記憶のカケラ

シルヴィー

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ストーリー

青い瞳の意思

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この世の中は、理不尽なことで覆われている。


朝起きて、顔を洗って、一日が始まる。
外の世界では、心の無い誰かとすれ違い、会う人には"笑顔"という名の歪んだ笑いで悪口を罵られる。

すれ違う誰かに声をかけられ、身に覚えのない罪で濡れ衣を着せられた時、あなたはどうするだろう?


違う、やってない。


強く、反発できるだろうか?
無言で強く言い出せずに押し潰されてしまわないか?


人は言霊ことだまを操る。文字通り、たましいの言葉だ。全ては言葉によって生まれ、言葉によって事を成す。

もちろん、人と人との間に交わす、人間の言葉も"言霊"。
コミュニケーションを取らなければ相手に理解されず、意思の弱さで全て理不尽に捻じ曲がる。

理不尽は、お互いの意思が通わないために生じる出来事。
意思が通じているのに、理不尽になるなら、それは本能で起こる自身や相手の危機。


心無い誰かは自分自身であり、他人。罵る悪口は自分の弱さ。自身を強くあるには、"全てを受け入れる"。それただ一つ。


あなたは、出来ているだろうか──





∞----------------------∞


「ペディア!!」


ジニアがペディアの元へ駆け寄る。突き破った腹からドクドクと血が溢れ出し、早く止血しなければ大量出血で死に至るだろう。


「ど、どうしよう……。完全には無理だけど……、四の五の言ってられない!」


ジニアはペディアの傷口に手を置く。ヌメリとした感触が手に付く。塞いでいるはずなのに、隙間から血がどんどん溢れ出て、ペディアの顔は蒼白だった。


「我は風。目に見えぬ暖かさを世界へと幸を運ぶ者。大地よ、我に力を。我にペディアを治す力を! 《アイレ・ウア》」


アイレ・ウア:風属性中級治癒魔法。すり傷程度なら治るが、致命的な場合、傷口を塞ぐ程度しかできない。

ジニアの魔法により、なんとかペディアの傷口を塞ぐことには成功したが、肝心の意識がなくては、ペディア無しではフェインの精神世界を治すことは不可能だった。タイムリミットも1分を切っており、絶望的だった。


「……やっぱり、無謀だったかな」


ジニアは、ペディアの塞いだ傷口を撫でながら自嘲する。


「……お姉ちゃんたち、何をしてるの?」


ふと、声が聞こえた。見上げると、黒髪、青い目をした少女が見下ろしていた。


「……ぁ…」

「後40秒で、あの人が戻ってきちゃうよ」


彼女はどういう状況か知っているらしい。そもそも、どうしてここに居るのか疑問でもある。ジニアの思考回路を無視して彼女は立ったままペディアを見下ろして話し続ける。


「怪我したお姉ちゃん。いつまで寝てるの? 早く起きてよ」

「ちょっと……!!」

「……そう、起きないの。今日がペディアの最期。頑張ってよ?」

「さ、最期? あなた、さっきから何を……」


ジニアは混乱するばかりだ。彼女はジニアを見る。


「武器屋のお姉ちゃん、怪我したお姉ちゃんをそこに置いて離れて」

「えっ……」

「時間が無いの、早く!」

「わ、分かった」


彼女が何をするか分からない。しかし、強く言われてその通りにする。残り20秒しかない。

彼女は満足気に頷いて近づく。


「ペディアは全部知ってるよ。お姉ちゃんはペディア。ペディアの力、本来の力に戻してあげる」


彼女はペディアに触れると、そのまま体に入った。と思うと、白く強い光を放ち、ジニアは思わず腕で目を覆った。
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