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ストーリー
白い毛並み
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ペディアが諦めかけ、意識を手放そうとした時、無限階段に陥れた2つの声とは別の、重低音の声が聞こえてきた。
「……今度は…なんなの…」
『お主、お前が向かおうとしている逆の方へ来い。我はそこまで行けぬ』
「……だれ…」
『我が名はリュカス。主より賜った名である』
「……リュカ…」
ペディアはのろのろと、方向転換をし、階段を降りはじめる。どのくらい降りていたのか、無心になっていた。
『お主、よくやった。あとは我に任されよ』
再び聞こえた重低音の声に、わずかに顔を上げると、暗闇には眩し過ぎるほど輝いた、白い毛が目の前にあった。
無意識に触れた白い毛はとても柔らかく、ペディアの心を安心させた。
∞----------------------∞
どのくらい気を失っていたのか、ハッとして飛び起きると、森の洞窟の中にいた。枯葉と綿に包まれていたらしく、服にへばり付いている。布団代わりに用意してくれたものなのだろう。
微かに息の漏れる音がして、目を向けると、藍色のローブとすっぽりと顔を覆った誰かが、こちらに背中を向けて横になっていた。息が荒いのか、肩の上下が烈しい。
「……ねぇ、大丈夫?」
返事はない。もう一度声を掛けようと近づくと、朧気に見たあの白い毛がやってきた。その正体にペディアは固まる。
3~5mはありそうな体長の真白い狼だった。
狼はじっとこちらを見つめて、にやりと笑う。
『お主、起きたか。どこか身体に変化はあるか?』
「えっ?」
ペディアは言われて自分の体を確認する。手をにぎにぎしたり、立って動いてみる。問題はない。試しに魔法も使ってみるが、変化はなく、いつも通りだった。
「大丈夫。どこもおかしな所はないよ。…もしかして、あなたが助けてくれたの?」
狼は大型犬ほどの大きさに縮んで、寝ている誰かのそばに行きながら言った。
『そうだ。此奴に頼まれたからな』
「大丈夫なの、その子?息が上がってるみたいだし、熱でもあったら大変だよ!」
『……そうだな。お主を護るために今まで無茶をしてきたから、その反動で動けなくなったのだろう』
「えっ…?私を護るため?どういうこと??」
『それは、我の口からは言えぬ。しかし、お主が主と意思疎通が出来るかが問題だな…。…む、主よ、無事か?』
藍色のローブの子が身じろぎをして、狼…じゃない、リュカスに触れたのだ。なにかを伝えようとしているのだろう。ペディアは一時黙って様子を見守ることにした。
「……今度は…なんなの…」
『お主、お前が向かおうとしている逆の方へ来い。我はそこまで行けぬ』
「……だれ…」
『我が名はリュカス。主より賜った名である』
「……リュカ…」
ペディアはのろのろと、方向転換をし、階段を降りはじめる。どのくらい降りていたのか、無心になっていた。
『お主、よくやった。あとは我に任されよ』
再び聞こえた重低音の声に、わずかに顔を上げると、暗闇には眩し過ぎるほど輝いた、白い毛が目の前にあった。
無意識に触れた白い毛はとても柔らかく、ペディアの心を安心させた。
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どのくらい気を失っていたのか、ハッとして飛び起きると、森の洞窟の中にいた。枯葉と綿に包まれていたらしく、服にへばり付いている。布団代わりに用意してくれたものなのだろう。
微かに息の漏れる音がして、目を向けると、藍色のローブとすっぽりと顔を覆った誰かが、こちらに背中を向けて横になっていた。息が荒いのか、肩の上下が烈しい。
「……ねぇ、大丈夫?」
返事はない。もう一度声を掛けようと近づくと、朧気に見たあの白い毛がやってきた。その正体にペディアは固まる。
3~5mはありそうな体長の真白い狼だった。
狼はじっとこちらを見つめて、にやりと笑う。
『お主、起きたか。どこか身体に変化はあるか?』
「えっ?」
ペディアは言われて自分の体を確認する。手をにぎにぎしたり、立って動いてみる。問題はない。試しに魔法も使ってみるが、変化はなく、いつも通りだった。
「大丈夫。どこもおかしな所はないよ。…もしかして、あなたが助けてくれたの?」
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『そうだ。此奴に頼まれたからな』
「大丈夫なの、その子?息が上がってるみたいだし、熱でもあったら大変だよ!」
『……そうだな。お主を護るために今まで無茶をしてきたから、その反動で動けなくなったのだろう』
「えっ…?私を護るため?どういうこと??」
『それは、我の口からは言えぬ。しかし、お主が主と意思疎通が出来るかが問題だな…。…む、主よ、無事か?』
藍色のローブの子が身じろぎをして、狼…じゃない、リュカスに触れたのだ。なにかを伝えようとしているのだろう。ペディアは一時黙って様子を見守ることにした。
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