表裏の狭間で

シルヴィー

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青年とエリカ

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昼ごはんの後、イレインはシルディックの訓練を見、エリカは1人筋トレを続けていた。

「1000回ずつって……キツすぎ…」

「休んでいる暇はなかろう」

いきなり聞こえた見知らぬ声にエリカは飛び上がるほど驚いてしまった。しかし、あたりを見回しても、エリカ以外にイレインとシルディックしかいない。が、今いる3人の声ではないのは明らかだった。

「だっ、だれ……」

「こっちだ。気配は隠しておらぬのに…。気づけないとは余程平和な家庭で育ったのだな」

「平和で何が悪いのよっ!」

「いいや、なにも悪かねぇ」

エリカの背後に立っていた木の枝から、ストンと音を立てずに降りてきた。色白の肌に琥珀色の瞳と、光加減で銀にも白にもなる不思議な髪色をした青年が降りてきた。

「ほれ、体を動かせ。我が手伝ってやる」

「うぅ……鬼!!」

青年がエリカの足を抑え、腹筋の続きをすることになった。トレーニングをしながら、青年はエリカに唐突な質問をした。

「おぬし、この世界をどう思う?」

「え? どう思うって……?」

「美しいとか、理不尽だとか、何かあるだろう?」

エリカはトレーニングを一時的にやめて考え込んだ。

「うーん……、…かな。

お母さん、ラリサが居なくなってから、妹の分まで、私に尽くしてくれるけど、何かが足りないって思っちゃうの……。

だから、私はラリサを捜さなきゃって、今まで手がかりが掴めそうな所を片っ端から捜してた。私の友達も何人かラリサ捜しを手伝ってくれるし、みんな優しくて、励ましてくれる。でも、ダメなの。

何かが私の中で欠けてて…、満足出来ないの。ラリサを捜して、見つかったら、私の欠けてる何かが埋まると思ってるんだけど……」

青年は目を伏せながら、なるほどと頷いていた。

「その妹君いもうとぎみは、5つの時に攫われたと聞いておるが……、よく覚えておるな?」

「記憶はおぼろげであんまり覚えてないんだけどね。でも、印象的だったから、ちょっとだけ覚えてるの」

「ふむ……。

エリカ、次だ。その木の棒はおぬしには合わぬ。これを使え」

青年は次のトレーニングに移るために、エリカに短刀を模した木刀を投げて渡した。

「重っっ」

「イレイン殿から受け取ったものよりはマシだろう? おぬしにどんな武器が合うのか、我は知らぬ。片っ端から見ていくから、今日はそれを使え」

渡された木刀はイレインから借りた木の棒より何倍も軽いのは確かだった。重いけど、なんとか頑張れば武器に振り回されずにできるかもしれない。エリカは少し距離をとり、木刀を構えて青年に顔を向ける。

「我は素手でやる。全力で向かってくることだ」

「え……、大丈夫…なの?」

「何を躊躇う必要があるのだ?

ぬしはまだ戦い方も知らぬ未熟者だ。我は戦い方を知る者だ。明らかな差がある故、問題はない。

さっさとかかって来い。来ないならこちらから行くぞ?」

エリカは言われて気づいた。やり方知らないけど、自分なりに振ればいいのかな……?

「い、行きますっ!」
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