記憶のカケラ

シルヴィー

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ストーリー

アガーべが見たもの

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アガーべがペディアに取りき、一目散にフェインの住む拠点へと走った。アガーべは拠点に着いたとき、ペディアから離れたが、ペディアはそのまま動かなかった。

「ペディ姉! ……中に入ってよう?」

父のことを否定されたことが余程ショックだったのか、放心状態だった。ペディアの後ろからガサッと音がして、木の上からフェインが跳んでくる。

『お前、どうしたんだ? さっさと中に入れ』

フェインはどこからか帰ってきた後なのか、ペディアに声を掛けながら、小綺麗な布から薬草、鉱石、布などを分けて洞窟の奥へと仕舞いに行った。

「ペディ姉~。早く中に入ろうよ~」

アガーべが催促するが、全く動く気配がない。ほどなくしてフェインが手ぶらで戻ってくると、怪訝な表情でペディアを無理やり中へ引き入れた。

『お前はこの場所を誰かに教えるつもりか? さっさと中に入れってんだ! そら、そこに座っとけ!』

フェインがペディアを座らせるために体を突き放すと、ペディアの懐から豪華な装飾が施された黒いノートが飛び出してきた。

『……なんだ? これは?………ゥッ…!!』

フェインは飛び出してきた際に開かれたページを見ようとして、すぐに閉じた。自分の中にある闇が暴走しかけたからだ。胸に手を当て、鎮めるように浅い呼吸を繰り返す。

『くそ……』

「姉ちゃん…、大丈夫……?」

アガーべはフェインの顔を覗き込むようにして聞くが、フェインはアガーべの姿が見えていないのか、一連の動作を続けていた。

『はぁ…、はぁ……。リュカ……まだ帰って来ないのか?』

「姉ちゃん……」

アガーべは、放心状態のペディアと地に伏して苦しむフェインの様子にどうすれば良いのか分からなかった。フェインの背中をさすってあげようと手を伸ばしたとき、弾かれたように手を引っ込めた。


──何かに呼ばれてる──


アガーべは何かに惹かれるようにフェインの背中に触れると、そのまま中へ入っていった。


∞----------------------∞


気づけばアガーべは広い草原に立っていた。何か違和感を感じて手を見ると、大人の手だった。がっしりとした、分厚い立派な手だった。身長も随分と高く、アガーべの5歳児の身長ではなかった。

なぜ、ここに居るのか、アガーべには分からなかった。広々とした緑の広がる草原に、ぽつりぽつりと木がそびえ立っているのみで他に何もない場所だった。

「……ご……ユーゴ」

アガーべはハッとしてあたりを見回す。麦わら帽子を被った桃色の長い髪の女性が立っていた。アガーべは無意識に声をかけながら駆け寄る。

「ラナ」

「ユーゴ、何してたの?」

「いや、何も。お前こそ、何しに来たんだ?」

「私? 探しに来たのよ。あなたと一緒に居たかったから」

ラナは微笑みながら、こちらを覗き込む。

「ねぇ、ユーゴ。もし叶うなら、この子たちお腹の子に何をさせたい?」

「そうだな…。めいっぱい遊ばせたい。不自由なく、平凡な、平和な生活が送れたらそれで十分だよ」

「ふふっ…そうね。私も、そう思う。困ったことがあったら、私に教えてよ? 手伝うから」

「ありがとう」


∞----------------------∞


ハッとしてアガーべは目を覚ます。いつもの5歳児の体だった。さっきまでの出来事は一体なんだったんだろうと首を振った。

『おぬしあるじに入り込んで何をしていたのだ…?』

いつの間にかリュカスが帰ってきていたらしく、呆れながら問いかけてきた。アガーべはしどろもどろになりながら小さい声で答える。

「あっ、えっと、その……。何かに呼ばれた気がして…」

『呼ばれた? ……ふん、まあ良い。しかし、大変なことになってしまったな』

「大変なこと?」

『見ろ、ペディアは先程からあの様子。あるじもあまり無理は出来ない』

ペディアは壁に背中を預け、虚ろな目を宙に泳がせていた。その隣にフェインが座っているが、気怠そうにペディアの肩に頭を乗せている。

アガーべはなるほどと思いながら2人を見ていたが、ふと父ならぬあの人の存在を思い出してリュカスに聞く。

「そういえば、あの人は?」

『我が対峙たいじしていた者か? 我の光の拘束で力を弱め封印している。しかし、一時的なものゆえ、すぐに封印は解けるだろう』

「そっか……」

アガーべはリュカスとそんな会話をしながらも、先程の見た夢について考えていた。


ラナって誰? ユーゴって何者?? いつの場面の話なんだろう?

「姉ちゃんたちは、大丈夫なの?」

『……無理をしなければ良いが、ペディアに関しては強引にこちらに引き戻しても良いかもしれぬな』

「えっ?!」

『冗談だ。しばらく待とう』

リュカスはそれだけ言うと、通常サイズに戻って横になった。アガーべはペディアとフェインの頭を撫でながら良くなるようにと願うのだった。
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