記憶のカケラ

シルヴィー

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ストーリー

柱の中で

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フェインの精神世界で、フェインの核となる柱に飲み込まれたペディア。その先にあったのは……


「やぁ、ようやくお出ましかい?」

「……誰?」


黒いもやの塊に目玉が2つある奇妙なだった。どこに口があるか分からないのに、耳から聞こえてくる声は、透き通った少年の声だった。


「分からないかい? お前に真実を教えてやったルアンさ」


ペディアは父に宿っていたであろうに怒りの気持ちがふつふつと込み上げてきた。ルアンはそれを感じ取ってか、少し嬉しそうに言う。


「お? 俺の名を聞いて怒ったか? その負の感情は俺の好物だ! もっと憤れ! もっと憎め! そして俺に呑まれろ!」

「……どうしてあなたはそこまで、執着するの? お父さんに取り憑いたかと思えば、フェインまで……。」


ペディアは苛立ちを感じながらも敢えて質問をする。苛立つ心を鎮めようと握り締めた手は、血が止まり白くなっていた。


「ふふふ……いいね。お前のおかげでいい気分だ! そのお礼に教えてやるよ。

俺は思念体だ。それでいて、分霊体でもあるのさ。だから、どこにでも行けるのさ」

「……私は、お前を父さんから、フェインから引き剥がしたい」


静かに、怒りの感情を抱きながらも自分の意志を伝える。


「そうだなぁ……。やってみたいことはたくさんあるが……、そうだ。こうしよう!」


ルアンは少し考え、思い付いたように交渉する。


「俺は今から消える。その間にこの空間を完全に浄化出来たら離れるよ。制限時間は10分だ。どうだ?」


フェインが傷ついたこの空間の完全修復。ペディアにとって、得意分野ではあるものの10分という時間内でやりきるのは至難の業だ。

フェインの精神世界に入るためにも魔力をかなり消費している。短時間で修復させるにはそれだけ多くの魔力を必要とするため、今度は魔力が足りるか分からないのだ。


「ほら、どうするんだ。俺は気が短いんだ。早くしろ」


ペディアが黙っていると、ルアンが少し不機嫌になりながら答えを急かす。

迷っている暇はない。こうしている間にも、現実世界ではリュカスが魔力を消費しながら戦っている。早く終わらせなければ。


「……分かった。その提案に乗るよ」

「交渉成立、だな。じゃ、俺は一旦消えるぜ」


ルアンは約束通り、その場から消え去った。後はペディアが何とかしなければ戻ってくる。戻ってくるのを阻止すれば後は自然に解決するだろう……。

ペディアは気がつけば、黒と青の柱の前に立っていた。


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