙が訪れた。その沈黙を破ったのは、ジニアでもなく、リュカスでもなかった。
「……僕はもう、ここに居られなくなるのかな…」
アガーべの小さな呟きだった。悲しそうな、沈んだ声にジニアは否定する。
「何言ってるのよ! これからじゃない!」
「……僕は、本当は生きてちゃいけない存在なんだ」
「そんなこと、言っちゃダメ! どうしてそう思うのよ」
「本当のことだもん! 僕は生きてちゃいけない。ペディアの片割れは本来の場所に戻った。僕も戻らなきゃ……!」
アガーべは死にたいとは思っていない。むしろ、まだ生きていたい。自分の運命に葛藤し、大粒の涙を流しながら口を噛む。早口で言いまくしたてたアガーべの一言にジニアは引っかかる。
「……片割れ? どういうこと?」
「武器屋のお姉ちゃんも見たでしょ? 黒髪と青い瞳をした僕と同じくらいの身長の人。あの人はペディアの片割れなんだ。
僕の片割れはフェイン。でも、あの人は僕を拒絶してる。だから、元に戻れないし、認識すらしてくれない。……でも、時期は来てるんだ。僕は人間じゃない。だから、この世界に長くは留まれない。早くしないと、僕は消えるし、フェインの記憶も戻らない」
『なるほど、それでお主はあの時焦ったわけか』
アガーべの言い分に、リュカスは納得したように頷く。あの時とは、ジニアとペディアがフェインの中から出てきた時にアガーべは焦りを見せていたのだ。
アガーべはペディアを見た瞬間に悟ったのだ。片割れがペディアの元に戻り、完全体になったことを。
「リュカスさん、どういうこと?」
『この少年は、主が創り出したものだ。それと同様に、ペディアにも同じような存在を創っていたのだろう』
ジニアは理解に苦しんだ。ジニアの中で片割れとは、双子であるペディアとフェインのことなのだ。その2人に、それぞれ片割れが居ることがどうしても理解できないのだ。
「とにかく、僕はどうにかして……フェイン姉のところに戻る。僕じゃどうにも出来ない。狼さんとお姉ちゃんでどうにか説得してよ」
「説得……って、言われてもねぇ……」
ジニアは初めてフェインに会った時のことを思い返しながら、難しそうだなあと思った。ジニアがフェインと仲良くなるまで半年以上時間がかかったのだ。
『ジニアよ、ここでいくら考えていても仕方がない。まずはフェインを捜し出し、説得しよう』
「……ペディアはどうするの?」
ジニアはチラリと未だ起きないペディアを案じる。
「ペディ姉は僕が看ておくよ」
「アガーべは……まあいいか。今日のうちにフェインをここへ連れ戻せるか分からないし……。」
ジニアは、フェインとすぐに打ち解け、アガーべを受け入れてくれるならと連れていこうとしたが、やめた。
『少年のタイムリミットがあるなら、今すぐにでも向かった方が良いだろう。ここの地域は夏場とはいえ、夜は冷える。
我は、我が主の行きそうな場所をいくつか知っている。夜が 更ける前に行こう』
「分かった。じゃあ、アガーべ。ペディアをお願いね」
ジニアはリュカスの背に乗ってから言う。アガーべは両手で手を振った。
「うん! 行ってらっしゃい」
「……僕はもう、ここに居られなくなるのかな…」
アガーべの小さな呟きだった。悲しそうな、沈んだ声にジニアは否定する。
「何言ってるのよ! これからじゃない!」
「……僕は、本当は生きてちゃいけない存在なんだ」
「そんなこと、言っちゃダメ! どうしてそう思うのよ」
「本当のことだもん! 僕は生きてちゃいけない。ペディアの片割れは本来の場所に戻った。僕も戻らなきゃ……!」
アガーべは死にたいとは思っていない。むしろ、まだ生きていたい。自分の運命に葛藤し、大粒の涙を流しながら口を噛む。早口で言いまくしたてたアガーべの一言にジニアは引っかかる。
「……片割れ? どういうこと?」
「武器屋のお姉ちゃんも見たでしょ? 黒髪と青い瞳をした僕と同じくらいの身長の人。あの人はペディアの片割れなんだ。
僕の片割れはフェイン。でも、あの人は僕を拒絶してる。だから、元に戻れないし、認識すらしてくれない。……でも、時期は来てるんだ。僕は人間じゃない。だから、この世界に長くは留まれない。早くしないと、僕は消えるし、フェインの記憶も戻らない」
『なるほど、それでお主はあの時焦ったわけか』
アガーべの言い分に、リュカスは納得したように頷く。あの時とは、ジニアとペディアがフェインの中から出てきた時にアガーべは焦りを見せていたのだ。
アガーべはペディアを見た瞬間に悟ったのだ。片割れがペディアの元に戻り、完全体になったことを。
「リュカスさん、どういうこと?」
『この少年は、主が創り出したものだ。それと同様に、ペディアにも同じような存在を創っていたのだろう』
ジニアは理解に苦しんだ。ジニアの中で片割れとは、双子であるペディアとフェインのことなのだ。その2人に、それぞれ片割れが居ることがどうしても理解できないのだ。
「とにかく、僕はどうにかして……フェイン姉のところに戻る。僕じゃどうにも出来ない。狼さんとお姉ちゃんでどうにか説得してよ」
「説得……って、言われてもねぇ……」
ジニアは初めてフェインに会った時のことを思い返しながら、難しそうだなあと思った。ジニアがフェインと仲良くなるまで半年以上時間がかかったのだ。
『ジニアよ、ここでいくら考えていても仕方がない。まずはフェインを捜し出し、説得しよう』
「……ペディアはどうするの?」
ジニアはチラリと未だ起きないペディアを案じる。
「ペディ姉は僕が看ておくよ」
「アガーべは……まあいいか。今日のうちにフェインをここへ連れ戻せるか分からないし……。」
ジニアは、フェインとすぐに打ち解け、アガーべを受け入れてくれるならと連れていこうとしたが、やめた。
『少年のタイムリミットがあるなら、今すぐにでも向かった方が良いだろう。ここの地域は夏場とはいえ、夜は冷える。
我は、我が主の行きそうな場所をいくつか知っている。夜が 更ける前に行こう』
「分かった。じゃあ、アガーべ。ペディアをお願いね」
ジニアはリュカスの背に乗ってから言う。アガーべは両手で手を振った。
「うん! 行ってらっしゃい」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
アリスと女王
ちな
ファンタジー
迷い込んだ謎の森。何故かその森では“ アリス”と呼ばれ、“蜜”を求める動物たちの餌食に!
謎の青年に導かれながら“アリス”は森の秘密を知る物語──
クリ責め中心のファンタジーえろ小説!ちっちゃなクリを吊ったり舐めたり叩いたりして、発展途上の“ アリス“をゆっくりたっぷり調教しちゃいます♡通常では有り得ない責め苦に喘ぐかわいいアリスを存分に堪能してください♡
☆その他タグ:ロリ/クリ責め/股縄/鬼畜/凌辱/アナル/浣腸/三角木馬/拘束/スパンキング/羞恥/異種姦/折檻/快楽拷問/強制絶頂/コブ渡り/クンニ/☆
※完結しました!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる