12 / 15
青年とエリカ
しおりを挟む
昼ごはんの後、イレインはシルディックの訓練を見、エリカは1人筋トレを続けていた。
「1000回ずつって……キツすぎ…」
「休んでいる暇はなかろう」
いきなり聞こえた見知らぬ声にエリカは飛び上がるほど驚いてしまった。しかし、あたりを見回しても、エリカ以外にイレインとシルディックしかいない。が、今いる3人の声ではないのは明らかだった。
「だっ、だれ……」
「こっちだ。気配は隠しておらぬのに…。気づけないとは余程平和な家庭で育ったのだな」
「平和で何が悪いのよっ!」
「いいや、なにも悪かねぇ」
エリカの背後に立っていた木の枝から、ストンと音を立てずに降りてきた。色白の肌に琥珀色の瞳と、光加減で銀にも白にもなる不思議な髪色をした青年が降りてきた。
「ほれ、体を動かせ。我が手伝ってやる」
「うぅ……鬼!!」
青年がエリカの足を抑え、腹筋の続きをすることになった。トレーニングをしながら、青年はエリカに唐突な質問をした。
「お主、この世界をどう思う?」
「え? どう思うって……?」
「美しいとか、理不尽だとか、何かあるだろう?」
エリカはトレーニングを一時的にやめて考え込んだ。
「うーん……、悲しい…かな。
お母さん、妹が居なくなってから、妹の分まで、私に尽くしてくれるけど、何かが足りないって思っちゃうの……。
だから、私はラリサを捜さなきゃって、今まで手がかりが掴めそうな所を片っ端から捜してた。私の友達も何人か妹捜しを手伝ってくれるし、みんな優しくて、励ましてくれる。でも、ダメなの。
何かが私の中で欠けてて…、満足出来ないの。ラリサを捜して、見つかったら、私の欠けてる何かが埋まると思ってるんだけど……」
青年は目を伏せながら、なるほどと頷いていた。
「その妹君は、5つの時に攫われたと聞いておるが……、よく覚えておるな?」
「記憶はおぼろげであんまり覚えてないんだけどね。でも、印象的だったから、ちょっとだけ覚えてるの」
「ふむ……。
エリカ、次だ。その木の棒はお主には合わぬ。これを使え」
青年は次のトレーニングに移るために、エリカに短刀を模した木刀を投げて渡した。
「重っっ」
「イレイン殿から受け取ったものよりはマシだろう? お主にどんな武器が合うのか、我は知らぬ。片っ端から見ていくから、今日はそれを使え」
渡された木刀はイレインから借りた木の棒より何倍も軽いのは確かだった。重いけど、なんとか頑張れば武器に振り回されずにできるかもしれない。エリカは少し距離をとり、木刀を構えて青年に顔を向ける。
「我は素手でやる。全力で向かってくることだ」
「え……、大丈夫…なの?」
「何を躊躇う必要があるのだ?
お主はまだ戦い方も知らぬ未熟者だ。我は戦い方を知る者だ。明らかな差がある故、問題はない。
さっさとかかって来い。来ないならこちらから行くぞ?」
エリカは言われて気づいた。やり方知らないけど、自分なりに振ればいいのかな……?
「い、行きますっ!」
「1000回ずつって……キツすぎ…」
「休んでいる暇はなかろう」
いきなり聞こえた見知らぬ声にエリカは飛び上がるほど驚いてしまった。しかし、あたりを見回しても、エリカ以外にイレインとシルディックしかいない。が、今いる3人の声ではないのは明らかだった。
「だっ、だれ……」
「こっちだ。気配は隠しておらぬのに…。気づけないとは余程平和な家庭で育ったのだな」
「平和で何が悪いのよっ!」
「いいや、なにも悪かねぇ」
エリカの背後に立っていた木の枝から、ストンと音を立てずに降りてきた。色白の肌に琥珀色の瞳と、光加減で銀にも白にもなる不思議な髪色をした青年が降りてきた。
「ほれ、体を動かせ。我が手伝ってやる」
「うぅ……鬼!!」
青年がエリカの足を抑え、腹筋の続きをすることになった。トレーニングをしながら、青年はエリカに唐突な質問をした。
「お主、この世界をどう思う?」
「え? どう思うって……?」
「美しいとか、理不尽だとか、何かあるだろう?」
エリカはトレーニングを一時的にやめて考え込んだ。
「うーん……、悲しい…かな。
お母さん、妹が居なくなってから、妹の分まで、私に尽くしてくれるけど、何かが足りないって思っちゃうの……。
だから、私はラリサを捜さなきゃって、今まで手がかりが掴めそうな所を片っ端から捜してた。私の友達も何人か妹捜しを手伝ってくれるし、みんな優しくて、励ましてくれる。でも、ダメなの。
何かが私の中で欠けてて…、満足出来ないの。ラリサを捜して、見つかったら、私の欠けてる何かが埋まると思ってるんだけど……」
青年は目を伏せながら、なるほどと頷いていた。
「その妹君は、5つの時に攫われたと聞いておるが……、よく覚えておるな?」
「記憶はおぼろげであんまり覚えてないんだけどね。でも、印象的だったから、ちょっとだけ覚えてるの」
「ふむ……。
エリカ、次だ。その木の棒はお主には合わぬ。これを使え」
青年は次のトレーニングに移るために、エリカに短刀を模した木刀を投げて渡した。
「重っっ」
「イレイン殿から受け取ったものよりはマシだろう? お主にどんな武器が合うのか、我は知らぬ。片っ端から見ていくから、今日はそれを使え」
渡された木刀はイレインから借りた木の棒より何倍も軽いのは確かだった。重いけど、なんとか頑張れば武器に振り回されずにできるかもしれない。エリカは少し距離をとり、木刀を構えて青年に顔を向ける。
「我は素手でやる。全力で向かってくることだ」
「え……、大丈夫…なの?」
「何を躊躇う必要があるのだ?
お主はまだ戦い方も知らぬ未熟者だ。我は戦い方を知る者だ。明らかな差がある故、問題はない。
さっさとかかって来い。来ないならこちらから行くぞ?」
エリカは言われて気づいた。やり方知らないけど、自分なりに振ればいいのかな……?
「い、行きますっ!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる