4 / 42
ストーリー
少年の話
しおりを挟む
朝食を終えて自室に戻ると、ペディアはクローゼットの隙間からミニ机を引っ張り出してきた。デスクは持っているが、少年と座って話すにはこちらの方が話しやすいと思ったからだ。
「さ、座って。あなたの話を聞かせて」
「うんっ!」
少年はどこか嬉しそうにニコニコしながら話し始めた。
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
僕は今までどこにいて、何をしていたか記憶にはないんだ。だから、僕の名前が何かも分からない。
僕が覚えてる1番古い記憶は、"暗闇の恐怖"なんだ。いまは他人事にみたいな感覚なってるから、夜になっても平気なんだけど、その時、何が起きてそうなったとかは覚えてないんだよね。
でも、僕がこの家で、自我を持ってからの記憶はあるよ。ペディ姉のことも、ペディ姉のパパのことも知ってる。僕は12年間この家に居たから。家の外は…、あまり家から離れることは出来ないけど、少しなら外の様子も知ってるし、何が流行りとかも分かるよ!
僕が話せるのはそのくらいかなぁ…?
あっ、そうだ。最後にひとつだけ。誰かが伝言してくれって言ってたんだ。
『思い出せ。私はここにいる。早く真実を知って、私を解放しろ』
そう言ってたよ。
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
ペディアは長々と少年の話を聞いて少し混乱していた。聞きたいことはある。思いつく順から聞いていくことにした。
「……あなた、12年間もここにいたっていうなら、なんで私たちに今まで姿が見えなかったの?」
「時が来たからだと思う。本当なら、僕は誰にも気付かれずに消えるはずだから。あの人がそうさせたのかもしれない」
「あの人?」
「僕に伝言を託した相手。僕も顔は知らないけど、記憶はあるんだ」
「ふーん…、12年も経ってる割には身長低いよね…」
「……?身長が低いとなにかダメなこととかあるの?」
「ううん。あなたが大丈夫なら、別にいいわよ。12年もあれば、私みたいに身長伸びるはずなのになーって思っただけ」
少年はペディアの質問の内容がよく分かっていないらしく、首を傾げていた。
「…そういえば、あなた、名前」
少年は無言になって苦笑いを浮かべる。ペディアは一方的に少し考えてから言う。
「名前がないのはちょっと不便よね。いまは2人だけだからいいけど、他に人と会う時呼びづらいし…。
アウ…アク……、うーん、、"アガーべ"。そう呼んでいい?」
「アガーべ…?古代アステルの言葉で"使命"だね。いいよ。ペディ姉が付けてくれる名前なら嬉しい!」
古代アステル。この世界の全ての言語の源とされている最古の言葉だ。日本人が漢文を学ぶように、ペディアの住む世界の人々は、学べる環境にいる人は必ずと言っていいほど学ぶ言語なのだ。
「次の質問ね、"暗闇の恐怖"っていうのは、具体的にどんなものなの?」
「分からない。1番辛くて苦しい記憶だった気がする」
「じゃあ、最後の質問ね。伝言の内容は、いつ言われたの?」
「それも分からない。手掛かりになるのは…、どこかの山の中…かな?」
ペディアはハッとした。あの夢(1話参照)の最後に出てきた特徴の場所に行けばなにかあるかな…?
「ね、アガーべ。一緒に来て欲しい場所があるんだけど、来れる?」
「どこまで?」
「えっと…、あの特徴は…、トランテスタ…山…」
夢の内容を思い出しながら自信なさげに伝えると、アガーべは申し訳なさそうな顔をして断る。
「ごめん、僕そこまで行けない。ペディ姉の住む地域内だったら、ギリギリ行けるんだけど…」
「そっか…。アガーべと一緒の方が手掛かりを掴みやすいと思ったんだけどな…。」
ペディアは残念そうに呟く。すると、少し明るい声でアガーべが提案した。
「ペディ姉、使い魔契約しよう」
使い魔契約とは、魔物と人間がお互いの体に魔力で出来た契約印を結ぶことである。離れた場所にいても、契約があることで、すぐにその場に召喚し呼び寄せることが出来る。
アガーべの場合、周囲の魔素、魔力の源となるものを媒体として存在している。家の周囲までしか行けないアガーべの場合、家から離れる際はペディアの魔力によって現存することになるのだ。
「えっ?」
「ペディ姉の魔力を少し貰うことになるけど…、姉ちゃん魔力量が他の人より多いし、いいかな…?もっといい方法もあるけど、そっちは僕が消える時、姉ちゃんも一緒に居なくなっちゃうから…」
ペディアは使い魔契約以外の契約方法を知らないため、アガーべの言った意味が分からなかったが、一緒に行けるというのであればなんでもいい。契約しようと思った。
「アガーべがいいなら、使い魔契約しよっか」
「さ、座って。あなたの話を聞かせて」
「うんっ!」
少年はどこか嬉しそうにニコニコしながら話し始めた。
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
僕は今までどこにいて、何をしていたか記憶にはないんだ。だから、僕の名前が何かも分からない。
僕が覚えてる1番古い記憶は、"暗闇の恐怖"なんだ。いまは他人事にみたいな感覚なってるから、夜になっても平気なんだけど、その時、何が起きてそうなったとかは覚えてないんだよね。
でも、僕がこの家で、自我を持ってからの記憶はあるよ。ペディ姉のことも、ペディ姉のパパのことも知ってる。僕は12年間この家に居たから。家の外は…、あまり家から離れることは出来ないけど、少しなら外の様子も知ってるし、何が流行りとかも分かるよ!
僕が話せるのはそのくらいかなぁ…?
あっ、そうだ。最後にひとつだけ。誰かが伝言してくれって言ってたんだ。
『思い出せ。私はここにいる。早く真実を知って、私を解放しろ』
そう言ってたよ。
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
ペディアは長々と少年の話を聞いて少し混乱していた。聞きたいことはある。思いつく順から聞いていくことにした。
「……あなた、12年間もここにいたっていうなら、なんで私たちに今まで姿が見えなかったの?」
「時が来たからだと思う。本当なら、僕は誰にも気付かれずに消えるはずだから。あの人がそうさせたのかもしれない」
「あの人?」
「僕に伝言を託した相手。僕も顔は知らないけど、記憶はあるんだ」
「ふーん…、12年も経ってる割には身長低いよね…」
「……?身長が低いとなにかダメなこととかあるの?」
「ううん。あなたが大丈夫なら、別にいいわよ。12年もあれば、私みたいに身長伸びるはずなのになーって思っただけ」
少年はペディアの質問の内容がよく分かっていないらしく、首を傾げていた。
「…そういえば、あなた、名前」
少年は無言になって苦笑いを浮かべる。ペディアは一方的に少し考えてから言う。
「名前がないのはちょっと不便よね。いまは2人だけだからいいけど、他に人と会う時呼びづらいし…。
アウ…アク……、うーん、、"アガーべ"。そう呼んでいい?」
「アガーべ…?古代アステルの言葉で"使命"だね。いいよ。ペディ姉が付けてくれる名前なら嬉しい!」
古代アステル。この世界の全ての言語の源とされている最古の言葉だ。日本人が漢文を学ぶように、ペディアの住む世界の人々は、学べる環境にいる人は必ずと言っていいほど学ぶ言語なのだ。
「次の質問ね、"暗闇の恐怖"っていうのは、具体的にどんなものなの?」
「分からない。1番辛くて苦しい記憶だった気がする」
「じゃあ、最後の質問ね。伝言の内容は、いつ言われたの?」
「それも分からない。手掛かりになるのは…、どこかの山の中…かな?」
ペディアはハッとした。あの夢(1話参照)の最後に出てきた特徴の場所に行けばなにかあるかな…?
「ね、アガーべ。一緒に来て欲しい場所があるんだけど、来れる?」
「どこまで?」
「えっと…、あの特徴は…、トランテスタ…山…」
夢の内容を思い出しながら自信なさげに伝えると、アガーべは申し訳なさそうな顔をして断る。
「ごめん、僕そこまで行けない。ペディ姉の住む地域内だったら、ギリギリ行けるんだけど…」
「そっか…。アガーべと一緒の方が手掛かりを掴みやすいと思ったんだけどな…。」
ペディアは残念そうに呟く。すると、少し明るい声でアガーべが提案した。
「ペディ姉、使い魔契約しよう」
使い魔契約とは、魔物と人間がお互いの体に魔力で出来た契約印を結ぶことである。離れた場所にいても、契約があることで、すぐにその場に召喚し呼び寄せることが出来る。
アガーべの場合、周囲の魔素、魔力の源となるものを媒体として存在している。家の周囲までしか行けないアガーべの場合、家から離れる際はペディアの魔力によって現存することになるのだ。
「えっ?」
「ペディ姉の魔力を少し貰うことになるけど…、姉ちゃん魔力量が他の人より多いし、いいかな…?もっといい方法もあるけど、そっちは僕が消える時、姉ちゃんも一緒に居なくなっちゃうから…」
ペディアは使い魔契約以外の契約方法を知らないため、アガーべの言った意味が分からなかったが、一緒に行けるというのであればなんでもいい。契約しようと思った。
「アガーべがいいなら、使い魔契約しよっか」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる