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鈴の音が鳴る者
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藍色の黒装束を身につけ、顔が分からないようフードを深く被った者が2つの腕に大きなものを抱えて屋根つたいに走っていた。
「あ! あの場所!」
「お菓子屋さんの隣のお店~!」
2つの腕に抱えているものは、闇取引が得意な妹弟である。"甘味処"と書かれた旗がある家の、隣の屋根の上に立ち、2人を降ろした。と思うと、一瞬でその場から消えた。
妹弟のコードネームは、妹が黄、弟が碧である。
「お兄ちゃん最近忙しそうだね。3日前に帰ってきたと思ったら、またどこかに行っちゃうんだもん」
碧が消えた方角を見ながら言うと、黄が苦笑いで拳を作った。
「仕方ないよ。お兄ちゃんは強いんだから! ここに来てくれたのも、任務のための通過地点だからだし……。
ほら、碧もお面被って。この辺りはややこしいんだから」
「分かってるよ」
碧は緑色の鳥を模したお面を付け、路地裏に飛び降りる。黄は既に飛び降りて待っていた。ちなみに黄のお面は碧と色違いで黄色とオレンジが混ざったものである。
路地裏に降りた理由は、いきなり表通りに飛び降りると余計な喧嘩を呼びかねないからだ。護身刀を服の裏に隠し持っていることを2人で確認して、表通りに出る。
甘味処の隣のお店は、表向きには酒場である。ガラの悪そうな、ガタイのいい男性が酒を飲みながら賭博を行っていた。
「あん? 誰だ、このチビ」
「おいおい、オメーら、ここはチビちゃん達の来る場所じゃねーぜ?」
黄と碧が酒場に入った途端、いきなり注目を浴びた。それもそうだろう。10にも満たない年齢であり、身長は約130~140cmほどしかないのだ。
しかし、2人は慣れているのか、男たちの言葉を全て無視してカウンターにやって来た。
「マスター、例の薬をお届けに参りました」
碧がそういうと、マスターはハッとした顔をして慌てて店の奥に入っていった。その間、黄は周囲を警戒しており、殴りかかってくる男共を全て受け流し、失神させていた。
「てめ……、俺たちの…ヒッ?!」
ある男は奥から出てきた女性に驚き、腰を抜かしてしまった。
「……あらあら、またやってしまったのね? ふふふ…」
女性は上品な笑いを含みながら、鈴の音を鳴らしながら表に出てきた。黄は振り返り、胸に手を当てながら跪く。
「申し訳ございません、防衛反応です」
女性が扇子で口元を当てながら笑う様子は妖艶であり、男性の焦りがさらに焦りを生み出す結果になっていた。
「……ほら、さっさと引き返しなさい?」
「う、う、うあっうあああああっっ!!」
生き残っていた男共は仲間を置いて、慌ててその場から離れた。その間も女性はクスクスと上品に笑っており、効果てきめんだった。
「ふふっ…、例の子たちよね?」
女性は再び鈴の音を鳴らしながら歩き、カウンターを通り過ぎて2人の元へと近づく。そして、ゆっくりと宙を探るように手を伸ばし、黄と碧の頬に触れ、頭を撫でた。
「久しぶりね、黄、碧。
マスター、この子達を私の部屋に案内差し上げて?」
酒場のマスターは少し驚いたように聞き返す。
「よろしいのですか? あと数十分ほどすれば、お客様がお見えになりますが……」
「いいのいいの。この子達は勝手に帰っちゃうから。ふふふっ」
「わ、分かりました……」
「あ! あの場所!」
「お菓子屋さんの隣のお店~!」
2つの腕に抱えているものは、闇取引が得意な妹弟である。"甘味処"と書かれた旗がある家の、隣の屋根の上に立ち、2人を降ろした。と思うと、一瞬でその場から消えた。
妹弟のコードネームは、妹が黄、弟が碧である。
「お兄ちゃん最近忙しそうだね。3日前に帰ってきたと思ったら、またどこかに行っちゃうんだもん」
碧が消えた方角を見ながら言うと、黄が苦笑いで拳を作った。
「仕方ないよ。お兄ちゃんは強いんだから! ここに来てくれたのも、任務のための通過地点だからだし……。
ほら、碧もお面被って。この辺りはややこしいんだから」
「分かってるよ」
碧は緑色の鳥を模したお面を付け、路地裏に飛び降りる。黄は既に飛び降りて待っていた。ちなみに黄のお面は碧と色違いで黄色とオレンジが混ざったものである。
路地裏に降りた理由は、いきなり表通りに飛び降りると余計な喧嘩を呼びかねないからだ。護身刀を服の裏に隠し持っていることを2人で確認して、表通りに出る。
甘味処の隣のお店は、表向きには酒場である。ガラの悪そうな、ガタイのいい男性が酒を飲みながら賭博を行っていた。
「あん? 誰だ、このチビ」
「おいおい、オメーら、ここはチビちゃん達の来る場所じゃねーぜ?」
黄と碧が酒場に入った途端、いきなり注目を浴びた。それもそうだろう。10にも満たない年齢であり、身長は約130~140cmほどしかないのだ。
しかし、2人は慣れているのか、男たちの言葉を全て無視してカウンターにやって来た。
「マスター、例の薬をお届けに参りました」
碧がそういうと、マスターはハッとした顔をして慌てて店の奥に入っていった。その間、黄は周囲を警戒しており、殴りかかってくる男共を全て受け流し、失神させていた。
「てめ……、俺たちの…ヒッ?!」
ある男は奥から出てきた女性に驚き、腰を抜かしてしまった。
「……あらあら、またやってしまったのね? ふふふ…」
女性は上品な笑いを含みながら、鈴の音を鳴らしながら表に出てきた。黄は振り返り、胸に手を当てながら跪く。
「申し訳ございません、防衛反応です」
女性が扇子で口元を当てながら笑う様子は妖艶であり、男性の焦りがさらに焦りを生み出す結果になっていた。
「……ほら、さっさと引き返しなさい?」
「う、う、うあっうあああああっっ!!」
生き残っていた男共は仲間を置いて、慌ててその場から離れた。その間も女性はクスクスと上品に笑っており、効果てきめんだった。
「ふふっ…、例の子たちよね?」
女性は再び鈴の音を鳴らしながら歩き、カウンターを通り過ぎて2人の元へと近づく。そして、ゆっくりと宙を探るように手を伸ばし、黄と碧の頬に触れ、頭を撫でた。
「久しぶりね、黄、碧。
マスター、この子達を私の部屋に案内差し上げて?」
酒場のマスターは少し驚いたように聞き返す。
「よろしいのですか? あと数十分ほどすれば、お客様がお見えになりますが……」
「いいのいいの。この子達は勝手に帰っちゃうから。ふふふっ」
「わ、分かりました……」
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