記憶のカケラ

シルヴィー

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ストーリー

洞窟

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ペディアは狼リュカスと藍色のローブの子が話している間、家にいた少年アガーべの存在を思い出した。

そういえば、家で意識を失う時に叫んでたあの子はどこいったんだろう?この洞窟どうくつは家からどのくらい離れた場所にいるのかも気になる。私は、どのくらい気を失っていたのか…。

考えれば考えるほど疑問は溢れてくる。そうして自分の世界に入り込んでいると、目の前でフラッシュを使われた。

「うわっ!な、なに?!」

フラッシュ:光属性初級魔法。攻撃性はなく、目くらましに使われる程度であまり実用性がない。

『おぬしが呼んでも気づかぬからだ。我が現実に引き戻してやっただけのこと。あるじより伝言だ』

「で、伝言??」

『おぬしの住む家には戻るな、と言っている。戻ればお前は殺されかねない。しばしここに拠点きょてんを置くが良い』

「……なんで?私も色々と聞きたいことがあるんだけど、まずその理由聞いてもいい?」

『……おぬし、我の話を聞いていたか?お前の知る父は、もう存在しないと言っているのだ』

ペディアは何故父のことを知っているのかと疑問になったが、その前に契約を結んだ少年のことが気になった。私だけ助かるなんてダメだという気持ちから、食いつき気味にリュカスにたずねた。

「じゃあ!…アガーべはどうなるの?あの子もあの家にずっと住んでいたはずだけど」

『アガーべ?』

「そう。6歳くらいの大人びた男の子。…名前は私がつけたんだけど」

『知らぬな。あるじ、なにか知っているか?……知らぬか。悪いが、おぬし、その少年については何もしてやれぬ』

……諦めが早い…。それもそうよね…。私は心配だけど、顔も知らない赤の他人だと助ける気が起こらないのかもしれない。

「ね、この洞窟は私の家からどのくらい離れてるの?」

『さぁ…5里ほどは離れているだろう』

「遠っ…、私を見つけてくれた場所は?」

『ここから8里ほど離れているな。あの山は危険だ。何故立ち入った?』

「知らない…。気がついたら、あの中だったから…」

話せば話すほど、疑問が消えるより逆に増えてる気がすると思いながら、答える。

『ふむ。あの者の仕業しわざか。この事は我から話してもいいだろう…。しかし、もうすぐ夕暮れ時だ。おぬしにとっては満足にはしょくせぬだろうが、この奥にと飲み水がある。って休むが良い』

リュカスは少し殺気立ったが、すぐに収まり、ペディアの身をあんじて言った。ペディアは昼ごはんを食べていないことに気づいた途端、お腹が鳴った。少し恥ずかしかったが、この音がリュカスにバレていないことを願いながら洞窟の奥へ、食べ物をもらいに行くのだった。
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